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ノクト将軍の条件
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ウィルに案内された場所に私たちは、今晩一泊することになった。
凄く立派なお屋敷で、ここに泊まるの?と思わず、ウィルに尋ねてしまう。
中に入ると、かなり豪華な屋敷で、骨とう品たちが、嫌味にならない程度に品良く並んでいる。
エントランスだけでもかなり目にも素敵な屋敷である。
「ねぇ?ウィル……本当に、このお屋敷で大丈夫なの?
お金……そんなに持ってないわよ?」
「あぁ、いいよ。
お金もいらない。
一応、招待してもらった形だからな!」
「誰に?」
「おっさん!」
ウィルが、おっさんと呼ぶのは……敵国でもあるインゼロ帝国の将軍以外、私は知らなかった。
家族の縁もそんなに深くないウィルなので、他に思い当たらない。
とても、不安になる私達。
飄々としているウィルを見て、なんだか緊張している私達がバカのようだ。
いつまでも緊張してると疲れるので、私達は相談して程々に肩の力を抜くことにした。
そして、我が子は、素知らぬ顔でウィルに抱きついて喜んでいる。
絶対大物になるわ……あぁ、女王になるんだったわね……思わず忘れてしまっていたわと、自分の心の中で突っ込んでしまった。
「ようこそいらっしゃいました!アンバー公爵夫人様。
主よりおもてなしするよう聞いております。
どうぞ、こちらへ……」
この屋敷の執事が案内してくれるようだが、どうも一人ドレスを着ているナタリーを公爵夫人と勘違いしたらしい。
ウィルとセバスが後ろを向いて背を丸めて震えていた。
公爵夫人と言ってもらえなかった私を絶対笑っているに決まっている。
アンバー公爵夫人は、私なのだけど……どっからどう見ても、男装していて、腰に剣までぶら下げている私を公爵夫人だと普通の人なら思わないだろう。
それに、ナタリーの方が、堂々としていて公爵夫人らしい。
まぁ、元々貴族夫人でもあったので間違ってはいないのだけど……
「コホコホ……アンナリーゼ様、長旅でお疲れでしょうから、まずお召しかえされては
いかがですか?
男装のままでも素敵ですが、ドレスをまとうアンバー夫人はもっと素敵ですから!」
ウィルのわざとらしい言い方に、私はむっとしたけど、ここはよそ様のお屋敷だと思いなおし、優雅に返答する。
「気遣いありがとう、ウィル。
それでは、早速、着替えさせていただきますわ!
お部屋に案内していただけるかしら?」
ニッコリ迎えてくれた執事に笑いかけ、それぞれ部屋を案内される。
私の正体を知ったばつの悪そうな執事には、申し訳ないことをしたなと思う。
案内された部屋は、私と同室にナタリーがいてくれ、その隣にウィル、反対側にセバスとニコライという部屋割りになった。
部屋に入ると……眼が眩むほど、すべてが豪華だった。
「ナタリー……この部屋も豪華すぎませんか?」
思わず、敬語でナタリーに話しかけてしまった。
「すごいですね……
どこを見ても、ローズディア城並みですよね……どんな人の持ち物でしょう?
招待だってウィルは言っていたし、アンナリーゼ様、何か聞いてますか?」
「何も聞いてないよ。
おっさんって言ってたからさ……思いつくのが1人しかいないんだけど……
まさかねぇ?って感じだし……」
「ですよね?私も正直驚いてます」
何もかもが一級品以上の特級品で揃えられているので、なんだか落ち着かない。
でも、今日と明日、ここに泊まらせてもらうことになっているので慣れるしかない。
その後、私の着替えを済ませ夕飯をいただき、眠くなるまで私とナタリーに用意してもらった部屋でみんなで寛ぐことにした。
次の日の朝、私はいつもの時間に目が覚め部屋の中で体を軽く動かす。
屋敷から出て庭で体を動かそうかと思ったが、勝手知ったる屋敷ではないので、部屋の中で体をほぐしていく。
その後、ナタリーに公爵夫人にしてもらう。
ドレスをまとい、化粧をし、髪を結う。
アンバーのネックレスをして、青薔薇たちを身に着ければ、アンバー公爵夫人の出来上がりだ。
朝食もいただき、お茶をいただいてのんびりしていると部屋の扉をノックされる。
部屋に入ってきたのは、ウィルだった。
その後ろに2人の男性が立っているのが見える。
「姫さん、おっさん連れてきた!」
「おっさんって、隣国の将軍にいう言葉じゃなくてよ!」
後ろの人物をみて、私は、正直腰を抜かしそうになった。
ここ……ローズディアよね?
