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銀髪の君
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「では、そろそろ夕食の時間ですので、お暇させてください。アンナも一緒に」
兄に促されて私も殿下とハリーの前を失礼することにした。
「それでは、殿下、僕もアンナ達と一緒に下がります。
サシャ殿、アンナ、一緒にいってもいいだろうか? 」
「もちろんです!」
3人で客間を退出することになった。
寮まで並んで歩いていくと、ちょうど中庭から一人こちらに向けて歩いてくる。
私は誰だろうと目を凝らしてみていると、兄から脇腹を小突かれた。
さらさらとした銀髪を緩く結び横に流し、物憂げに歩いてくるのは、蜂蜜色の瞳のかの人だった。
背も高く華奢で月光を浴びれば、一枚の絵だと錯覚しそうになる。
「銀髪の君では、ありませんか? 今日、寮に戻られたのですか? 」
親しくもないと言っていた銀髪の君ことジョージアに兄は、話しかけている。
「サシャ殿、その銀髪の君というのは……ちょっと恥ずかし……」
私は、兄に横腹を小突かれたときから、それが未来の旦那様だとわかったので少し身構えてしまう。
顔は知っていても、夢でのジョージアは私にとって最低最悪の人なのだ。
でも、生身のジョージアは、どんな人なのか、とても興味があった。
「初めまして! ジョージア様。
お噂は兄からお伺いしております。お会いできて光栄です!」
話しかけた兄の隣で見上げてくる私を見て固まっていたジョージアに思わず話しかけてしまった。
あ……私、自分の名前を名乗ってない……や。
「あ……あぁ、初めまして、お嬢さん。
ジョージア・フラン・アンバーと申します。
兄からというとサシャ殿の妹さんかな?
こちらこそ、会えて光栄だよ!」
固まっていたジョージアも私からいきなり挨拶をされれば、驚いたようだ。
そのおかげか、こちら側に戻ってきたようだが……ほんのり顔が赤い。
覗きこんでいた私が、トロっとした蜂蜜色の瞳に映っているのが見える。
瞳、すごい、きれいだな。
そして、すごい、見られているな……私。
「失礼しました、ジョージア様。妹のアンナリーゼです。
学園の話を聞きたがるので、よく話しているのですが、かっこいい方がいるよと
話して以来、興味をもったらしく学園への入学を楽しみにしていたので……
つい気持ちが、空回りしてしまったようだ……」
ハハハとから笑いする兄が、ジョージアに話しかけているのに全く耳に入っていない様子だ。
そこでだ!
「ジョージア様、サシャの妹でアンナリーゼ・トロン・フレイゼンと申します。
若輩ものですので、また、何かの機会にご指導くださいね!!」
口角をあげ、会えた喜びで嬉しそうに上品にそして、優しそうに微笑む。
かなり強引に……
「……あ……あぁ……こちらこそ……あ、いや、君のお兄さんの方が優秀だから、
僕は……その……」
ジョージアがまごまご話している。
「アンナ、そちらの方は? ローズディアの方ですか? 」
言い淀んでいるジョージアを遮って私に話しかけるのは、一緒に寮まで帰る途中だったハリーだ。
すっかり存在を忘れていた私は、はっとしてハリーにジョージアを紹介する。
私よりジョージアの知り合いである兄の方がこういう時は、いいはずなのにだ。
何やってんの!!と、兄を軽く流し目で睨んでおく。
「ハリー、こちらローズディア公国の公爵家子息のジョージア様よ。
兄と同じ学年でいらっしゃるの。
いつも学園のお話を兄から聞いていて、ぜひ、お会いしたいと思っていた方なの!」
ハリーにジョージアの説明をする。
肝心なところは、ハリーにだけは、話さない。
「そうなのか。
トワイス国公爵家ヘンリー・クリス・サンストーンと申します。
私も今年学園に入学です。また、何かのおりにはご指導お願いします!」
