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アンバー領への帰還とナタリーの監視
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フレイゼン領へ行こうかと考えていたが、思わぬ職人を王都で手に入れてしまったので、アンバー領へ帰ることにした。
フレイゼンの屋敷では、ほんのひとときの休息を取った。
両親や兄、義姉や甥たちと過ごせた少ない時間は、私にとってホッと一息入れるには短いような名残惜しいような気持ちにさせる。
ジョーも私が城であれこれをしている間、甥のクリスやフランに遊んでもらっていたらしく、とても懐いていたらしい。
翌朝には、また、馬車に揺られる。
行きとは違い、馬車の中はジョーと二人きりであるし、もう1つ馬車が追加され、ガラス職人親子を乗せ後ろをついてきている。
さらに両親からジョーへの貢ぎ物がぎっしりつまった馬車が1台追加され、ガラス職人親子のためにもう1台馬車を追加したので、4台の馬車で領地を目指しているところだ。
何日もかけて帰ることになり、侍女もいないので結構大変だった。
ジョーが幸いにも、大人しく私の隣に座ったり、窓の外を眺めたりとしてくれていたおかげで、手がかからなかった。
馬車の中では、常に話しかけていたことも嬉しかったのか、終始ご機嫌だったというのもあった。
やっと、領地についた頃には、私の体は短期間で動き回っていたためぐったりしていたので、有無を言わず、ベッドにジョーと一緒に潜り込むことにした。
あぁ、我が家のベッドは、リアンが私好みに整えてくれていてとても気持ちいい。
ベッドに入った瞬間、寝てしまうのであった。
◆◇◆◇◆
起きたら、次の日でした……外では、鳥がちゅんちゅんと鳴いている。
隣で眠っていたはずのジョーはいないし、いつの間にか夜着に着替えてるし……優秀な侍女たちのおかげで、快適に眠ってしまったようだ。
「おはようございます」
部屋に入ってきたのは、久しぶりに会う侍女のリアンである。
「おはよう……一晩、寝ちゃったのね」
「起こしたのですけど、全然起きられなかったのでゆっくり寝ていただきました。
お疲れでしたから、今からゆっくりお風呂になどいかがですか?
沸かしてありますから、ご用意しますね!」
「お風呂は、ありがたいわね……馬車に乗りっぱなしだったから……体中痛くて……」
「あの、それで、1つ伺いたいのですけど……」
「何かしら?」
「昨日、着替えをしてて、その……2ヶ所に……痕が……ありまして……」
殿下とシルキーがつけたのを着替えさせてくれたときに見てしまったようだ。
時間がたっているので、だいぶ薄くはなっているのだけど、気付いたらしい。
「うん、聞かない方がいいと思うから、黙っていてくれると嬉しいわ!
もう少ししたら消えるでしょうし」
畏まりましたとリアンは言い、私の着替えを用意してくれている。
このまま、お風呂に向かうようだ。
お風呂に入って、ここしばらくの疲れをきれいさっぱり洗い流すと、体が軽くなった気がする。
「アンナリーゼ様、あまり、無理はなさらないでくださいね!」
妊婦である私は、意外と頑張りすぎているのだ。
リアンがとても心配してくれることが嬉しかった。
「ありがとう。今日は、報告だけ聞いて、あとはのんびり過ごす予定よ!」
「やっぱり、執務されるのですね……」
リアンは、ため息をついているが、報告を聞くくらいなら、別に執務のうちに入らないだろう。
「程々になさいませ……お体に障りますからね!」
「そうね、そのとおりね。
悪阻らしい悪阻がないのよね……私の中でちゃんと育っているのかしら?」
私はお腹をさするが、いつもと変わらずぺったんこなのである。
ジョーのときは、今頃は変化があったというのに、今のところ何もない。
確かに、ちょっと無理をしすぎているのだろう……ジョージアも楽しみにしていることだ、自分のことだけでなく、労わろうと思っていたが……唐突に来るものなのだろうか。
「リアン……気持ち悪い……」
「えっ?気持ち悪い……?ちょっと待ってくださいね!」
背中をさすりながら、デリアを呼ぶ。
普段は物静かなリアンなのだが、緊急事態になるとこんなに大きな声が出るのかと驚いた。
すると、気持ち悪いのがすっと消える。
「もう……大丈夫」
顔をしかめたまま、リアンに告げると、一応ヨハンを呼ぶことになった。
「リアン、何かありましたか!」
デリアを呼んだはずだが、ナタリーも一緒に来てくれたのだ。
未だ、風呂場で顔をしかめている私を見てナタリーもデリアもため息ものだ。
「あらあら、悪阻ですか?アンナリーゼ様は、少々頑張りがすぎるのです。
お部屋に戻って、今日は大人しくしていましょうね!
