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品種改良
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次の日、泥だらけになりながらヨハンが屋敷に帰ってきた。
それも、両手にいろいろなものを抱えて。
さすがに汚いヨハンを見て、デリアが目くじらを立て、ヨハンを叱っているがどこ吹く風でそのまま部屋へと行こうとした。
さすがに、綺麗にしたばかりの部屋をその汚い恰好で入られるのに我慢ならなかったのか、デリアの雷が落ちた。
さすがのヨハンも驚いて我に戻り、デリアに従い風呂場へと行ったのである。
それを2階から眺めていたのだが、デリアの雷でみなが集まってきた。
「また、ヨハンか?凝りもせずに……デリアもよく我慢しているものだ」
「本当よね……デリアには頭が下がるわ……」
「アンナもあちら側だからな、ヨハンの気持ちもよくわかるんじゃないか?」
「そうね……って、ヨハンと一緒にしないでちょうだい?」
「アンナリーゼ様は、あちら側ですよ!」
「もぅ、ニコライまで……私、そんなんじゃないのに……」
膨れると、ノクトに頭をわしゃわしゃされ、そのままのアンナでいいと言われてしまう。
そのままも何も、私は私なのだから、変えようがない。
でも、その言葉は、私を少しだけ強くしてくれる魔法の言葉だ。
そんなこんなで、まったりと過ごしてる昼下がり。
いきなりの来訪者に私たちは驚いた。
「アンナリーゼ様!いらっしゃいますか!!」
聞きなれた女性の声に、私は執務室から出て迎えにいく。
「あっ!いた!」
「ナタリー?」
「もう、ずっと待っていたのに、全然、領地に帰ってこないのですもの!
待ちくたびれて、お迎えに上がりましたわ!」
きっと、優雅に馬車に揺られてきたわけではないのだろう。
いでだちを見れば、男装しているのだから……
女性の一人旅は危ないのでって言うこともあるだろうが……それにしたって、私より無茶をするのではないか。
「ナタリー、領地から来たの?」
「えぇ、そうですよ!ヨハン教授の助手がこちらにアンナリーゼ様がいらっしゃると言っていたので、
急いできましたわ!」
「あの、教授の助手は?」
「知りませんわ!私より2日程早く領地を出たので、もうそろそろ着くころではないですかね?」
ナタリーは、腰に手を当てながら勇ましく一人で馬に乗ってダドリー男爵領にあるこの屋敷まで来たようだった。
「ナタリー、今回はいいけど……危ないから一人では決して領地をまたぐような移動はしないでちょう
だい!」
「アンナがそれを言っても、説得にかけるなぁ……」
「ノクト!」
「んあ?アンナは、やってのけるだろ?下手したら、国をもまたぐだろ?」
うぐ……ノクトの指摘に私は何も言えない。
トワイスにいた頃は、一人で馬を駆りフレイゼン領に行ったり祖父の領地へ行ったりもしていた。
国またぎはさすがにしていないだろうという思惑も入ってのノクトの言葉だったろうが、普通にジョージアとの結婚を決めるために、ローズディアの城へ単身乗り込んだことは、記憶に新しい。
それなりに腕に覚えがあるからこそ、出来るわけだが……ナタリーは違う。
ちょっとはねっかえり気質であったとしても、私のそれとは違うのだ。
子爵令嬢としてきちんと育ってきて、私に多少の感化されたくらいなのだから、一人旅は危ない。
「剣が使える私と使えないナタリーとは違うの。危ないことは、ナタリーを預かっている身としては
してほしくないわ!
アンバー領地ならまだしも、ダドリー男爵の領地では、私はどちらかというと危ない存在なのよ?」
「そうだったな。ナタリー、以後、気を付けるようにな!」
「はい……申し訳ございません」
シュンと肩を落としたナタリーに私は降りて行き抱きしめる。
「それより、無事で何よりね。私が領地に帰るまで、ここに一緒にいてちょうだい。
ちょうど、ナタリー宛に昨日手紙を送ったところだったのよ。
おもしろいこと見つけたから、一緒に考えてほしいのよ!」
「おもしろいことですか?」
腕の中で身をよじり、私を上目遣いで見つめてくるナタリーに頷く。
離れようとすると、逆にナタリーの腕が腰に回ってきて離してくれなくなった。
なので、もうしばらく甘えさせることにした。
いつもはしっかりもののナタリーも、甘えたい日があるようだ。
玄関先でナタリーと抱きしめ合っていたところに静かに玄関の扉が開く。
「ごめんください……アンナリーゼ様に召喚されまいりまし……」
その女性は、抱き合ったままの私たちを見てギョッとして固まってしまった。
「アンナリーゼは、私よ!どなた?」
ナタリーがおずおずと離れてくれ、私の後ろに静かに移動してくれる。
ノクトも二階から降りてきて、私の隣に立った。
「えっと……ヨハン教授の助手をしております、タンザと申します。
あの……蚕の話をということで……」
怖いからなのか、ノクトをチラチラ見ながらおずおずと話すタンザというヨハン教授の助手。
そこに、やっぱりデリアに叱られながらやってきたのがヨハンであった。
「よぉ!タンザ、ついたか!」
「きょ……教授!」
ヨハンを見た瞬間、ホッとしたのか涙を流し始めその場に座り込んでしまった。
「大丈夫か?アンナリーゼ様は怖くないし、この人は護衛だから大丈夫だ」
ヨハンがタンザを立たせると涙を拭って私に向き直る。
気を取り直して、再度、タンザは挨拶をしてくれる。
「改めまして、ヨハン教授の元でお世話になっています、タンザと申します。
あの、その、お呼びいただいたのでこちらに……」
「うん、私はアンバー公爵、アンナリーゼ・トロン・アンバーよ!