そして、公都からそんなに離れていないわよね……?と、背中に冷たいものが流れていく。
とりあえず、私は、公爵家の人間として、1番身分が上ということで一応ウィルを窘める。
「あぁーいいんだ。
ウィルには、俺が好きに呼んでくれと言ったんだ。
初めまして、アンバー公爵夫人」
「初めまして、えっと……」
「あぁ、これは失礼を……名乗っておりませんでしたな?」
「とりあえず、廊下ではなんですので……」
ニカッと人懐っこそうな笑顔を私に向けてしてきた人こそ、インゼロ帝国の将軍である。
年の割に若々しく、胸板を見れば、相当鍛えていることもわかる。
なるほど……ウィルの好きそうな人物だ。
多分、将軍もウィルのことをかなり気に入っているだろう。
ということは、私も好きなタイプだろうとなんとなく思う。
見た瞬間、母方のおじに似たタイプだったのだ。
屋敷の主ではないが、いつまでも廊下に立たせているわけにはいかないので、部屋に招き入れ、セバスとニコライが座っていたところへ座ってもらうようにした。
一緒にいた男性も含めてだ。
「改めて、初めまして、インゼロ帝国のノクト・ヨルンダルと申します。
以後、お見知り置きください。
呼び方は、どんな風にでも」
「こちらこそ、アンナリーゼ・トロン・アンバーと申します。
今日は、わざわざお時間をいただきありがとうごさいます。
では、ノクトと呼ばせていただいても?」
「あぁ、構わない。
あと敬語もやめていいだろうか?」
「かまいません。
ウィルを見ているので知っているかもしれませんが……」
あぁ、と返事をするノクト。
私は、それに頷く。
「私のことも好きに呼んでください。
同じ公爵家ですからね!」
「んじゃ、姫さんか?」
「それは、俺だけだからちょっと……
アンナ様と呼べばいいじゃん!」
ウィルが思わず口をはさんでくる。
ノクトは、ウィルをチラッと見て訳知り顔で笑う。
私は、それが気になったが特に問わなかった。
「それじゃあ、アンナと呼ばせてもらう」
「えぇ、構いませんよ!それで、き……」
「あぁ、待った待った。
そっちの話を聞く前に、俺からも1つ提案があるんだ!」
私は、ノクトの次の言葉を待つとともに訝しむ。
一体何を言うつもりなのだろう……ニヤッと笑うノクト。
その瞬間、先手を打たれた……と悟ってしまった。
「端的に言うと、ウィルを俺の後継者としてインゼロに欲しい」
「はぁあ?何考えてるんだ、おっさん!」
「ウィル、ちょっと黙っていて!」
そう来たか……ウィルは、私のものではない。
従者ではないし、婚姻関係もない。
さらに言えば、ただの学生時代からの友人だ。
私にしてみてば、ウィルを始め、今日一緒にいるのは、従者は誰一人いない。
友人ばかりなのだ。
でも、信頼度は、私にとって他の人達の比ではない身内なのだ。
アメジストを渡している人物は、そういう人物ばかりを選んであるのだ。
それをぬけぬけとくれというノクト。
「ウィルは、ものではなし、私の従者ではないわ!」
「姫さん!」
「黙っていてって言ってるでしょ?上位者には、逆らわないことよ!」
私は、ウィルに対してきつめに言葉で制する。
ウィルは、唇をきつく噛みしめていた。
「ふははは……おもしろいな、アンナは」
「そうでもないわ。
本当のことを言ったまでよ。
で、何のためにウィルが欲しいの?
ことと次第では、ここで、ウィルの首を刎ねることも厭わないわ!
そちらの手の者になるくらいならね!」
友人たちは、私の言葉にギョッとしていたが、一人ウィルだけはホッとしていた。
そのウィルの顔を見てノクトは、本当におもしろそうに笑う。
「単純に、欲しかっただけだ。
でも、主も従も覚悟が決まっているって顔だな。
アンナよ、女で、その覚悟は、なかなか肝が据わっている!」
「いいえ、私は、ウィルにローズディアの友人や仲間たちを傷つけさせるくらいなら、
私がウィルを地獄に送ってあげようと思っただけよ。
いずれ、私も一緒のところに行く予定だから、一人くらい友人がいてもいいでしょ?」
ニッコリ、ノクトに笑いかけると、こりゃまいったわ!と大笑いだ。
隣で、男性が将軍と諫めている。
「惚れない男は、いないな。
こんな思い切りいいお嬢さんは、初めて見たぞ!
