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公からの召喚状
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朝から来てもらったナタリーとカレンを伴って昼食を食べた。
有益な話も聞けたので、お腹を満たす食事がより一層おいしく感じている。
隣に座るジョージアはそうではなかったようで、食が進まない感じである。
それは、仕方ないと言えば、仕方がないのだが……
ジョージアにとって第二夫人であるソフィアやその親であるダドリー男爵の話を聞けば、どうしようもない気持ちを抱えるのはわかっていた。
でも、きちんと聞いていたので、むしろ感心してしまった。
昼からは、ナタリーとカレンはおいしいケーキのあるお店でお茶をするのだと帰っていったので、執務室でジョージアと二人無言で2時間過ぎていった。
公への書類を書いていので、それほど無言は気になっていなかったが、ジョージアに言い忘れていたことを思い出し、声をかけた。
「ジョージア様、今、いいですか?」
「あぁ、構わない。何?」
「言い忘れていたのですけど……私、一度領地に行かないといけなくなったのです。
今週中に公からの連絡をいただけなかった場合、行ってきてもいいですか?」
「それは、絶対なの?」
「えぇ、そうですね……ちょっと厄介ごとがありまして」
「領地で厄介ごと?」
「……あの、驚かないでくださいね?」
「アンナには、驚かされることばかりだから……驚くかもね?」
「もぅ!」
ジョージアの座る応接セットの前まで行き、対面のソファに座る。
トロっとした蜂蜜色の瞳が、好奇心からか少しきらきらしているのだか、たぶん、一瞬で吹き飛ぶだろう。
「実は、私の配下になりたいと申す御人がいましてね?」
「うん、いいんじゃないか?
人手はたくさんほしいのだと言っていただろ?」
「そうなんですけど……その人の名前聞くと……驚くと思いますよ?」
「あぁ、覚悟している。
貴族の友人たちを顎で使っているようだから……まぁ大丈夫だろう」
「じゃあ、いいますからね?
本当に、大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ」
「えっと……その人は、インゼロ帝国のノクト将軍です!」
「はい……?よく聞こえなかったから、アンナ、もう一度、なんて言ったの?」
聞こえていたけど、耳を疑ったのだろう。
私は、立ち上がり、両腰に手を添え、仁王立ちし、程々に通るちょっぴり大きな声でその名を言う。
「インゼロ帝国のノクト将軍です!ノクト・ヨルンダル!
あと、配下軍師イチアとお願いしていた諸々が領地に来たと知らせがあったので
行かないとなりません!」
「アンナ……?
インゼロ帝国のノクトって……連戦連勝のノクト将軍のこと?」
「だから、さっきからずっと申し上げているじゃないですか!」
困惑顔のジョージアをそっちのけに、ふんっと鼻息荒くどかっとソファに座る。
「あのさ……?」
「冗談ではないですよ?ご自分で確認なさいますか?」
「あぁ、それは、うん、そうだね。領地に行くときは、一緒に行くよ!
でさ、あの、経緯を教えてくれるかな……?配下になったっていう」
「簡単にいうと……」
うんうんと食い入るように私の話に耳を傾ける。
「砂糖が欲しかったのです。
そしたら、おまけで、いろいろついてきちゃいましたって感じです。
いらないんですけどねぇ……」
「もうちょっと、詳しく教えてくれる?」
めんどくさいなぁ……と思いながら、ノクトに会ったところからジョージアに説明をする。
真摯に聞いてくれるのは嬉しいんだけど……私も欲しくて手に入った人物ではないし、要注意人物には変わりないので、お引き取り願いたいのだけど……と思っている。
「たしか、公爵位だったよね?」
「そうですね。
全部息子にあげてくるって言ってました。
本人は、自由気ままに商人として旅をしたり、クワ持って畑を耕したりする方が
好きだそうで、今回の話になったのです」
「アンナには驚かされることばかりだけど……今回は、別物だね。
どうするの?」
「どうするもこうするも、本人来ちゃってますから……受け入れるしかないです。
それに、ウィルが欲しいって言ってるから、絶対あげませんからね!」
「ウィルか……アンナもアンジェラも、ウィルなんだなぁ……」
寂しそうな目を私に向けてくるが、どこにそんな寂しくなるようなことがあるのだろうか?
