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ママ、あれ、あれ!
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私が玄関まで行くともう出かける準備が終わっていた。
エマがネイトが乗った乳母車を押して、アンジェラとジョージがそれを背伸びしながら覗いている。
ジョージアが、それを微笑みながら子どもたちを見ていた。
「お待たせ!」
私もその輪の中に混ざると、ママ!と二人の子どもが寄ってくる。私は二人と手を繋ぎ、ジョージアとアンジェラが手を繋いでいる。
ジョージは、車道側でなく中側をホテホテと歩き始めた。
「ひーめさん!」
私を呼ぶウィルに振り返ると、こちらに向かって手を振っていた。
「どうしたの?」
「いや、出かけるって聞いたからさ、今日レオとミアも両親に連れられて街に出ているみたいだからさ!
どっかで、会うかも?ミアが怒っていたら謝っておいてくれる?」
「わかったわ!ウィルを一人占めしてごめんって言っておく!」
「いや……そこまでは……」
「ウィール!」
「よぉ!嬢ちゃん、今日は姫さんもジョージア様も一緒でいいな!」
ニパッと花が咲いたかのように笑うアンジェラは、相当ご機嫌のようだ!
握った手をさらにギュっと握っている。
「気を付けて!」
手を振るウィルを見ながら、両手を繋いでいたアンジェラはジタバタしていた。ウィルに手を振りたいのだろうと私がアンジェラの手を放してあげると、ブンブン手を振っている。
「アンジー行こうか?」
ジョージアに言われ、再度、私の手を取るアンジェラ。さっきよりもご機嫌に私のジョージアの手をブンブン振り回す。
「アンジェラ、そんなに振り回したら痛いわ!」
「……はい」
「いい子ね!」
私たちは並んで歩く。子どもの足では、少しだけ街まで遠いが、アンジェラもジョージも一生懸命足を動かして歩いている。
領地の屋敷で、レオたちと走り回っているおかげか、普通よりかは、二人共体力がありそうだが、きっと、帰りは抱きかかえて帰るはめになるだろう。
公都の中心地へ近づくと、露店などが並び、お客を呼び込むおじさんやお姉さんたちの声があちこちから聞こえてきて活気づいている。初めて公都の街並を見たアンジェラもジョージも目がキラキラと輝いていた。
アンバー領で過ごすことが多いことと、公都に帰ってきても屋敷から出たことがなかったから、活気ある街並みに心躍るのは仕方がない。
私も小さい頃、両親に連れられ初めて街へ出たときは、こんな感じだったのだろうか?
「アンナは、街で遊んでたりしたの?」
「もちろん!4歳くらいからですか?お兄様と遊びに出ていましたよ!あとは、ハリーと出会ってからは、
いつもハリーと遊びまわってましたよ!ローズディアとは違って、私すごい有名人なんですよね!
