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夫婦で過ごす日

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 玄関で別宅の執事を撃退した後、ジョージアが鳴らしたベルが聞こえたのでディルと一緒に部屋に急ぐ。



「おはよう!よく寝られた?」



 まだ眠いのか、ぼうっとしているジョージアが座っているベッドへ腰を掛け、手を伸ばした。
 そのままジョージアに引き寄せられ、おはようのキスをされる。



「もう!ジョージア様ったら!!」



 なんだか、恥ずかしくなってきて、ジョージアの背中をバンバン叩いてしまう。
 痛かったのか、なんだか涙目になっている。



「軽食の用意をしたけど、食べる?もう少し後の方がいい?」
「頂こう。アンナはもう食べたのか?」
「まだ、食べていませんよ。一緒に食べましょう。私もお腹がすきました」



 私もジョーの元へ行ったり別宅の執事と遊んでいたのでまだ食べてなくて、お腹がすいている。
 お腹すいたよという意味を込めて、私は自分のお腹をさすると、ジョージアは、クシャッと私を見て笑った。
 今は、冬なので部屋は温かくしてくれてはいるけど、上にかけるものが必要だと思い、手じかにあるガウンをジョージアに渡した。


 応接セットに軽食を用意してもらったので、二人で並んで食べることにした。



「顔色、だいぶ良くなったね。今日はこのままここにいて、ゆっくりするように」
「しかし、そういうわけにはいかない。領地の……」



 私は、ジョージアが言おうとする言葉を手で口元を抑えて言わせない。
 どう見ても、ジョージアには、休息が必要なのだ。
 わがままでも言って、休ませようと思った。


 そして、私は、ジョージアを見て反省する。
 私も、先日までこんな顔していたのだろうか?
 みんなに心配かけていたことを申し訳なく思い、もっと、周りを頼ろう、自分も大事にしようと心がけることにした。


 私、ジョージア様が側にいなかったし、領地のことを想って少し気負いすぎていたのかもしれないわね……
 今の穏やかな気持ちを考えると、ぽっかり空いた穴が何だったのか、それを埋めるために忙しくしていたのだと気づく。

 みんなは、もっと早くに私の異変に気付いていたのだろう……だから、気遣ってくれていたし、側にいてくれたのだ。
 友人や侍従たちには、感謝しかない。



「いいではないですか。たまには休憩も必要。
 ただ資料を見て唸るだけが仕事じゃないわ。
 領民を想うなら、よりよい政策を考え、豊かにし、返していかないと。
 そのための公爵が、疲れて頭が動かないじゃ困るわよ!
 私なら、そんな情報が入ってきたら、一発殴りに来ちゃうかも……」



 寝起きのジョージアに冗談で言ったつもりだったのが、どうも顔が、冗談じゃないという怯えていた。



「さすがに物騒だぞ……しかも、洒落になっていない。
 アンナは、普通にやってのけられるだろう?
 俺やうちの警備隊より、よっぽど強いのだから……」
「そんなことないですよー!!って言いたいですけど、可愛らしく守られている夫人では
 ないですねぇ……」



 尻つぼみに言うと、そうだろ?とジョージアが笑っている。



「ところで、どこに行っていたのだ?」



 私は……答えるのに、少し悩む。
 さっきのことは、言わなくていいだろう……



「子どものところにいっていたの。
 もう、お昼ですからね、あんまり顔出さないと、あの子気にするから……
 可愛いのよ、とっても!
 ジョージア様、顔が情けなくなっていますわ?
 何を考えているのやら……やらしい……」



 ジョージアに、ジョーの話をすると、顔が綻んでいる。
 昨日、初めて抱いていたのを見ていたので、きっと我が子のことを想ってくれているのだろう。
 可愛らしいので、からかうことにした。


「そなたには関係ないであろう。どこの誰を想っていようと……」
「はいはい、うちの子かわいいもんね。しかたないですよねぇ?
 将来それはそれはモテモテですよ。
 それこそ、ジョージア様以上になるに違いありません。
 ジョージア様って意外と見る目のない残念男子でしたからね……
 私というのが近くにいたのに、声すらかけないって。
 顔も成績もいいだけにもったいなかった。
 メアリーって覚えていますか?」


 反論したそうに口を開きかけたりしていたが、私は知らぬ顔して、我が子自慢から、ジョージア様のヘタレ話に展開していく。
 ただ、それじゃ可哀想なので、少し別の話に変える。
 まぁ、からかうのは続くのだけど……



「メアリーとは栗毛のおとなしそうな子ではなかったか?」
「そう!そうです。よく覚えていましたね。
 私の大親友です。
 で、よく話していたんですけど、私も薄々気づいていましたよ?
 ジョージア様が、私をチラチラと見てたの」



 私が、ジョージアをからかうと、顔が真っ赤になった。
 学園でのことを思い出したようだ。



「いつ話しかけてくるのでしょう?といつもいつも2人でこっそり話していたんです。
 私たち年頃でしたから、恋の話は朝まででもしていましたし、ちょうど、
 メアリーには想い人もいましたからね。
 ジョージア様は、メアリー曰く私のこと気になっていたでしょ?とっても。
 でも、隣にいつもこわーいトラと狼がいたので、こっそり2人で話をすることしか
 できなかったですね。
 そのおかげで今、ここにいられるのでしょうけど……
 私のハチャメチャなところは見せずに済んだからよかったです!」
「俺は、王太子もヘンリー殿も苦手だったからな。
 気持ちを自覚していたけど、アンナのことは、初めから諦めてもいたのだ。
 他の子息たちが、アンナに迫っている姿を見ては、いつも羨ましかった。
 へたれだと思われていても仕方ない
 その分、卒業式は爽快だったけどなぁー
 高嶺の花を伴っての入場は、最高だった!!」



 私は、そのころのジョージアを思い出し、ふふふっと笑う。



「ジョージア様の話は初めて聞きました。
 本当に私のこと好きだったのですね。
 ちゃんと好かれていたなんて光栄です。
 あのときは、恋に発展もせず終わりましたが、これからは愛で続けていければ
 いいですね。
 私の方は、怖いトラも狼もおうちに置いてきましたから、大丈夫ですよ!
 私が守ってあげますし!!」



 私は、お腹を抱えて笑ってしまう。
 こんな話ができることが、まず、嬉しいし、思わず殿下とハリーの前にジョージア様を庇っている姿を思い浮かべてしまった。
 あまりにもぴったり過ぎて、笑ってしまったのだ。



「どこにそんな面白いとこがあったのだ……どこもおかしくないぞ!?」
「ジョージア様は可愛らしいですね。ぎゅーっとしたくなります」


 私は、おもむろに立ちジョージアへ近寄っていき、ジョージアの頭を私に引き寄せる。
 すると、ジョージアが腰のあたりに腕を回してきて、私を膝の上に座らせる。
 視線があい、どちらからともなく唇を重ねる。


 途中、腰にあった手が、胸に触れられたが私は、何も言わなかった。
 ジョージアがしたいように触らせておく。

 さっきまで、ふざけあっていた雰囲気はどこかへ行き、変わりに熱っぽい視線を向けられる。



「ジョージア様……」



 呟いた頃には、抱きかかえられベッド移動するのであった。
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