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よき友人、相談役

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「まずは、パルマから!
 アンナの側にって、どういうこと?
 一応、サシャに頼まれて置いてるんだけど、事と次第では帰ってもらうよ?」
「ジョージア様は、本当にアンナリーゼ様を愛してらっしゃるのですね!
 僕は、アンナリーゼ様を敬愛しています!
 できることなら、今すぐにでも配下に加わり一緒に仕事をしたいと思っています!」
「配下?
 アンナ、どういうこと?」



 よくわからない……と、ジョージアは私に説明を求めてくる。
 どう、答えたものかと私は考えるが、ありのまま言うことはできないと判断した。



「パルマは、私の友人の弟なのですけど、とても優秀なのです。
 ジョージア様は、ご存じかもしれませんが、私は学園でも結構な無茶を
 してきましたし、友人からもその話をパルマは聞いていたのかもしれません。
 夏季休暇が終わる前に、配下に加わる打診を受けました。
 隣国であること、貴族であるため爵位問題等イロイロ検証しているところです。
 なので、私としては、一刻も早く私の配下になりたいと申されても、
 準備が整っていませんし、受け入れがたい申出で、今のところ断っております。
 学園をきちんと卒業すれば、話は変わりますが、学園で今しかできないことも
 たくさんあります。
 その辺も含めて、今時点で、配下になることは、断固として拒否します!」



 一気に私は、まくしたてるように拒否を示す。
 パルマは、悔しそうに下を向く。
 配下にしたくないわけではない。
 時期が、まだ、整っていないのだ。
 それを読み間違えるわけにはいかないし、パルマ自身のためだと私は思っている。


「アンナは、ああいってるけど、パルマはどうなの?
 変わりなく、アンナの側で役に立ちたいと思っているのかい?」
「はい……
 でも、アンナリーゼ様が、受け入れていただけなければ、成立しませんから……」
「アンナは、今の考えでいいのかい?」
「はい。
 私は、配下なりたいのなら受け入れないとは申していません。
 パルマほどの優秀な人間は、私の側で燻るより、もっと広い見聞をした上で
 どうするのか、考える時間が必要だと思っております。
 必要になれば、私は、パルマを頼ることもあるでしょう。
 私の友人たちと同じような立場でいてほしいと思っています。
 配下ではなく、よき友人、相談役としてなら今すぐにでも受け入れますよ!」



 私の言葉を聞いたパルマは、こちらを向くとかなり驚いているようだった。



「アンナの人誑しは、そういうところだよね!
 そう、思わない?パルマ」



 ジョージアに声をかけられ、パルマは、はいと頷いている。



「人誑しって……
 私、そんなことしてませんよ!」
「してると思うよ?
 アンナの友人たちは、皆その口で誑し込んでしょ?
 俺もそうなんだけどなぁー」
「ジョージア様は、私に一目惚れしたんじゃないですか?」
「何で知ってるの?」
「あ……えっと……薔薇で……」



 私は気まずくあわあわしているのに、クスっと笑うジョージア。



「サシャがばらしたんだろ?
 君たち兄妹、仲良すぎだよね……ホント、妬けるよ!」



 口を尖らせてブツブツとジョージアが文句を言い始める。
 私は、それを横目に宝石箱の置いてあるところまでよたよたと歩いていく。
 途中、見かねたジョージアが支えてくれる。
 優しいなぁーと思っていたら、そうではなかったらしい。
 ただ、くっつきたい気分だったようだ……




 コトっとパルマの前に小箱を置く。



「これは、何ですか?」
「アンナ教の入信アメジスト?」
「ジョージア様、黙りましょうか?」



 私は、ジョージアを一睨みすると、大人しく支えてくれるだけになった。



「アンナ教なんてありませんからね!
 開けて。
 私の友人となるつもりなら、受け取ってくれると嬉しいわ!」



 私に言われるがまま、小箱を開けるパルマ。



「アメジスト……?
 確か、姉様も持っていましたね……?
 あと、セバスっていう人も」
「そう、最初は、ウィルとセバスとナタリーにあなたの実家へ一緒に行って
 もらったお礼に渡したものなのよ!
 今では、ジョージア様が冗談で布教用アメジストって言ってるけど……」
「なぜ、これを僕に……?」



 不思議そうに私を見上げてくる。



「私ね、信用に足る人に自分の瞳と同じ色のアメジストを配っているのよ!
 皆が欲しい欲しいっていうからね……
 でも、他の人には内緒だからね……」
「僕は、アンナリーゼ様の目にかなったということですか?」
「そういうこと。
 パルマ、私は、あなたを受け入れるわ!
 私のよき友人として、相談役として側にいてくれるかしら?」



「………………」



 ダメだったかな?とジョージアを見上げると、微笑んでくれる。
 とろっとした蜂蜜色の瞳が、大丈夫だよと言ってくれているようだ。



「ありがとうございます……
 僕は……いただいてもいいのでしょうか?」
「えぇ!もちろんよ!
 パルマが、私の友人になってくれると心強いわ!」



 涙が出てきたのか、乱暴に服の袖でパルマは目元を拭う。



「ありがとうございます!」
「あっ!そうだ。
 パルマ、さっきの休学とか飛び級云々だけど……」



 ジョージアは、何か言いかけたので私は、そちらを見る。



「次の試験で飛び級試験を受けて、来年の夏までなら休学できるよう手配するよ。
 アンナもこんな状態だから、手はあった方がいいし……
 それでいいかい?
 僕が、学園に申出を書くから!」
「「ジョージア様!!」」



 嘆く私と、喜ぶパルマ。



 私のさっきの話は、いったい何だったんだろう……?
 すごくいいこと言ってた気がするんだけど……ねぇ?そう思わない!
 心の中で自問自答するしかない。



「アンナにとってもいい話だと思うから、そのようにして!」
「ジョージア様、それでは、困るのですけど……」



 困った顔を見せるが、どこ吹く風でさっさと執務室へ戻っていってしまった。
 早速、学園への手紙を書きに行ったのだろう。



 なんだか……疲れたよ……
 ソファに座ってお腹を撫でながら、お母さん、ジョージア様にはとっても弱いのよ……
 なんて、子供に言い聞かせる。



 許可が下りてしまったので、とりあえず、パルマには釘を刺しておこう。



「パルマ!
 …………………………よろしくお願いね!」



 キラキラした瞳でこちらを見られたら……とてもじゃないが釘なんてさせない。
 言葉として出てきたのは、お願いねだった。

 情けないような……ちょっと複雑な気持ちに私はなったのである。
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