アンナって名前は、珍しくないでしょうが、この髪の毛が目印で、すごく有名人だったんですよ……」
私の顔をみると、トワイス国王都ではゲッっという顔をされる。でも、同時に王都のみんなにそこそこ可愛がられていた自負はあった。
「なんとなく、想像が出来るよ……アンナが先頭に立って後ろからヘンリー殿やサシャがついて歩いて
いる様子が」
「お兄様やハリーだけではないんですけどね……はぁ……あの頃は、本当に楽しかった!」
そんな様子に苦笑いのジョージアであるが、きっと、ジョージアが思っているより私の子ども時代はお転婆ぶりを発揮していた。
じゃじゃ馬アンナは、通り名だったし……私を見たら、公都の強そうな男の子でも道を譲ってくれ、さらに後ろをついてくるくらいだった。
「ママ、ハリーって誰?」
「私の幼馴染のヘンリーおじさんね!」
「おじさんって……アンナ、ヘンリー殿に怒られるぞ?」
「怒りませんよ!なんたって、おじさんって言うのは、私の娘ですもの!嬉しいに決まってます!アン
ジェラもハリーに会ったらおじさん!って言ってあげてね!」
意味がわからないと言うふうであったが、とにかくおじさんと呼べと言われたので、アンジェラはいい返事を返してくれた。
そんな様子を見て、ジョージアはため息をつく。
「どうかされました?」
「アンジェラもアンナみたいになるんじゃないかって……アンナを見てたらそう思うよ。レオもミアも、
もしかしたら、ジョージまで引き連れて、この街を練り歩いている……そんな想像をする日が来る
とは……思いもしなかった」
「意外とそのときは、近いかもしれませんね!」
外を出歩くようになるには小さいから、まだ、ダメだけどね!と少し拗ねたようにいうジョージア。
アンジェラが可愛くて仕方がないので、危ないかもしれない外へは出したくないらしい。
私は、その気持ちもわからなくもないが、たぶん……アンジェラは私に似たのだから、外への興味は尽きないと未来を想いこそっと笑う。
「ジョージア様は、子どものときは外に遊びに行かなかったのですか?」
「俺は、基本的に遊ぶのは公とだけだったから、公がお忍びのとき以外は、外に出なかったかな?」
「おぉー、なんというか……」
「言わなくてもわかってる。面白みがないって言うんだろ?」
「そこまでは、言いませんよ!公と出かけていたのなら、いいじゃないですか?」
「言いわけないだろ?」
「どうしてです?」
私はジョージアをじっと見つめると……言葉を濁すジョージア。
それを見逃すはずもない。
「ナンパしに行ったんだ?」
「俺は、してないから!」
「本当ですか?」
ジョージアに疑いの眼差しを向けると誤解を解こうと私を言いくるめようとし始める。
「ジョージア様も公もませた子どもだったんですね!」
ニッコリ笑いかけて、黙らせておいた。口がパクパクしておもしろい。
「ママ、ママ!」
「ん?どうしたの?ジョージ」
「ナンパって何ですか?」
真摯な目で言われると、私からは説明をしにくい。今、言葉を覚えている最中なので、出来る限り言葉を選んでいたつもりだったのだが、ジョージは新しい言葉が気になってしまったようだ。
「それは、パパに聞いてみるといいよ!パパ、たぶん、得意だから!」
「アンナさん……俺は……」
「パパ、何?」
「……えーっと、遊びに行きましょうかとか……?ねぇ?アンナさん?」
「知りませんよ?私、したことないですから!」
「パパ?」
プイっとジョージアの方を見ないでおくと、大人の都合のいい言葉をジョージアが口に出した。
「お……大人になったら、わかるよ!ジョージもね?年頃になったらね?」
「年頃になっても、ジョージが公みたいにはなりませんように……」
わからないと小首を傾げているジョージをよそに、アンジェラのお鼻センサーが動いたようだ。
ジョージアは、魔法の言葉で切り抜けたと思っていたが、ジョージにじっと見つめられると言葉に困ったので、アンジェラのクンクンはありがたかったようだ。
「ママ、あれ、あれ!」
「ん?どうしたの?」
繋いでいたジョージアの手を離し、アンジェラが指さした先は今日の目的地であった。
「いい匂いがする!」
「いい匂い?」
「甘い匂い!」
ハニーアンバー店で製菓を作っているキティがお世話になっている喫茶店である。結構離れているのにアンジェラは大好きな甘い匂いをかぎ分けたようだ。
「おっ!本当だな!アンジーは何か食べたいものがあるかな?」
「クリームいーーーっぱいのケーキ!」
アンジェラに助けられたようで、ジョージアは少しだけホッとした顔をしジョージの質問をかわすようであった。
それもありだろう。空気を読まない我が道を進むアンジェラは、かなりの大物だといえよう。
今日は、大きなケーキをジョージアは、アンジェラのために頼むに違いなかった。
「生クリームいっぱいって……」
親子なんだね……と言葉にならない視線をジョージアから痛いほど感じたが、私とアンジェラはもう美味しい生クリームいっぱいのケーキのことで頭がいっぱいとなり、幸せな気持ちでいっぱいであった。
エマがネイトが乗った乳母車を押して、アンジェラとジョージがそれを背伸びしながら覗いている。
ジョージアが、それを微笑みながら子どもたちを見ていた。
「お待たせ!」
私もその輪の中に混ざると、ママ!と二人の子どもが寄ってくる。私は二人と手を繋ぎ、ジョージアとアンジェラが手を繋いでいる。
ジョージは、車道側でなく中側をホテホテと歩き始めた。
「ひーめさん!」
私を呼ぶウィルに振り返ると、こちらに向かって手を振っていた。
「どうしたの?」
「いや、出かけるって聞いたからさ、今日レオとミアも両親に連れられて街に出ているみたいだからさ!