ウィルが欲しいのは、本当だが、アンナ、そなたも手に入れたくなったぞ?」
「将軍!!!」
さすがにこちらは、苦笑いするしかないが、一緒にいた男性は、そうはいかないだろう。
敵国のローズディアで、筆頭公爵家の夫人を手に入れたいというのは、それだけで罪になりそうな話である。
私は、公世子に言われ慣れているので、ふぅーん、そうですかっていう程度ではあるのだが。
「将軍が、お騒がせしております。
私は、ノクト将軍の軍師をしておりますイチアと申します。
将軍の言ったことは、戯言と思い忘れてください……
どうか、平にアンバー公爵夫人様には謝罪申し上げます」
「何を申す、イチア!
こんなお嬢さんは、めったにいないのだぞ?」
「滅多にいなくても、ダメです!」
二人が、わぁわぁと目の前で口喧嘩を始める。
それを私たちは、ポカンと見ているしかなかった。
ふと、それも終わり、二人の目が、私を捉える。
ん?と思った瞬間には、気づくのが遅かった。
またもや、してやられてしまったのだ。
「アンナの元で働けばいいんだ!」
「公爵夫人様の元で働かしてもらったらいいんじゃないか!」
ノクトとイチアが声を揃えて私に訴えかける。
「いえ、結構です……ご遠慮願います……」
私が反論したころには、もう、二人の中では決まってしまったらしい……
セバスに視線を向けると顔を横に振っているし、ナタリーに涙目を向けても曖昧に笑って視線を合わせてくれない。
ニコライは、脂汗をかいてしまっている。
断り続けても全然いうことを聞いてくれなかったのである。
一人愉快そうにしているウィルを除いて、私達4人は、深く深く大きなため息をつく以外、何もすることがなくなってしまったのであった。
凄く立派なお屋敷で、ここに泊まるの?と思わず、ウィルに尋ねてしまう。
中に入ると、かなり豪華な屋敷で、骨とう品たちが、嫌味にならない程度に品良く並んでいる。
エントランスだけでもかなり目にも素敵な屋敷である。
「ねぇ?ウィル……本当に、このお屋敷で大丈夫なの?
お金……そんなに持ってないわよ?」
「あぁ、いいよ。
お金もいらない。
一応、招待してもらった形だからな!」
「誰に?」
「おっさん!」
ウィルが、おっさんと呼ぶのは……敵国でもあるインゼロ帝国の将軍以外、私は知らなかった。
家族の縁もそんなに深くないウィルなので、他に思い当たらない。
とても、不安になる私達。
飄々としているウィルを見て、なんだか緊張している私達がバカのようだ。
いつまでも緊張してると疲れるので、私達は相談して程々に肩の力を抜くことにした。
そして、我が子は、素知らぬ顔でウィルに抱きついて喜んでいる。
絶対大物になるわ……あぁ、女王になるんだったわね……思わず忘れてしまっていたわと、自分の心の中で突っ込んでしまった。
「ようこそいらっしゃいました!アンバー公爵夫人様。
主よりおもてなしするよう聞いております。
どうぞ、こちらへ……」
この屋敷の執事が案内してくれるようだが、どうも一人ドレスを着ているナタリーを公爵夫人と勘違いしたらしい。
ウィルとセバスが後ろを向いて背を丸めて震えていた。
公爵夫人と言ってもらえなかった私を絶対笑っているに決まっている。
アンバー公爵夫人は、私なのだけど……どっからどう見ても、男装していて、腰に剣までぶら下げている私を公爵夫人だと普通の人なら思わないだろう。
それに、ナタリーの方が、堂々としていて公爵夫人らしい。
まぁ、元々貴族夫人でもあったので間違ってはいないのだけど……
「コホコホ……アンナリーゼ様、長旅でお疲れでしょうから、まずお召しかえされては
いかがですか?
