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2章

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『一緒に出掛けませんか?』


とお誘いを受けたのは三日前のこと、そのお誘いに素直に頷いたが……
まだ少し戸惑っていた、きっと二人で僅かでも時間を共にしたら別れ難くなると予兆できるから……



元勇者の兄リューイは、イーランド国王様から魔王討伐報酬の一部としてこの国の爵位、辺境伯の爵位を承った。今後は国境守となりこの国の重鎮になる予定だ。
兄はその地から今後の経緯を見守る予定みたいで、それに伴い私もなにやら辺境伯令嬢になるらしい……

片田舎の町娘がとんだ大出世だ……



昨日英雄の1人怪力騎士のオルド様が故郷のノースサウド王国へと帰郷して行った。
続いて英雄で聖女のミチカ様も故郷へと旅立つ予定で凄く寂しい。




五年間魔王討伐で共に苦楽を過ごした仲間達で送別会を催したのは一週間前のこと、堅苦しい形式ばった送別を嫌ったオルド様の希望で城下町の酒場に親しい者を集め飲み会は始まった


『おいおい気付けば凄い人数になってるな』

『今日はこの酒場貸し切りにしたらしいですわよ』

『そんなわけで今日は無礼講だ!飲んで騒げぇぇぇーー!!乾杯ーーーー!!』


お兄ちゃんの掛け声で皆は一気にお酒を煽った。私も参加していいのかと戸惑ったが、お世話になった方々にお礼を言いたくて参加させてもらった。
オルド様とミチカ様に、私が勇者の双子の妹だった事実を告白する絶好のチャンス場になった


『私は薄々気付いてましたわよ。仮面を着けた付き人なんていかにも怪しいじゃない、何か深い訳があるんだろうなって♪』

『ミチカ気付いてたのかよ!!俺は全然気付かなったぜ……まさかこんな可愛いらしい妹ちゃんが勇者のふりしてたとは、色々文句言ってごめんな~』

『いえいえ!!会議の度に抜け出す兄が悪いので!!』

『こんな可愛い妹って、リィーシャと俺は一卵性の双子だぜ!つまり俺も可愛いって事か、俺は野郎に尻を掘られるのも、掘るのも絶対嫌だからなぁぁ!!』

『ぷっぁぁ~俺だって野郎を抱く趣味はねぇぇよ!リューイには本当手を焼かされた苦い思い出しかねぇぇ、でも夜営地で一生懸命料理してた姿は微笑ましいなって思ってたが、今思えばあれは妹ちゃんだったわけだな!料理旨かったぜありがとうな♪』

『ひゃっ!ありがとうございます、いつもお兄ちゃんが迷惑ばかりかけてるので、私が勇者になってる時は少しでも役にたとうと思いまして…』

『リィーシャちゃん可愛いこんな妹ほしかったわ♡お姉さんの妹になって、こんなダメ兄貴を捨てて一緒に西領に行きましょ♡』


ミチカ様はほろ酔いみたいで、キャッキャ笑いながら私にハグをする。綺麗な美女に抱きつかれ仄かに良い香りがして照れ臭いけど嬉しい、皆さんを騙す事になってたから咎められる覚悟もしてたけど皆本当お優しい、おもわず目頭が熱くなる。


『…………聖女ミチカ離れてください…』


隣に座っていたゼルビア様がいきなり立ち上がり、ベリベリと私とミチカ様を引き離す。
驚く私を他所にゼルビア様は楽々と私の腰を捕み自らの膝の上に私を座らせる。
膝上に抱っこさせられたら、安全ベルトのようにお腹にゼルビア様の腕がロックされた。
頭上にチュッチュッと口付け落ちてきて、皆が驚き私達を凝視する。


『ちょっ…ちょっ……ゼルビア様下ろしてください……』

『嫌です…私にはリィーシャと過ごす時間が1分1秒でも大切です。聖女ミチカといえども私のリィーシャを譲る気はありません!』

『へ……?え……!?お前らそうい関係なの?』

『あら~♡無口黒魔導師ゼルビア君とリィーシャちゃんがね~♡だから凱旋パレードの時に二人して消えたのね、あの時の勇者もリィーシャちゃんだったわけね、この無口むっつり黒魔導師め♡えっ……でも貴方……』



そう……ゼルビア様は……
南領のサウスフォード王国に旅立ってしまう、故郷では無いのだが、エルフ種は純血種主情主義が多く多種族をあまり受け入れ難い。
魔王討伐の途中に立ち寄った際にかなりの冷遇を受けた。しかしゼルビア様だけは、その美貌ゆえか多いにもてなされ受け入れられた。
サウスフォードで起こった魔獣退治をこなしなんとか信頼を得たが、今後の行く末を見守る為この国に英雄を送る際、適材とされる人物はゼルビア様しか考えられなかった……



『私だってリィーシャと離れたくない…糞勇者が行けばいいと何度も言いましたが…』

『だから糞をつけるな!どう考えたって適材なのはお前だろ、てかいい加減リィーシャを離せよ……』

『嫌です!まだ全然足りませんリィーシャの香りをもっと嗅がなければ怒りが抑えられない!リィーシャ成分が足りません!!』


そういうと人前なのにゼルビア様は私の耳にも口付け、耳裏までクンクン嗅いでいる。くすぐったいし恥ずかしいしアワアワ慌てるのに、『可愛い…なんて可愛いだ……』と呟き一向に離してくれない。
細身の彼なのにやはり男性なのだ、すっぽり彼の体に収まり抜け出せない。
そして困るのが嫌じゃない事、ゼルビアに包み込まれて嬉しい恥ずかし心がときめきドキドキと心臓が忙しない……


『うわぁ~あのクールな黒魔導師がここまで豹変するとは恋ってやつは厄介だな……』

『恋は素敵ね♡』

『あ~私のリィーシャ可愛いくて辛い。いまさら国に従う身になろうとは……』

『『それに関して俺、私も同感』』


皆いまさら国の重鎮になって、国に縛られたくなかったらしい自由気儘な冒険者になって気儘な生活を予定していた。
しかし英雄として各国の重鎮になれば、各国の内情内政を知れる。馬鹿な野望や無駄な戦争を起こさない為に皆が各国に散る……


『馬鹿野郎!!俺だって国の重鎮なんか嫌だよ!でも間違い無く残党達はリィーシャを狙うか悪用する。国に重鎮になっとけば国の権力が使える!魔王城領さえ内政が落ち着けばあとは好きにしていいからさ……』

『いい加減勇者なお前が腹を決めて俺達に願い出たんだから仕方ないから従うよ……』

『私可愛い妹のリィーシャの為に人肌ぬぐわ♡』

『魔王残党さえ消滅させたら、速攻亡命してリィーシャを迎えに来ます。その際は駆け落ちしましょう!?糞勇者など捨て置けばいい……』

『約一名自分に素直な奴がいるが……本気まじありがとう皆には感謝しかない、俺の身内はもぉコイツだけなんだ絶対喪いたくない……』


お兄ちゃんはそういうと深々と皆に頭を下げた、普段不真面目で大雑把で女好きで駄目ダメな兄なのに……
いざっという時はこうやって私を守ろうとする。だから……私は…ゼルビア様に着いて行きたいと口が避けて言えない…

ゼルビア様も着いて来て欲しいとは言わない…






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