リアン、私が見張っているのでお茶だけ用意してくれるかしら?」
畏まりましたとリアンはお茶の用意に行き、私はナタリーとデリアに逃げないよう両脇を固められてしまった。
これでは、執務室へ行って報告を聞きたいなど……とてもじゃないが言えないではないか……観念して、私室へ戻ることにした。
部屋に戻ると、応接セットにナタリーが陣取る。
もちろん、その前に私は座らされ、しゅんとしているところだ。
ただ、ナタリーも忙しく領地を飛び回っていたこともあって、久しぶりにゆっくり話す機会ができたことに私は喜ぶ。
「ナタリー、この前作ってくれた青紫薔薇のドレス、とっても素敵だったわ!
早速、殿下への謁見で着ていったんだけど、ちょっと豪奢だったかな。
もう少しだけ、抑えたもので作ってもらえると嬉しいな!」
「早速、着てくださったんですか?嬉しいです!
その話もしたかったんで、今、いいですか?
休めと言ったはずなのですが……雑談程度に聞いてもらえると」
「えぇ、もちろんよ!聞かせて!
あの、薔薇の刺繍はとても見事だったわ!ナタリーが指導しているの?」
「そうですね、私と共にこちらに来た女性たちにも何か仕事はないのかって、先に領地へ来ていた
子たちと話をしたのです。
そしたら、アンナリーゼ様のドレスや領地で着る服を作りたいんだって言う子が何人もいました
ので、じゃあ、せっかくだからと作っているのです。
それぞれ、縫製が得意のもの、刺繍が得意なもの、デザインが得意なものと個性が違うので分けて
作業をしてもらっています。
あのドレス、ニコライが買い付けているものの半分くらいの料金で作れますよ!」
「それって、女性たちの賃金が安いってこと?」
「いえ、そんなことはないと思います。
ひと月、きっちり働いたら、セバスの給金3分の1くらいにはなりますから……」
セバスの給金を知っていることにもまず驚いたが……もしそうであるなら、かなりの高給取りだ。
セバスは国の文官であり爵位持ちなので、若くてもそこそこの給金がもらえている。
なので、アンバーという極貧の領地では、セバスのひと月分の給金でサラおばさんの村が1つ生活できるくらいなのだ。
ウィルとセバスは、国から無期限貸し出しなので、国から給金が出ている。
なので、今のところ、二人に対して極貧であるアンバー領からの給金は1円も出ていない。
もし、ウィルに給金を払うとなると……この辺境で1番大きなテクトの町1つ分の税金を投入しても間に合わないのだ。
なので、二人の無期限貸し出しは、とってもありがたい。
「きっちり働いたらってことだけど、どう言うこと?」
「簡単にいうと、時間ができたら仕事をしに来るって感じですかね。
私のところへ記録用紙を取りにきて、始めた時間と終わった時間を書いてもらい、出来た分を
評価をしているのです。
その評価にあった金額を彼女たちには支払っています」
「評価は、ナタリーがするのかしら?」
「すべてではありません。同じものを三人で評価をして平均点を取るのです。
その平均点と働いた時間により給金を払っています。
なので、私が連れてきた人ばかりでなく、領地で手に余裕がある人はみんな雇っていますよ!
評価があるので、よかったところ、悪かったところ、修正箇所などを伝えると、アンバー領の
女性たちは向上心が高いのか、次に来るときには、修正箇所なのの指摘したところは上達して
いますね。この領地、すごいです!」
領民を褒められているのに、私自身がとても嬉しい。
子どもを褒められた親のような気分だ。
「出来上がったものはどうしているのかしら?」
「今のところ、アンナリーゼ様用のもの以外は、ニコライに買い取ってもらっています。
それを元手に、女性たちにも給金が払えるので助かっていますよ!