男装のままでも素敵ですが、ドレスをまとうアンバー夫人はもっと素敵ですから!」
ウィルのわざとらしい言い方に、私はむっとしたけど、ここはよそ様のお屋敷だと思いなおし、優雅に返答する。
「気遣いありがとう、ウィル。
それでは、早速、着替えさせていただきますわ!
お部屋に案内していただけるかしら?」
ニッコリ迎えてくれた執事に笑いかけ、それぞれ部屋を案内される。
私の正体を知ったばつの悪そうな執事には、申し訳ないことをしたなと思う。
案内された部屋は、私と同室にナタリーがいてくれ、その隣にウィル、反対側にセバスとニコライという部屋割りになった。
部屋に入ると……眼が眩むほど、すべてが豪華だった。
「ナタリー……この部屋も豪華すぎませんか?」
思わず、敬語でナタリーに話しかけてしまった。
「すごいですね……
どこを見ても、ローズディア城並みですよね……どんな人の持ち物でしょう?
招待だってウィルは言っていたし、アンナリーゼ様、何か聞いてますか?」
「何も聞いてないよ。
おっさんって言ってたからさ……思いつくのが1人しかいないんだけど……
まさかねぇ?って感じだし……」
「ですよね?私も正直驚いてます」
何もかもが一級品以上の特級品で揃えられているので、なんだか落ち着かない。
でも、今日と明日、ここに泊まらせてもらうことになっているので慣れるしかない。
その後、私の着替えを済ませ夕飯をいただき、眠くなるまで私とナタリーに用意してもらった部屋でみんなで寛ぐことにした。
次の日の朝、私はいつもの時間に目が覚め部屋の中で体を軽く動かす。
屋敷から出て庭で体を動かそうかと思ったが、勝手知ったる屋敷ではないので、部屋の中で体をほぐしていく。
その後、ナタリーに公爵夫人にしてもらう。
ドレスをまとい、化粧をし、髪を結う。
アンバーのネックレスをして、青薔薇たちを身に着ければ、アンバー公爵夫人の出来上がりだ。
朝食もいただき、お茶をいただいてのんびりしていると部屋の扉をノックされる。
部屋に入ってきたのは、ウィルだった。
その後ろに2人の男性が立っているのが見える。
「姫さん、おっさん連れてきた!」
「おっさんって、隣国の将軍にいう言葉じゃなくてよ!」
後ろの人物をみて、私は、正直腰を抜かしそうになった。
ここ……ローズディアよね?
そして、公都からそんなに離れていないわよね……?と、背中に冷たいものが流れていく。
とりあえず、私は、公爵家の人間として、1番身分が上ということで一応ウィルを窘める。
「あぁーいいんだ。
ウィルには、俺が好きに呼んでくれと言ったんだ。
初めまして、アンバー公爵夫人」
「初めまして、えっと……」
「あぁ、これは失礼を……名乗っておりませんでしたな?」
「とりあえず、廊下ではなんですので……」
ニカッと人懐っこそうな笑顔を私に向けてしてきた人こそ、インゼロ帝国の将軍である。
年の割に若々しく、胸板を見れば、相当鍛えていることもわかる。
なるほど……ウィルの好きそうな人物だ。
多分、将軍もウィルのことをかなり気に入っているだろう。
ということは、私も好きなタイプだろうとなんとなく思う。
見た瞬間、母方のおじに似たタイプだったのだ。
屋敷の主ではないが、いつまでも廊下に立たせているわけにはいかないので、部屋に招き入れ、セバスとニコライが座っていたところへ座ってもらうようにした。
一緒にいた男性も含めてだ。
「改めて、初めまして、インゼロ帝国のノクト・ヨルンダルと申します。
以後、お見知り置きください。
呼び方は、どんな風にでも」
「こちらこそ、アンナリーゼ・トロン・アンバーと申します。
今日は、わざわざお時間をいただきありがとうごさいます。
では、ノクトと呼ばせていただいても?」
「あぁ、構わない。
あと敬語もやめていいだろうか?」
「かまいません。
ウィルを見ているので知っているかもしれませんが……」
あぁ、と返事をするノクト。
私は、それに頷く。
「私のことも好きに呼んでください。
同じ公爵家ですからね!」
「んじゃ、姫さんか?」
「それは、俺だけだからちょっと……
アンナ様と呼べばいいじゃん!」
ウィルが思わず口をはさんでくる。
