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子どもたちとの時間
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出産後、例の如く、何もするな、何させるなとデリアからお触れが、友人たちを始め侍従たちにまでまわった。
先手必勝とばかりに、私が寝こけている少しの間に、先回りされてしまったらしい。
こうでもしないと、私が休まないと踏んでのことだ。デリアには、感謝こそすれ、文句ひとついうことはない。
出来た……出来すぎた侍女のデリアには、もっと感謝するべきだろう。
お触れのおかげで、私の時間はたっぷりある。
今現在、何をしているかというと、ネイトが寝ているベビーベッドを近くに置き、アンジェラとジョージ、さらにレオとミアを囲み、絵本を読んでいるところだ。
ここだけを見れば、子だくさん一家の平穏なひとときだろう。
実態は、なかなか複雑な集まりであった。
アンジェラとネイトは、私が産んだ子どもたちだ。
ジョージも私たちの子どもとなっているが、第二夫人だったソフィアと黒の貴族であるエールの子どもである。
レオとミアに至っては、ダドリー男爵とリアンの子ども。
ジョージとレオ、ミアに関しては、親にあたるソフィアとダドリー男爵に服毒を促したのは、他ならぬ私だった。
何の因果なのか、こうしてひとつの絵本を囲う間柄の複雑さに戸惑いを感じないかといえば嘘になる。
レオとミアに関しては、幼いながらに自分たちの生きる道を二人に選ばせた。
この二人、ウィルを養父とし側で成長をしているのだ。今後は、アンジェラやネイトを支えてくれる、そんな存在になるだろう。
ジョージはどうなのだろうか?
たくさん見る『予知夢』の中に、私が意図的に目を逸らしているからか、記憶に残らずにいるからなのか、ソフィアが死んで以降、『予知夢』に一切出てくることはなかった。
エールを見てもソフィアを考えても、祖父であるダドリー男爵も美形の家系である。
黒目黒髪は、ローズディアではそれほど多くないので、『予知夢』であったとしても、成長したジョージが何かしら目につくはずだ。
それなのにだ。不思議なこともあるものだなと常々思っていた。
子どもたちの中で、我が子より私を慕ってくれていくのは、ジョージであろう。
ずっと、そばにいるのだ。私を見かけないと泣いて暴れるらしい。
そんなときは、私を探しに行く探検と名打って、部屋から連れ出すらしいが……ネイトという赤ちゃんが生まれたことで、明らかにジョージの赤ちゃん返りが始まっているとみなが口を揃えていうようになった。
逆にアンジェラは、今までお姉さん風を吹かせていたミアを倣ってか、ネイトを構いに行くようになった。
ただ、アンジェラの雑すぎる扱いに、ネイトが散々泣かされている。
その度に我らがジョージア様がネイトをあやしていた。
なかなか、さまになってきたのだ。子育ての何かを掴んだのだろうか?私にも教えてほしい。
ミアは相変わらず、父様第一にアンジェラと姉妹のように接し、レオは、アンジェラとミアが危ないことをしないか、目を光らせている。
まだまだ、子どもだと言っても、用心深く子供たちを見守るリアンの子どもだなと感心させられる。
まぁ、ウィルが、レオとミアをアンジェラを守るようにと育てている最中でもあるようなのだが、しっかり思惑どおりに育っているようでなによりだ。
そんな複雑家族で囲む絵本の読み聞かせもひと段落した。
コクリコクリとアンジェラは船をこき始め眠そうで、このままお昼寝になるだろう。
「おしまい……」
薄い絵本でも、1冊読み聞かせるためにじっくりと読むとなかなか時間がかかる。
寝入っていくアンジェラをよそに、ジョージは目を輝かせてもう一冊と、手に持っていた。
恐るべし……
どう考えても、ソフィアやエールから想像できないほど、ジョージは本が好きだったし、少々引っ込み事案である。
まるで、ジョージアのように行動するので、長く一緒にいる人に似るのではないかと考えた。
「ママ、はいっ!」
一冊読み切ったあとだったので、リアンが気を聞かせて私がと言ったが、頑なにジョージは、私がいいと駄々をこねた。
おとなしいジョージにしては、珍しくそれほど手間にはならなかったので、渡してきた絵本を取る。
「じゃあ、読んであげる!でも、この絵本で最後ね?いい?」