急に呼び出してごめんね!ちょっと、さっきも言ってたけど、蚕のことで相談があるの。
よろしくね!」
手を差し出すと私の手をギュっと握り返してきたので、ニコッと笑いかける。
ぎこちなく笑い返してくれ、挨拶も終わった。
「ヨハン教授もお風呂から出てきたのだから、一緒に来てちょうだい。
言いつけも守れない人なんだから……」
「はいはい、行きますよ!デリアさん、それ、捨てないでくださいね!」
「かしこまりました!でも、汚いのでアンナ様に近づけないでください!」
「確かに……妊婦には衛生上よくないですね。これは、気が付きませんでした」
「いいわよ、どこまで行っても研究バカは直らないから。執務室についてきて!
タンザ、あなたもよ!」
は……はい!と最後尾にタンザはついてきた。
執務室に入り、それぞれソファにかけて話をすることになる。
デリアによって飲み物が用意され、前に置かれていく。
「それで、タンザには手紙で書いたように、蚕の品種改良の話なのだが……」
「蚕の品種改良なら、出来ています。いわゆる、繭を大きくすることを課題にされているのではない
ですか?」
「えぇ、そうなの。例えば1匹で今の蚕の2、3匹分の繭が取れたらいいねって話をしていて、そのため
のどれくらいの時間がかかるかなって話をしていたのだけど……」
「恐れながら、それならすでに解決済です。こちらが、その繭です」
机の上にコロンと置かれた繭は明らかに大きかった。
「これ……」
「たぶんですが、4匹から6匹分くらいになると思います。これで、品質は落ちていません」
「ノクト」
「あぁ、これなら……」
「ねぇ、この品種改良された蚕って、どれくらい準備できるかしら?」
タンザは一瞬ヨハンの方を向いてから、頷き私へと向き直る。
「今ご用意できるのは、馬車1台分です。領地には、そこそこいるのですが……」
「えっ?領地にもいるの?」
「いますよ!もちろん、私の研究ですから!」
「そうなんだ……知らなかった」
「馬車に乗っている分については、すぐにでもお渡しできます。
繭を作る直前のものを連れてきていますから……今年の収穫に間に合いますよ?」
私は、考える。
この繭なら、今より多く生産できるシルク。
採算が合うのではないだろうか?このまま、こちらにタンザを残すことは可能だろうか?
「タンザ」
「なんでしょうか?」
「言いにくいのだけど、ヨハン教授から独り立ちする気はないかしら?
