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え?そんなことで?
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ウィルとセバスの話は続く。
「そう、それでさ、さっきも言ったけど、セバスが作戦会議場に馬で
乗りこんできたんだよ!
俺、本気で驚いたんだけど……」
「しかも、馬が止まらなくてね……
作戦会議場の中まで馬で入って行ってしまって、会議している机の上に
馬ごと乗っかってしまったんだ……」
容易にその情景が目に浮かぶ……
机の上で馬が足踏みをして、セバスは、どうしていいかと慌てていて、ウィルがひょいひょいっと上って馬を机から下ろしている。
そのあと、セバスも馬から下ろして何食わぬ顔でいるウィル。
くふふふ……
「何笑ってるんだ?」
「……だって、あまりにも簡単に想像がついてしまって……
セバスは、乗馬の練習をもう少しした方がよさそうね!」
「……そうですね……」
セバスは、しょげてしまったが、おもしろくて仕方がなかった。
「それで、そのあとは……?」
「メッチャくちゃ司令に怒られた。
俺もとばっちりで……」
なんともウィルらしい。
セバスが叱られるなら一緒に叱られたに違いない。
この二人、とても仲がいいのだ。
「そこで、進言したんだ。
僕に、向こうの将軍と話をする機会をくれって……
すると、馬鹿にされちゃってさ……
さらに、叱られた。
たかが、小競り合いと思ってしゃしゃりでてくるな、文官風情が!って」
それも、容易に想像がついた。
セバスって、ひょろっひょろだものね……
いかにも『文官です!』って感じで、そういうのを嫌う武官も多い。
なんとなく、その司令って、軍部至上主義なんじゃないかと思う。
「あれは……怖かった……」
「俺も怖かった……」
「2人とも……そんなに?」
「そんなに、そんなに!
で、結局、チャンスをくれって言って頼んで、頼んで、頼んで、
司令が根負けして、1週間っていう時間をもぎ取ったわけ。
セバスのどこに、そんな気持ちがあったんだろうな?
あの司令を説き伏せてしまったんだよな。
まぁ、負けたら俺らのせいにすればいいって思ってたのかもしんないけど。
俺、あの司令には、嫌われてるから!」
ウィルは、笑っているが、それはいいのだろうか?
「それで、どうしたの?」
「最初の3日は、様子見でイロイロ見せてもらってました。
アンナリーゼ様に連れてってもらった軍事演習、あの日勉強させてもらえて
よかったと思ってます。
おかげで、司令達の作戦の意味や穴などが分かったので……」
「祖父の領地でのことね?
あの日、とても話題に上がっていたもの!」
「僕は、ウィルのように剣は振るえませんからね……
ペンと頭で戦うしかありません!」
ウィルが不敵に笑えば、セバスもニヤッと笑う。
きっと、二人が謹慎になった理由が、今からわかるのであろう。
「単騎で将軍への目通りを願いました!」
セバスの話を聞いて、驚いた。
セバスが1番しなさそうなことをやってのけたからだ。
単騎と言っても、ウィルがついて行ったようだ。
「普通の休日に着るような服を来て、敵陣地へ行くんだぜ……
俺、さすがに死ぬなぁーって思ったよ……
それか……まぁ、これは、言わなくていいな……」
「うん。そんなこと、アンナリーゼ様の耳に入れていいことじゃないから」
「……知識としては、頭に入ってるから大丈夫よ……」
「さっすが、勉強はできないけど、物知り姫さん!」
「うるさいわよ!」
私が少し話を聞くことに緊張しているからか、お腹が張ってきたような気がする。
でも、ここで話を切ってしまうわけにもいかないと思い、続きを視線で促す。
「それで、2人で敵本陣に堂々と歩いて行ったら、意外と将軍が歓迎して
くれてね……
お前たちのような豪傑なやつらは、見たことがないって。
イロイロ世間話をしたんだ。
この3日間の兵の配置についてとか……向こうが語っているのを聞かせて
もらったりね……
敵の俺らに話してもいいのか?と、こっちが焦ったくらいだ。
なんか、話しやすいおじさんでよかったよ!」
「そうなの?」
「そうそう、姫さんの話とかもしちゃったんだけどね?
ぜひとも会ってみたいって言ってたぜ!あのおっさん!」
「一応、将軍でしょ?」
「まぁな。
でも、向こうがそう呼べって……」
「ふーん、なんか私とも気が合いそうな人ね……」
ウィルを大人にしたような人なのだろうか?
