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チュートリアル
24 私たちの冒険はまだ始まったばかりだ!
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お昼になったのでいったんログアウト。ずっと座りっぱなしだったので、ちょっと疲れてしまった。
昼食を食べているとメールが届いた。はるちゃんからだ。
話があるのでログインして欲しいとのことなので、ご飯を食べ終わったらすぐログインすると返信した。
話ってなんだろう? 何か相談事だろうか? 食事を済ませた後、ゲームを再開する。
待ち合わせ場所の冒険者ギルド前噴水広場に移動すると、既にみんな来ていた。
私を見つけたみさとが手を振っている。
「おいすー! みんな早いね!」
「お疲れサマンサ。待ってたよ、たくみ~」
「たくみ、おはよー」
「おはよう。待ってたわよ、たくみ」
どうやらお待たせしてしまったみたい。でもみんな、お昼ご飯ちゃんと食べてる? まだ13時前よ?
「それで、今日はどうしたの?」
私が尋ねると、みんな何故か気まずそうな表情をしている。
「え、ええとですね……」
「あー、実はね。これからの事なんだけど……」
「はるちゃん? るなちゃん?」
なぜか言いにくそうにしている二人を訝しげに見つめる。
「その、私たち、この国から離れようと思うんだけど……」
「え? なんで!? まだ冒険したりないのに!」
予想外の話に驚いてしまった。なんで急にそんな話が出てくるんだろう……?
「ネットで情報しらべたんだけどさ、バルティカ大陸の遺跡がメイジのレベル上げに向いてるんだって。だから、そっちに行こうと思って」
「そうなんだ……。じゃあ仕方ないか。私たちファイターでも活躍できるのかなあ?」
「あ、違うのよ、たくみ……。私たちがバルティカ大陸に行くんじゃなくて、私が行くの」
「え……?」
はるちゃんの言葉に呆然とする。
どういうことだろう? 話がよくわからない……。
はるちゃんは続ける。
「たくみはさ、冒険がしたいんだよね? この世界の隅々まで見て回りたいんだよね?」
「うん……。私は冒険がしたい。この世界を楽しみたい」
私の答えを聞いて、はるちゃんがにっこりと微笑んだ。
「私もやりたいことがあるの。強くなりたい。もっと先まで行きたい。そのためにどうしてもバルティカ大陸に行きたい!」
「……」
「……たくみの気持ちはよくわかってるよ。でもね、みんなに合わせてるといつまでたっても先に進めないじゃない」
「それはそうだけど……。だったらせめて一緒に行こうよ! みんなで行った方が絶対楽しいよ!?」
説得する私に、はるちゃんは首を横に振る。
「ごめんね、たくみ……。私は自分のペースで進むことにするわ。だって、せっかくこの世界に来たんだもの! やりたいことをやらなきゃじゃない!」
「はるちゃあん……!」
はるちゃんの決意は固いようだ。どうしよう……。
「あのね、たくみ。実は私もなんだ……」
「えっ? るなちゃんまで……?」
「ごめん、たくみ……。私はケノーラ大陸に行きたい。私のやりたいことがそこにあるんだよ」
「そ、そんなあ~っ!」
二人とも、もう決めちゃってるの!? こんな突然の別れだなんて聞いてないよっ!
「元気でね、たくみ。今まで楽しかったわ!」
「またどこかで会えるよ。きっと!」
二人はそう言うと、私の手をぎゅっと握った。
ああ、これは本当にお別れなんだなと直感的に思った。
涙がぽろぽろとこぼれてくる。止められない。止めたくないけど止まらない。
そんな私をあやすように、二人の手は優しく背中をさすってくれた。
そんな様子を見ていたみさとがぽつりとつぶやいた。
「なんか、こういうのドラマチックだよね。でもさ、明日学校で会えるじゃん? 単にゲームで別行動するだけなのに……」
その言葉を聞いた瞬間、二人の手が離れた。そして、はるちゃんがみさとの頭を軽く叩いた。
「いたいっ! なんで叩くんだよお!?」
抗議するみさとを無視して、はるちゃんが言葉を続ける。
「そういうことだから、また明日学校で会おうね、たくみ!」
「じゃーねー、バイバーイ!」
はるちゃんも、るなちゃんも、そう言って去っていった。
取り残された私は、ただ茫然と立ち尽くすしかなかった。
二人と別れた後、みさとがおもむろに口を開く。
「どの道さあ、はるみとはもう一緒にパーティー組めなかったんだよね。レベル差で」
「……レベル差?」
「そ、レベル差。はるみのレベル知ってる? 15だよ、15! あいつ夜中まで野良でレベリングしてたんだよ」
「えっ、15? 機能の夕方まで同じレベルだったのに……」
はるちゃんは本当に強くなりたくて頑張ってたんだなあ。5つもレベル上げたんだ……。
「レベル差が2以上あると成長が遅くなるんだって。表示されてないけど経験値があって、パワーレベリング出来ないように減算されているんだよ」
「そうなんだ。知らなかった……」
「ま、そういう事だからさ。はるみとは一緒に狩りが出来なかったわけ」
「そっか……」
寂しいけれど、しょうがないよね。みんな自分のやりたいことがあるんだもんね……。
それに、学校ならいつでも会えるしね!