ジョージアにだって、友人はいる。
例えば、公世子様だ。
それと同じではないのだろうか……?
「ウィルは、私にとっていてくれないと困る存在です。
この改革には、補佐がどうしてもいるので……人好きされるウィルの存在は不可欠です。
さらに、ブレーンとしてセバスとニコライとパルマ、女性のまとめ役としてナタリー。
他にも領地で私の手足となって動いてくれる人がいますよ!」
自信満々に領地改革に必要な人物を指折り話していく。
みんな私のしようとしていることに賛同してくれて集まってくれた仲間ばかりだ。
その中に、ノクトという敵国の将軍が加わっただけの話。
「ジョージア様は、私の心の支えです。
頑張りすぎる私を、休憩させてくれるそんな場所を提供してください!」
指折り連ねる中に自分の名前が入っていなかったことを悔しく思っていたのだろうか?
最後の私の言葉に頷きながら微笑んでくれる。
「ジョージア様は、私にとって特別なんですよ。
何も考えず、でーんっとしていればいいのですよ!
私は、ふらふらとあっちやこっちに行きますけど、帰る場所は、ジョージア様の隣だと
決めていますから!
必ず、帰ってきますからね、待っていてください!
あっ!たまには、迎えに来てくれてもいいですからね!」
「アンナらしい、雑な話だな」
「雑って……別にいいじゃないですか。
頭のいることは、頭のいい人に考えてもらえばいいのです。
私は、先頭に立って旗を振る、そんなちょっとした役割をするだけです。
私なんて、所詮ちっぽけな人間ですからね!
誰かに手を差し伸べてもらわないと何か事を進める力なんてありません。
こんな私でも助けてくれるっていう友人や侍従、領民たちとがいるから一緒に
頑張るのです。
ジョージア様は、一人で抱え込みですよ!
あぁ、これウィルに私も言われたんでした……もっと、周りを頼っていいんですって!
私、頼ってたつもりなんですけど……まだまだだって言われました。
ウィルは、気負いすぎる私のガス抜きですから、必要なのですよ!」
ジョージアに雑な私の考えを語りつくした頃、ディルが部屋に入ってきた。
「休憩でしたか?」
「そうね、そんなものかしら?」
「呼んでいただければお茶をお持ちしましたのに……」
そういえば……と思ったが、大丈夫よ!とディルに笑っておく。
「今度からは呼んでください!」
「わかったわ!ディル、いつもありがとう!」
「いえ、あと、こちらお持ちしました。
公より召喚状となっています。ご確認ください」
渡された召喚状の封を開ける。
謁見の日時が書いてあり、明日のお昼以降となっている。
昼以降は、私達の時間に取ったと書いてあったので、ジョージアと頷きあい、今作っている書類を仕上げるようまた、机に向かうのである。
「ディル、明日は正装ですから、用意をお願いします」
「正装ですか?」
「うん、正装じゃないとダメかな?」
「かしこまりました、では、そのように侍女たちに話しておきます」
お願いね!というと、ディルは部屋から出て行った。
早速、明日の準備に取り掛かってくれるだろう。
書類に今日聞いた話も加え、そろそろ出来上がる。
おかしな点がないか、ジョージアに確認をしてもらい、公爵印を押してもらう。
これで、準備は整った。
明日の謁見で、次の動き方が変わる。
私は、柄にもなく緊張してしまった。
それを感じたのか、側にやってきてジョージアがぎゅっと抱きしめてくれる。
「アンナの心の支えだったね。
大丈夫、俺も一緒にいるし、明日は、アンジェラも一緒だから。
アンナの思う通りにすればいいんだよ」
その言葉を聞き、緊張をとき落ち着き払う。
耳から聞こえるジョージアの声は、やはり特別だ。
「ジョージア様は、やっぱり私の特別ですね!」
上を見上げると、ジョージアのトロっとした瞳と目が合う。
微笑んでくれると、自然と私も綻ぶ。
明日、頑張ろう。
自分が望む未来のため、領地で待ってくれている領民のため、そして、ジョーの命を守るため……
私たちは、ベッドに向かいゆっくりと眠りにつくのであった。
有益な話も聞けたので、お腹を満たす食事がより一層おいしく感じている。