決して師弟関係を解消しろというわけではないの。
こちらにも施設を作る予定なのだけど、こちらにその管理者として残ってくれることはできない
かしら?もちろん、研究費や生活費は私が持つわ!」
私の申出に目を白黒させるタンザ。
「そ……そんな、滅相もございません!私なぞに、資金提供だなんて……」
「いいえ、私はあなたの研究に興味を持ったわ!私の領地運営のために力を貸してほしいからこその
資金提供よ!私の手を取ってくれるかしら?」
差し出すと、ヨハンやノクト、ナタリーの顔を見た後、考える素振り見せた。
「ここも私の領地になったから、見捨てたりしたくないのよ。お願い、力を貸してちょうだい!」
「滅相もございません。しがない研究者に公爵様が頭を下げるなぞあってはならないと思います。
ここまで、求めていただいて、無下にはできません。
お申し出、ありがたく受けさせてください。一人の研究者として、アンナリーゼ様のお役に立てる
よう、これからも邁進していきます」
静かに誓い、私の手を取ってくれる。
資金提供で得られるのは、タンザが研究している虫についての情報だった。
元々ヨハンが目を付けたのは毒虫の研究だったそうで、他にも研究をしていて、役にたつとは思ってもいなかったようだが……私には大いに役になった。
これで、採算がとれる準備は整ったのだ。
後は、ナタリーの手腕と発想で、社交界を沸かせれば儲けものだと思う。
次は、ナタリーへの提案の時間である。
それも、両手にいろいろなものを抱えて。
さすがに汚いヨハンを見て、デリアが目くじらを立て、ヨハンを叱っているがどこ吹く風でそのまま部屋へと行こうとした。
さすがに、綺麗にしたばかりの部屋をその汚い恰好で入られるのに我慢ならなかったのか、デリアの雷が落ちた。
さすがのヨハンも驚いて我に戻り、デリアに従い風呂場へと行ったのである。
それを2階から眺めていたのだが、デリアの雷でみなが集まってきた。
「また、ヨハンか?凝りもせずに……デリアもよく我慢しているものだ」
「本当よね……デリアには頭が下がるわ……」
「アンナもあちら側だからな、ヨハンの気持ちもよくわかるんじゃないか?」
「そうね……って、ヨハンと一緒にしないでちょうだい?」
「アンナリーゼ様は、あちら側ですよ!」
「もぅ、ニコライまで……私、そんなんじゃないのに……」
膨れると、ノクトに頭をわしゃわしゃされ、そのままのアンナでいいと言われてしまう。
そのままも何も、私は私なのだから、変えようがない。
でも、その言葉は、私を少しだけ強くしてくれる魔法の言葉だ。
そんなこんなで、まったりと過ごしてる昼下がり。
いきなりの来訪者に私たちは驚いた。
「アンナリーゼ様!いらっしゃいますか!!」
聞きなれた女性の声に、私は執務室から出て迎えにいく。
「あっ!いた!」
「ナタリー?」
「もう、ずっと待っていたのに、全然、領地に帰ってこないのですもの!
待ちくたびれて、お迎えに上がりましたわ!」
きっと、優雅に馬車に揺られてきたわけではないのだろう。
いでだちを見れば、男装しているのだから……
女性の一人旅は危ないのでって言うこともあるだろうが……それにしたって、私より無茶をするのではないか。
「ナタリー、領地から来たの?」
「えぇ、そうですよ!ヨハン教授の助手がこちらにアンナリーゼ様がいらっしゃると言っていたので、
急いできましたわ!」
「あの、教授の助手は?」
「知りませんわ!私より2日程早く領地を出たので、もうそろそろ着くころではないですかね?」
ナタリーは、腰に手を当てながら勇ましく一人で馬に乗ってダドリー男爵領にあるこの屋敷まで来たようだった。
「ナタリー、今回はいいけど……危ないから一人では決して領地をまたぐような移動はしないでちょう
だい!」
「アンナがそれを言っても、説得にかけるなぁ……」
「ノクト!」
「んあ?アンナは、やってのけるだろ?下手したら、国をもまたぐだろ?」
うぐ……ノクトの指摘に私は何も言えない。
トワイスにいた頃は、一人で馬を駆りフレイゼン領に行ったり祖父の領地へ行ったりもしていた。
国またぎはさすがにしていないだろうという思惑も入ってのノクトの言葉だったろうが、普通にジョージアとの結婚を決めるために、ローズディアの城へ単身乗り込んだことは、記憶に新しい。
それなりに腕に覚えがあるからこそ、出来るわけだが……ナタリーは違う。
ちょっとはねっかえり気質であったとしても、私のそれとは違うのだ。
子爵令嬢としてきちんと育ってきて、私に多少の感化されたくらいなのだから、一人旅は危ない。
「剣が使える私と使えないナタリーとは違うの。危ないことは、ナタリーを預かっている身としては
してほしくないわ!
アンバー領地ならまだしも、ダドリー男爵の領地では、私はどちらかというと危ない存在なのよ?」
「そうだったな。ナタリー、以後、気を付けるようにな!」
「はい……申し訳ございません」
シュンと肩を落としたナタリーに私は降りて行き抱きしめる。
「それより、無事で何よりね。私が領地に帰るまで、ここに一緒にいてちょうだい。
ちょうど、ナタリー宛に昨日手紙を送ったところだったのよ。
おもしろいこと見つけたから、一緒に考えてほしいのよ!」
「おもしろいことですか?」
腕の中で身をよじり、私を上目遣いで見つめてくるナタリーに頷く。
離れようとすると、逆にナタリーの腕が腰に回ってきて離してくれなくなった。
なので、もうしばらく甘えさせることにした。
いつもはしっかりもののナタリーも、甘えたい日があるようだ。
玄関先でナタリーと抱きしめ合っていたところに静かに玄関の扉が開く。
「ごめんください……アンナリーゼ様に召喚されまいりまし……」
その女性は、抱き合ったままの私たちを見てギョッとして固まってしまった。
「アンナリーゼは、私よ!どなた?」
ナタリーがおずおずと離れてくれ、私の後ろに静かに移動してくれる。
ノクトも二階から降りてきて、私の隣に立った。
「えっと……ヨハン教授の助手をしております、タンザと申します。
あの……蚕の話をということで……」
怖いからなのか、ノクトをチラチラ見ながらおずおずと話すタンザというヨハン教授の助手。
そこに、やっぱりデリアに叱られながらやってきたのがヨハンであった。
「よぉ!タンザ、ついたか!」
「きょ……教授!」
ヨハンを見た瞬間、ホッとしたのか涙を流し始めその場に座り込んでしまった。
「大丈夫か?アンナリーゼ様は怖くないし、この人は護衛だから大丈夫だ」
ヨハンがタンザを立たせると涙を拭って私に向き直る。
気を取り直して、再度、タンザは挨拶をしてくれる。
「改めまして、ヨハン教授の元でお世話になっています、タンザと申します。
あの、その、お呼びいただいたのでこちらに……」
「うん、私はアンバー公爵、アンナリーゼ・トロン・アンバーよ!
