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夜会の帰り、私は、久しぶりに会えた友人たちのことをジョージアに話していた。
もちろん、領地の街道整備の話は、していない。
あと、ダドリー男爵のこともすっかり忘れようと思う。
冬になり本格的に冷えてきているので馬車の中は、とても寒い。
誕生日にジョージアからもらったブランケットを二人で一緒に羽織って暖を取っているところだ。
「ジョージア様と同じくらい女性が囲んでいた黒髪の方はどなたですか?」
「他の男に興味をもったのかい?」
私が、質問をするとジョージアの怪訝そうな視線が向けられる。
「興味か……
そうですね!興味持ちました!
それで、どなたですか?」
興味もったの言葉は、ジョージアには、喜ばしい言葉ではなかったようだ。
つんけんしたような意地悪のような声音で答えてくれる。
「隣国の子爵だ。
確か、名前は、エール・イーナ・バニッシュだったかな?」
「バニッシュ子爵ですね。
とても色気のある方でしたね?少し年上かしら?」
「そんなに知りたいの?」
とうとう、ジョージアは、機嫌が悪くなってきた。
「はい、教えてください。
今日みたいに、ジョージア様が近くにいなかったときのために……」
「なるほどね……バニッシュ子爵は、軽いからね。
くれぐれもついていかないで!
年は、俺より6つ年上。あんまりいい噂聞かないなぁ……
アンナみたいなかわいい子なんて、たぶん、かなり好きだと思うよ」
なるほど。
どこかで見たことあるような顔と思えば、『予知夢』に出てきたなと思う。
どう、繋がっているのだろう……
考えるけど、答えは出なさそうなので、とりあえず、この話は、ここまでだ。
「ありがとう、ジョージア様。
夜会では、気を付けますね!」
この話は、ここまでと私は、切ってしまう。
そのことに少し機嫌を直したジョージアは、私の手を玩んでいるところだ。
次の話だ。
「ジョージア様、結婚式の前に少し実家に帰ってもいいですか?」
「何かあるのかい?」
「クリスにそろそろ会いたいと思いまして……」
「クリスね……
それは、サシャの息子?」
「他にはいませんよ!」
笑って返事をすると、なんだかジョージアは、拗ねているようだ。
「一人で行くのかい?」
「デリアと二人で行きますよ!」
「そう……俺も一緒に行っちゃダメ?」
私の手を玩んでいるジョージアは、ちょっと可愛らしい。
でも、すぐ帰ってくるのだから……ついてきてもらう必要を感じなかった。
「ダメではないですけど、すぐ帰ってきますよ!」
「うーん。
それでも一緒に……」
視線をジョージアの手から瞳に移す。
「……それを信じて待っているよ」
よしよしと頭を撫でてやると、ジョージアは、その手を引き寄せ、甲にちゅっとキスをする。
これは、キスのおねだりか……最近、ジョージアは、そんなことを覚えたらしい。
でも、その前に、今日は私、頑張ったのだから、ストレス発散もしたい。
「深紫のドレスのご令嬢、昨日の香水の方ですわね!」
「えっ!?」
「ピンクのドレスで夜会巻きのご令嬢、5日ほど前の香水の方でしょうか?
あと黄色のショート丈のお嬢さんは、一昨日くらいだったかしら?
あとは……」
「すみません……それ以上は、お許しください」
公世子に連れまわされてお酒を飲みに行っていたのは知っていた。
そこにお嬢様方が付いて回らないなんてことは、まず、ないだろうこともわかっている。
なので、一人一人確認したのだが、どうも合っていたようだ。
ここ最近、毎晩、帰ってきてそのまま私のベッドにもぐりこんでくるから香水の匂いで目が覚めたりもしたのだ……
私だって、たまには意地悪もしたくなる。
ちなみに、さっきのバニッシュ子爵は、情報収集の一環だ。
「別に責めているわけではないですよ」
ニコニコと笑顔を振りまくと、とんでもないという返事が返ってくる。
「令嬢たちとは、何にもないから!!」
「わかってます。
言ってみたかっただけです!」
「二度と行きませんから……」
「ふふふ……意地悪したかっただけですから、好きになさってください。
どうせ、公世子様が、令嬢たちを集めたんでしょ?」
「お見通しってことか……」
「公世子様もジョージア様のこと大切にされていますものね!」
ハハハ……と、空笑いが返ってくる。
「意地悪したお詫びです」
「お詫びか……
ちょっと傷ついたよ」
唇を重ねた頃には、アンバーのお屋敷についたようだ。
ジョージアは、名残惜しそうにしているが、とても寒い馬車で過ごす気にはなれない。
「ほら、お部屋に行きますよ!」
手を引いて屋敷まで、ジョージアを連れてくるのであった。
夜会の3日後は、冬にしては暖かい日だったので、トワイスへ出発しようと思ってジョージアに挨拶に行く。
「では、実家に帰らせていただきます!」
「あの……その言い方……」
ん?と小首をかしげていると、デリアがこそっと申し訳なさそうに教えてくれる。
あまりにも元気に言ったのも良くなかったらしい。
「アンナ様、その言い方では、その……ジョージア様に不満が……あって、
実家に帰る……みたいな……」
「そんなつもりは、全くないわよ?」
「なら、よかった……」
ホッとしているジョージアだったが、さらに追い打ちがくる。
「別に実家に帰るのは本当のことじゃない?
