百鬼徒然

葛葉幸一

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第34夜 鵺ーヌエー

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声はトラツグミのごとく。
その身は、、猿の顔、狸の胴体、虎の手足を持ち、尾は蛇だという。
海外で言うところのキメラみたいな存在である。

ある夜、寂しげな鳴き声に誘われるように外に出た。
どれくらい歩いたか。
それとも全く歩いてないのか。
時間感覚も、距離感も全くない。


これは夢なのか?
でも、鳴き声は続いている。
トラツグミ。
気がつくと、森の中にいた。

月明かりが照らす夜闇の中、風のざわめく音と、鳥の鳴き声だけが聞こえる。

祖父いわく。
鵺なんてのは、姿形もころころ変わる、音の怪に近い存在だ。

雷を呼ぶなんて言われちゃいるが、それも定かじゃねえ。
だが、気をつけろ。
奴らがいる先は、闇だ。
 

がさり、と音がする。
鳥の声は近づいて来ている。
そしてすぐ後ろに、何かの気配。

それは野生動物か、それとも…。
雨だ。
雨が降って来た。
そして、轟く雷鳴。
奴だ。鵺がないている。

鵺が雷を呼んだのだ!
稲光に照らされた森の中、1匹の獣が立っている。
頭は猿、か?

しかし、4つ足。
それ以上、近くでもなく遠ざかる訳でもなく。
それは一声鳴いた。

気がつくと、僕はいつもの
部屋の中にいた。
しかし。

足は泥だらけで、傷だらけだった。
あれは、夢ではなかったのか。
ふ、と枕元をみると、そこには血まみれの矢が置いてあった。

伝承にあったが、山鳥の尾を使った矢で退治されたとか。
これは、鵺の身体に刺さっていたのか。

もしかしたら、鵺は大事などされておらず、その矢を抜いてくれる人を探していたのかもしれない。
そして傷が癒えた鵺は、人間界に凶事わもたらすのだ。
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