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10人の魔法使い15

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「羊のことは、上手く対処できそうだな」
「そうね、なんとかなりそうね。明日にでも葡萄畑のことは、リリーが帰ってきてから話して、今晩に
 でもって、今、羊さんたちはどこにいるの?」
「えっと……実は、荷馬車にいるのです……」
「そんな……今すぐ近場の葡萄畑に連絡して、受入れてもらいましょう。ここから近いところって……
 そこかしら?」
「ユービスの町の端が1番近いですね。そちらに移動させますか?」
「そうね!そうしてくれる?あなたたちもついて行ってきてくれる?誰か、案内出来る人、いる
 かしら?」


 私は、見渡すと、適任なのではないかと思えたのは、ノクトだった。
 目が合っただけで、私が何をしたいのかわかったようで、椅子から立ち上がるノクト。


「じゃあ、ついてきてくれ。羊も狭いところにいるとストレスだろ?」
「確かに……ストレスが多いと、毛にも影響がありますし、何より羊の体にもよくないので、お願い
 できますか?」
「じゃあ、私も!」
「姉さんは、残ってくれ。アンナリーゼ様から、話があるだろうし、それを後で教えてほしい」


 わかったわと立ちかけたヤイコは椅子に座り直した。
 失礼しますとソメコはノクトと一緒に出ていく。
 その後ろ姿を見送り、しっかりした弟だな……と感心した。


「ヤイコ、ノクトに任せておけば、大丈夫よ!あぁ、見えて何でも屋みたいなものだし」
「アンナ様、一応ノクト様は公爵です……」
「元ね?今は、私のものだから、扱いは大事にするけど、甘やかさないわ!
 それに、さっきの顔見た?絶対、こっちに座るより、楽しそうって出て行ったと思うのよね!
 まったく……」
「それ、姫さんが言えることじゃないからな……全く」


 ウィルに呆れられ、私は頬をちょこっと膨らませる。
 そうこうしているうちに、準備は整ったのか、荷馬車は出ていく。
 しかし……ノクトが跨っている馬……レナンテじゃないだろうか?
 窓にへばりついて、見ていると後ろにウィルも来ていたようだ。


「あれ、レナンテじゃん!よっぽど相性がいいんだな。おっさんもレナンテ好きだし、レナンテも好き
 だよな。人の選り好みするレナンテがあんなに懐くなんて……」
「レナンテは私のなんだけど……すっかり、馴染んじゃっているわよね?」
「まぁ、馬にも選ぶ権利もあるからさ!」


 仕方ないわなと、ウィルは席に戻った。
 私も続いて席に戻り、話の続きをすることにした。


「アンナリーゼ様は、馬に乗られるのですか?」
「えぇ、小さい頃から乗るのだけど……今乗っている馬はね……とても、気難しいの。でもね、ノクトに
 は懐いているようで……なんだか、寂しいわね。毎日乗っているのに、振られた気分よ!」
「そうなのですね、女性で馬に乗られる方は珍しいので、驚きました」
「そうね!でも、うちの家系は、みんな乗るわよ!お父様は全然だし、お兄様は馬に振り落とされるん
 だけど……母方の方はみんな嗜みとして乗れちゃうのよね」


 はぁ……と感心するヤイコに笑いかけるとなかなかいないのですよ?と言う。
 ナタリーも乗れるよな?とウィルが聞いてくると、えっ?とヤイコは驚いている。


「まぁ、馬車だと移動時間がかかるから、基本的に移動は馬ね。だから、ここに集まる人は馬に乗れる
 わ!若干一人あやしいけど……」


 セバスを思い苦笑いすると、凄いのですねと返ってきた。
 話が一段落したころ、最後の馬車が到着したのだろう。


「お待ちかねのロイドね!」
「待っていたの?」
「えぇ、調香師らしいの。片手間にしているらしいんだけど……コーコナで作ってみたらどうかと
 思って」
「作ってって……何を?」
「香水。小瓶については、こっちで作れるけど……中に入れる香水は作れないのよね。コーコナ領は、
 花の領地でもあるから、どうかと思って」
「へぇーそんなこと考えてたんだ」


 感心したようにいうウィルに私そんなに頼りない?と疑問に思ってしまう。
 コンコンと丁寧に扉を叩く音にどうぞと声をかけると、中に入ってきた。
 スーツを来た人が入ってくる。


「初めまして、アンナリーゼ様」
「初めまして、ロイド!待っていたわ!」
「何故、私の名前を?」
「リアノに聞いたのよ!」
「あぁ、なるほど……リアノでしたか……はぁ……」
「苦手?」
「まぁ、腐れ縁ですね。小さいころからずっと一緒にいるので、あの格好も何とも思ってません
 しね……」
「そう、じゃあ、空いているところに座ってくれる?」


 そういうと、ヤイコの隣に座った。
 スーツを着てシュッとしている人の隣が恥ずかしいのかなんだか、ヤイコがもじもじとし始めた。
 まぁ、それは見なかったこととして……話を続ける。


「それで、リアノに僕のことを聞いたというのは、何か御用だったのでしょうか?」
「えぇ、そうなの!不躾で申し訳ないんだけど……」
「何なりと、申してください。私たちは、そのためにきているのですから!」
「そう?じゃあ……遠慮なく!」


 ニコリと笑いかけると、ロイドも微笑みかけてくる。
 その微笑みは、なんとも事務的な感じがしたが、それでうまく行く人間関係もあるのだと思い押し黙る。


「調香師の資格あるわよね!」


 その瞬間、ロイドの顔が微笑みのまま固まる。
 何か問題があるのだろうか?我が領地には、必要な資格なのだ。
 それは、余すところなく、発揮してほしいと思い、私は、本物の愛想笑いをロイドに向けてやるのである。
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