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想い出話
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隣国トワイスからエマが帰ってきた。お土産と私の両親を連れて……いきなりの訪問で、私は驚いた。
「お父様とお母様?どうされたのです?」
相変わらず、女王様と執事のような見た目ではあるが、仲がいいことこの上ない。腕をくんで甘える母は、いつまでたっても恋する乙女のようだ。それは、父の前だけではあるのだが……
「えぇ、二人目が生まれたとジョージア様から連絡をいただいたので、見に来たのよ!
アンジェラも大きくなったでしょ?」
兄に頼まれシルキーを助けるため、アンジェラを連れてトワイスへ向かったことを思い出した。
そのときの両親の喜びようは今でも覚えている。
三人目の孫は、初めての女の子で可愛くて仕方がなかったようだった。
二人とも私がトワイス城でいろいろしている間にずいぶんアンジェラを甘やかしていたのだ。
「アンジェラに会いたいのだが、いないのか?」
「いますよ?呼びましょうか?」
「あぁ、頼む!」
リアンを呼び、アンジェラを客間まで連れてきてもらった。
久しぶりに見るアンジェラは、ホテホテと歩いていて、さぞかし両親の目には成長していたのだろう。
父なんて、目に涙を浮かべていた。
「あぁ、アンジェラ。可愛い私の孫」
久しぶりに見る私の両親に戸惑っているのか、普段は物怖じしないアンジェラも泣き始めてしまった。
「アンジーこっちにいらっしゃい」
両親の間に座っていたアンジェラに手を差し出すとアンジェラから抱きついて来る。
よほど、戸惑ったのだろうことがわかり、よしよしと揺すってやると泣き止んだ。
「やっぱり、母親なのかしらね……おじいちゃんおばあちゃんでは、ダメなのね?」
「慣れたら、大丈夫だよ、きっと。物怖じはしない方なんだけど、今日はちょっとビックリしちゃった
みたいだね」
きょとんとして膝の上に座っているアンジェラへ両親の愛情が籠った視線を感じる。
「それにしても、アンナには本当に似ていないのね……?」
「ジョージア様にそっくりだな」
「そうでしょ?美人なんだよ!とっても。ねぇ?」
自分のことを言われているのをわかっているのかアンジェラは笑っている。
「アンジェラ、おじいちゃんとおばあちゃんはもう慣れた?もう一回あっちに座る?」
「はい!」
手をあげて意思表示をするので、また、両親の間に座らせる。
しばらく見つめていたおかげか、ちょこんと座って両方を眺めて笑顔になった。
アンジェラも自分への愛情を感じたのだろう。
「私たちのこと、思い出したのかな?アンジェラおいで」
父の膝の上に座るアンジェラを見ると、私が小さい頃に執務室で仕事をしていた父の膝によじ登っていたことを思い出した。
「なんだか、羨ましい」
「どうしたの?」
「よくお父様の膝によじ登っていたことを思い出したの。お母様には叱られた記憶のほうが多いけど、
お父様にはいろいろと構ってくれた想い出が多いなって」
「失礼ね!私もアンナにはたくさん愛情を注いだわよ!」
「お母様の愛情は、手厳しいものばかりでしたから……お兄様には優しかったのに」
「アンナが私のようになりたいと言ったから、そうしたまでよ。サシャは、基本的に旦那様に似て運動
音痴だったし……どちらかと言えば、家の中で本を読んでいることのほうが多かったから、ついつい
アンナを鍛えてしまったのよ。嫌だった?」
「うーん、嫌ではなかったかな?今、とっても役に立ってる。お父様とお母様に教えてもらったことは、
私を作るには十分すぎるものだったわ!」
「有り余ったものが、領地改革に注がれているなら、それはそれでいいだろう」
「そうね!」
一頻り想い出話をしていると、父がアンジェラを母に渡す。母もアンジェラを愛おしそうに抱いてくれているのが嬉しい。
「それにしても……嫁いでいって数年で、いろいろと事を構えたものだね」
「私のことは筒抜け?」
「あぁ、もちろん大事な娘の話は、いつでも手元に来るようにしてあるさ。
本当なら、公爵位なんてとってほしくなかったくらいだったのに……アンナはいつだって無茶をする。
ダドリー男爵のときは、側に寄り添ってあげたかったけどしてやれなかった。
申し訳ないと思っているよ」
