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女の人の嫉妬って怖いね?

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 公妃を追い出してから、私達もアンジェラたちの元へ戻ることにした。
 玄関まで来たときに、ウィルと立ち止まって、今日の賑わいを見る。
 公妃にバカにされたが、こんなふうにアンバー領で露店が並ぶようなお祭りができたことを私は心から良かったと思っている。
 去年の今頃は、やっと片付いて今からもどうしようかと、まだまだ領民も含め戸惑っていたのだ。
 今の風景を去年の私たちが想像できたかというと否であろう。
 領民たちの努力の元、こんなふうに笑いあえる催しができること、嬉しくてたまらなかった。


「それにしても、女の人の嫉妬って怖いよね?」
「公妃様のこと?」
「そう!終始睨まれていたわ……公になんて興味ないって言っているのにね?」
「ハハハ……確かに。でも、まぁ、散々社交界のど真ん中で公に妃に公世子妃にって姫さんが言われ
 続けてたらさ?公妃様も気が気じゃないんじゃない?」
「私にはジョージア様がいるのに、何が心配なのか……」
「まぁ……公は結構本気で姫さんを公妃に据えたかったんじゃないかなって思うよ」
「なんで?たかだか、侯爵令嬢を国の一番高いところに置く気が知れないわよ!ほら、公妃様って、
 公爵令嬢でしょ?生粋の」
「確かに、気位高いしね……公も公爵の手前、あんまりきつくも言えなかったりするし……その点、
 姫さんの方が御しにくと思うけど……アンバー領の今の状況を見れば、公妃の位に据えておきたい
 公の気持ちもわからなくはないよ。今ならね」


 私はウィルの話を聞きながら、公妃になった私を思い浮かべる。
 きっと、今となんらかわらないだろう。
 頭を軽く振る。私は私の隣には、ジョージアがいてほしいと願っている。
 人の感情は損得勘定だけで割り切れるものではないと私の心は知っているようだ。
 今、ジョージアも子どもたちも友人たちもデリアを始め侍従も居てくれる。
 こんな幸せの中にいる私は、何も他に望まない。
 望むとすれば、アンバー領の発展のみだ。


「結局、公妃様は目的を果たせず、姫さんに追い返されたわけだけど……社交の時期になったら、
 公都に戻るの?」
「そうね。謝罪をうけに行きましょう!まぁ、まともに謝罪ができるとは、思っていないけど……
 気位の高すぎる公妃様が、私に頭を……それも、社交場で下げられると思う?」
「まぁ、無理だろうな……姫さんに頭を下げるなんて、見てるこっちがヒヤヒヤしそう」
「そうだよね?まぁ、そこは、公が上手く促すのだろうけどね……今回も、公に言われて来たっ
 ぽいし……」


 ウィルと二人でさっきの出来事を振り返る。
 事の始まりは、全て公にある。
 どう考えても、私が公に靡くことはないと言っても、公妃は私を疑うだろう。
 粛清の後の夫婦喧嘩を見ても、公妃が明らかに私を目の敵にしているのはわかっているのだが、私も軽く無視をすればいいっていうものではなく……引っ搔き回されて迷惑をしているのだ。

 そこまで、公からの寵愛をもらいたいものだろうか?
 公をジョージアと置き換えるのなら……私だけを見てほしいと私も柄にもなく思ってしまうので、わからなくもない。
 しかしながら、公妃は、影響力が大きすぎるのだ。それを自覚した上で、嫉妬でもなんでもしてくれればいいのだが、そういう影響力度外視で、なりふり構わず公に近づく女性たちを沈めてきたのだ。立場を弁えてくれと言いたい。

 私は公爵という立場があり、領主として領地を健全に治めないといけないのだ。
 公妃の嫉妬で、領地や領民の生活を崩されてたまるもんかと思えばこそ、黙ってはいないのだが……いずれ、こんなことを続けていれば、この国は、二分するだろう。
 それが、未来に起こる反乱の火種になるなら、本当にやめてもらいたいのだが……もう少し賢い人を公妃に据えるべきだと、切に思う。
 思ったところで、今の公妃に引けをとらない妃候補などいないのだから、諦めるしかないのだ。