「こちらこそ、よろしく頼むよ。
ヘンリー殿は、後輩とはいえしっかりしているな……」
貼り付けたような笑顔のハリーに対して、ジョージアは普通に返答している。
私を映していた瞳は、ハリーを映していた。
なんだか、少し寂しい気持ちになる私。
映っていないな、あの瞳に。
「サシャ殿たちは、どこかへ行った帰りかい?」
社交辞令なのか、はたまた、ただの興味なのかジョージアは兄に話しかけてくる。
「あぁ、今年の入学生の中にトワイス国の第一王子もいらっしゃるのです。
ヘンリー様とアンナの幼馴染ですけど、私は会ったことがなかったから、
アンナを通じて紹介してもらいました。
ヘンリー様も実は、今日が初めて話させてもらったのだけど、ジョージア様のいうように
しっかりした青年ですよ。
僕も見習わなくてはと思っていたところなのです!」
「なるほど、今年はそちらの王子が入学か。
うちは昨年、卒業していったからね。
今年の爵位順は、僕が最上位になるそうだよ」
兄は親しくないとは言っていたのにも関わらず、結構流暢にジョージアと話している。
初めましての挨拶以降、ジョージアが私には目もくれないのが少し面白くない。
今日初めてあったばかりなのだから、仕方がないのだが……
「ジョージア様、お兄様、お話し中、失礼します。
私たち明日入学式ですので、そろそろお暇してもよろしいでしょうか?」
会話している間をすっと割って先に帰るよと兄に告げるのに声をかける。
自然と私のほうを見てジョージアと目があった。
「とってもきれいな瞳ですね。
蜂蜜のようなトロっとした光沢のある素敵な色合いで……」
心のつぶやきと思っていた私は、周りの急に空気が固まったのに気づくのに少し時間がかかった。
「どうかされましたか? 」
兄の困った様子を見て、思わず声に出てしまったことに気づく。
そして、何事もなかったかのように私は、3人を見回す。
ジョージアは、赤面している。
それも耳まで真っ赤なのだ。
兄は、やっちゃったよ……って、額に手を当てている。
ハリーは、思考停止して固まっていた。
「アンナ、口から洩れていたよ。
ジョージア様の瞳がとても綺麗だと、蜂蜜のようだと」
代表して兄に言われ、私も驚いたふりをした。
「えっ?漏れ……て?心の声?いや、うそでしょ?漏れて……」
うんうんと兄に頷かれる。
赤面のジョージアに硬直したハリーが私を見ている。
「完全に漏れてたよ。妹が変なこと言って申し訳ない……」
ジョージアに兄が謝ってくれている。
気付いたのだが、兄に指摘されて、今では、だんだん恥ずかしくなってきて、私も絶賛赤面中で声が出ない……
「……あぁ……いや、構わない。
そんな風に言われたのは、初めてだったので、少し驚いたのだ。
こちらこそ、すまない」
ジョージアが謝る必要はないはずなのだが、取り乱してしまったと言っている。
私は、とにかく恥ずかしさ前面で声にならない声をパクパクした口から発しているだけであった。
これ以上一緒にいれば、私がまた何かやりかねないと兄は判断したのであろう。
とっても、妹思いな兄なのだ!
それに予知夢の話も聞いているので、ジョージアに対して私の印象は、悪くならないようにしたほうがいいに決まっている。
「じゃ……じゃあ、僕たちは先にお暇させてもらいますよ。
ほら、ヘンリー様も、アンナもいくよ! 」
兄の両手には、赤面の私と硬直したハリーの手が握られ寮へと連れていかれる。
「アンナリーゼか……」
ジョージアの優しい声音で私の名前が呼ばれ、風に乗って聞こえてきた。
もう、それを聞いただけで、私の頬の熱はぐっと上がり、さらに真っ赤になり熟れたトマトのようになっていた。
行先と真逆の方へ顔を向ける。
兄に手を繋いでもらっているため、転ぶ心配もないだろう。
こちらを見送っているジョージアが、まだ、さっきまでいたところにたたずんでいた。
私はお腹にぐっと力を入れ空気を思いっきり吸う。
「ジョージア様!!
