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登城
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翌朝、ジョージアはまだ寝ているジョージを抱いて、公都の屋敷から領地へと移動することになった。
それには、理由がある。
ジョージが異様に私を気に入ったらしく、私の姿を探すようになったのだ。
たった数時間、一緒に過ごしただけなのにだ。
「ジョージ様は、乳母もいましたが、乳母にもソフィア様にもそれほど手をかけてもらったことは
なかったと記憶しております。
特に母であるソフィア様が抱かれることはほとんどなく、愛情に飢えているのだと……」
別宅に潜ませていた私の陣営であった侍女やメイドから話を聞くとそのように口を揃えるかのようにそのように話す。
ほんの少しでも、抱いてあげたり、本を読んであげたりとしただけで懐いてしまったというのだ。
そんなことって……ある?
母親を奪ったのだ。恨まれるなり拒まれるなり、小さいなりに私へ対して反応するかと思ったが、思わぬ反応に私は逆に戸惑ってしまった。
昨夜は、私のベッドに潜り込んできたのはジョージアだけでなく、ジョージもお気に入りのぬいぐるみを持って侍女に連れられ来るほどである。
抱きかかえジョージアとの間に入れようか迷ったが、なんとなくジョージアに潰されそうだったので私が後ろから抱きしめる形で眠りについた。
別宅の朝はゆっくりなので、私が起きたときもジョージはまだすやすや眠っている。
こっそりジョージアと並べて寝かせ、私は朝の支度をする。
ジョージアも起きたのか、自分の腕の中にいたのが私でなく息子であったことに驚いていた。
「アンナ、いつの間に?」
「2時くらいでしたかね?」
「俺が寝てすぐぐらいに来たのか。昨日のベタベタぶりだと、起きたら離れなくなりそうだね……」
「どこかの誰かさんみたいですね?」
「……俺のこと?」
「さぁ?誰のことですかね?」
「親子なんだから、仕方ないんじゃない?」
ジョージアは苦笑いして、ベッドからそっと出て朝の支度をする。
朝食の話になり、馬車の中で食べられるようにしてと言って、旅支度をするようディルに指示を出す。
夕べの内に済んでいるので、あとは朝食を持てばいいだけとなる。
ジョージを毛布にくるんで、抱きかかえ、早々にジョージアは馬車に乗った。
「アンナ……後は、頼んだよ!」
「えぇ、任せてください!」
「くれぐれも無理はしないように」
いってらっしゃいと見送ると、屋敷に残る私は寂しくなる。
また、置いて行かれたような気持ちになった。
でも、今度は、置いて行かれたわけではなく、これから私が成すべきことを成さねばならないための時間がきただけなのだ。
玄関から踵を返し、唇を引き締め、私室へと向かうのである。
◆◇◆◇◆
「デリア、城へ向かいます。用意して……そうね、ナタリーの作ってくれた紫薔薇のドレスにするわ!」
「かしこまりました。用意いたします」
私室に入った頃には、ドレスが用意され、着替える。
まだ、それほど、出てきていないお腹でも締め付けるようなドレスは着るのは阻まれるが、ナタリーの作ってくれたドレスは、切り替えが胸のすぐ下であったため、全く窮屈に感じない。
公爵らしく、威厳を持たせてくれるよう出来上がった私は、城へと向かった。
◆◇◆◇◆
「公世子様、いらっしゃいますか?」
「引継ぎなしで入ってくるのは……って、ノクト将軍まで……」
「ん?あぁ、ノクト将軍、どうぞ!」
「何を言っているアンナ」
「公世子様がね、私よりノクト将軍の方が好きみたいで!」
「いや……俺はいくら何でもそこまで範囲は広くないぞ?」
「俺もこんなやつの相手は嫌だぞ?」
ん?と私は小首をかしげる。
一体何の話をしているのだ……?
「なんでもいいですけど、入っていいですか?」
「なんでもよくないけど、入っていいぞ」
廊下と執務室の中とで話していたのだが、許可がおりたので、執務室の中に入った。
「で、何の用だ?」
「確認にきたのです。ダドリー男爵の血縁と近親は全員捕縛できましたか?」
「あぁ、おかげで出来たぞ!子どもたちは、どうすることもできなかったから、一部屋で固めて面倒
見ている。成人済みの者だけ事情聴取を取っているところだ」
「そうですか……殆どが、知らぬ存ぜぬでしょうけどね」
「そうだろうなぁ……第三妃候補ですら、しらばっくれているらしい。
そなたが調べたところをちょこちょこ出すと、訳知りのやつらは、口を割ってくるぞ。
大人は、減刑のために……と言ってな」
「減刑なんて、ありえないですけどね?」
「そなた、腹が座っておるな?」
「そうですか?そんなことないですけど、侍従の前で無様な恰好はできないですからね!
