冒険者育成学園の日常

12

「ゆうすけ。お前の目には俺が負けてるようにみえるのか？」
　自信満々で問いかける河童。対して全力で攻撃しても平然と起き上がってくる河童に不気味さを覚えたのか、とまどう男たち。
　確かに見ようによっては河童が圧倒している。
「くそっ、覚えてやがれ！」
　男たちは捨て台詞を吐くと一目散に逃げだした。
（まあいいや。よかった。これで一件落着だな……）

「大丈夫？」
　僕は安心して一息ついたところで女の子たちに声をかけた。一人は金髪ショートヘアーの子でもう一人は黒髪ロングヘアーの子だ。どちらも美少女と言っていい顔立ちをしていた。金髪のほうは若干釣り目で気が強そうだが美人という言葉がよく似合う。黒髪の方は少したれ目気味でおっとりした雰囲気がある。まあ、どっちも可愛いことには変わりないのだが。
「ありがとうございます」
　2人は声を揃えて礼を言うとペコリとお辞儀をした。
「僕は何もしてないよ。お礼ならあの河童に……」
　そう言って河童を指さすと――
「うむ、民草を守るのは当然のことだ」河童が腕を組んで偉そうにしていた。
（なんでこいつはいちいち偉そうなんだよ……）

　金髪のほうが口を開いた。
「本当にありがとうございました。えっとお名前は……」
「ああ。僕は1年Z組のゆうすけって言うんだ。よろしくね。この偉そうなのは同じく1-Zで河童の神（ジン）。河童でいいよ」
　僕が名乗ると続いて黒髪の方も自己紹介を始めた。
「私はひなです。こっちはみどり。二人とも1年C組です」
黒髪の子がひなさん、金髪の子がみどりさん、と言うらしい。2人とも僕らと同じ一年だった。
「それにしても君たち災難だったね」
　彼女たちに尋ねると、なんでも学校で友達と一緒に昼飯を食べようとしていたところ、突然複数の男に襲われて無理やり拉致されそうになったところを間一髪で逃げ出したとのこと。そこに河童が現れたのだそうで。
　話を聞く限りだと何故襲われたのか心当たりがないらしい。あいつら『獄炎』とか言ってたしもしかするとギルド関係の何かなんだろうか？
　そんなことを話していたらいつの間にか昼休みが終わりそうな時間になっていたため、僕らは急いで教室に戻ったのだった。