意外と私よりになってきているウィルは、近衛では浮いた存在になりつつあると聞いている。
もともと、才能もあったし、私という目標を見つけたことによって努力も惜しまない姿は、部下になった人たちにはとても人気らしい。
いつも、周りに人がいるとエリックが言っていた。
エリックを指導するよう言ったおかげか、他の部下にも声をかけていたりと気配り上手なのも人気の一つといえよう。
「たぶん、合うと思うよ!
でね、その話をして砕けた話をしたおかげで、こちらの交渉内容を伝える
ことができたんだ。
『チェス3番勝負』で、このまま軍を引いてくれっていうのをね!」
私は、さらに驚いた。
セバスが持ち出した交渉は、領地を渡すでもなく、人質を渡すとかそんなものじゃない。
『チェス3番勝負』で帰らせてしまったのだ。
ボードゲームで、軍を引かせるって……ねぇ……?
遊びじゃないのよ!って、私でも言いたくなるが、チェスは、模擬戦争と例えられることもあることからここで勝てば『軍師の力量』をはかれるというものだ。
こちらから、持ち出したということは、勝算あってのこと。
敵が勝てば勢いもつくだろうし、こちらが勝てばひよっこ軍師にも勝てない将軍では、本物の戦争は勝てないと踏んでくれることもあるだろう。
しかも、反故にされないように契約書まで作ってある。
これは、ニナの実家で渡したものの応用編だった。
セバスって、応用力もついて、さすがね!
それからは、チェスの話で盛り上がる。
1戦目は、セバスが負けたらしい。
理由は、力量をはかりたいもの同士の探り合いであったそうだ。
その探り合いに、セバスはのったふりをして、どのような作戦でどこを責めるのが好きなのかと分析に使ったらしい。
負けるつもりはなかったが、結果、負けてしまったということだ。
「ほほぅ、やりおるな!
俺にここまで食らいつくやつは今までいなかった!」
将軍は、かなり嬉しそうにしていたらしい。
2戦目は、セバスが何も考えず、自分の力量だけでねじ伏せたらしい。
頭の回転は、素晴らしく健在のようだ。
さすがに、2戦目のイーブンに持ち込まれたときは、将軍も少し冷や汗をかいていたらしい。
それぐらいの、圧倒的勝利だったそうだ。
それから、3戦目は、少し趣を変えることにした。
休憩をはさんでからの3戦目。
それぞれ隣に1人ずつ座る。
セバスの横にはもちろん、ウィル。
将軍の隣には、将軍の右腕と呼ばれる軍師がいた。
風向きがやばい方向に吹き始めたように思っていたウィルをよそに、涼しい顔でポンポンと駒を動かせていくセバス。
一報、帝国側は、将軍と軍師が2人で相談をしながら1つ1つ丁寧に駒を進めてくる。
コーンといい音を鳴らしたのは、セバスのナイトが、帝国のキングを打倒したときであったという。
手に汗握るその話は、とても面白く、何故私がその場にいなかったのかが悔やまれるほどであった。
そして、何より、セバスが小競り合いの軍行に合流してから、こちら側の血が一滴も流れていないことに私は評価をする。
国の根幹は、王ではない。
その国に住む人なのだ。
民がいてこその国なのだから……
民である軍行に参加した人達が、無事に家族の元に戻れることこそが、セバスに対して、私の最大の評価だった。
王は、導くものであったとしても、決して国そのものではない。
国の象徴であったとしても、国は住む人のものである。
私は、話を聞き終わって、セバスに今回の単独で軍行に行ったことをまずは、叱った。
どれだけ危ない橋を渡っていたか、心配する人がいることを肝にめいじてほかったからだ。
「申し訳、ございません……」
「いいのよ!
ここにあなたの帰りを待っている人がいるってことを常に覚えておいて!
ウィルもよ!わかった?」
「はいはい!」
「はいは、1回でいいのよ?」
「肝に銘じておきます!」
2人は、気まずそうにしている。
「それと、セバス……」
「なんでしょう……?」
まだ、叱られるのかと、セバスは身構えている。
「よくやったわね!
さすが、私のみこんだ友人だわ!
鼻高々よ!!」
ふふんっと鼻をならし、胸を張る私を見て、セバスは笑う。
ウィルもつられて笑い、私も笑う。
さっきまで、お腹が張ったような感じだったが、それもすっとなくなった。
きっと、あなたも笑っているのね?