どっかで、会うかも?ミアが怒っていたら謝っておいてくれる?」
「わかったわ!ウィルを一人占めしてごめんって言っておく!」
「いや……そこまでは……」
「ウィール!」
「よぉ!嬢ちゃん、今日は姫さんもジョージア様も一緒でいいな!」
ニパッと花が咲いたかのように笑うアンジェラは、相当ご機嫌のようだ!
握った手をさらにギュっと握っている。
「気を付けて!」
手を振るウィルを見ながら、両手を繋いでいたアンジェラはジタバタしていた。ウィルに手を振りたいのだろうと私がアンジェラの手を放してあげると、ブンブン手を振っている。
「アンジー行こうか?」
ジョージアに言われ、再度、私の手を取るアンジェラ。さっきよりもご機嫌に私のジョージアの手をブンブン振り回す。
「アンジェラ、そんなに振り回したら痛いわ!」
「……はい」
「いい子ね!」
私たちは並んで歩く。子どもの足では、少しだけ街まで遠いが、アンジェラもジョージも一生懸命足を動かして歩いている。
領地の屋敷で、レオたちと走り回っているおかげか、普通よりかは、二人共体力がありそうだが、きっと、帰りは抱きかかえて帰るはめになるだろう。
公都の中心地へ近づくと、露店などが並び、お客を呼び込むおじさんやお姉さんたちの声があちこちから聞こえてきて活気づいている。初めて公都の街並を見たアンジェラもジョージも目がキラキラと輝いていた。
アンバー領で過ごすことが多いことと、公都に帰ってきても屋敷から出たことがなかったから、活気ある街並みに心躍るのは仕方がない。
私も小さい頃、両親に連れられ初めて街へ出たときは、こんな感じだったのだろうか?
「アンナは、街で遊んでたりしたの?」
「もちろん!4歳くらいからですか?お兄様と遊びに出ていましたよ!あとは、ハリーと出会ってからは、
いつもハリーと遊びまわってましたよ!ローズディアとは違って、私すごい有名人なんですよね!
アンナって名前は、珍しくないでしょうが、この髪の毛が目印で、すごく有名人だったんですよ……」
私の顔をみると、トワイス国王都ではゲッっという顔をされる。でも、同時に王都のみんなにそこそこ可愛がられていた自負はあった。
「なんとなく、想像が出来るよ……アンナが先頭に立って後ろからヘンリー殿やサシャがついて歩いて
いる様子が」
「お兄様やハリーだけではないんですけどね……はぁ……あの頃は、本当に楽しかった!」
そんな様子に苦笑いのジョージアであるが、きっと、ジョージアが思っているより私の子ども時代はお転婆ぶりを発揮していた。
じゃじゃ馬アンナは、通り名だったし……私を見たら、公都の強そうな男の子でも道を譲ってくれ、さらに後ろをついてくるくらいだった。
「ママ、ハリーって誰?」
「私の幼馴染のヘンリーおじさんね!」
「おじさんって……アンナ、ヘンリー殿に怒られるぞ?」
「怒りませんよ!なんたって、おじさんって言うのは、私の娘ですもの!嬉しいに決まってます!アン
ジェラもハリーに会ったらおじさん!って言ってあげてね!」
意味がわからないと言うふうであったが、とにかくおじさんと呼べと言われたので、アンジェラはいい返事を返してくれた。
そんな様子を見て、ジョージアはため息をつく。
「どうかされました?」
「アンジェラもアンナみたいになるんじゃないかって……アンナを見てたらそう思うよ。レオもミアも、
もしかしたら、ジョージまで引き連れて、この街を練り歩いている……そんな想像をする日が来る
とは……思いもしなかった」
「意外とそのときは、近いかもしれませんね!」