生地とか材料については、ニコライが格安で仕入れてきてくれるので、好きに作らせてもらってます」
「ニコライも早速、ナタリーに話を持っていったのね?」
「アンナリーゼ様が出かけられてからすぐの話ですよ!
私も女性たちも給金というものがあると、やはりやりがいをさらに感じるようですね」
「そうなのね!ナタリー、今後もあなたたちに期待しているわ!
あと、別件でお願いがあるのだけど、いいかしら?」
「もちろんですよ!なんですか?」
私は、紙を持ってきて、さらさらとその紙に簡単なデザインを施していく。
得意ではないので、大雑把に書いてしまったのだが……心得たようにナタリーは、その絵をしっかり見ていた。
「悪いのだけど、2、3週間で仕上げてほしいの。
色は赤でお願いね。それと、なるべく豪奢で華やかにしてほしいの!」
「わかりました。この縁取りですけど、金とか銀とかでもいいですか?」
「うん、任せるわ!」
ナタリーは、雑なデザイン画を見て、頷いてくれる。
きっと、この前のドレスのように素敵なものを作ってくれるだろう。
「あと、相談なんだけど……」
「何かあるったのですか?」
首をかしげ、他に何かあるのだろうかと考えているようだ。
「カレンの好きなものって何があるか知っているかしら?」
「カレン様のですか?旦那様に、お酒に、あと……リンゴだっと思います」
「リンゴ?」
「カレン様のご実家の特産品ですね。あの領地のリンゴを食べると、他のは食べられませんよ!
何故ですか?」
「先日、ジョーの1歳の誕生を祝ってくれたから、お返しがしたくて……」
「なるほど……それなら、アンバー特産『赤い涙』にすればいいんじゃないですかね?
カレン様、本当に気に入ってらっしゃったから!」
なるほど……これは、ひとつ試してみたいことがあるので、それも兼ねてお礼してみようと私は考えたのである。
喜んでくれると……いいな。
私は意外と、サプライズが好きなようで……思わずニコニコと微笑んでしまった。
フレイゼンの屋敷では、ほんのひとときの休息を取った。
両親や兄、義姉や甥たちと過ごせた少ない時間は、私にとってホッと一息入れるには短いような名残惜しいような気持ちにさせる。
ジョーも私が城であれこれをしている間、甥のクリスやフランに遊んでもらっていたらしく、とても懐いていたらしい。
翌朝には、また、馬車に揺られる。
行きとは違い、馬車の中はジョーと二人きりであるし、もう1つ馬車が追加され、ガラス職人親子を乗せ後ろをついてきている。
さらに両親からジョーへの貢ぎ物がぎっしりつまった馬車が1台追加され、ガラス職人親子のためにもう1台馬車を追加したので、4台の馬車で領地を目指しているところだ。
何日もかけて帰ることになり、侍女もいないので結構大変だった。
ジョーが幸いにも、大人しく私の隣に座ったり、窓の外を眺めたりとしてくれていたおかげで、手がかからなかった。
馬車の中では、常に話しかけていたことも嬉しかったのか、終始ご機嫌だったというのもあった。
やっと、領地についた頃には、私の体は短期間で動き回っていたためぐったりしていたので、有無を言わず、ベッドにジョーと一緒に潜り込むことにした。
あぁ、我が家のベッドは、リアンが私好みに整えてくれていてとても気持ちいい。
ベッドに入った瞬間、寝てしまうのであった。
◆◇◆◇◆
起きたら、次の日でした……外では、鳥がちゅんちゅんと鳴いている。
隣で眠っていたはずのジョーはいないし、いつの間にか夜着に着替えてるし……優秀な侍女たちのおかげで、快適に眠ってしまったようだ。
「おはようございます」
部屋に入ってきたのは、久しぶりに会う侍女のリアンである。
「おはよう……一晩、寝ちゃったのね」
「起こしたのですけど、全然起きられなかったのでゆっくり寝ていただきました。
お疲れでしたから、今からゆっくりお風呂になどいかがですか?
