美鏡神社

葛葉幸一

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創世

洞窟。禁忌

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 あること数時間。洞窟は近くにあるようで、なかなかたどり着きません。
「おい、娘! 本当にこの道であっているのか!?
 いくらなんでも、時間がかかりすぎているだろう!?」
 特に疲れも見せない様子の娘はお供え物を手に、平地を歩くのと変わらない様子で、先に進みます。
「白蛇様に嫌われているのやも知れません。
 村人以外が近づくのは、なにぶん初めてなもので……」
「この道、嘘偽りだったら、その時は命はないものと思えよっ」
「お供え物もしなくてはなりません。確実に白蛇様のところ、向かっておりますゆえ、ご安心下さいませ」
 普段鍛えている侍たちにもさすがに疲れが見えてきた頃、生い茂る木々の向こうにようやく洞窟が見えてきました。
「こちらでございます」
 そういって、娘は洞窟の入り口を侍たちに譲りました。
「この奥に、白蛇様が封印されていらっしゃいます」
 入り口の古くなったお供え物を、今もって来た物と交換して手を合わせます。
「私はこれ以上は入れません故、ここから先はお侍様方のみでお進み下さいませ」
 手を合わせて動こうとしない娘をその場に残し、侍たちは洞窟の中に入っていきました。
-異様な空気。
 敵意が形を成したように、体に纏わり付いてくるようです。
 一歩足を踏み入れただけで、ここが違う世界ということが分かります。
-本当に、ここに人間がいていいのか?
-引き換えしたほうが……。
 しかし、洞窟はさして広くはありませんでした。
 たかが数十歩中に入っただけで、行き止まりになっています。
 そして、行き止まりの少し手前。
 そこには、人の顔より少し大きいくらいの、丸い鏡が置かれていました。
 異様なのは、その鏡が注連縄でグルグルと何十にも巻かれていること。
 注連縄とは、神を祭る神聖な場所を他の場所と区別するために張るもので、悪気を神聖な場所に入れないようにするためです。
 本来なら、神のためのもの。
 しかし、それが。
 今は、とてつもなく禍々しいものに見えます……。
「へ、へびなんて、いないじゃないか……。ははは」
 鏡を手に取った一人の侍が、仲間の方を振り向いた瞬間。
「!!」
 なにかが脈動しました。
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