そっとお腹を撫でる。
その姿を見ていたウィルもセバスも、私のそんな姿を暖かく見守ってくれるのであった。
「そう、それでさ、さっきも言ったけど、セバスが作戦会議場に馬で
乗りこんできたんだよ!
俺、本気で驚いたんだけど……」
「しかも、馬が止まらなくてね……
作戦会議場の中まで馬で入って行ってしまって、会議している机の上に
馬ごと乗っかってしまったんだ……」
容易にその情景が目に浮かぶ……
机の上で馬が足踏みをして、セバスは、どうしていいかと慌てていて、ウィルがひょいひょいっと上って馬を机から下ろしている。
そのあと、セバスも馬から下ろして何食わぬ顔でいるウィル。
くふふふ……
「何笑ってるんだ?」
「……だって、あまりにも簡単に想像がついてしまって……
セバスは、乗馬の練習をもう少しした方がよさそうね!」
「……そうですね……」
セバスは、しょげてしまったが、おもしろくて仕方がなかった。
「それで、そのあとは……?」
「メッチャくちゃ司令に怒られた。
俺もとばっちりで……」
なんともウィルらしい。
セバスが叱られるなら一緒に叱られたに違いない。
この二人、とても仲がいいのだ。
「そこで、進言したんだ。
僕に、向こうの将軍と話をする機会をくれって……
すると、馬鹿にされちゃってさ……
さらに、叱られた。
たかが、小競り合いと思ってしゃしゃりでてくるな、文官風情が!って」
それも、容易に想像がついた。
セバスって、ひょろっひょろだものね……
いかにも『文官です!』って感じで、そういうのを嫌う武官も多い。
なんとなく、その司令って、軍部至上主義なんじゃないかと思う。
「あれは……怖かった……」
「俺も怖かった……」
「2人とも……そんなに?」
「そんなに、そんなに!
で、結局、チャンスをくれって言って頼んで、頼んで、頼んで、
司令が根負けして、1週間っていう時間をもぎ取ったわけ。
セバスのどこに、そんな気持ちがあったんだろうな?
あの司令を説き伏せてしまったんだよな。
まぁ、負けたら俺らのせいにすればいいって思ってたのかもしんないけど。
俺、あの司令には、嫌われてるから!」
ウィルは、笑っているが、それはいいのだろうか?
「それで、どうしたの?」
「最初の3日は、様子見でイロイロ見せてもらってました。
アンナリーゼ様に連れてってもらった軍事演習、あの日勉強させてもらえて
よかったと思ってます。
おかげで、司令達の作戦の意味や穴などが分かったので……」
「祖父の領地でのことね?
あの日、とても話題に上がっていたもの!」
「僕は、ウィルのように剣は振るえませんからね……
ペンと頭で戦うしかありません!」
ウィルが不敵に笑えば、セバスもニヤッと笑う。
きっと、二人が謹慎になった理由が、今からわかるのであろう。
「単騎で将軍への目通りを願いました!」
セバスの話を聞いて、驚いた。
セバスが1番しなさそうなことをやってのけたからだ。
単騎と言っても、ウィルがついて行ったようだ。
「普通の休日に着るような服を来て、敵陣地へ行くんだぜ……
俺、さすがに死ぬなぁーって思ったよ……
それか……まぁ、これは、言わなくていいな……」
「うん。そんなこと、アンナリーゼ様の耳に入れていいことじゃないから」
「……知識としては、頭に入ってるから大丈夫よ……」
「さっすが、勉強はできないけど、物知り姫さん!」
「うるさいわよ!」
私が少し話を聞くことに緊張しているからか、お腹が張ってきたような気がする。
でも、ここで話を切ってしまうわけにもいかないと思い、続きを視線で促す。
「それで、2人で敵本陣に堂々と歩いて行ったら、意外と将軍が歓迎して
くれてね……
お前たちのような豪傑なやつらは、見たことがないって。
イロイロ世間話をしたんだ。
この3日間の兵の配置についてとか……向こうが語っているのを聞かせて
もらったりね……
敵の俺らに話してもいいのか?と、こっちが焦ったくらいだ。
なんか、話しやすいおじさんでよかったよ!」
「そうなの?」
「そうそう、姫さんの話とかもしちゃったんだけどね?
ぜひとも会ってみたいって言ってたぜ!あのおっさん!」
「一応、将軍でしょ?」
「まぁな。
でも、向こうがそう呼べって……」
「ふーん、なんか私とも気が合いそうな人ね……」
ウィルを大人にしたような人なのだろうか?