外を出歩くようになるには小さいから、まだ、ダメだけどね!と少し拗ねたようにいうジョージア。
アンジェラが可愛くて仕方がないので、危ないかもしれない外へは出したくないらしい。
私は、その気持ちもわからなくもないが、たぶん……アンジェラは私に似たのだから、外への興味は尽きないと未来を想いこそっと笑う。
「ジョージア様は、子どものときは外に遊びに行かなかったのですか?」
「俺は、基本的に遊ぶのは公とだけだったから、公がお忍びのとき以外は、外に出なかったかな?」
「おぉー、なんというか……」
「言わなくてもわかってる。面白みがないって言うんだろ?」
「そこまでは、言いませんよ!公と出かけていたのなら、いいじゃないですか?」
「言いわけないだろ?」
「どうしてです?」
私はジョージアをじっと見つめると……言葉を濁すジョージア。
それを見逃すはずもない。
「ナンパしに行ったんだ?」
「俺は、してないから!」
「本当ですか?」
ジョージアに疑いの眼差しを向けると誤解を解こうと私を言いくるめようとし始める。
「ジョージア様も公もませた子どもだったんですね!」
ニッコリ笑いかけて、黙らせておいた。口がパクパクしておもしろい。
「ママ、ママ!」
「ん?どうしたの?ジョージ」
「ナンパって何ですか?」
真摯な目で言われると、私からは説明をしにくい。今、言葉を覚えている最中なので、出来る限り言葉を選んでいたつもりだったのだが、ジョージは新しい言葉が気になってしまったようだ。
「それは、パパに聞いてみるといいよ!パパ、たぶん、得意だから!」
「アンナさん……俺は……」
「パパ、何?」
「……えーっと、遊びに行きましょうかとか……?ねぇ?アンナさん?」
「知りませんよ?私、したことないですから!」
「パパ?」
プイっとジョージアの方を見ないでおくと、大人の都合のいい言葉をジョージアが口に出した。
「お……大人になったら、わかるよ!ジョージもね?年頃になったらね?」
「年頃になっても、ジョージが公みたいにはなりませんように……」
わからないと小首を傾げているジョージをよそに、アンジェラのお鼻センサーが動いたようだ。
ジョージアは、魔法の言葉で切り抜けたと思っていたが、ジョージにじっと見つめられると言葉に困ったので、アンジェラのクンクンはありがたかったようだ。
「ママ、あれ、あれ!」
「ん?どうしたの?」
繋いでいたジョージアの手を離し、アンジェラが指さした先は今日の目的地であった。
「いい匂いがする!」
「いい匂い?」
「甘い匂い!」
ハニーアンバー店で製菓を作っているキティがお世話になっている喫茶店である。結構離れているのにアンジェラは大好きな甘い匂いをかぎ分けたようだ。
「おっ!本当だな!アンジーは何か食べたいものがあるかな?」
「クリームいーーーっぱいのケーキ!」
アンジェラに助けられたようで、ジョージアは少しだけホッとした顔をしジョージの質問をかわすようであった。
それもありだろう。空気を読まない我が道を進むアンジェラは、かなりの大物だといえよう。
今日は、大きなケーキをジョージアは、アンジェラのために頼むに違いなかった。
「生クリームいっぱいって……」
親子なんだね……と言葉にならない視線をジョージアから痛いほど感じたが、私とアンジェラはもう美味しい生クリームいっぱいのケーキのことで頭がいっぱいとなり、幸せな気持ちでいっぱいであった。
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