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喫茶店を開店してしばらく経つが、あの偽刑事二人は今日も来なかった。本物の刑事に見張られてるのに気づいたのか、それとも別の理由なのか……。と言うか、この絵画を見せたけど大丈夫かな?偽物だとは言ったけど、それでも一億もするし。
そんなことを考えていると、入り口のベルが鳴った。お客様だ。私は笑顔で挨拶をする。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」
入ってきたのは常連さんの女性三人。彼女たちはいつものように窓際の席に座る。メニューを渡してオーダーを受ける。注文はいつも通りケーキセット。今日はショートケーキだ。紅茶とショートケーキを持っていくと、三人は楽しそうにおしゃべりを始めた。
「そう言えば、この前行った占いの館なんだけど、凄く当たっててびっくりしちゃった」「えー、どんな風に?」「うーん、なんかねー、これからの運勢とか、あと、恋愛のこととか色々……」「へー、面白そうね」「うん、今度みんなで行ってみない?」「いいわね!じゃあ今度の日曜日はどうかしら?」「賛成!」
などと盛り上がっている。そんな会話を聞きながら私はカウンターに戻った。すると、猫ちゃんが話しかけてきた。
「おじさん、ちょっといいかな?」
「ん?どうしたの?」
「私、ちょっと出かけてくるね。裏口から出るから、戸締りよろしく!」
それだけ言うと猫ちゃんは行ってしまった。どこに行くんだろう?と思いながらも裏口の施錠をして仕事を続ける。
「マスター、お会計お願い」常連さんたちが帰るようだ。
「ありがとうございました」
三人のお客様を見送る。入れ替わるように翼ちゃんが入ってきた。
「おじさん、おはよー」
「おはよう、翼ちゃん。さっきまで猫ちゃん来てたよ。もう行っちゃったけど」
「そうなんだ~」
そう言って翼ちゃんはロッカールームに入っていった。しばらくして着替えを済ませた彼女が戻ってくる。
いつものエプロン姿になった彼女はキッチンに入り、洗い物を始める。鼻歌を歌いながらご機嫌そうだ。何かいいことでもあったのかな?そう思っていると翼ちゃんは思い出したように言ってきた。
「そういえば、おじさん、猫ちゃんから聞いた?」
「何を?」
「ほら、例のお仕事の話」
「ああ、宝石展覧会の?今週末からだよね。まだ何も聞いてないよ」
「そっかー、じゃあ閉店後にまた話そうよ」
そう言って翼ちゃんは作業に戻る。私も自分の仕事を始めた。
夕方、店を閉めた後、私は翼ちゃんと一緒に翼ちゃんの自宅に向かった。
「ただいま~」
元気よく家に入る翼ちゃんに続いて中に入る。リビングに入ると、猫ちゃんが待っていた。
「おかえりー!」
「お邪魔します」
挨拶をしながら上がる。ソファに座るよう促されたので大人しく従うことにした。
テーブルの上にはお茶請けがいくつか用意されていて、それをつまみながら話をする。
「……って感じが今回の仕事の流れなんだけど、大丈夫かな?」「いいんじゃないかな。特に問題なさそうだし」
二人の話を聞いていると、え?それが怪盗?と言いたくなるような内容だった。まるで大掛かりな手品のタネが実は単純だったのを知らされた気分だ。やっぱり、この現代社会で怪盗なんてファンタジーは存在しないんだなあ……。
「ところで、予告状ってどうするの?」
私が質問すると、猫ちゃんが答えてくれた。
「そんなの出さないよ。現物が隠されちゃったら意味ないし」
「あー、そうだよなあ……なるほどなあ……」
現実なんてこんなもんだよな。そう思いながら出された紅茶を啜った。
怪盗の話が一段落したので、私は持参した辰砂(しんしゃ)とウイングキャットの資料を二人に渡した。
「これがカップに付着してた魔力の残渣の資料で、こっちが海外の怪盗ウイングキャットと思られる事件のリストだよ」
「おじさん、もうあのカップの事調べたの?凄い!」「おじさん、早ーい」
二人が資料を読み終わるのを待って、今度は私が説明する番だ。
「あの絵画の魔力と同じだね。やっぱり、魔力を含んだ鉱石から作った塗料で描かれたから魔力があるんだよ」
「なるほどね~、それは気付かなかったわ」「そうなんだ……」
「翼ちゃんのお姉さんが見つかったら、魔力さえ供給できれば別に怪盗なんかしなくてもいいんだろう?神社をまわればある程度の魔力は回収できるんじゃないかなと思って」
「確かにそうだね!」「おじさんが優秀だ」
そう言って二人は感心してくれた。
「次に海外で起きた怪盗のリストなんだけど、これに間違いないかな?見覚えある?」
二人にリストを見せる。そこには、時間、場所、狙わてたものの写真などがまとめられていた。それを見た二人は頷く。どうやら間違いないようだ。
「それにしても、この短期間でよくここまで調べられたね」「すごいね」
二人は褒めてくれるが、実際はそんなに大したことではない。インターネットを使って世界中の情報を検索しているだけだ。
さて、ここ数年の事件は彼女たちが関わってるのがわかった。では、こちらはどうだろう?