ただ、それだけですよ!」
そうかと、私の後ろに護衛として立っているノクトをチラッと見ている。
まぁ、従者として扱っているのは私とか私の友人とか侍従たちだけなので、公世子のその顔の意味はなんとなく分かる。
いわゆる、贅沢な護衛であり、皇弟を公爵ごときが従者とは普通呼ばない。
公爵も辞めたしインゼロ帝国から出てきた身でただの雇われだからと、当のノクトが言っているので、あえて、そのように扱っているのだ。
仰々しく扱われるのが嫌なんだそうで、私とウィルたちのような関係がいいと言っている。
考えてみると、従者がいいと本人が言ったのだから、公世子もそのつもりでいてくれればいいのだけど、そうもいかないのは根っからの公族であるゆえだろう。
「それで、どうです?順調に行きそうですか?」
「あぁ、何はともあれって感じではあるのだが、そなたの悪評が結構厄介でな……」
「そうですか……じゃあ、こういってやればいいんです。
私の粗探しに忙しかったようですけど、私を貶めるということは、トワイスで1番の軍事力を持って
いるおじい様によって、治めている領地が更地になりますよ!って」
「アンナよ、それは言い過ぎではないのか?」
「ノクトは知らないかしら?私の祖父のこと」
考えて思い至ったのだろう……私と同じような髪の色をしているのは意外と珍しい。
「あぁ、あれ……女……」
「お母様も戦場に出てましたよ?」
「そしたら、そなたの母親と対峙したことがあるぞ?今のそなたより若かったと思うが、妙な巡り合わせ
なだ」
「ノクトは、お母様を知っているのです?」
「あぁ、知っている」
「アンナリーゼの一族は、どこにでも顔を出すのだな?」
「お母様は、トワイスで1番のはねっかえりですから!」
「そなた「「アンナ」だけには言われたくないと思うぞ」……」
「二人して失礼ですね?私なんて、お母様に比べたら、まだまだひよっこですよ!」
「そなたがひよっこなら……母なら国の3つくらい落とせそうだが……」
「落とせるでしょうね……いろいろな意味で強いですから。国なんてものに全く興味がなくてですね。
お母様の興味は、今も昔もこれからもお父様以外、他に何もありません」
「それは、夫としてずいぶんと重くないか?」
私は、トワイスにいる両親のことを思い浮かべる。
女王様のような母に、付き従う執事のような父。
見た目はあれだが、とても仲がいいし、お互いを大事に思いあっているのだ。
「そうでもないですよ?両親ともにとっても仲良しです。
女王様と執事みたいな見た目ですけど……私の理想の二人です!」
「そうすると、ジョージアは理想から程遠いなぁ……?」
「そうですね?でも、理想であって、私は私たちなりの形でいいんです。
複雑な家庭ですからね!どこかと一緒では面白くないですし!」
その場にいる近衛も含めてため息をつかれたが、私はどこ吹く風である。
別に家族の形は、それぞれでいいのだ。
昨日なんて、全く他人であるこれから私の息子なる子に気に入られて、私はご満悦なんだから。
きっと、今頃起きて、わけもわからず馬車に乗っていることで泣いているんではないかと想像して、クスっと笑ってしまった。
「それじゃあ、処刑の日が決まったら、ご連絡ください。
あと、何かありましたら、ごねられない程の資料くらいは出しますので、それも連絡くれたら、
お渡しします。
貴族の処罰の方は、どうですか?」
「そっちは、なんとかなりそうだ。ほとんどが爵位返上や爵位を下げることになる。
なんていうか……よくもまぁ、国の中枢にこれだけのつながりがあったことに驚くばかりだ。
何はともあれ、連絡はするから、それまでは待機していてくれ!」
「わかりました。暇なのでいつでも呼んでください!」
私は、ニッコリ笑って、部屋を退出し、私は屋敷へと戻る。
優しい従者たちの笑顔に迎えられホッとして、部屋で休むことにした。
体を休めることも、私の仕事の一環だとデリアに言われているので、今日は残りの時間をダラダラと過ごすのであった。
それには、理由がある。
ジョージが異様に私を気に入ったらしく、私の姿を探すようになったのだ。
たった数時間、一緒に過ごしただけなのにだ。
「ジョージ様は、乳母もいましたが、乳母にもソフィア様にもそれほど手をかけてもらったことは
なかったと記憶しております。
特に母であるソフィア様が抱かれることはほとんどなく、愛情に飢えているのだと……」
別宅に潜ませていた私の陣営であった侍女やメイドから話を聞くとそのように口を揃えるかのようにそのように話す。
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そんなことって……ある?
