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ディルの調査結果とデリアの報告

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 ぐずったジョーもまた、スヤスヤと眠ってしまった。
 そのまま抱いていてもいいのだが、夜中なので少し冷えるためベッドに戻す。

 我が子は、私の手を借りずしてすくすく成長中だ。
 とても、重くなったな……私は、3日離れていただけなのにそんな風に思う。
 赤ちゃんの成長は、日に日になのだろう。
 アンバー領も日に日に成長ではなく、綺麗になっていくことが嬉しかった。



「アンナリーゼ様、お疲れでしたら明日の朝でもいいのですけど……」


 デリアが私の体調を聞いてきたので大丈夫だと答える。



「何か、報告でもあるのかしら?」
「はい、ディルからの報告書があります。
 まだ、中はみていませんが……重要なものだということだけ……」
「何か細工されてきたのね。見せて!」



 中を開くと、事細かくアンバー領の資金について書かれていた。
 やはり、流していたのは、トーマス。
 それをうまく着服しているのは、ダドリー男爵。
 そして、そのお金の行先は、今度公世子の側室となる第3妃の輿入れのための裏金。
 この第3妃は、ダドリー男爵の娘だということが分かった。
 公爵家の養女となって、側室となると書いてある。
 ダドリー男爵って一体何人子供いるのよ!と叫びたくなる。

 あと、ネズミ捕りは、成功したらしい。

 ただし、まだ、番で住み込んでいることが分かったと書いてあった。
 番ね……そう。
 一層したいんだけど、何かしっぽを掴ませてくれないかしら?



「ディルからはなんと?」



 デリアに問われ、答える代わりに手紙を渡す。
 暗号化されている手紙をするする読んでいくあたり、さすがといえよう。
 ナタリーも見ていいかと言ったので、いいけど読めないと思うわと、言うと不思議そうにしている。



「何故です?」
「見てみるといいわ!
 ただの屋敷の報告書だから……」



 私に言われ、デリアがナタリーに報告書を渡す。



「これ、普通の屋敷の報告書ですよね?」
「そうね。普通の人には、そう読めるようにしてあるから。
 私たちが読むと違うのよ」



 私は、そこに書いてある内容をナタリーに教えていく。



「この報告書のどこにそんなことが書いてあるのですか?」
「うーん……これは、ごめん、教えられない。
 私とディルの決め事だから。
 デリアが読めるのは、ディルが教えたのかもしれないけど……
 この暗号は、できる限り読める人を絞りたいから、ごめんね」



 それなら仕方ないですね……とナタリーは諦めてくれた。
 ただし、そこに書かれていた内容を知ったうえで、デリアへ報告することを提言する。



「アンナ様、私がここに来てからの話をしますね」
「うん、お願い。
 ディルでは、調べられないこともあるって言ってたから……」



 頷くとデリアは、話し始める。
 ところどころナタリーも話に加わることを許した。



「まず、その番の話ですが、ダドリー男爵とは関係なさそうです。
 トーマスが、横領していることを見咎めたようで、黙っている代わりに横領の一部を
 流すように脅していたようですね」
「それについては、私は宝石箱を見ましたわ!
 現金で持つには危ないけど、宝石に変えてしまえば小さいですから持ち運びも
 しやすいですからね!」
 昨日、実は、隣の領地へ買い物へ行くというので一緒に行ったのです。
 アンナ様は、今、金が高騰するのではないかという噂はご存じですか?」



 先物取引は、手を出していないので知らなかった……
 金とかプラチナとか……株価のように上下することは知っていたが、高騰するこは知らなかった。


「知らないわ!
 でも、近いうちに高騰するのね……」
「そうです。
 今、隣の領地では、金の取引がとても頻繁にされているようで、そこで大量の金塊を
 買っていました。
 結構な量でです。
 公都の本宅の従者でも、あの額を買うことはできません」
「それほど……?」
「はい、多分ですけど、アンナ様の青薔薇たちより高い金額になるはずです」
「えっ!?
 青薔薇って……あれだけで、すごい額になるのよ!」
「わかっています!
 でも、それ以上の金額を支払っていました」



 私は、それを聞いただけで……愕然とした。
 アンバー領は、こんなに困窮しているのに……青薔薇たち以上のお金を横領されていたのかと思うと体中の力が抜けていくようだった。



「今も、持ってる?」
「いいえ、貸金庫に渡してます。
 それも、結構なところです!」
「もしかして、本人じゃないと開けないって有名な貸金庫屋?
 もう、勘弁してよ……」



 デリアが頷くのを見ると、くらくらしてくる。


 どうしたものだろう……高騰するまでは、たぶん、ここにいるだろう。
 怪しまれないために。



「デリア、ごめん……見張って!
 あと、金が高騰したら、逃げられるからそれもディルに報告しておいて。
 絶対逃がしちゃダメ!
 あと、高騰した金の取り分もしっかりちゃっかりもらいましょう!
 お金はいくらっても困らないから……
 もともと、アンバーのお金なんだから、少しくらい利子をつけてもらっても
 いいわよね!」


 ニコニコとデリアに笑顔を向けると、デリアも当然ですよ!と微笑んでくれる。
 もちろん、ナタリーもとってもいい笑顔で楽しみですね!なんて言っている。
 まるで、お買い物にでも行く相談で盛り上がっているかのようだ。



「そういえば、今週末、ウィルがこちらに来るそうですよ!
 何か報告があるんですかねぇ?
 それとも、ただ、手伝いたいだけなんですかね?
 伯爵位に付いたとは言え、なかなかの働き者でとても助かりますね!」



 ナタリーは、ウィルがこちらに来るという連絡をもらったようだ。
 時間あるなら、警備隊の補強をしてもらうのもいいのかもしれない。
 そんなことを考えていると、ナタリーから声がかかる。



「私もアンナリーゼ様についてアンバー領を回りたいです!
 ウィルが来たら、ジョー様を見てもらって私を代わりに連れて行ってください!」



 発想の驚きで思わず、その申し出を断りそうになった。
 それを察したのか、ナタリーにより追い打ちがかけられそうになったが、阻止だ!



「わかったわ!一緒に行きましょう!
 今度の週末は、葡萄酒を作るのよ!きっと楽しいから……」



 それをいうと、ナタリーは喜びデリアは少し寂しそうだ。



「ナタリー様が羨ましいです!」
「デリア……エマをこちらに戻しましょうか?」
「いいえ、エマは、しばらくアンナ様の側にいるべきですからいいのです!
 私のわがままですから……お気になさらないでください!」
「それなら、来る日に備えてドレスを取り寄せておいてくれるかしら?
 たぶん、そんなに遠い未来ではないはずだから!」
「かしこまりました!」



 デリアに仕事を任せると、とても嬉しそうにしてくれる。
 私は、その姿を見て、デリアのセンスはピカ一だからね!と微笑むのであった。
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