「じゃあ、今度はこれに心当たりはあるかな?」
そういってもう一つのリストを二人に渡した。
そんなことを考えていると、入り口のベルが鳴った。お客様だ。私は笑顔で挨拶をする。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」
入ってきたのは常連さんの女性三人。彼女たちはいつものように窓際の席に座る。メニューを渡してオーダーを受ける。注文はいつも通りケーキセット。今日はショートケーキだ。紅茶とショートケーキを持っていくと、三人は楽しそうにおしゃべりを始めた。
「そう言えば、この前行った占いの館なんだけど、凄く当たっててびっくりしちゃった」「えー、どんな風に?」「うーん、なんかねー、これからの運勢とか、あと、恋愛のこととか色々……」「へー、面白そうね」「うん、今度みんなで行ってみない?」「いいわね!じゃあ今度の日曜日はどうかしら?」「賛成!」
などと盛り上がっている。そんな会話を聞きながら私はカウンターに戻った。すると、猫ちゃんが話しかけてきた。
「おじさん、ちょっといいかな?」
「ん?どうしたの?」
「私、ちょっと出かけてくるね。裏口から出るから、戸締りよろしく!」
それだけ言うと猫ちゃんは行ってしまった。どこに行くんだろう?と思いながらも裏口の施錠をして仕事を続ける。
「マスター、お会計お願い」常連さんたちが帰るようだ。
「ありがとうございました」
三人のお客様を見送る。入れ替わるように翼ちゃんが入ってきた。
「おじさん、おはよー」
「おはよう、翼ちゃん。さっきまで猫ちゃん来てたよ。もう行っちゃったけど」
「そうなんだ~」
そう言って翼ちゃんはロッカールームに入っていった。しばらくして着替えを済ませた彼女が戻ってくる。
いつものエプロン姿になった彼女はキッチンに入り、洗い物を始める。鼻歌を歌いながらご機嫌そうだ。何かいいことでもあったのかな?そう思っていると翼ちゃんは思い出したように言ってきた。
「そういえば、おじさん、猫ちゃんから聞いた?」
「何を?」
「ほら、例のお仕事の話」
「ああ、宝石展覧会の?今週末からだよね。まだ何も聞いてないよ」
「そっかー、じゃあ閉店後にまた話そうよ」
そう言って翼ちゃんは作業に戻る。私も自分の仕事を始めた。
夕方、店を閉めた後、私は翼ちゃんと一緒に翼ちゃんの自宅に向かった。
「ただいま~」
元気よく家に入る翼ちゃんに続いて中に入る。リビングに入ると、猫ちゃんが待っていた。
「おかえりー!」
「お邪魔します」
挨拶をしながら上がる。ソファに座るよう促されたので大人しく従うことにした。
テーブルの上にはお茶請けがいくつか用意されていて、それをつまみながら話をする。
「……って感じが今回の仕事の流れなんだけど、大丈夫かな?」「いいんじゃないかな。特に問題なさそうだし」
二人の話を聞いていると、え?それが怪盗?と言いたくなるような内容だった。まるで大掛かりな手品のタネが実は単純だったのを知らされた気分だ。やっぱり、この現代社会で怪盗なんてファンタジーは存在しないんだなあ……。
「ところで、予告状ってどうするの?」
私が質問すると、猫ちゃんが答えてくれた。
「そんなの出さないよ。現物が隠されちゃったら意味ないし」
「あー、そうだよなあ……なるほどなあ……」
現実なんてこんなもんだよな。そう思いながら出された紅茶を啜った。
怪盗の話が一段落したので、私は持参した辰砂(しんしゃ)とウイングキャットの資料を二人に渡した。
「これがカップに付着してた魔力の残渣の資料で、こっちが海外の怪盗ウイングキャットと思られる事件のリストだよ」
「おじさん、もうあのカップの事調べたの?凄い!」「おじさん、早ーい」
二人が資料を読み終わるのを待って、今度は私が説明する番だ。
「あの絵画の魔力と同じだね。やっぱり、魔力を含んだ鉱石から作った塗料で描かれたから魔力があるんだよ」
「なるほどね~、それは気付かなかったわ」「そうなんだ……」
「翼ちゃんのお姉さんが見つかったら、魔力さえ供給できれば別に怪盗なんかしなくてもいいんだろう?神社をまわればある程度の魔力は回収できるんじゃないかなと思って」
「確かにそうだね!」「おじさんが優秀だ」
そう言って二人は感心してくれた。
「次に海外で起きた怪盗のリストなんだけど、これに間違いないかな?見覚えある?」
二人にリストを見せる。そこには、時間、場所、狙わてたものの写真などがまとめられていた。それを見た二人は頷く。どうやら間違いないようだ。
「それにしても、この短期間でよくここまで調べられたね」「すごいね」
二人は褒めてくれるが、実際はそんなに大したことではない。インターネットを使って世界中の情報を検索しているだけだ。
さて、ここ数年の事件は彼女たちが関わってるのがわかった。では、こちらはどうだろう?
「じゃあ、今度はこれに心当たりはあるかな?」
そういってもう一つのリストを二人に渡した。
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