急に呼び出してごめんね!ちょっと、さっきも言ってたけど、蚕のことで相談があるの。
よろしくね!」
手を差し出すと私の手をギュっと握り返してきたので、ニコッと笑いかける。
ぎこちなく笑い返してくれ、挨拶も終わった。
「ヨハン教授もお風呂から出てきたのだから、一緒に来てちょうだい。
言いつけも守れない人なんだから……」
「はいはい、行きますよ!デリアさん、それ、捨てないでくださいね!」
「かしこまりました!でも、汚いのでアンナ様に近づけないでください!」
「確かに……妊婦には衛生上よくないですね。これは、気が付きませんでした」
「いいわよ、どこまで行っても研究バカは直らないから。執務室についてきて!
タンザ、あなたもよ!」
は……はい!と最後尾にタンザはついてきた。
執務室に入り、それぞれソファにかけて話をすることになる。
デリアによって飲み物が用意され、前に置かれていく。
「それで、タンザには手紙で書いたように、蚕の品種改良の話なのだが……」
「蚕の品種改良なら、出来ています。いわゆる、繭を大きくすることを課題にされているのではない
ですか?」
「えぇ、そうなの。例えば1匹で今の蚕の2、3匹分の繭が取れたらいいねって話をしていて、そのため
のどれくらいの時間がかかるかなって話をしていたのだけど……」
「恐れながら、それならすでに解決済です。こちらが、その繭です」
机の上にコロンと置かれた繭は明らかに大きかった。
「これ……」
「たぶんですが、4匹から6匹分くらいになると思います。これで、品質は落ちていません」
「ノクト」
「あぁ、これなら……」
「ねぇ、この品種改良された蚕って、どれくらい準備できるかしら?」
タンザは一瞬ヨハンの方を向いてから、頷き私へと向き直る。
「今ご用意できるのは、馬車1台分です。領地には、そこそこいるのですが……」
「えっ?領地にもいるの?」
「いますよ!もちろん、私の研究ですから!」
「そうなんだ……知らなかった」
「馬車に乗っている分については、すぐにでもお渡しできます。
繭を作る直前のものを連れてきていますから……今年の収穫に間に合いますよ?」
私は、考える。
この繭なら、今より多く生産できるシルク。
採算が合うのではないだろうか?このまま、こちらにタンザを残すことは可能だろうか?
「タンザ」
「なんでしょうか?」
「言いにくいのだけど、ヨハン教授から独り立ちする気はないかしら?
決して師弟関係を解消しろというわけではないの。
こちらにも施設を作る予定なのだけど、こちらにその管理者として残ってくれることはできない
かしら?もちろん、研究費や生活費は私が持つわ!」
私の申出に目を白黒させるタンザ。
「そ……そんな、滅相もございません!私なぞに、資金提供だなんて……」
「いいえ、私はあなたの研究に興味を持ったわ!私の領地運営のために力を貸してほしいからこその
資金提供よ!私の手を取ってくれるかしら?」
差し出すと、ヨハンやノクト、ナタリーの顔を見た後、考える素振り見せた。
「ここも私の領地になったから、見捨てたりしたくないのよ。お願い、力を貸してちょうだい!」
「滅相もございません。しがない研究者に公爵様が頭を下げるなぞあってはならないと思います。
ここまで、求めていただいて、無下にはできません。
お申し出、ありがたく受けさせてください。一人の研究者として、アンナリーゼ様のお役に立てる
よう、これからも邁進していきます」
静かに誓い、私の手を取ってくれる。
資金提供で得られるのは、タンザが研究している虫についての情報だった。
元々ヨハンが目を付けたのは毒虫の研究だったそうで、他にも研究をしていて、役にたつとは思ってもいなかったようだが……私には大いに役になった。
これで、採算がとれる準備は整ったのだ。
後は、ナタリーの手腕と発想で、社交界を沸かせれば儲けものだと思う。
次は、ナタリーへの提案の時間である。
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