沸かしてありますから、ご用意しますね!」
「お風呂は、ありがたいわね……馬車に乗りっぱなしだったから……体中痛くて……」
「あの、それで、1つ伺いたいのですけど……」
「何かしら?」
「昨日、着替えをしてて、その……2ヶ所に……痕が……ありまして……」
殿下とシルキーがつけたのを着替えさせてくれたときに見てしまったようだ。
時間がたっているので、だいぶ薄くはなっているのだけど、気付いたらしい。
「うん、聞かない方がいいと思うから、黙っていてくれると嬉しいわ!
もう少ししたら消えるでしょうし」
畏まりましたとリアンは言い、私の着替えを用意してくれている。
このまま、お風呂に向かうようだ。
お風呂に入って、ここしばらくの疲れをきれいさっぱり洗い流すと、体が軽くなった気がする。
「アンナリーゼ様、あまり、無理はなさらないでくださいね!」
妊婦である私は、意外と頑張りすぎているのだ。
リアンがとても心配してくれることが嬉しかった。
「ありがとう。今日は、報告だけ聞いて、あとはのんびり過ごす予定よ!」
「やっぱり、執務されるのですね……」
リアンは、ため息をついているが、報告を聞くくらいなら、別に執務のうちに入らないだろう。
「程々になさいませ……お体に障りますからね!」
「そうね、そのとおりね。
悪阻らしい悪阻がないのよね……私の中でちゃんと育っているのかしら?」
私はお腹をさするが、いつもと変わらずぺったんこなのである。
ジョーのときは、今頃は変化があったというのに、今のところ何もない。
確かに、ちょっと無理をしすぎているのだろう……ジョージアも楽しみにしていることだ、自分のことだけでなく、労わろうと思っていたが……唐突に来るものなのだろうか。
「リアン……気持ち悪い……」
「えっ?気持ち悪い……?ちょっと待ってくださいね!」
背中をさすりながら、デリアを呼ぶ。
普段は物静かなリアンなのだが、緊急事態になるとこんなに大きな声が出るのかと驚いた。
すると、気持ち悪いのがすっと消える。
「もう……大丈夫」
顔をしかめたまま、リアンに告げると、一応ヨハンを呼ぶことになった。
「リアン、何かありましたか!」
デリアを呼んだはずだが、ナタリーも一緒に来てくれたのだ。
未だ、風呂場で顔をしかめている私を見てナタリーもデリアもため息ものだ。
「あらあら、悪阻ですか?アンナリーゼ様は、少々頑張りがすぎるのです。
お部屋に戻って、今日は大人しくしていましょうね!
リアン、私が見張っているのでお茶だけ用意してくれるかしら?」
畏まりましたとリアンはお茶の用意に行き、私はナタリーとデリアに逃げないよう両脇を固められてしまった。
これでは、執務室へ行って報告を聞きたいなど……とてもじゃないが言えないではないか……観念して、私室へ戻ることにした。
部屋に戻ると、応接セットにナタリーが陣取る。
もちろん、その前に私は座らされ、しゅんとしているところだ。
ただ、ナタリーも忙しく領地を飛び回っていたこともあって、久しぶりにゆっくり話す機会ができたことに私は喜ぶ。
「ナタリー、この前作ってくれた青紫薔薇のドレス、とっても素敵だったわ!
早速、殿下への謁見で着ていったんだけど、ちょっと豪奢だったかな。
もう少しだけ、抑えたもので作ってもらえると嬉しいな!」
「早速、着てくださったんですか?嬉しいです!
その話もしたかったんで、今、いいですか?
休めと言ったはずなのですが……雑談程度に聞いてもらえると」
「えぇ、もちろんよ!聞かせて!