隣に座るジョージアはそうではなかったようで、食が進まない感じである。
それは、仕方ないと言えば、仕方がないのだが……
ジョージアにとって第二夫人であるソフィアやその親であるダドリー男爵の話を聞けば、どうしようもない気持ちを抱えるのはわかっていた。
でも、きちんと聞いていたので、むしろ感心してしまった。
昼からは、ナタリーとカレンはおいしいケーキのあるお店でお茶をするのだと帰っていったので、執務室でジョージアと二人無言で2時間過ぎていった。
公への書類を書いていので、それほど無言は気になっていなかったが、ジョージアに言い忘れていたことを思い出し、声をかけた。
「ジョージア様、今、いいですか?」
「あぁ、構わない。何?」
「言い忘れていたのですけど……私、一度領地に行かないといけなくなったのです。
今週中に公からの連絡をいただけなかった場合、行ってきてもいいですか?」
「それは、絶対なの?」
「えぇ、そうですね……ちょっと厄介ごとがありまして」
「領地で厄介ごと?」
「……あの、驚かないでくださいね?」
「アンナには、驚かされることばかりだから……驚くかもね?」
「もぅ!」
ジョージアの座る応接セットの前まで行き、対面のソファに座る。
トロっとした蜂蜜色の瞳が、好奇心からか少しきらきらしているのだか、たぶん、一瞬で吹き飛ぶだろう。
「実は、私の配下になりたいと申す御人がいましてね?」
「うん、いいんじゃないか?
人手はたくさんほしいのだと言っていただろ?」
「そうなんですけど……その人の名前聞くと……驚くと思いますよ?」
「あぁ、覚悟している。
貴族の友人たちを顎で使っているようだから……まぁ大丈夫だろう」
「じゃあ、いいますからね?
本当に、大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ」
「えっと……その人は、インゼロ帝国のノクト将軍です!」
「はい……?よく聞こえなかったから、アンナ、もう一度、なんて言ったの?」
聞こえていたけど、耳を疑ったのだろう。
私は、立ち上がり、両腰に手を添え、仁王立ちし、程々に通るちょっぴり大きな声でその名を言う。
「インゼロ帝国のノクト将軍です!ノクト・ヨルンダル!
あと、配下軍師イチアとお願いしていた諸々が領地に来たと知らせがあったので
行かないとなりません!」
「アンナ……?
インゼロ帝国のノクトって……連戦連勝のノクト将軍のこと?」
「だから、さっきからずっと申し上げているじゃないですか!」
困惑顔のジョージアをそっちのけに、ふんっと鼻息荒くどかっとソファに座る。
「あのさ……?」
「冗談ではないですよ?ご自分で確認なさいますか?」
「あぁ、それは、うん、そうだね。領地に行くときは、一緒に行くよ!
でさ、あの、経緯を教えてくれるかな……?配下になったっていう」
「簡単にいうと……」
うんうんと食い入るように私の話に耳を傾ける。
「砂糖が欲しかったのです。
そしたら、おまけで、いろいろついてきちゃいましたって感じです。
いらないんですけどねぇ……」
「もうちょっと、詳しく教えてくれる?」
めんどくさいなぁ……と思いながら、ノクトに会ったところからジョージアに説明をする。
真摯に聞いてくれるのは嬉しいんだけど……私も欲しくて手に入った人物ではないし、要注意人物には変わりないので、お引き取り願いたいのだけど……と思っている。
「たしか、公爵位だったよね?」
「そうですね。
全部息子にあげてくるって言ってました。
本人は、自由気ままに商人として旅をしたり、クワ持って畑を耕したりする方が
好きだそうで、今回の話になったのです」
「アンナには驚かされることばかりだけど……今回は、別物だね。
どうするの?」
「どうするもこうするも、本人来ちゃってますから……受け入れるしかないです。
それに、ウィルが欲しいって言ってるから、絶対あげませんからね!」
「ウィルか……アンナもアンジェラも、ウィルなんだなぁ……」
寂しそうな目を私に向けてくるが、どこにそんな寂しくなるようなことがあるのだろうか?