ノクトは、ウィルをチラッと見て訳知り顔で笑う。
私は、それが気になったが特に問わなかった。
「それじゃあ、アンナと呼ばせてもらう」
「えぇ、構いませんよ!それで、き……」
「あぁ、待った待った。
そっちの話を聞く前に、俺からも1つ提案があるんだ!」
私は、ノクトの次の言葉を待つとともに訝しむ。
一体何を言うつもりなのだろう……ニヤッと笑うノクト。
その瞬間、先手を打たれた……と悟ってしまった。
「端的に言うと、ウィルを俺の後継者としてインゼロに欲しい」
「はぁあ?何考えてるんだ、おっさん!」
「ウィル、ちょっと黙っていて!」
そう来たか……ウィルは、私のものではない。
従者ではないし、婚姻関係もない。
さらに言えば、ただの学生時代からの友人だ。
私にしてみてば、ウィルを始め、今日一緒にいるのは、従者は誰一人いない。
友人ばかりなのだ。
でも、信頼度は、私にとって他の人達の比ではない身内なのだ。
アメジストを渡している人物は、そういう人物ばかりを選んであるのだ。
それをぬけぬけとくれというノクト。
「ウィルは、ものではなし、私の従者ではないわ!」
「姫さん!」
「黙っていてって言ってるでしょ?上位者には、逆らわないことよ!」
私は、ウィルに対してきつめに言葉で制する。
ウィルは、唇をきつく噛みしめていた。
「ふははは……おもしろいな、アンナは」
「そうでもないわ。
本当のことを言ったまでよ。
で、何のためにウィルが欲しいの?
ことと次第では、ここで、ウィルの首を刎ねることも厭わないわ!
そちらの手の者になるくらいならね!」
友人たちは、私の言葉にギョッとしていたが、一人ウィルだけはホッとしていた。
そのウィルの顔を見てノクトは、本当におもしろそうに笑う。
「単純に、欲しかっただけだ。
でも、主も従も覚悟が決まっているって顔だな。
アンナよ、女で、その覚悟は、なかなか肝が据わっている!」
「いいえ、私は、ウィルにローズディアの友人や仲間たちを傷つけさせるくらいなら、
私がウィルを地獄に送ってあげようと思っただけよ。
いずれ、私も一緒のところに行く予定だから、一人くらい友人がいてもいいでしょ?」
ニッコリ、ノクトに笑いかけると、こりゃまいったわ!と大笑いだ。
隣で、男性が将軍と諫めている。
「惚れない男は、いないな。
こんな思い切りいいお嬢さんは、初めて見たぞ!
ウィルが欲しいのは、本当だが、アンナ、そなたも手に入れたくなったぞ?」
「将軍!!!」
さすがにこちらは、苦笑いするしかないが、一緒にいた男性は、そうはいかないだろう。
敵国のローズディアで、筆頭公爵家の夫人を手に入れたいというのは、それだけで罪になりそうな話である。
私は、公世子に言われ慣れているので、ふぅーん、そうですかっていう程度ではあるのだが。
「将軍が、お騒がせしております。
私は、ノクト将軍の軍師をしておりますイチアと申します。
将軍の言ったことは、戯言と思い忘れてください……
どうか、平にアンバー公爵夫人様には謝罪申し上げます」
「何を申す、イチア!
こんなお嬢さんは、めったにいないのだぞ?」
「滅多にいなくても、ダメです!」
二人が、わぁわぁと目の前で口喧嘩を始める。
それを私たちは、ポカンと見ているしかなかった。
ふと、それも終わり、二人の目が、私を捉える。
ん?と思った瞬間には、気づくのが遅かった。
またもや、してやられてしまったのだ。
「アンナの元で働けばいいんだ!」
「公爵夫人様の元で働かしてもらったらいいんじゃないか!」
ノクトとイチアが声を揃えて私に訴えかける。
「いえ、結構です……ご遠慮願います……」
私が反論したころには、もう、二人の中では決まってしまったらしい……
セバスに視線を向けると顔を横に振っているし、ナタリーに涙目を向けても曖昧に笑って視線を合わせてくれない。
ニコライは、脂汗をかいてしまっている。
断り続けても全然いうことを聞いてくれなかったのである。
一人愉快そうにしているウィルを除いて、私達4人は、深く深く大きなため息をつく以外、何もすることがなくなってしまったのであった。
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