あの、薔薇の刺繍はとても見事だったわ!ナタリーが指導しているの?」
「そうですね、私と共にこちらに来た女性たちにも何か仕事はないのかって、先に領地へ来ていた
子たちと話をしたのです。
そしたら、アンナリーゼ様のドレスや領地で着る服を作りたいんだって言う子が何人もいました
ので、じゃあ、せっかくだからと作っているのです。
それぞれ、縫製が得意のもの、刺繍が得意なもの、デザインが得意なものと個性が違うので分けて
作業をしてもらっています。
あのドレス、ニコライが買い付けているものの半分くらいの料金で作れますよ!」
「それって、女性たちの賃金が安いってこと?」
「いえ、そんなことはないと思います。
ひと月、きっちり働いたら、セバスの給金3分の1くらいにはなりますから……」
セバスの給金を知っていることにもまず驚いたが……もしそうであるなら、かなりの高給取りだ。
セバスは国の文官であり爵位持ちなので、若くてもそこそこの給金がもらえている。
なので、アンバーという極貧の領地では、セバスのひと月分の給金でサラおばさんの村が1つ生活できるくらいなのだ。
ウィルとセバスは、国から無期限貸し出しなので、国から給金が出ている。
なので、今のところ、二人に対して極貧であるアンバー領からの給金は1円も出ていない。
もし、ウィルに給金を払うとなると……この辺境で1番大きなテクトの町1つ分の税金を投入しても間に合わないのだ。
なので、二人の無期限貸し出しは、とってもありがたい。
「きっちり働いたらってことだけど、どう言うこと?」
「簡単にいうと、時間ができたら仕事をしに来るって感じですかね。
私のところへ記録用紙を取りにきて、始めた時間と終わった時間を書いてもらい、出来た分を
評価をしているのです。
その評価にあった金額を彼女たちには支払っています」
「評価は、ナタリーがするのかしら?」
「すべてではありません。同じものを三人で評価をして平均点を取るのです。
その平均点と働いた時間により給金を払っています。
なので、私が連れてきた人ばかりでなく、領地で手に余裕がある人はみんな雇っていますよ!
評価があるので、よかったところ、悪かったところ、修正箇所などを伝えると、アンバー領の
女性たちは向上心が高いのか、次に来るときには、修正箇所なのの指摘したところは上達して
いますね。この領地、すごいです!」
領民を褒められているのに、私自身がとても嬉しい。
子どもを褒められた親のような気分だ。
「出来上がったものはどうしているのかしら?」
「今のところ、アンナリーゼ様用のもの以外は、ニコライに買い取ってもらっています。
それを元手に、女性たちにも給金が払えるので助かっていますよ!
生地とか材料については、ニコライが格安で仕入れてきてくれるので、好きに作らせてもらってます」
「ニコライも早速、ナタリーに話を持っていったのね?」
「アンナリーゼ様が出かけられてからすぐの話ですよ!
私も女性たちも給金というものがあると、やはりやりがいをさらに感じるようですね」
「そうなのね!ナタリー、今後もあなたたちに期待しているわ!
あと、別件でお願いがあるのだけど、いいかしら?」
「もちろんですよ!なんですか?」
私は、紙を持ってきて、さらさらとその紙に簡単なデザインを施していく。
得意ではないので、大雑把に書いてしまったのだが……心得たようにナタリーは、その絵をしっかり見ていた。
「悪いのだけど、2、3週間で仕上げてほしいの。
色は赤でお願いね。それと、なるべく豪奢で華やかにしてほしいの!」
「わかりました。この縁取りですけど、金とか銀とかでもいいですか?」
「うん、任せるわ!」
ナタリーは、雑なデザイン画を見て、頷いてくれる。
きっと、この前のドレスのように素敵なものを作ってくれるだろう。
「あと、相談なんだけど……」
「何かあるったのですか?」
首をかしげ、他に何かあるのだろうかと考えているようだ。
「カレンの好きなものって何があるか知っているかしら?」
「カレン様のですか?旦那様に、お酒に、あと……リンゴだっと思います」
「リンゴ?」
「カレン様のご実家の特産品ですね。あの領地のリンゴを食べると、他のは食べられませんよ!
何故ですか?」
「先日、ジョーの1歳の誕生を祝ってくれたから、お返しがしたくて……」
「なるほど……それなら、アンバー特産『赤い涙』にすればいいんじゃないですかね?
カレン様、本当に気に入ってらっしゃったから!」
なるほど……これは、ひとつ試してみたいことがあるので、それも兼ねてお礼してみようと私は考えたのである。
喜んでくれると……いいな。
私は意外と、サプライズが好きなようで……思わずニコニコと微笑んでしまった。
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