 今回のことは、公に手紙を書いて今後の話し合いを求めるようにしないといけない。
 私は、この国や隣国であるトワイス、エルドアが程よいバランスで、お互いもちつもたっれつであればいいと思っている。
『予知夢』で見たような内乱や戦争が起こらない未来があるならと、常に模索しているのだから……
 ローズディア公国で内乱をおこすのは、公妃の子どもである第一公子。


「なんとかならないものかしらね?」
「何が?」
「何年後かに起こるかもしれない内乱を今のうちにとめることってできたりするのかなって思ってさ」
「うーん、第一公子だっけ?その旗印になるのって」
「そう。でもね……何もしないうちから、手をかけるのは違うのよね……」
「確かにな。公は知ってる?」
「知らない。言ってない。私が予想するに……公爵が絡んでいると思うのよね。インゼロも絡んでいる
 からね」
「まぁ、気を付けるくらいしか、できないのか……」
「うん……でも、どう気を付けるかはサッパリね。情報収集くらいしかできないし」


 玄関先で並んで話していると、ジョージアがカレン夫妻を伴って帰ってきた。


「どうしたの?こんなところで」
「えっと……公妃様がきていらしたので、さっきまでお話をしてたの」
「あぁ、またどうせ何か良からぬ方向に話が進んだんでしょ?」
「さすが、ジョージア様ね!」
「今度は、何をされたのです?」
「カレンも好きね……」
「まぁ、他人の色恋程、私の心を満たすものはございませんから……」


 クスっと笑うカレンは今日もこちらがクラっとする程色っぽい。


「それに、公がアンナ様にご執心なのは、周知の事実でございましょう?」
「カレン、滅多なことを言うものではないよ?ジョージア様、うちの者が失礼を」
「いや、いいんだ。アンナはあっちにもこっちにも想われ人がいるから……」
「それは……なんと……」
「旦那様、アンナ様の魅力は、なんと言ってもその人柄でしょう。私も旦那様がいらっしゃらなかった
 ら、アンナ様と共にここに住んでいたかもしれませんわ!」
「アンナは、老若男女問わず誑し込んでくるから、始末が悪い……」
「あの……盛り上がっているところ恐縮なんですけど……私、そんな悪女ではありませんよ?どこに
 でもいるただの……」
「それは、ないわ!姫さん。姫さんみたいなのがどこにでもいたら、困る!」
「ウィル!」


 私とウィルのやり取りを見て、みなが笑う。


「で、公妃様は何をしに来たの?」
「謝罪です。ハニーアンバー店を潰すっていう噂を流れていたでしょ?」
「あぁ、あれね?あれって確かアンナが何かしてたよね?」
「えぇ、シルキー様にお願いして、トワイスで大々的に宣伝していただきました。王太子妃御用達の
 お店を潰すだなんて、と公にも圧力をかけてもらって……一応、公室御用達看板も掲げていることも
 チクチクつついたりもしましたよ!」
「アンナ様、次に何かありましたら、私もお呼びください!お友達ですもの!ご協力いたしますわ!」
「ありがとう、カレン!」


 カレンは妖艶に微笑み、私はニッコリ笑いかける。
 そんな二人を見て、男性陣はため息を吐く。


「この二人に、ナタリーを加えると……国取りもできそうで怖いわ……」
「ウィル、滅多なことは言っちゃダメよ!」
「はいはい。心配しなくても、姫さんの遊び場は、すでに三国に渡っているんだったな」
「失礼ね!アンバー領だけよ!」


 私に遊び場について、その場にいる四人は、お互いの顔を合わせ笑いあうのであった。
 みながため息交じりなのは聞こえないことにした。
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