ジョージに言い聞かせるように確認をすると、コクンと頷くので、頭を撫でると目を細めていた。
この1冊を読めば、ジョージもお昼寝の時間となるので、眠くなるだろうと踏んでいたのだ。
絵本を開き、皆に見えるように読み始める。
表紙をめくると、目を輝かせて覗き込んでいるジョージ。
あまりにも可愛らしく見つめているので、膝の上に登るよう促してやる。
アンジェラは、レオがベッドに連れて行ってくれ、お昼寝を始めすやすやと眠ってしまっていた。
レオは、アンジェラの近くで、話を聞くようで少し離れたところから、ミアはさっきまでアンジェラがいたところで覗き込んで見ている。
ご機嫌のジョージは絵本を読み進めると、嬉しそうに体を揺らしたり、指をさしたりして、おしゃべりをしていた。
よその子であっても、これほど懐かれると可愛くて仕方がない。
「ジョージ様は、この絵本が好きですね?」
ミアが突然話始めて、驚いた。
今まで、私は、こんなにのんびりと、子どもたちとの時間を作ることはしてこなかった。
だからこそ、知らなかったのだ。この絵本がジョージのお気に入りであることを。
ミアに指摘され、初めて知ることに、恥ずかしさを感じた。
うまく母親をやっていたつもりだったけど、そうではなかったのだと肩を落とす。
「アンナリーゼ様は、子育てだけでなく領地も育てているのです。ジョージ様が好きな絵本を知らな
かったとしても、仕方ありません。
少しづつでも、目を向けていることは、子どもたちが知っていますから、大丈夫ですよ!」
肩を落として落ち込んだことを、リアンに見透かされ、私は苦笑いをする。
ジョージは、眠くなったのか、私にもたれかかれ眠り始めたところだった。
「ジョージ様もベッドへ運びましょう」
「そうね、お願いできるかしら?」
私は眠ってしまったジョージをそっとリアンに預ける。
そして、隣に座っていたミアへと視線を向け、ニコリと微笑むと微笑み返してくる。
「では、レオとミアのマナーレッスンをしましょうか!」
レオは少し渋そうな顔をし、ミアも逃げたそうにしている。
二人の母であるリアンが逃げ出すことを良しとしないのはわかっているので、私は何も言わず、立ち上がり、部屋を移動するよう二人を促した。
基本的に、マナーレッスンは客間で行うこととしている。
いつ、誰が見ても美しいようにしないといけないので、見られるかもしれない客間はうってつけだった。
「デリア、ちょうどいいところに!」
「どうかされましたか?」
「今から、レオとミアのマナーレッスンをするから、用意してほしいのと、ネイトをジョージア様に
お願いしたいのだけど……そろそろ、ネイトが起きると思うのよね。
今、アンジェラとジョージがお昼寝を始めたばかりだから……」
かしこまりましたと、デリアはジョージアを呼びに行き、すぐに戻ってきてくれた。
ネイトをジョージアに預け、私たち三人は私室を出て、マナーレッスンのため客間へと向かうのであった。
先手必勝とばかりに、私が寝こけている少しの間に、先回りされてしまったらしい。
こうでもしないと、私が休まないと踏んでのことだ。デリアには、感謝こそすれ、文句ひとついうことはない。
出来た……出来すぎた侍女のデリアには、もっと感謝するべきだろう。
お触れのおかげで、私の時間はたっぷりある。
今現在、何をしているかというと、ネイトが寝ているベビーベッドを近くに置き、アンジェラとジョージ、さらにレオとミアを囲み、絵本を読んでいるところだ。
ここだけを見れば、子だくさん一家の平穏なひとときだろう。
実態は、なかなか複雑な集まりであった。
アンジェラとネイトは、私が産んだ子どもたちだ。
ジョージも私たちの子どもとなっているが、第二夫人だったソフィアと黒の貴族であるエールの子どもである。
レオとミアに至っては、ダドリー男爵とリアンの子ども。
ジョージとレオ、ミアに関しては、親にあたるソフィアとダドリー男爵に服毒を促したのは、他ならぬ私だった。
何の因果なのか、こうしてひとつの絵本を囲う間柄の複雑さに戸惑いを感じないかといえば嘘になる。
レオとミアに関しては、幼いながらに自分たちの生きる道を二人に選ばせた。
この二人、ウィルを養父とし側で成長をしているのだ。今後は、アンジェラやネイトを支えてくれる、そんな存在になるだろう。
ジョージはどうなのだろうか?