意外と私よりになってきているウィルは、近衛では浮いた存在になりつつあると聞いている。
もともと、才能もあったし、私という目標を見つけたことによって努力も惜しまない姿は、部下になった人たちにはとても人気らしい。
いつも、周りに人がいるとエリックが言っていた。
エリックを指導するよう言ったおかげか、他の部下にも声をかけていたりと気配り上手なのも人気の一つといえよう。
「たぶん、合うと思うよ!
でね、その話をして砕けた話をしたおかげで、こちらの交渉内容を伝える
ことができたんだ。
『チェス3番勝負』で、このまま軍を引いてくれっていうのをね!」
私は、さらに驚いた。
セバスが持ち出した交渉は、領地を渡すでもなく、人質を渡すとかそんなものじゃない。
『チェス3番勝負』で帰らせてしまったのだ。
ボードゲームで、軍を引かせるって……ねぇ……?
遊びじゃないのよ!って、私でも言いたくなるが、チェスは、模擬戦争と例えられることもあることからここで勝てば『軍師の力量』をはかれるというものだ。
こちらから、持ち出したということは、勝算あってのこと。
敵が勝てば勢いもつくだろうし、こちらが勝てばひよっこ軍師にも勝てない将軍では、本物の戦争は勝てないと踏んでくれることもあるだろう。
しかも、反故にされないように契約書まで作ってある。
これは、ニナの実家で渡したものの応用編だった。
セバスって、応用力もついて、さすがね!
それからは、チェスの話で盛り上がる。
1戦目は、セバスが負けたらしい。
理由は、力量をはかりたいもの同士の探り合いであったそうだ。
その探り合いに、セバスはのったふりをして、どのような作戦でどこを責めるのが好きなのかと分析に使ったらしい。
負けるつもりはなかったが、結果、負けてしまったということだ。
「ほほぅ、やりおるな!
俺にここまで食らいつくやつは今までいなかった!」
将軍は、かなり嬉しそうにしていたらしい。
2戦目は、セバスが何も考えず、自分の力量だけでねじ伏せたらしい。
頭の回転は、素晴らしく健在のようだ。
さすがに、2戦目のイーブンに持ち込まれたときは、将軍も少し冷や汗をかいていたらしい。
それぐらいの、圧倒的勝利だったそうだ。
それから、3戦目は、少し趣を変えることにした。
休憩をはさんでからの3戦目。
それぞれ隣に1人ずつ座る。
セバスの横にはもちろん、ウィル。
将軍の隣には、将軍の右腕と呼ばれる軍師がいた。
風向きがやばい方向に吹き始めたように思っていたウィルをよそに、涼しい顔でポンポンと駒を動かせていくセバス。
一報、帝国側は、将軍と軍師が2人で相談をしながら1つ1つ丁寧に駒を進めてくる。
コーンといい音を鳴らしたのは、セバスのナイトが、帝国のキングを打倒したときであったという。
手に汗握るその話は、とても面白く、何故私がその場にいなかったのかが悔やまれるほどであった。
そして、何より、セバスが小競り合いの軍行に合流してから、こちら側の血が一滴も流れていないことに私は評価をする。
国の根幹は、王ではない。
その国に住む人なのだ。
民がいてこその国なのだから……
民である軍行に参加した人達が、無事に家族の元に戻れることこそが、セバスに対して、私の最大の評価だった。
王は、導くものであったとしても、決して国そのものではない。
国の象徴であったとしても、国は住む人のものである。
私は、話を聞き終わって、セバスに今回の単独で軍行に行ったことをまずは、叱った。
どれだけ危ない橋を渡っていたか、心配する人がいることを肝にめいじてほかったからだ。
「申し訳、ございません……」
「いいのよ!
ここにあなたの帰りを待っている人がいるってことを常に覚えておいて!
ウィルもよ!わかった?」
「はいはい!」
「はいは、1回でいいのよ?」
「肝に銘じておきます!」
2人は、気まずそうにしている。
「それと、セバス……」
「なんでしょう……?」
まだ、叱られるのかと、セバスは身構えている。
「よくやったわね!
さすが、私のみこんだ友人だわ!
鼻高々よ!!」
ふふんっと鼻をならし、胸を張る私を見て、セバスは笑う。
ウィルもつられて笑い、私も笑う。
さっきまで、お腹が張ったような感じだったが、それもすっとなくなった。
きっと、あなたも笑っているのね?
そっとお腹を撫でる。
その姿を見ていたウィルもセバスも、私のそんな姿を暖かく見守ってくれるのであった。
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