「いいえ、お父様。あのときは、正直落ち込んだりもしましたけど、私に寄り添ってくれる友人も侍従も
いてくれたので、大丈夫。その気遣いだけで嬉しいです」
そうかと父は呟き微笑んだ。
両親に心配を掛けていることは、なんとなくわかっていたのだが、こうして顔を合わせると申し訳なさが湧いてくる。
いつまでも甘えていたい、そんな気持ちもないことはないけど、両親とアンジェラを見れば、そうも言ってられないなと微笑んだ。
コンコンとノックの音がしたと思うと、ジョージアがネイトを抱え部屋に入ってきた。
後ろにはリアンが付き添っている。
「お邪魔します、お義父様、お義母様、ご無沙汰してます」
「いやいや、こちらこそ、急に尋ねてきてすまなかったね?二人目が生まれたと聞いたものだから、
顔を見に行きたいと来てしまったんだ」
「そんな、遠いところですけど、いつでもいらしてください!なかなかアンナがそちらに行くことが
できていないのです。お時間さえあれば、是非に。
アンバー領は公都と違い、のどかなところですけど、アンナの改革のおかげでにぎやかですから!」
ジョージアが私の隣に座る。
生まれて2ヶ月のネイトは、ジョージアに抱かれすやすやと眠っていた。
「名前はなんていうのかしら?」
「ネイトです。アンナが子どもが生まれる夢を見たと言って、そのときに寝言でネイトと言っていた
ので……」
「……アンナ」
「見たの、この子を。髪は私と同じストロベリーピンク、瞳はアメジストのような紫色」
「アンナと容姿が似ているということかな?」
「えぇ、私のような容姿ではありますね?ただ、ひとつだけ……」
「何だい?」
「紫色の瞳の縁が、蜂蜜色をしているの」
「それは、本当かい?驚くな?」
「えぇ、でも、可愛い息子には変わりはないし、ちゃんと守ってあげないととは思ってる。
アンジェラも含め、もう一人の息子もね!」
「もう一人の息子?」
「僕の我儘で、もう一人子どもがいます」
「それは……第二夫人の子かい?」
「はい……お義父、お義母には、申し訳ない思いでいっぱいですが……」
「あぁ、構わない。アンナがこの子たちと一緒に育てたいというのなら、私たちは何も言うことはない
んだ。今見てても、すっかりお母さんの顔をするようになったな、アンナ」
「そうかしら?」
私はジョージアを見て、どう?と問うと、義父の言う通りと微笑んでくれた。
私たちの様子を見て、母は微笑んでいる。
10歳の私が話した未来が変わり、私が幸せに過ごせている今を安心しているようだった。
「あなたたち見ていると、仲がいいのね。旦那様、娘も旦那様と仲良くしていると、なんだか妬け
ますわ!」
「まぁまぁ、いいじゃないか。アンナもアンジェラも幸せなら何も言うことなんてないだろ?」
「そうですけど……」
「お父様とお母様の方が、ずっと仲がいいと思いますよ?」
「僕たちもお二人のように仲良く過ごせていければ……」
「では、ジョージア様に夫婦円満のコツを教えて差し上げましょうか?」
「はい、是非!」
母は、にんまり笑って父の腕に自分の腕を絡ませる。
「アンナの言うことをよく聞いて、好きなことを好きなようにさせてあげるといいですわ!
親がいうのもなんですけど……この子、本当に好きなこと以外興味もないですし、遊びのことしか
考えてない残念な子なのですもの。本当に私たちの子どもなのか、疑ったことすらあるの。
でも、アンナのいいところは、一人遊びをしていても、必ず回りに人を呼び込むこと。
領地改革をする!って手紙がきたときは、また、変な遊びを……と思ったけど、立派に領主も出来て
いるようですし、ね?旦那様」
「あぁ、私たちが遊びと称して詰め込んだ知識が、こんなふうに活用される日が来るとは思ってもみな
かったよ」
両親はお互いを見て微笑み、私は褒められていないことで頬を膨らませ、ジョージアはアンナが好きなように動ける環境を作ると約束してくれた。
ちょうど、話が終わる頃、ネイトも起きたようで、両親に抱かれる。
アンジェラは、私の隣でちょこんと座りその様子を大人しく見ているのだった。
「お父様とお母様?どうされたのです?」
相変わらず、女王様と執事のような見た目ではあるが、仲がいいことこの上ない。腕をくんで甘える母は、いつまでたっても恋する乙女のようだ。それは、父の前だけではあるのだが……
「えぇ、二人目が生まれたとジョージア様から連絡をいただいたので、見に来たのよ!
