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お手の早い子爵にはご用心Ⅱ
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「『赤い涙』というのは、葡萄酒ですか?最近、女性たちの中でひっきりなしに聞く話だったので、
気になっていたのですが」
「あら、バニッシュ子爵とも在ろうお方が、知らないの?」
「えぇ、是非、今後の参考に」
私は悪い笑みを零すと、デリアにグラスを持ってくるよう頼む。
そして、重いお腹を抱え立ち上がり、ノクトの後ろにあった棚から1本、小瓶に入った『赤い涙』を持ってくる。
樽の底にあって、1本の瓶に入れることができなかった分をこうして小瓶に入れてある。
例えば、今のような試飲をどうしても必要なときのために用意してあるのだ。
この瓶も何の変哲もないものだったら目を引かないと思ったので、ガラス職人であるラズの頼んだ特注品であった。
「これは、また美しい小瓶ですね!」
「ありがとう!アンバー領で作っているものなのよ!良ければ、見てちょうだい」
今から中身を飲むのだから、あげられない。
デリアがグラスを持ってきてくれたので、ウィルとエールに注ぐ。
私はお酒自体が飲めないので、毒見という観点から、ウィルが飲んでくれることとなった。
「これは……葡萄の甘い香りがしますね……豊潤で……飲むと少しくせのあるような、そう……
アンナリーゼ様のようなお酒ですね!」
「ぷははっはっはは……」
「う……ウィル!」
「これは……確かに、いい香りに寄せられて来てみたら、渋みがありくせのある味わい。
そこに葡萄の甘味がありついついもう一杯と飲みたくなる。
まるで、魅せられたように……気づけば、瓶は空っぽ。
エール殿、さっきの例えは、言い得て妙。まさにアンナリーゼという人物のような酒ですよ!
人を酔わすだけ酔わせて、虜にしてしまうんですからね!」
「ウィル様もわかりましたか!そう、そのような感じがいたしました!
これは、確かに女性たちがこぞって話をするはずです。
少々甘い気はしますが、渋みもあるおかげでその甘さすら美味く感じる。これは、絶品です!」
「あの、二人とも……楽しそうに話しているけど、私、『赤い涙』でそんな話になったことなんて、
一度もないからね!そんな例えなんて……」
「誰も恐れ多くて、言えなかったのでしょう!
酒とアンナリーゼ様とを同等に取り扱うことすら、失礼にあたりますから……今回は、ウィル様が
例えてくれたからこそ、私も便乗できたというものです。これは、美味い……ハニーアンバー店で
買えるのですか?」
「売ってはいるけど、数があまりないから、お店にあるときとないときがあるわ!
あとは……アンバー領では蒸留酒も作っているの。そっちも特別な瓶を作って売っているから、
そちらも見てほしいわ!」
「確かに、アンバーの酒は美味いですからね!また、お店には足しげく足を運びましょう!」
「って、この屋敷の1階にもあるわよ!ハニーアンバー店なら。
小瓶なら、両方のお酒、売っているんじゃなかったっけ?」
「売ってるな。公都では内緒だけど、これくらいの土産ものくらいなら、贈るにはちょうどいいんじゃ
ないか?1本の値段、そこそこするし……」
「なるほど……これなら、手が出しやすいと。通常のものより量が少ないからね。
値段はその分抑えてあるけど、ガラス瓶を凝ったものにしてあるから、わりと値は張るわよ?
