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チュートリアル

8 街をひとまわり

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 ボードに貼られている紙をざっと見た。紙は色付けされており、白い紙に書かれたものしか受注出来ないようだ。
 あ、地図も貼ってあったので触っておこう。
 ピロンと音がして、ウインドウにマップ機能が追加された。チェックしてみるか。

 ここは城下町のようで、城をコの字で囲うようにして町並みが広がっている。
 すぐそばの噴水の正面には、いかにもって感じの、尖った城がデデンと建っていた。
 周りを塀で囲っていて、入り口には兵が二人いる。へえへえ……。

 噴水から見て左にある二階建ての大きな建物が冒険者ギルド。入り口に真っ赤な獅子の看板があって目立つ。
 右手側は大通りになっていて、この先に住居や店などが並んでいる。さらに先には外へ繋がっている大きな門があるようだ。
 噴水を後ろに行くと飛空艇乗り場。俺たちがさっき乗ってきたところだな。


 さて、どうするかな。まずはボードの依頼を見てみるか。
 今のランクで受けられる白い依頼書に目を通すが『迷子猫探し』とか『庭掃除』とか、雑用ばっかりで、あんまり面白そうなのがない。
 まあ、まだ序盤だし仕方ないか。じゃあ、とりあえず保留にして町を一回りしてみよう。


 俺はギルドを出て、ぶらぶらと歩きだした。
 おっ、あの剣の看板は武器屋かな? ちょっと覗いてみよう。 

 ドアベルの音を響かせながら店内に入る。中は広くて結構明るい感じだった。奥にも部屋があるのが見える。
 壁一面に剣とか斧とか盾とか置いてある。こういうの、ワクワクするよな!

「いらっしゃいませ!」

 店員のNPCが奥から出て来た。赤い髪を後ろで束ねていて、眼鏡をかけた美人だ。

「なにかおさがしですか?」

「シーフが装備出来る武器を見たいんですけど、良いですか?」

「かしこまりました、こちらへどうぞ」

 店員が案内してくれたところの壁には、短剣が一面に飾ってあった。

「こちらが短剣類のコーナーになります。どうぞ、ゆっくりご覧ください」

 そういって店の奥に消えていく店員。飾ってあるものを見ると、詳細が浮き出てくる。便利なシステムだな。
 詳細を見た感じ、装備品にはレベル制限、ステータス制限、職種制限などがあるようだ。
 たくさん飾られている中で、今の自分に装備出来るのは、ブロンズダガーだけみたいだ。
 レベル10以上になればブラスダガーが装備できるようになる。
 ブラスって真鍮だっけか? 真鍮って銅よりつよいの?
 
 ブロンズダガーのお値段は150パンゲア。
 仮想通貨のパンゲアはドルと連動していて、1パンゲア=1ドルとなっている。
 今現在の相場だと1ドルは139.72 円。150ドルだと20,956.35 円になる。
 お高いと思うでしょう? でもこれ、NFTなんだよね。
 こんなしょぼいダガーでも、世界に一本しかない貴重なものだ。もしブロンズダガーが売切れたら二度と買えない。
 それに2万でゲームが有利に進められると思えば安いと思わないか?
 え、買うのかって? 馬鹿か! 買わねえよ。こんな糞高いの。

 武器屋を出て、他の店も見て回る。防具屋、雑貨屋、酒場、食料品店、等々。
 雑貨屋にはトラップツールが売っていた。お値段なんと1パンゲア。
 シーフのトラップスキルを使用するたびにトラップツールを一つ消費する。とんだ銭投げ技だな。怖ろしい。
 装備の更新は諦めるか。

 大通りをさらに進むと、さっきの噴水よりも大きな広場に出た。
 中央には大きな時計台があり、時刻を告げる鐘の音が鳴り響く。
 ここは大勢の人たちでにぎわっている。ほとんどがプレイヤーだ。 