アンジェラも大きくなったでしょ?」
兄に頼まれシルキーを助けるため、アンジェラを連れてトワイスへ向かったことを思い出した。
そのときの両親の喜びようは今でも覚えている。
三人目の孫は、初めての女の子で可愛くて仕方がなかったようだった。
二人とも私がトワイス城でいろいろしている間にずいぶんアンジェラを甘やかしていたのだ。
「アンジェラに会いたいのだが、いないのか?」
「いますよ?呼びましょうか?」
「あぁ、頼む!」
リアンを呼び、アンジェラを客間まで連れてきてもらった。
久しぶりに見るアンジェラは、ホテホテと歩いていて、さぞかし両親の目には成長していたのだろう。
父なんて、目に涙を浮かべていた。
「あぁ、アンジェラ。可愛い私の孫」
久しぶりに見る私の両親に戸惑っているのか、普段は物怖じしないアンジェラも泣き始めてしまった。
「アンジーこっちにいらっしゃい」
両親の間に座っていたアンジェラに手を差し出すとアンジェラから抱きついて来る。
よほど、戸惑ったのだろうことがわかり、よしよしと揺すってやると泣き止んだ。
「やっぱり、母親なのかしらね……おじいちゃんおばあちゃんでは、ダメなのね?」
「慣れたら、大丈夫だよ、きっと。物怖じはしない方なんだけど、今日はちょっとビックリしちゃった
みたいだね」
きょとんとして膝の上に座っているアンジェラへ両親の愛情が籠った視線を感じる。
「それにしても、アンナには本当に似ていないのね……?」
「ジョージア様にそっくりだな」
「そうでしょ?美人なんだよ!とっても。ねぇ?」
自分のことを言われているのをわかっているのかアンジェラは笑っている。
「アンジェラ、おじいちゃんとおばあちゃんはもう慣れた?もう一回あっちに座る?」
「はい!」
手をあげて意思表示をするので、また、両親の間に座らせる。
しばらく見つめていたおかげか、ちょこんと座って両方を眺めて笑顔になった。
アンジェラも自分への愛情を感じたのだろう。
「私たちのこと、思い出したのかな?アンジェラおいで」
父の膝の上に座るアンジェラを見ると、私が小さい頃に執務室で仕事をしていた父の膝によじ登っていたことを思い出した。
「なんだか、羨ましい」
「どうしたの?」
「よくお父様の膝によじ登っていたことを思い出したの。お母様には叱られた記憶のほうが多いけど、
お父様にはいろいろと構ってくれた想い出が多いなって」
「失礼ね!私もアンナにはたくさん愛情を注いだわよ!」
「お母様の愛情は、手厳しいものばかりでしたから……お兄様には優しかったのに」
「アンナが私のようになりたいと言ったから、そうしたまでよ。サシャは、基本的に旦那様に似て運動
音痴だったし……どちらかと言えば、家の中で本を読んでいることのほうが多かったから、ついつい
アンナを鍛えてしまったのよ。嫌だった?」
「うーん、嫌ではなかったかな?今、とっても役に立ってる。お父様とお母様に教えてもらったことは、
私を作るには十分すぎるものだったわ!」
「有り余ったものが、領地改革に注がれているなら、それはそれでいいだろう」
「そうね!」
一頻り想い出話をしていると、父がアンジェラを母に渡す。母もアンジェラを愛おしそうに抱いてくれているのが嬉しい。
「それにしても……嫁いでいって数年で、いろいろと事を構えたものだね」
「私のことは筒抜け?」
「あぁ、もちろん大事な娘の話は、いつでも手元に来るようにしてあるさ。
本当なら、公爵位なんてとってほしくなかったくらいだったのに……アンナはいつだって無茶をする。
ダドリー男爵のときは、側に寄り添ってあげたかったけどしてやれなかった。
申し訳ないと思っているよ」
「いいえ、お父様。あのときは、正直落ち込んだりもしましたけど、私に寄り添ってくれる友人も侍従も
いてくれたので、大丈夫。その気遣いだけで嬉しいです」
そうかと父は呟き微笑んだ。