母親を奪ったのだ。恨まれるなり拒まれるなり、小さいなりに私へ対して反応するかと思ったが、思わぬ反応に私は逆に戸惑ってしまった。
昨夜は、私のベッドに潜り込んできたのはジョージアだけでなく、ジョージもお気に入りのぬいぐるみを持って侍女に連れられ来るほどである。
抱きかかえジョージアとの間に入れようか迷ったが、なんとなくジョージアに潰されそうだったので私が後ろから抱きしめる形で眠りについた。
別宅の朝はゆっくりなので、私が起きたときもジョージはまだすやすや眠っている。
こっそりジョージアと並べて寝かせ、私は朝の支度をする。
ジョージアも起きたのか、自分の腕の中にいたのが私でなく息子であったことに驚いていた。
「アンナ、いつの間に?」
「2時くらいでしたかね?」
「俺が寝てすぐぐらいに来たのか。昨日のベタベタぶりだと、起きたら離れなくなりそうだね……」
「どこかの誰かさんみたいですね?」
「……俺のこと?」
「さぁ?誰のことですかね?」
「親子なんだから、仕方ないんじゃない?」
ジョージアは苦笑いして、ベッドからそっと出て朝の支度をする。
朝食の話になり、馬車の中で食べられるようにしてと言って、旅支度をするようディルに指示を出す。
夕べの内に済んでいるので、あとは朝食を持てばいいだけとなる。
ジョージを毛布にくるんで、抱きかかえ、早々にジョージアは馬車に乗った。
「アンナ……後は、頼んだよ!」
「えぇ、任せてください!」
「くれぐれも無理はしないように」
いってらっしゃいと見送ると、屋敷に残る私は寂しくなる。
また、置いて行かれたような気持ちになった。
でも、今度は、置いて行かれたわけではなく、これから私が成すべきことを成さねばならないための時間がきただけなのだ。
玄関から踵を返し、唇を引き締め、私室へと向かうのである。
◆◇◆◇◆
「デリア、城へ向かいます。用意して……そうね、ナタリーの作ってくれた紫薔薇のドレスにするわ!」
「かしこまりました。用意いたします」
私室に入った頃には、ドレスが用意され、着替える。
まだ、それほど、出てきていないお腹でも締め付けるようなドレスは着るのは阻まれるが、ナタリーの作ってくれたドレスは、切り替えが胸のすぐ下であったため、全く窮屈に感じない。
公爵らしく、威厳を持たせてくれるよう出来上がった私は、城へと向かった。
◆◇◆◇◆
「公世子様、いらっしゃいますか?」
「引継ぎなしで入ってくるのは……って、ノクト将軍まで……」
「ん?あぁ、ノクト将軍、どうぞ!」
「何を言っているアンナ」
「公世子様がね、私よりノクト将軍の方が好きみたいで!」
「いや……俺はいくら何でもそこまで範囲は広くないぞ?」
「俺もこんなやつの相手は嫌だぞ?」
ん?と私は小首をかしげる。
一体何の話をしているのだ……?
「なんでもいいですけど、入っていいですか?」
「なんでもよくないけど、入っていいぞ」
廊下と執務室の中とで話していたのだが、許可がおりたので、執務室の中に入った。
「で、何の用だ?」
「確認にきたのです。ダドリー男爵の血縁と近親は全員捕縛できましたか?」
「あぁ、おかげで出来たぞ!子どもたちは、どうすることもできなかったから、一部屋で固めて面倒
見ている。成人済みの者だけ事情聴取を取っているところだ」
「そうですか……殆どが、知らぬ存ぜぬでしょうけどね」
「そうだろうなぁ……第三妃候補ですら、しらばっくれているらしい。
そなたが調べたところをちょこちょこ出すと、訳知りのやつらは、口を割ってくるぞ。
大人は、減刑のために……と言ってな」
「減刑なんて、ありえないですけどね?」
「そなた、腹が座っておるな?」
「そうですか?そんなことないですけど、侍従の前で無様な恰好はできないですからね!