ジョージアにだって、友人はいる。
例えば、公世子様だ。
それと同じではないのだろうか……?
「ウィルは、私にとっていてくれないと困る存在です。
この改革には、補佐がどうしてもいるので……人好きされるウィルの存在は不可欠です。
さらに、ブレーンとしてセバスとニコライとパルマ、女性のまとめ役としてナタリー。
他にも領地で私の手足となって動いてくれる人がいますよ!」
自信満々に領地改革に必要な人物を指折り話していく。
みんな私のしようとしていることに賛同してくれて集まってくれた仲間ばかりだ。
その中に、ノクトという敵国の将軍が加わっただけの話。
「ジョージア様は、私の心の支えです。
頑張りすぎる私を、休憩させてくれるそんな場所を提供してください!」
指折り連ねる中に自分の名前が入っていなかったことを悔しく思っていたのだろうか?
最後の私の言葉に頷きながら微笑んでくれる。
「ジョージア様は、私にとって特別なんですよ。
何も考えず、でーんっとしていればいいのですよ!
私は、ふらふらとあっちやこっちに行きますけど、帰る場所は、ジョージア様の隣だと
決めていますから!
必ず、帰ってきますからね、待っていてください!
あっ!たまには、迎えに来てくれてもいいですからね!」
「アンナらしい、雑な話だな」
「雑って……別にいいじゃないですか。
頭のいることは、頭のいい人に考えてもらえばいいのです。
私は、先頭に立って旗を振る、そんなちょっとした役割をするだけです。
私なんて、所詮ちっぽけな人間ですからね!
誰かに手を差し伸べてもらわないと何か事を進める力なんてありません。
こんな私でも助けてくれるっていう友人や侍従、領民たちとがいるから一緒に
頑張るのです。
ジョージア様は、一人で抱え込みですよ!
あぁ、これウィルに私も言われたんでした……もっと、周りを頼っていいんですって!
私、頼ってたつもりなんですけど……まだまだだって言われました。
ウィルは、気負いすぎる私のガス抜きですから、必要なのですよ!」
ジョージアに雑な私の考えを語りつくした頃、ディルが部屋に入ってきた。
「休憩でしたか?」
「そうね、そんなものかしら?」
「呼んでいただければお茶をお持ちしましたのに……」
そういえば……と思ったが、大丈夫よ!とディルに笑っておく。
「今度からは呼んでください!」
「わかったわ!ディル、いつもありがとう!」
「いえ、あと、こちらお持ちしました。
公より召喚状となっています。ご確認ください」
渡された召喚状の封を開ける。
謁見の日時が書いてあり、明日のお昼以降となっている。
昼以降は、私達の時間に取ったと書いてあったので、ジョージアと頷きあい、今作っている書類を仕上げるようまた、机に向かうのである。
「ディル、明日は正装ですから、用意をお願いします」
「正装ですか?」
「うん、正装じゃないとダメかな?」
「かしこまりました、では、そのように侍女たちに話しておきます」
お願いね!というと、ディルは部屋から出て行った。
早速、明日の準備に取り掛かってくれるだろう。
書類に今日聞いた話も加え、そろそろ出来上がる。
おかしな点がないか、ジョージアに確認をしてもらい、公爵印を押してもらう。
これで、準備は整った。
明日の謁見で、次の動き方が変わる。
私は、柄にもなく緊張してしまった。
それを感じたのか、側にやってきてジョージアがぎゅっと抱きしめてくれる。
「アンナの心の支えだったね。
大丈夫、俺も一緒にいるし、明日は、アンジェラも一緒だから。
アンナの思う通りにすればいいんだよ」
その言葉を聞き、緊張をとき落ち着き払う。
耳から聞こえるジョージアの声は、やはり特別だ。
「ジョージア様は、やっぱり私の特別ですね!」
上を見上げると、ジョージアのトロっとした瞳と目が合う。
微笑んでくれると、自然と私も綻ぶ。
明日、頑張ろう。
自分が望む未来のため、領地で待ってくれている領民のため、そして、ジョーの命を守るため……
私たちは、ベッドに向かいゆっくりと眠りにつくのであった。
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