それに、ジョージア様に不満がないわけでは、ないもの。
だから、実家に帰るっていう発想もどうかと思うけど……」
「アンナは、その……僕に、不満があるのか……い?」
「ありますよ?
ジョージア様は、私ではない別の人間ですもの。
すべてが自分の思い通りの人なんていませんからね。
当たり前じゃないですか?」
あっけらかんという私に、ジョージアは困った顔をしている。
「確かに、別の人間だけど、僕は、アンナに不満はないよ」
「ありがとうございます。
では、不満はため込むとよくないと思うし、
たいした不満じゃないので、言っておきますね!」
私の次の言葉に、ジョージアは身構えている。
「よその女性の残り香つけて、私のベッドに潜り込んでこないでくださいね!
そんな日は、一人で寝てください!!
では、行ってまいります!」
ニッコリ笑顔で部屋を出ていく私を、ポカンとしてジョージアは見送ってくれた。
「アンナ!気を付けて行っておいで!
早く帰ってくるんだよ!!」
ちょうど馬に乗った私に、執務室の窓を開けて挨拶してくれる。
ジョージア様って、こういうところ、優しいんだよね。
「いってきまぁーす!!」
私は、それに応え、手を大きく振って出発したのである。
懐かしい、我が家へと……
もちろん、領地の街道整備の話は、していない。
あと、ダドリー男爵のこともすっかり忘れようと思う。
冬になり本格的に冷えてきているので馬車の中は、とても寒い。
誕生日にジョージアからもらったブランケットを二人で一緒に羽織って暖を取っているところだ。
「ジョージア様と同じくらい女性が囲んでいた黒髪の方はどなたですか?」
「他の男に興味をもったのかい?」
私が、質問をするとジョージアの怪訝そうな視線が向けられる。
「興味か……
そうですね!興味持ちました!
それで、どなたですか?」
興味もったの言葉は、ジョージアには、喜ばしい言葉ではなかったようだ。
つんけんしたような意地悪のような声音で答えてくれる。
「隣国の子爵だ。
確か、名前は、エール・イーナ・バニッシュだったかな?」
「バニッシュ子爵ですね。
とても色気のある方でしたね?少し年上かしら?」
「そんなに知りたいの?」
とうとう、ジョージアは、機嫌が悪くなってきた。
「はい、教えてください。
今日みたいに、ジョージア様が近くにいなかったときのために……」
「なるほどね……バニッシュ子爵は、軽いからね。
くれぐれもついていかないで!
