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2章

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今日の彼の服装は、いつも見慣れた立襟の黒い神官服では無くとてもラフな格好だ。ラフな格好なはずなのに……白シャツの彼は元々の美貌も合間ってまるで天使が白い布を纏った妖艶さがある、ゴクリと唾を飲み込み美しいの一言で脳裡が埋る。その上神々しい光輝を放っており眩しくて見れない、ただの白シャツの黒パンツなのに彼が纏うだけで神々しい衣装と変貌する。



「なんか凄く眩しいです……」

「おや本日は雲っていますが大丈夫ですか?」


天気の話しではなく貴方が美し過ぎるって話なのだがまったく通じてない。
ゼルビア様は自分の美貌に無関心すぎる、今だってすれ違う度、女の子達がこっちらを見て頬を染めているのに、隣で歩くのが私なんかで申し訳ない気分になってくる……


「リィーシャは今日は眼鏡をかけて髪を下ろし女の子らしい格好をしているのですね、凄く似合っており可愛いらしい」

「っっっ!!」


確かに狩人で生計を立てたり、勇者になったりしていたから、男性らしい身軽な服装が多かった。自分自身もそういった服装が好みなのだが、せっかく初めての二人きりのお出掛け。私なりの一張羅を引っ張りだしお洒落をしてみたが、さらりと褒め言葉を口にするゼルビア様は女性に慣れているんだわ、意識しちゃダメよリィーシャしっかりしなさい!



「…………本当は眼鏡じゃなくて、フルマスクかアイマスクにしろと言われたんですが、街中でヴェネチアンマスクなんてしてたらどこかの不審者か、仮面舞踏会に参加する人だと思わてしまいます……だから絶対嫌だって抵抗したら、苦肉の策に眼鏡になりました。私生まれつき目と耳は良いのですごく不満なんですが仕方ないですよね…」

「そうですね凱旋パレードに参加した貴女は沢山の人の目に触れていますからね。糞…おっと勇者なりに可愛い妹を心配しての提案なのでしょう。それに本日二人きりで素顔で出掛けられる事が奇跡なのかもしれませんね」

「奇跡ですか……」


確かに神々し光輝を纏ったゼルビア様と、一緒に出掛けられるなんて奇跡だ。
『今度一緒に出掛けませんか?』とゼルビア様からお誘いを受けたのはオルド様の送別会の時、私を膝に乗せ誰にも聞こえないように耳元で囁かれた時は背筋がゾクゾクと震えた。

嬉しいやら恥ずかしいやら、でもこれ以上深入りしちゃいけないと心で警戒音が鳴り響くのにコクりと頷いていた。さすがに皆の前で詳細な打ち合わせは出来ず後日通信用の魔法小鳥さんで連絡を取り合っていた。その際にジド目でお兄ちゃんに見られていたけど、見えないふりをした。



「私もじつは変装しているのですよ」

「えっ……?」

「認識阻害魔法でリィーシャ以外には、私の髪は真っ黒に見えております。金髪は目立ちますし、人目を避けたい時はよく使う魔法です」

「ふっへぇ~黒魔法とは便利なんですね」

「黒魔法とはまた違う便利魔法なんですが、特に本日は目立ちたくないのでリィーシャにもかけておきますね。この魔法は存在感も薄くなる効果が付いてますので」

「はい!ぜひお願いします!城下町を散策してみたいなんて我儘をお許しなってくれたのはこの便利魔法があったからなんですね♪」

「それもありますが……私自身も好いてる方とお買い物をしてみたかったので……」



言ってから後悔したのかゼルビア様はプイッと顔を背ける。でも耳も首も真っ赤に染まって照れているみたい、人様を深く観察しながら私自身も真っ赤な林檎ちゃんになってるのは仕方ないですよね。
サラリと凄い事を言うから私の心臓がもたない…



    
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