記念にはいいかもだけどね!良かったら、あげるわよ?この瓶もなかなかのものなのよ!」
エールに空になった瓶を渡すと、しげしげと見ていた。
先程は中身が入っていたが、中身がなくなると、それはそれで美しい。
「これは、一種の工芸品のようなものですね……これほどのものを作るとは……名だたる名工を集めた
のですか?」
「そんな名工を集められるほど、アンバーにはお金がないわよ!エールもこの領地を通って、公都に
通っているのだから知っているでしょ?」
「確かに……この領地は、変わりましたね。
人が生きているのか死んでいるのかわからない死んだような町や村が多かったのに関わらず、どこも
かしこも綺麗になっただけではなく、このようなものまで……」
「感心しきりのところ、申し訳ないんだけど、クッキーなんていかが?甘い葡萄酒には、ちょうどいい
かもしれないわ!」
デリアが運んできてくれたのは、塩気のあるクッキーと普通のものだった。
「こっちの塩気のものは試作品でね、美味しいか食べてみてくれる?」
手に取りサクッとクッキーを一口入れた。
私もクッキーなら食べられるので、口の中にほおりこんだ。
塩気によって、クッキーの甘味も増すかと思っていたが、塩気のほうが勝っていて、これはこれで美味しい。
夏場の汗をかく時期には、ちょうどいいかもしれない。
「これは、しょっぱいのですね?甘いつもりで口に入れたので、驚きました。こちらは、どうでしょ?」
「そっちは、通常のだから、甘いわね」
ではと口の中に入れると、先程の塩味もあって余計甘く感じただろう。
嫌な甘さではないはずだと思うのだが、そっとエールの様子を伺うと、うんうんと頷いている。
「これは、うまい!これは、砂糖もたくさん使われていますね!アンバー領では、砂糖が高いはず……
どうやって、これほどのものを……」
「砂糖なら、領地で作っているから、いくらでもとは言えないけど、あるのよ。
来年あたりから、量り売りもしてみようって話をしているの」
「砂糖を作っているですって!」
「えぇ、そうよ!隣の領地だから、話しておく必要があるかしらね!
ただ、他領へ苗や種を持て行くことは禁止してあるの。もし、我が領から出たものだとわかったら、
とんでもない鉄槌を考えているわ!我が領地の利益を根底から崩されることになるからね!」
「もぅ、アンナリーゼ様の改革には、少々頭がついて行きません……」
「そうかしら?私の周りは、呆れながらも私に賛同してくれているわ!さっき話したお店も然りね!」
頭を軽くふりながら、今度は、公都にあるハニーアンバー店の話となっていく。
気になっていたのですが」
「あら、バニッシュ子爵とも在ろうお方が、知らないの?」
「えぇ、是非、今後の参考に」
私は悪い笑みを零すと、デリアにグラスを持ってくるよう頼む。
そして、重いお腹を抱え立ち上がり、ノクトの後ろにあった棚から1本、小瓶に入った『赤い涙』を持ってくる。
樽の底にあって、1本の瓶に入れることができなかった分をこうして小瓶に入れてある。
例えば、今のような試飲をどうしても必要なときのために用意してあるのだ。
この瓶も何の変哲もないものだったら目を引かないと思ったので、ガラス職人であるラズの頼んだ特注品であった。
「これは、また美しい小瓶ですね!」
「ありがとう!アンバー領で作っているものなのよ!良ければ、見てちょうだい」
今から中身を飲むのだから、あげられない。
デリアがグラスを持ってきてくれたので、ウィルとエールに注ぐ。
私はお酒自体が飲めないので、毒見という観点から、ウィルが飲んでくれることとなった。
「これは……葡萄の甘い香りがしますね……豊潤で……飲むと少しくせのあるような、そう……
アンナリーゼ様のようなお酒ですね!」
「ぷははっはっはは……」
「う……ウィル!」
「これは……確かに、いい香りに寄せられて来てみたら、渋みがありくせのある味わい。
そこに葡萄の甘味がありついついもう一杯と飲みたくなる。
まるで、魅せられたように……気づけば、瓶は空っぽ。
エール殿、さっきの例えは、言い得て妙。まさにアンナリーゼという人物のような酒ですよ!
人を酔わすだけ酔わせて、虜にしてしまうんですからね!」
「ウィル様もわかりましたか!そう、そのような感じがいたしました!