年は、俺より6つ年上。あんまりいい噂聞かないなぁ……
アンナみたいなかわいい子なんて、たぶん、かなり好きだと思うよ」
なるほど。
どこかで見たことあるような顔と思えば、『予知夢』に出てきたなと思う。
どう、繋がっているのだろう……
考えるけど、答えは出なさそうなので、とりあえず、この話は、ここまでだ。
「ありがとう、ジョージア様。
夜会では、気を付けますね!」
この話は、ここまでと私は、切ってしまう。
そのことに少し機嫌を直したジョージアは、私の手を玩んでいるところだ。
次の話だ。
「ジョージア様、結婚式の前に少し実家に帰ってもいいですか?」
「何かあるのかい?」
「クリスにそろそろ会いたいと思いまして……」
「クリスね……
それは、サシャの息子?」
「他にはいませんよ!」
笑って返事をすると、なんだかジョージアは、拗ねているようだ。
「一人で行くのかい?」
「デリアと二人で行きますよ!」
「そう……俺も一緒に行っちゃダメ?」
私の手を玩んでいるジョージアは、ちょっと可愛らしい。
でも、すぐ帰ってくるのだから……ついてきてもらう必要を感じなかった。
「ダメではないですけど、すぐ帰ってきますよ!」
「うーん。
それでも一緒に……」
視線をジョージアの手から瞳に移す。
「……それを信じて待っているよ」
よしよしと頭を撫でてやると、ジョージアは、その手を引き寄せ、甲にちゅっとキスをする。
これは、キスのおねだりか……最近、ジョージアは、そんなことを覚えたらしい。
でも、その前に、今日は私、頑張ったのだから、ストレス発散もしたい。
「深紫のドレスのご令嬢、昨日の香水の方ですわね!」
「えっ!?」
「ピンクのドレスで夜会巻きのご令嬢、5日ほど前の香水の方でしょうか?
あと黄色のショート丈のお嬢さんは、一昨日くらいだったかしら?
あとは……」
「すみません……それ以上は、お許しください」
公世子に連れまわされてお酒を飲みに行っていたのは知っていた。
そこにお嬢様方が付いて回らないなんてことは、まず、ないだろうこともわかっている。
なので、一人一人確認したのだが、どうも合っていたようだ。
ここ最近、毎晩、帰ってきてそのまま私のベッドにもぐりこんでくるから香水の匂いで目が覚めたりもしたのだ……
私だって、たまには意地悪もしたくなる。
ちなみに、さっきのバニッシュ子爵は、情報収集の一環だ。
「別に責めているわけではないですよ」
ニコニコと笑顔を振りまくと、とんでもないという返事が返ってくる。
「令嬢たちとは、何にもないから!!」
「わかってます。
言ってみたかっただけです!」
「二度と行きませんから……」
「ふふふ……意地悪したかっただけですから、好きになさってください。
どうせ、公世子様が、令嬢たちを集めたんでしょ?」
「お見通しってことか……」
「公世子様もジョージア様のこと大切にされていますものね!」
ハハハ……と、空笑いが返ってくる。
「意地悪したお詫びです」
「お詫びか……
ちょっと傷ついたよ」
唇を重ねた頃には、アンバーのお屋敷についたようだ。
ジョージアは、名残惜しそうにしているが、とても寒い馬車で過ごす気にはなれない。
「ほら、お部屋に行きますよ!」
手を引いて屋敷まで、ジョージアを連れてくるのであった。
夜会の3日後は、冬にしては暖かい日だったので、トワイスへ出発しようと思ってジョージアに挨拶に行く。
「では、実家に帰らせていただきます!」
「あの……その言い方……」
ん?と小首をかしげていると、デリアがこそっと申し訳なさそうに教えてくれる。
あまりにも元気に言ったのも良くなかったらしい。
「アンナ様、その言い方では、その……ジョージア様に不満が……あって、
実家に帰る……みたいな……」
「そんなつもりは、全くないわよ?」
「なら、よかった……」
ホッとしているジョージアだったが、さらに追い打ちがくる。
「別に実家に帰るのは本当のことじゃない?
それに、ジョージア様に不満がないわけでは、ないもの。
だから、実家に帰るっていう発想もどうかと思うけど……」
「アンナは、その……僕に、不満があるのか……い?」
「ありますよ?
ジョージア様は、私ではない別の人間ですもの。
すべてが自分の思い通りの人なんていませんからね。
当たり前じゃないですか?」
あっけらかんという私に、ジョージアは困った顔をしている。
「確かに、別の人間だけど、僕は、アンナに不満はないよ」
「ありがとうございます。
では、不満はため込むとよくないと思うし、
たいした不満じゃないので、言っておきますね!」
私の次の言葉に、ジョージアは身構えている。
「よその女性の残り香つけて、私のベッドに潜り込んでこないでくださいね!
そんな日は、一人で寝てください!!
では、行ってまいります!」
ニッコリ笑顔で部屋を出ていく私を、ポカンとしてジョージアは見送ってくれた。
「アンナ!気を付けて行っておいで!
早く帰ってくるんだよ!!」
ちょうど馬に乗った私に、執務室の窓を開けて挨拶してくれる。
ジョージア様って、こういうところ、優しいんだよね。
「いってきまぁーす!!」
私は、それに応え、手を大きく振って出発したのである。
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