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黒いウェディングドレス

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 お茶会での話は、イロイロな話が聞けるのでおもしろい。
 男性陣ばかりのお茶会ではあったが、今回のお茶会も有意義なものとなった。


「あと他には、おもしろい話とかあるかしら?」


 私は、いつものごとく情報収集をすることにする。
 男性陣ばかりだと、聞かないと答えてくれないので、積極的に何かないかと尋ねる。



「そういえば……
 アンナリーゼ様には、大変いいにくいんですけど……」


 申し訳なさそうにニコライが、何か話してくれるようだ。


「気にしないから教えて!」
「それなら……
 あの、ジョージア様からソフィア様との婚礼の品について依頼されたのですが……
 その……今回は、お断りさせていただきました……」



 私を気遣って断ってくれたのだろうと、ビルの考えに心の中で感謝する。



「えっ?それって、商売的に大丈夫なの?
 うちがどうこうするつもりもないし、させるつもりもないのだけど……」
「影響は、正直、わかりません……
 ただ、父が、うちはアンナリーゼ様にご贔屓してもらってますので、
 第二夫人のためのモノを揃えるのは、恩ある方に仇で返すことになると……」
「なるほど……
 ビルらしい配慮ね。
 私は、とても嬉しいわ!
 でも、ごめんなさいね。
 内間のゴタゴタに巻き込んでしまって……」



 ビルやニコライには、商人と顧客という立場ではあるが、本当によくしてもらっている。
 なので、今回のようなことは、本当に申し訳なく思う。



「あ……いえ、こちらも勝手に断ってしまったので……」
「ビルに謝っておいてくれる?
 あと、ビルの気持ちに、気遣いに感謝しますと。
 私のことを想ってくれるなんて、嬉しいわ。
 例え、金勘定だったとしても……」



 ニコライは、空笑いだ。



「それで、婚礼の品は、別のところで、揃えられたようですね。
 ただ、これは、ジョージア様も知らないかもしれませんが、
 ソフィア様のウェディングドレスなのですが……
 その…………真っ黒なんです!」


 ニコライの言葉に、私は、とても驚く。
 私だけでなく、セバスもパルマもだ。


「えっ?黒?」
「そうなんです!
 公都には、懇意にしているデザイナーがいまして、
 聞いたところ、ソフィア様が、内密に黒いドレスを注文されたそうで……
 ジョージア様は、白のタキシードらしいですね。
 だから、第二夫人としたジョージア様への当て付けではないかと
 言われているんだとか……」



 とんでもないことをしでかしてくれる……
 披露宴での黒薔薇に結婚式での黒のウエディングドレス……
 公爵家に入るというのに、公爵家に泥をぬってどうするのだろうか?
 聞いていると、だんだん腹が立ってきた。



「それは、違うわ!
 私に対しての当て付けじゃないかしら?
 どうしたって、私が第一夫人、正妻となるのだから。 
 それを良く思っていないのよ……
 しかし、思い切ったわね!
 一応、ジョージア様には、そのこと伝えておくわ……」


 黒いウェディングドレスには、どんな意味がこめられているのだろう。
 先月、私はジョージアと結婚式をした。
 家族を始め、みんなに祝福され、貴族諸侯にお披露目されたのだ。


 しかし、ソフィアとは、ひっそりと結婚式をすることになる。
 ソフィアの身内だけに祝われて……


 第一夫人と第二夫人では、扱いは変わる。
 公爵家の顔となるのが第一夫人である私なのだ。
 第二夫人とは、名ばかりの愛人となる。


 この国は、一夫多妻が認められている。
 お金に余裕があるなら、何人もの女性を囲えるのだ……
 だからこそ、正妻である第一夫人は、どこの貴族でも家庭内での権利が、認められている。
 社会に出ても、それは同じこと。



 ソフィアには、ジョージア以外、何もないのだ。



 結婚式に喪服を思わせる黒のウェディングドレス……



 不気味な気がしたが、1年後には、私の元にジョージアはいないのだから、そんな当て付けされても私は痛くも痒くもない。
 もちろん、国同士の政略結婚なため、私達の離婚は、許されない。
 死が2人を分かつときまで、家庭内別居をしていようが共にあるのだ。



「ニコライ、ありがとう!」
「いえ、あと、これもちょっと躊躇うんですが、
 いまだにソフィア様は、隣国の黒の貴族と繋がりがあるようです」
「そう……それについては、心に留めておくわ!」


 隣国の黒の貴族とは、バニッシュ子爵のことだ……
 あの二人が並んでいるところを想像すると、大人と子供のようだ。
 なついているということは、バニッシュ子爵と、何らかの関係はあるのだろうか?
 疑いだすときりがなくなる。


「そういえば、最近、ソフィア様、夜会に出てないって噂は、聞いたな?
 体調不良とかで、とても出歩ける様子じゃないらしいよ?」
「そうなの?」
「うん。まぁ、噂だからね、真相はわからないけど……
 噂ついでに、悪阻じゃないかって話もあるんだ」
「悪阻?」


 え?どういうこと?
 ここ最近は、ジョージア様もずっと私についていてくれる。
 なので、ありえない……
 思い当たるとしたら、一晩帰ってこなかった日だ。


 私の頭の中は、フル回転しているところだ。
 こんなことをジョージアに問い詰めるのもおかしな話である。
 なので、胸の内にしまっておくしかないだろう。


「あくまで、噂だけどね……」
「それなら、僕も聞きました。
 ソフィア様の体調が悪くて、医者を呼んだとかなんとか……
 でも、その医者は、それ以降呼ばれてないって話ですしね……
 次は、女医を呼んだっていうのも聞きましたよ?
 女医って数が少ないから、結構、噂になりやすいんですよ!」


 ますます、信ぴょう性の高い話になってきたように思える。
 もし、本当なら、私と同時期に生まれるのか……
『予知夢』でみたあの黒髪で黒目のジョージアに似た要素のない子供か、はたまた、別のジョージアとの子供が。

 今は、考えても仕方がない。
 生まれてこないと、わからないことなのだから……




「あのね、私からも報告があるの。
 ここだけの話にしてほしいんだけどね……
 私も子供ができたの」
「えぇ?」
「本当ですか?」


 コクンと頷く。


「「おめでとうございます!」」
「ありがとう。
 ただ、私、毒を盛られたりしてるから……
 なるべく、身体の変化があるまでは、公表しないつもり」
「わかりました!」
「しばらく、社交もしないつもりなのだけど、たまにはお茶は飲みに来てね!
 ウィルやナタリーそれにティアなら歓迎するわ!」


 友人たちと会えるのは、やはりとても嬉しいし、情報収集するためにも定期的に話は聞きたいと思う。
 屋敷から出られないなら、なおさらだ。




「有意義な時間をありがとう!」



 私の締めの言葉をもって、このお茶会は終了となり、それぞれ家路につくのであった。
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