両親に心配を掛けていることは、なんとなくわかっていたのだが、こうして顔を合わせると申し訳なさが湧いてくる。
いつまでも甘えていたい、そんな気持ちもないことはないけど、両親とアンジェラを見れば、そうも言ってられないなと微笑んだ。
コンコンとノックの音がしたと思うと、ジョージアがネイトを抱え部屋に入ってきた。
後ろにはリアンが付き添っている。
「お邪魔します、お義父様、お義母様、ご無沙汰してます」
「いやいや、こちらこそ、急に尋ねてきてすまなかったね?二人目が生まれたと聞いたものだから、
顔を見に行きたいと来てしまったんだ」
「そんな、遠いところですけど、いつでもいらしてください!なかなかアンナがそちらに行くことが
できていないのです。お時間さえあれば、是非に。
アンバー領は公都と違い、のどかなところですけど、アンナの改革のおかげでにぎやかですから!」
ジョージアが私の隣に座る。
生まれて2ヶ月のネイトは、ジョージアに抱かれすやすやと眠っていた。
「名前はなんていうのかしら?」
「ネイトです。アンナが子どもが生まれる夢を見たと言って、そのときに寝言でネイトと言っていた
ので……」
「……アンナ」
「見たの、この子を。髪は私と同じストロベリーピンク、瞳はアメジストのような紫色」
「アンナと容姿が似ているということかな?」
「えぇ、私のような容姿ではありますね?ただ、ひとつだけ……」
「何だい?」
「紫色の瞳の縁が、蜂蜜色をしているの」
「それは、本当かい?驚くな?」
「えぇ、でも、可愛い息子には変わりはないし、ちゃんと守ってあげないととは思ってる。
アンジェラも含め、もう一人の息子もね!」
「もう一人の息子?」
「僕の我儘で、もう一人子どもがいます」
「それは……第二夫人の子かい?」
「はい……お義父、お義母には、申し訳ない思いでいっぱいですが……」
「あぁ、構わない。アンナがこの子たちと一緒に育てたいというのなら、私たちは何も言うことはない
んだ。今見てても、すっかりお母さんの顔をするようになったな、アンナ」
「そうかしら?」
私はジョージアを見て、どう?と問うと、義父の言う通りと微笑んでくれた。
私たちの様子を見て、母は微笑んでいる。
10歳の私が話した未来が変わり、私が幸せに過ごせている今を安心しているようだった。
「あなたたち見ていると、仲がいいのね。旦那様、娘も旦那様と仲良くしていると、なんだか妬け
ますわ!」
「まぁまぁ、いいじゃないか。アンナもアンジェラも幸せなら何も言うことなんてないだろ?」
「そうですけど……」
「お父様とお母様の方が、ずっと仲がいいと思いますよ?」
「僕たちもお二人のように仲良く過ごせていければ……」
「では、ジョージア様に夫婦円満のコツを教えて差し上げましょうか?」
「はい、是非!」
母は、にんまり笑って父の腕に自分の腕を絡ませる。
「アンナの言うことをよく聞いて、好きなことを好きなようにさせてあげるといいですわ!
親がいうのもなんですけど……この子、本当に好きなこと以外興味もないですし、遊びのことしか
考えてない残念な子なのですもの。本当に私たちの子どもなのか、疑ったことすらあるの。
でも、アンナのいいところは、一人遊びをしていても、必ず回りに人を呼び込むこと。
領地改革をする!って手紙がきたときは、また、変な遊びを……と思ったけど、立派に領主も出来て
いるようですし、ね?旦那様」
「あぁ、私たちが遊びと称して詰め込んだ知識が、こんなふうに活用される日が来るとは思ってもみな
かったよ」
両親はお互いを見て微笑み、私は褒められていないことで頬を膨らませ、ジョージアはアンナが好きなように動ける環境を作ると約束してくれた。
ちょうど、話が終わる頃、ネイトも起きたようで、両親に抱かれる。
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