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Ⅰ・日常の終わりと初恋

4・胸につかえて、ただ溢れ出す

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『ふむ。どうしたのじゃ?星姫』

ふと、さっきまでいなかった空間に白虎が現れる。
彼女は私の契約精霊にして、この世界に存在する”四大聖獣”の西方担当である。

「…別に。なんでもないよ、シロ。あと星姫は止めてってば」

いつもの様に呼び方を注意しながら、上半身を机の上へ投げ出す。

『むぅ、良いではないか。記憶こそないものの、お主は我らが五千年の間待っていた特別な存在なのじゃぞ?』
「はいはい。出会えてよかったわー。………はぁ」

鬱々とした気分を晴らそうと、無意識の内に溜息が出た。

『むむ?やはり元気がないではないか!どうしたのじゃ?我に相談してみい』

動作が幼いくせに年上面されるのは癪に障るが、今はそんな軽口を叩く余裕もない。
リディアは聞き取れるか聞き取れないか、ギリギリの音量でポツリと呟いた。

「………現れたの」
『む?何がじゃ?』
「…………本物の、お姫、さま」

ふんわりとした、花の妖精…。
心の中で彼女を思い浮かべて、そう付け足す。

『あぁ!ヒロインのことじゃの』

まるで合点が行ったというように白虎ことシロは言う。

「―ヒロ、イン?」
『いんや、こっちの話じゃ。して?それの何が問題なのじゃ?』

本当に不思議そうに首をかしげるシロの、何気ない一言に我慢していた涙が溢れ出す。
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