今日は、お話ができてうれしかったです!!またいずれ!!!」
廊下をズンズン歩いていく兄に若干引きずられるように歩いているため、少しバランスを崩すと、遠く離れたジョージアが心配そうに手を差し出してくれるような素振りをしてくれる。
もう結構な距離なので届くわけはないのだけど……そのあと返事とばかりに手を大きく振ってくれた。
きっと、銀髪の君と言われる公爵家子息は、普段そんなことは決してしないだろう。
私に感化されたのだ。
大きく大きく手を振ってくれた。
とても嬉しかったため私も振り返す。
学園にいる間、ほとんど話すことのない未来の旦那様は、とっても優しそうで物静かな素敵な人だった。
それを入学前に知れてよかった。
例え未来では、変わってしまっていても、私は今日を忘れない、忘れたくないと思った。
兄に促されて私も殿下とハリーの前を失礼することにした。
「それでは、殿下、僕もアンナ達と一緒に下がります。
サシャ殿、アンナ、一緒にいってもいいだろうか? 」
「もちろんです!」
3人で客間を退出することになった。
寮まで並んで歩いていくと、ちょうど中庭から一人こちらに向けて歩いてくる。
私は誰だろうと目を凝らしてみていると、兄から脇腹を小突かれた。
さらさらとした銀髪を緩く結び横に流し、物憂げに歩いてくるのは、蜂蜜色の瞳のかの人だった。
背も高く華奢で月光を浴びれば、一枚の絵だと錯覚しそうになる。
「銀髪の君では、ありませんか? 今日、寮に戻られたのですか? 」
親しくもないと言っていた銀髪の君ことジョージアに兄は、話しかけている。
「サシャ殿、その銀髪の君というのは……ちょっと恥ずかし……」
私は、兄に横腹を小突かれたときから、それが未来の旦那様だとわかったので少し身構えてしまう。
顔は知っていても、夢でのジョージアは私にとって最低最悪の人なのだ。
でも、生身のジョージアは、どんな人なのか、とても興味があった。
「初めまして! ジョージア様。
お噂は兄からお伺いしております。お会いできて光栄です!」
話しかけた兄の隣で見上げてくる私を見て固まっていたジョージアに思わず話しかけてしまった。
あ……私、自分の名前を名乗ってない……や。
「あ……あぁ、初めまして、お嬢さん。
ジョージア・フラン・アンバーと申します。
兄からというとサシャ殿の妹さんかな?
こちらこそ、会えて光栄だよ!」
固まっていたジョージアも私からいきなり挨拶をされれば、驚いたようだ。
そのおかげか、こちら側に戻ってきたようだが……ほんのり顔が赤い。
覗きこんでいた私が、トロっとした蜂蜜色の瞳に映っているのが見える。
瞳、すごい、きれいだな。
そして、すごい、見られているな……私。
「失礼しました、ジョージア様。妹のアンナリーゼです。
学園の話を聞きたがるので、よく話しているのですが、かっこいい方がいるよと
話して以来、興味をもったらしく学園への入学を楽しみにしていたので……
つい気持ちが、空回りしてしまったようだ……」
ハハハとから笑いする兄が、ジョージアに話しかけているのに全く耳に入っていない様子だ。
そこでだ!
「ジョージア様、サシャの妹でアンナリーゼ・トロン・フレイゼンと申します。
若輩ものですので、また、何かの機会にご指導くださいね!!」
口角をあげ、会えた喜びで嬉しそうに上品にそして、優しそうに微笑む。
かなり強引に……
「……あ……あぁ……こちらこそ……あ、いや、君のお兄さんの方が優秀だから、
僕は……その……」
ジョージアがまごまご話している。
「アンナ、そちらの方は? ローズディアの方ですか? 」
言い淀んでいるジョージアを遮って私に話しかけるのは、一緒に寮まで帰る途中だったハリーだ。
すっかり存在を忘れていた私は、はっとしてハリーにジョージアを紹介する。
私よりジョージアの知り合いである兄の方がこういう時は、いいはずなのにだ。
何やってんの!!と、兄を軽く流し目で睨んでおく。
「ハリー、こちらローズディア公国の公爵家子息のジョージア様よ。
兄と同じ学年でいらっしゃるの。
いつも学園のお話を兄から聞いていて、ぜひ、お会いしたいと思っていた方なの!」
ハリーにジョージアの説明をする。
肝心なところは、ハリーにだけは、話さない。
「そうなのか。
トワイス国公爵家ヘンリー・クリス・サンストーンと申します。
私も今年学園に入学です。また、何かのおりにはご指導お願いします!」
「こちらこそ、よろしく頼むよ。
ヘンリー殿は、後輩とはいえしっかりしているな……」
貼り付けたような笑顔のハリーに対して、ジョージアは普通に返答している。
私を映していた瞳は、ハリーを映していた。
なんだか、少し寂しい気持ちになる私。