これは、確かに女性たちがこぞって話をするはずです。
少々甘い気はしますが、渋みもあるおかげでその甘さすら美味く感じる。これは、絶品です!」
「あの、二人とも……楽しそうに話しているけど、私、『赤い涙』でそんな話になったことなんて、
一度もないからね!そんな例えなんて……」
「誰も恐れ多くて、言えなかったのでしょう!
酒とアンナリーゼ様とを同等に取り扱うことすら、失礼にあたりますから……今回は、ウィル様が
例えてくれたからこそ、私も便乗できたというものです。これは、美味い……ハニーアンバー店で
買えるのですか?」
「売ってはいるけど、数があまりないから、お店にあるときとないときがあるわ!
あとは……アンバー領では蒸留酒も作っているの。そっちも特別な瓶を作って売っているから、
そちらも見てほしいわ!」
「確かに、アンバーの酒は美味いですからね!また、お店には足しげく足を運びましょう!」
「って、この屋敷の1階にもあるわよ!ハニーアンバー店なら。
小瓶なら、両方のお酒、売っているんじゃなかったっけ?」
「売ってるな。公都では内緒だけど、これくらいの土産ものくらいなら、贈るにはちょうどいいんじゃ
ないか?1本の値段、そこそこするし……」
「なるほど……これなら、手が出しやすいと。通常のものより量が少ないからね。
値段はその分抑えてあるけど、ガラス瓶を凝ったものにしてあるから、わりと値は張るわよ?
記念にはいいかもだけどね!良かったら、あげるわよ?この瓶もなかなかのものなのよ!」
エールに空になった瓶を渡すと、しげしげと見ていた。
先程は中身が入っていたが、中身がなくなると、それはそれで美しい。
「これは、一種の工芸品のようなものですね……これほどのものを作るとは……名だたる名工を集めた
のですか?」
「そんな名工を集められるほど、アンバーにはお金がないわよ!エールもこの領地を通って、公都に
通っているのだから知っているでしょ?」
「確かに……この領地は、変わりましたね。
人が生きているのか死んでいるのかわからない死んだような町や村が多かったのに関わらず、どこも
かしこも綺麗になっただけではなく、このようなものまで……」
「感心しきりのところ、申し訳ないんだけど、クッキーなんていかが?甘い葡萄酒には、ちょうどいい
かもしれないわ!」
デリアが運んできてくれたのは、塩気のあるクッキーと普通のものだった。
「こっちの塩気のものは試作品でね、美味しいか食べてみてくれる?」
手に取りサクッとクッキーを一口入れた。
私もクッキーなら食べられるので、口の中にほおりこんだ。
塩気によって、クッキーの甘味も増すかと思っていたが、塩気のほうが勝っていて、これはこれで美味しい。
夏場の汗をかく時期には、ちょうどいいかもしれない。
「これは、しょっぱいのですね?甘いつもりで口に入れたので、驚きました。こちらは、どうでしょ?」
「そっちは、通常のだから、甘いわね」
ではと口の中に入れると、先程の塩味もあって余計甘く感じただろう。
嫌な甘さではないはずだと思うのだが、そっとエールの様子を伺うと、うんうんと頷いている。
「これは、うまい!これは、砂糖もたくさん使われていますね!アンバー領では、砂糖が高いはず……
どうやって、これほどのものを……」
「砂糖なら、領地で作っているから、いくらでもとは言えないけど、あるのよ。
来年あたりから、量り売りもしてみようって話をしているの」
「砂糖を作っているですって!」
「えぇ、そうよ!隣の領地だから、話しておく必要があるかしらね!
ただ、他領へ苗や種を持て行くことは禁止してあるの。もし、我が領から出たものだとわかったら、
とんでもない鉄槌を考えているわ!我が領地の利益を根底から崩されることになるからね!」
「もぅ、アンナリーゼ様の改革には、少々頭がついて行きません……」
「そうかしら?私の周りは、呆れながらも私に賛同してくれているわ!さっき話したお店も然りね!」
頭を軽くふりながら、今度は、公都にあるハニーアンバー店の話となっていく。
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