たくさん見る『予知夢』の中に、私が意図的に目を逸らしているからか、記憶に残らずにいるからなのか、ソフィアが死んで以降、『予知夢』に一切出てくることはなかった。
エールを見てもソフィアを考えても、祖父であるダドリー男爵も美形の家系である。
黒目黒髪は、ローズディアではそれほど多くないので、『予知夢』であったとしても、成長したジョージが何かしら目につくはずだ。
それなのにだ。不思議なこともあるものだなと常々思っていた。
子どもたちの中で、我が子より私を慕ってくれていくのは、ジョージであろう。
ずっと、そばにいるのだ。私を見かけないと泣いて暴れるらしい。
そんなときは、私を探しに行く探検と名打って、部屋から連れ出すらしいが……ネイトという赤ちゃんが生まれたことで、明らかにジョージの赤ちゃん返りが始まっているとみなが口を揃えていうようになった。
逆にアンジェラは、今までお姉さん風を吹かせていたミアを倣ってか、ネイトを構いに行くようになった。
ただ、アンジェラの雑すぎる扱いに、ネイトが散々泣かされている。
その度に我らがジョージア様がネイトをあやしていた。
なかなか、さまになってきたのだ。子育ての何かを掴んだのだろうか?私にも教えてほしい。
ミアは相変わらず、父様第一にアンジェラと姉妹のように接し、レオは、アンジェラとミアが危ないことをしないか、目を光らせている。
まだまだ、子どもだと言っても、用心深く子供たちを見守るリアンの子どもだなと感心させられる。
まぁ、ウィルが、レオとミアをアンジェラを守るようにと育てている最中でもあるようなのだが、しっかり思惑どおりに育っているようでなによりだ。
そんな複雑家族で囲む絵本の読み聞かせもひと段落した。
コクリコクリとアンジェラは船をこき始め眠そうで、このままお昼寝になるだろう。
「おしまい……」
薄い絵本でも、1冊読み聞かせるためにじっくりと読むとなかなか時間がかかる。
寝入っていくアンジェラをよそに、ジョージは目を輝かせてもう一冊と、手に持っていた。
恐るべし……
どう考えても、ソフィアやエールから想像できないほど、ジョージは本が好きだったし、少々引っ込み事案である。
まるで、ジョージアのように行動するので、長く一緒にいる人に似るのではないかと考えた。
「ママ、はいっ!」
一冊読み切ったあとだったので、リアンが気を聞かせて私がと言ったが、頑なにジョージは、私がいいと駄々をこねた。
おとなしいジョージにしては、珍しくそれほど手間にはならなかったので、渡してきた絵本を取る。
「じゃあ、読んであげる!でも、この絵本で最後ね?いい?」
ジョージに言い聞かせるように確認をすると、コクンと頷くので、頭を撫でると目を細めていた。
この1冊を読めば、ジョージもお昼寝の時間となるので、眠くなるだろうと踏んでいたのだ。
絵本を開き、皆に見えるように読み始める。
表紙をめくると、目を輝かせて覗き込んでいるジョージ。
あまりにも可愛らしく見つめているので、膝の上に登るよう促してやる。
アンジェラは、レオがベッドに連れて行ってくれ、お昼寝を始めすやすやと眠ってしまっていた。
レオは、アンジェラの近くで、話を聞くようで少し離れたところから、ミアはさっきまでアンジェラがいたところで覗き込んで見ている。
ご機嫌のジョージは絵本を読み進めると、嬉しそうに体を揺らしたり、指をさしたりして、おしゃべりをしていた。
よその子であっても、これほど懐かれると可愛くて仕方がない。
「ジョージ様は、この絵本が好きですね?」
ミアが突然話始めて、驚いた。
今まで、私は、こんなにのんびりと、子どもたちとの時間を作ることはしてこなかった。
だからこそ、知らなかったのだ。この絵本がジョージのお気に入りであることを。
ミアに指摘され、初めて知ることに、恥ずかしさを感じた。
うまく母親をやっていたつもりだったけど、そうではなかったのだと肩を落とす。
「アンナリーゼ様は、子育てだけでなく領地も育てているのです。ジョージ様が好きな絵本を知らな
かったとしても、仕方ありません。
少しづつでも、目を向けていることは、子どもたちが知っていますから、大丈夫ですよ!」
肩を落として落ち込んだことを、リアンに見透かされ、私は苦笑いをする。
ジョージは、眠くなったのか、私にもたれかかれ眠り始めたところだった。
「ジョージ様もベッドへ運びましょう」
「そうね、お願いできるかしら?」
私は眠ってしまったジョージをそっとリアンに預ける。
そして、隣に座っていたミアへと視線を向け、ニコリと微笑むと微笑み返してくる。
「では、レオとミアのマナーレッスンをしましょうか!」
レオは少し渋そうな顔をし、ミアも逃げたそうにしている。
二人の母であるリアンが逃げ出すことを良しとしないのはわかっているので、私は何も言わず、立ち上がり、部屋を移動するよう二人を促した。
基本的に、マナーレッスンは客間で行うこととしている。
いつ、誰が見ても美しいようにしないといけないので、見られるかもしれない客間はうってつけだった。
「デリア、ちょうどいいところに!」
「どうかされましたか?」
「今から、レオとミアのマナーレッスンをするから、用意してほしいのと、ネイトをジョージア様に
お願いしたいのだけど……そろそろ、ネイトが起きると思うのよね。
今、アンジェラとジョージがお昼寝を始めたばかりだから……」
かしこまりましたと、デリアはジョージアを呼びに行き、すぐに戻ってきてくれた。
ネイトをジョージアに預け、私たち三人は私室を出て、マナーレッスンのため客間へと向かうのであった。
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