ただ、それだけですよ!」
そうかと、私の後ろに護衛として立っているノクトをチラッと見ている。
まぁ、従者として扱っているのは私とか私の友人とか侍従たちだけなので、公世子のその顔の意味はなんとなく分かる。
いわゆる、贅沢な護衛であり、皇弟を公爵ごときが従者とは普通呼ばない。
公爵も辞めたしインゼロ帝国から出てきた身でただの雇われだからと、当のノクトが言っているので、あえて、そのように扱っているのだ。
仰々しく扱われるのが嫌なんだそうで、私とウィルたちのような関係がいいと言っている。
考えてみると、従者がいいと本人が言ったのだから、公世子もそのつもりでいてくれればいいのだけど、そうもいかないのは根っからの公族であるゆえだろう。
「それで、どうです?順調に行きそうですか?」
「あぁ、何はともあれって感じではあるのだが、そなたの悪評が結構厄介でな……」
「そうですか……じゃあ、こういってやればいいんです。
私の粗探しに忙しかったようですけど、私を貶めるということは、トワイスで1番の軍事力を持って
いるおじい様によって、治めている領地が更地になりますよ!って」
「アンナよ、それは言い過ぎではないのか?」
「ノクトは知らないかしら?私の祖父のこと」
考えて思い至ったのだろう……私と同じような髪の色をしているのは意外と珍しい。
「あぁ、あれ……女……」
「お母様も戦場に出てましたよ?」
「そしたら、そなたの母親と対峙したことがあるぞ?今のそなたより若かったと思うが、妙な巡り合わせ
なだ」
「ノクトは、お母様を知っているのです?」
「あぁ、知っている」
「アンナリーゼの一族は、どこにでも顔を出すのだな?」
「お母様は、トワイスで1番のはねっかえりですから!」
「そなた「「アンナ」だけには言われたくないと思うぞ」……」
「二人して失礼ですね?私なんて、お母様に比べたら、まだまだひよっこですよ!」
「そなたがひよっこなら……母なら国の3つくらい落とせそうだが……」
「落とせるでしょうね……いろいろな意味で強いですから。国なんてものに全く興味がなくてですね。
お母様の興味は、今も昔もこれからもお父様以外、他に何もありません」
「それは、夫としてずいぶんと重くないか?」
私は、トワイスにいる両親のことを思い浮かべる。
女王様のような母に、付き従う執事のような父。
見た目はあれだが、とても仲がいいし、お互いを大事に思いあっているのだ。
「そうでもないですよ?両親ともにとっても仲良しです。
女王様と執事みたいな見た目ですけど……私の理想の二人です!」
「そうすると、ジョージアは理想から程遠いなぁ……?」
「そうですね?でも、理想であって、私は私たちなりの形でいいんです。
複雑な家庭ですからね!どこかと一緒では面白くないですし!」
その場にいる近衛も含めてため息をつかれたが、私はどこ吹く風である。
別に家族の形は、それぞれでいいのだ。
昨日なんて、全く他人であるこれから私の息子なる子に気に入られて、私はご満悦なんだから。
きっと、今頃起きて、わけもわからず馬車に乗っていることで泣いているんではないかと想像して、クスっと笑ってしまった。
「それじゃあ、処刑の日が決まったら、ご連絡ください。
あと、何かありましたら、ごねられない程の資料くらいは出しますので、それも連絡くれたら、
お渡しします。
貴族の処罰の方は、どうですか?」
「そっちは、なんとかなりそうだ。ほとんどが爵位返上や爵位を下げることになる。
なんていうか……よくもまぁ、国の中枢にこれだけのつながりがあったことに驚くばかりだ。
何はともあれ、連絡はするから、それまでは待機していてくれ!」
「わかりました。暇なのでいつでも呼んでください!」
私は、ニッコリ笑って、部屋を退出し、私は屋敷へと戻る。
優しい従者たちの笑顔に迎えられホッとして、部屋で休むことにした。
体を休めることも、私の仕事の一環だとデリアに言われているので、今日は残りの時間をダラダラと過ごすのであった。
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