映っていないな、あの瞳に。
「サシャ殿たちは、どこかへ行った帰りかい?」
社交辞令なのか、はたまた、ただの興味なのかジョージアは兄に話しかけてくる。
「あぁ、今年の入学生の中にトワイス国の第一王子もいらっしゃるのです。
ヘンリー様とアンナの幼馴染ですけど、私は会ったことがなかったから、
アンナを通じて紹介してもらいました。
ヘンリー様も実は、今日が初めて話させてもらったのだけど、ジョージア様のいうように
しっかりした青年ですよ。
僕も見習わなくてはと思っていたところなのです!」
「なるほど、今年はそちらの王子が入学か。
うちは昨年、卒業していったからね。
今年の爵位順は、僕が最上位になるそうだよ」
兄は親しくないとは言っていたのにも関わらず、結構流暢にジョージアと話している。
初めましての挨拶以降、ジョージアが私には目もくれないのが少し面白くない。
今日初めてあったばかりなのだから、仕方がないのだが……
「ジョージア様、お兄様、お話し中、失礼します。
私たち明日入学式ですので、そろそろお暇してもよろしいでしょうか?」
会話している間をすっと割って先に帰るよと兄に告げるのに声をかける。
自然と私のほうを見てジョージアと目があった。
「とってもきれいな瞳ですね。
蜂蜜のようなトロっとした光沢のある素敵な色合いで……」
心のつぶやきと思っていた私は、周りの急に空気が固まったのに気づくのに少し時間がかかった。
「どうかされましたか? 」
兄の困った様子を見て、思わず声に出てしまったことに気づく。
そして、何事もなかったかのように私は、3人を見回す。
ジョージアは、赤面している。
それも耳まで真っ赤なのだ。
兄は、やっちゃったよ……って、額に手を当てている。
ハリーは、思考停止して固まっていた。
「アンナ、口から洩れていたよ。
ジョージア様の瞳がとても綺麗だと、蜂蜜のようだと」
代表して兄に言われ、私も驚いたふりをした。
「えっ?漏れ……て?心の声?いや、うそでしょ?漏れて……」
うんうんと兄に頷かれる。
赤面のジョージアに硬直したハリーが私を見ている。
「完全に漏れてたよ。妹が変なこと言って申し訳ない……」
ジョージアに兄が謝ってくれている。
気付いたのだが、兄に指摘されて、今では、だんだん恥ずかしくなってきて、私も絶賛赤面中で声が出ない……
「……あぁ……いや、構わない。
そんな風に言われたのは、初めてだったので、少し驚いたのだ。
こちらこそ、すまない」
ジョージアが謝る必要はないはずなのだが、取り乱してしまったと言っている。
私は、とにかく恥ずかしさ前面で声にならない声をパクパクした口から発しているだけであった。
これ以上一緒にいれば、私がまた何かやりかねないと兄は判断したのであろう。
とっても、妹思いな兄なのだ!
それに予知夢の話も聞いているので、ジョージアに対して私の印象は、悪くならないようにしたほうがいいに決まっている。
「じゃ……じゃあ、僕たちは先にお暇させてもらいますよ。
ほら、ヘンリー様も、アンナもいくよ! 」
兄の両手には、赤面の私と硬直したハリーの手が握られ寮へと連れていかれる。
「アンナリーゼか……」
ジョージアの優しい声音で私の名前が呼ばれ、風に乗って聞こえてきた。
もう、それを聞いただけで、私の頬の熱はぐっと上がり、さらに真っ赤になり熟れたトマトのようになっていた。
行先と真逆の方へ顔を向ける。
兄に手を繋いでもらっているため、転ぶ心配もないだろう。
こちらを見送っているジョージアが、まだ、さっきまでいたところにたたずんでいた。
私はお腹にぐっと力を入れ空気を思いっきり吸う。
「ジョージア様!!
今日は、お話ができてうれしかったです!!またいずれ!!!」
廊下をズンズン歩いていく兄に若干引きずられるように歩いているため、少しバランスを崩すと、遠く離れたジョージアが心配そうに手を差し出してくれるような素振りをしてくれる。
もう結構な距離なので届くわけはないのだけど……そのあと返事とばかりに手を大きく振ってくれた。
きっと、銀髪の君と言われる公爵家子息は、普段そんなことは決してしないだろう。
私に感化されたのだ。
大きく大きく手を振ってくれた。
とても嬉しかったため私も振り返す。
学園にいる間、ほとんど話すことのない未来の旦那様は、とっても優しそうで物静かな素敵な人だった。
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例え未来では、変わってしまっていても、私は今日を忘れない、忘れたくないと思った。
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