美鏡神社

葛葉幸一

文字の大きさ
上 下
4 / 12
創世

白蛇様。侍の末路

しおりを挟む
地面の下から、何かが突き上げるような感覚。
「じ、地震か!?」
 -違う
「は、早く外へっ!!」
-逃がさない
 慌てて外に出た侍たちは、いまだに手を合わせ続けている娘の姿に驚きました。
「き、貴様、まだお祈りなど……!」
「何かございましたか?」
「なにかも、なにも、今しがた、大きな地揺れが合ったであろう!?」
「私には、何も感じませんでしたが?」
「な、ナンだと……?」
 突如、大きな音をたてて、侍の持っていた鏡が、粉々に砕けてしまいました。
「うおっ!!?」
「きゃっ!? ……!
あ、あなたたち、それはっ」
 娘は驚愕の表情を浮かべ、割れた鏡を見つめています。
 割れた鏡の破片から、白い煙のような、殺意の込められた何かが、にじみ出てきました。
 それは、見る見るうちに空へと上っていくと、一面を覆うほどに巨大なものになりました。
「な、なんだこれは!!」
「は、早く隊長の元へ!!」
 侍たちは、一目散に駆け出して行きます。
「あれが、しろへびさま……」
 娘がつぶやくのを待っていたように、煙は少しづつ姿を鮮明にして行きます。
 そして、言い伝えどおりの、大きな。
 空を貫き、星々さえ飲み込めるほどの。
 白い蛇が、姿を現したのです。

-我が地に足を踏み入れしは汝らか・・・

 耳ではなく、直接心に響くような、低い声。
 まさに、言い伝えにある白蛇様そのものでした。

-ここは我が住み家。汝等が戦争の火種をもたらすというのなら、容赦はせぬぞ・・・!

 長く、雄大な尾を大きく持ち上げると、たやすく木々をなぎ倒しながら振り下ろしました。
「ひぃっ!?」
 戦馴れした侍たちも、さしもの人外相手には腰を抜かすばかり。
 その場に固まるだけで、微動だに出来ません。

-我を忌々しき封印から解き放ってくれたことには感謝しよう。
 そして……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

市霊払い

美味しい肉まん
ファンタジー
あなたは神を信じますか? 地方都市における15年目の呪いそれは既に始まっていた。 市町村合併によっておきる厄と呪いのお話 終わったかと思ったらまだまだ続くお話

裏山の神さま

Nova
ファンタジー
大学生活に疲れた僕(立花朝陽)は、思い切って大学を休学して実家に帰ることにした。ある日、さすがに暇を持て余した僕は、ふと思い立って小さいころによく遊んでいた村の里山へと、久しぶりに足を運んでみることにした。 僕   :立花 朝陽 龍神さま:理央さま 現管理人:学さん(瀬尾 学) 旧管理人:瀬尾さん(瀬尾 正勝) 図書館司書:文人さん(倉内 文人) お父さん:立花 陽三 お母さん:立花 朝子

金色(こんじき)の龍は、黄昏に鎮魂曲(レクイエム)をうたう

藤原 秋
ファンタジー
高校生活最後の夏休み、友人達と地元で有名な心霊スポットに出掛けた氷上彪(ひかみひょう)は、思いがけぬ事故に遭い山中に独り取り残されてしまう。 人生初の気絶から目覚めた彼を待ち受けていたのは、とても現実とは思えない、悪い夢のような出来事の連続で……!? ほとほと運の悪い男子高校生と、ひょんなことから彼に固執する(見た目は可愛らしい)蒼い物の怪、謎の白装束姿の少女、古くから地域で語り継がれる伝承とが絡み合う、現代?和風ファンタジー。 ※2018年1月9日にタイトルを「キモダメシに行って迷い人になったオレと、蒼き物の怪と、白装束の少女」から改題しました。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

アザーズ~四つの異本の物語~

埋群のどか
ファンタジー
 「異本」とは、同じ骨格を持ちながらも伝写などの過程で文字やストーリーに異なった部分のある物語のこと。これは童話・昔話の登場人物たちが物語の結末に納得せず、より良い結末を目指して進んでいく物語正史から外れた異本の「アナザーストーリー」なのです。

また、猫になれたなら

秋長 豊
ファンタジー
 この町では、猫が石に変えられる。それは全て、石男と呼ばれる邪物の仕業だった。石男を滅ぼすため、猫の神様”にゃんこ様”は人間を猫に憑依させ、猫戦士として戦わせていた。そんなさなか、高校2年生の空雄(そらお)は白猫に憑依されてしまう。猫戦士の体は24時間でリセットされるため、事実上死ねない体となった。「人間に戻りたければ石男を殺せ」それが、にゃんこ様が告げた言葉だった。人間に戻ることを強く願った空雄は、黒猫の戦士流太や他猫戦士たちとともに石男を滅ぼすために拳を握る――  果たして空雄たちは無事、人間に戻ることができるのか……!?  本格猫パンチバトル×ちょっぴり切ないファンタジー作品!!(少し恋愛あり!)

私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。

アーエル
ファンタジー
旧題:私は『聖女ではない』ですか。そうですか。帰ることも出来ませんか。じゃあ『勝手にする』ので放っといて下さい。 【 聖女?そんなもん知るか。報復?復讐?しますよ。当たり前でしょう?当然の権利です! 】 地震を知らせるアラームがなると同時に知らない世界の床に座り込んでいた。 同じ状況の少女と共に。 そして現れた『オレ様』な青年が、この国の第二王子!? 怯える少女と睨みつける私。 オレ様王子は少女を『聖女』として選び、私の存在を拒否して城から追い出した。 だったら『勝手にする』から放っておいて! 同時公開 ☆カクヨム さん ✻アルファポリスさんにて書籍化されました🎉 タイトルは【 私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください 】です。 そして番外編もはじめました。 相変わらず不定期です。 皆さんのおかげです。 本当にありがとうございます🙇💕 これからもよろしくお願いします。

処理中です...