 露店を開いてるプレイヤーがいたので覗いたら、最初のチュートリアルで貰った指輪を売買していた。
 いくつか指輪が並んでいるので、売る人もいたのだろう。

「いらっしゃい。一つどうだい? 買取もやってるよ」

 露店をやっているヒューマンの男性が話しかけてきたので、軽く見てみることにする。
 売っているのはHMリングが二つ、DRリング、EFリング、DMリングの五個だ。

 HMはヒューマン、効果はVIT+1。
 DRはドワーフ、効果はSTR+1。
 EFはエルフ、効果はINT+1。
 DNはドラゴニア、効果はPIE+1。

 それぞれの種族に合ったステータスが上がるらしい。しかも種族制限がついていた。ここにあるやつ装備出来ねえじゃん。
 いや、まてよ。あれ? これ、俺のと違くね?
 ウインドウを開いて確認してみると、HLリング+1と書いてあるし、ステータスも二か所上がっている。
 まさか、チュートリアル全クリボーナスか? おっしゃ、ラッキー!!

「このリング、いくら?」

「どれでも一つ500パンゲアだよ」

「うーん……。HLリングが売ってたら欲しかったんだけどなあ……。ちなみに買取だと、どれぐらい?」

「そうだなあ、ハーフリングだし300パンゲアでどうだ?」

「いやあ、残念だけど、それじゃあ売れないかなあ」

「そうか……。ならしょうがないな……」

 男と話していると、後方から声が掛かった。ヒューマンの女性だ。

「ねえ、HMリング一つちょうだい。いくら?」

「まいど! 700パンゲアだよ」

「はい、どうぞ」

 そういってヒューマンの女性は冒険者カードを取り出した。
 露店の男も冒険者カードを出して、お互いのカードを接触させる。
 なるほど、こうやって使うのか。

「ありがとやした! またよろしくな!」

 女性はHMリングを受け取ると、無言で足早に立ち去った。

「なあ、さっき言ってたのと値段違くね?」

「欲しい客に高く売る。これ、商売の基本な。ほら、買わねえなら帰った帰った」

「ええー」

 シッシと、追い出されてしまった。まあいいか。おかげで重要な情報を手に入れた。
 というか、あんな値段でも買う人いるんだな。ブルジョアめ。
 さて、他のところも見て回るかな。

 大広場を離れて歩いていると、工業地区にたどり着いた。
 地図で確認したところ、ここにはクラフト職のギルドが存在している。
 ここには革細工、裁縫のギルドと、そのギルド直営店がある。
 とりあえず覗いてみるか。

 革細工ギルドの中に入ると、数人のNPCが作業していた。
 作業台を行き来してあわただしく動いている。
 偉そうなお姉さんが暇そうに立っていたので、声をかける。

「こんにちは。初めてなんですけど、見学ってできますか?」

「あら、新人さんですね。いいですよ、こちらへどうぞ」

 案内された先には、革がズラリと並んでいる棚があった。
 棚には番号が振られており、種類ごとに整理されている。

「革細工ギルドでは、革の売買。革製品の制作。その他サポートをしています」
「作業台にレシピにある素材を乗せてクラフトすることで、製作できます。制作一回につき、ギルドポイントで使用料をいただきます。なお、革細工ギルドのメンバーなら無料で使用できます」

「革細工ギルドに入るにはどうすればいいですか?」

「レベル10以上で他のクラフトギルドに登録されていなければ、登録可能です。登録金として1000ギルドポイントが必要になります」

「ああ、なるほど。わかりました。ありがとうございます」

 俺はまだレベル4だからクラフトギルドには入れないんだな。残念。
 まあ、クラフトギルドは一つしか入れないみたいだから吟味して選ぶか。どうせギルドポイントもないし。
 ここと隣接する建物にところに革細工ギルドの直営店があるので、こちらも覗いてみよう。

 革細工直営店の中に入る。中は広々としていて、皮製のジャケットやズボン、ブーツなどの衣類が展示されていた。これらすべてNFTだ。
 一番安価のレザーブーツをみてみると、38000ギルドポイントになっていた。
 ギルドポイントで買えるのか! でも高いのか安いのかわからんな。
 でも、ギルドポイントを貯めればリアルマネーを使わなくてもNFTを入手できるんだな。これは朗報!

 裁縫ギルドも見てみたが、同じような感じだった。扱ってる商品が布に変わっただけ。
 とりあえず、ここに長居しても仕方がないので、いったん冒険者ギルドに戻ろうか。
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