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2章

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「お前らと話してるとついつい脱線してしまったが……いい加減本題に入るぞ…」



リューイは頭をぽりぽり掻きながら、先程の事は無かったことにし始めた。
しかし私は忘れはしないぞ、元勇者と黒魔導師の熱き見惚れ合いを……



「リィーシャそのジト目を止めろ……」

「本題とは……?私とリィーシャの関係を認めて貰えるという話では無さそうですね」

「あぁ……魔王を討伐して世の中平和になりました、めでたしめでたしって簡単に終わる話ならよかったんだかな。魔王亡き後も魔王城周辺には沢山の魔人や魔獣が存在する。魔王の強烈な洗脳から解き放たれ、狂暴性はほぼ無くなった俺とて無闇矢鱈に討伐するつもりは無いんだが……」

「魔王の意思を継ぐ残党が残っている可能性があるわけですね……」

「……そうなんだ…大変そうだね……」

「おいおいリィーシャ何他人事みたいに言ってるだ。その残党が一番憎い相手といえば……」

「残党の絶対的王を討伐した糞勇者でしょうね……」

「ゼルビアわざわざ糞をつけるな!!」

「お兄ちゃん……!魔王討伐すら大変だったのに今や命を狙われる身になっちゃったんだ」

「だから他人事みたいな発言を止めろ!!リィーシャお前なんで冒険中仮面を着けさせられてたかわかっているのか?」


私が仮面を被させられた理由……?
頑なに仮面を外す事を許して貰えず、乙女が全裸で仮面を着けて入浴させられた屈辱の苦い日々……


「お兄ちゃんが面倒くさい事を全て私に押し付ける身代わりにさせる為?」

「た……たしかに……一理あるが、わざわざ可愛い妹に五年間も仮面生活を虐げるわけないだろぉぁぉ!!お前は馬鹿かぁぁぁ!」


なぜだか残念な子をみる目で、頭をよしよしとゼルビア様に撫でられる……
えっ……私ってそんな残念な子なの……


「そんな天然ボケのリィーシャも可愛いらしいですね。私の前ではいつでもその自然体で居てくださいね。勇者と双子のリィーシャは勇者の致命傷であり、敵から悪用されやすい存在だった、だから仮面を着け容姿を隠していた……」


「…………?」


「俺とお前は瓜二つだ!つまり誰がみても血の繋がった兄妹だとわかる、お前が拉致られ監禁や洗脳され俺と対峙した可能性もあった。その場合間違いなく魔王討伐は成功しなかっただろう……その危険要素を無くす為にもお前の容姿は徹底的に隠す必要があった……」


仮面を着けてた理由がそんな一大事な事だとまったく想像してなかった、私がお兄ちゃんの致命傷になっていたなんて……



「残党が力をつける前に、多種族に友好的な魔人達に魔王城領を治めて貰うか、もしくは他の国が魔王城の領地を治め魔人達を配下に置くか四か国で揉めてしまってな……」


この世界には東西南北に国が存在する。
私達が今居て魔王討伐の依頼を受けたのが、東領に位置する人間の国王が治める【イーランド王国】。
北領は山岳地帯が広がり沢山の鉱石が取れる【ノースサウド王国】ドワーフの国王が治める国で勇者パーティーの1人騎士オルド様はここの出身オーガと人間のハーフ怪力騎士だ。
西領は漁業の盛んな【ウェストキー王国】鯱の血を引く国王様が治める国、沢山の獣人が暮らし、聖女ミチカ様はここの出身の人魚の血を引く公爵令嬢。その美声の歌声は癒しの力を含みまさに聖女とはミチカ様そのものと言える。
南領は広い森林が広がる【サウスフォード王国】エルフが治める王国で、沢山の妖精やエルフ達が住む大国だ。

かれこれ30年前に魔王が復活をとげる、四か国は魔王によって甚大な被害を受け、このままでは魔王によって世界が侵略される事に危機を感じた、各国の王が協力し合い勇者を発掘し優秀なお供を同行させた。
各国の魔獣被害や魔人達の魔法洗脳を解き放ち体力とスキルアップをはかり装備を整えついに大陸中央に位置する魔王城に攻め入り討伐に成功した。




「俺らは魔王討伐した事によりこの世界の英雄となった。魔王城の今後を見守る為にも各国々に散る必要がある、一つの国に英雄達がとどまれば、やはり面白くないと感じる奴らがいるし、それをきっかけにして戦争を起こそうと企む純血種主情主義もいるしな。」


純血種主情主義とは自分の種族こそが一番と考え多種族を一切認めない攻撃的な思考。
四か国は現在沢山の種族が商売や交流を行って平和条約を結んでいるが、ごく一部に片寄った思考を持った人物がいるのもまた現実らしい……



「そんなわけで残念ながらお前達は離れ離れになる予定だ……遠距離恋愛なんて続かないから諦めとけ、一時の甘い時間を過ごしたと良い思い出にしとけ」



これがお兄ちゃんが言いたかった本題なのか…
認める認めない以前に、この世界の為に英雄達は役目がある、そこに私情は挟むな色恋沙汰などしてる場合じゃないと……



「なぜですか!?魔王の残党が残ってる限りリィーシャはまだ狙われる可能性があります。恋人の私がリィーシャを守らずしてどうするのですか?」

「ゼルビアお前……本当リィーシャの事好きなんだな、でも安心しろお前が向かう大国は美意識が高く美貌だらけの国だから新しい恋もすぐに見つかるさ」



兄は安心させるようにゼルビア様の肩をポンポンと叩いた……

そっか……

仕方ないよね…

まだ今なら軽症で済むよね、胸がシクシク痛むけどこの話しに割って入れる程の資格はまだ私には無い気がした……まだ大火傷しないうちに心に蓋を締めたほうがきっと辛くないよね……






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