「さてさて、これからどうする? もちろん一緒にゲームするんだよね?」
「うん! 私、革細工ギルドに入ったんだ。みさとはクラフトギルド入った?」
「あー、私は冒険者ギルドの依頼あんまりやってないからさあ。ギルドポイントが全然足りないんだよね」
「そうなんだ? じゃあ冒険者ギルドで依頼やろうか? 二人でやればあっという間だよ!」
「そう? じゃあ、お願いしちゃおうかな?」
「うん! 犬の散歩と灯台の調査は必見だよ!」
そうだよね。それぞれがやりたい事をやるべきなんだよ。だって、このゲームやってる人みんなが主人公なんだから。一人一人に冒険が待っているんだから!
私たちの冒険はまだ始まったばかりだ! 全力で楽しもう!
昼食を食べているとメールが届いた。はるちゃんからだ。
話があるのでログインして欲しいとのことなので、ご飯を食べ終わったらすぐログインすると返信した。
話ってなんだろう? 何か相談事だろうか? 食事を済ませた後、ゲームを再開する。
待ち合わせ場所の冒険者ギルド前噴水広場に移動すると、既にみんな来ていた。
私を見つけたみさとが手を振っている。
「おいすー! みんな早いね!」
「お疲れサマンサ。待ってたよ、たくみ~」
「たくみ、おはよー」
「おはよう。待ってたわよ、たくみ」
どうやらお待たせしてしまったみたい。でもみんな、お昼ご飯ちゃんと食べてる? まだ13時前よ?
「それで、今日はどうしたの?」
私が尋ねると、みんな何故か気まずそうな表情をしている。
「え、ええとですね……」
「あー、実はね。これからの事なんだけど……」
「はるちゃん? るなちゃん?」
なぜか言いにくそうにしている二人を訝しげに見つめる。
「その、私たち、この国から離れようと思うんだけど……」
「え? なんで!? まだ冒険したりないのに!」
予想外の話に驚いてしまった。なんで急にそんな話が出てくるんだろう……?
「ネットで情報しらべたんだけどさ、バルティカ大陸の遺跡がメイジのレベル上げに向いてるんだって。だから、そっちに行こうと思って」
「そうなんだ……。じゃあ仕方ないか。私たちファイターでも活躍できるのかなあ?」
「あ、違うのよ、たくみ……。私たちがバルティカ大陸に行くんじゃなくて、私が行くの」
「え……?」
はるちゃんの言葉に呆然とする。
どういうことだろう? 話がよくわからない……。
はるちゃんは続ける。
「たくみはさ、冒険がしたいんだよね? この世界の隅々まで見て回りたいんだよね?」
「うん……。私は冒険がしたい。この世界を楽しみたい」
私の答えを聞いて、はるちゃんがにっこりと微笑んだ。
「私もやりたいことがあるの。強くなりたい。もっと先まで行きたい。そのためにどうしてもバルティカ大陸に行きたい!」
「……」
「……たくみの気持ちはよくわかってるよ。でもね、みんなに合わせてるといつまでたっても先に進めないじゃない」
「それはそうだけど……。だったらせめて一緒に行こうよ! みんなで行った方が絶対楽しいよ!?」
説得する私に、はるちゃんは首を横に振る。
「ごめんね、たくみ……。私は自分のペースで進むことにするわ。だって、せっかくこの世界に来たんだもの! やりたいことをやらなきゃじゃない!」
「はるちゃあん……!」
はるちゃんの決意は固いようだ。どうしよう……。
「あのね、たくみ。実は私もなんだ……」
「えっ? るなちゃんまで……?」
「ごめん、たくみ……。私はケノーラ大陸に行きたい。私のやりたいことがそこにあるんだよ」
「そ、そんなあ~っ!」
二人とも、もう決めちゃってるの!? こんな突然の別れだなんて聞いてないよっ!
「元気でね、たくみ。今まで楽しかったわ!」
「またどこかで会えるよ。きっと!」
二人はそう言うと、私の手をぎゅっと握った。
ああ、これは本当にお別れなんだなと直感的に思った。
涙がぽろぽろとこぼれてくる。止められない。止めたくないけど止まらない。
そんな私をあやすように、二人の手は優しく背中をさすってくれた。
そんな様子を見ていたみさとがぽつりとつぶやいた。
「なんか、こういうのドラマチックだよね。でもさ、明日学校で会えるじゃん? 単にゲームで別行動するだけなのに……」
その言葉を聞いた瞬間、二人の手が離れた。そして、はるちゃんがみさとの頭を軽く叩いた。
「いたいっ! なんで叩くんだよお!?」
抗議するみさとを無視して、はるちゃんが言葉を続ける。
「そういうことだから、また明日学校で会おうね、たくみ!」
「じゃーねー、バイバーイ!」
はるちゃんも、るなちゃんも、そう言って去っていった。
取り残された私は、ただ茫然と立ち尽くすしかなかった。
二人と別れた後、みさとがおもむろに口を開く。
「どの道さあ、はるみとはもう一緒にパーティー組めなかったんだよね。レベル差で」
「……レベル差?」
「そ、レベル差。はるみのレベル知ってる? 15だよ、15! あいつ夜中まで野良でレベリングしてたんだよ」
「えっ、15? 機能の夕方まで同じレベルだったのに……」
はるちゃんは本当に強くなりたくて頑張ってたんだなあ。5つもレベル上げたんだ……。
「レベル差が2以上あると成長が遅くなるんだって。表示されてないけど経験値があって、パワーレベリング出来ないように減算されているんだよ」
「そうなんだ。知らなかった……」
「ま、そういう事だからさ。はるみとは一緒に狩りが出来なかったわけ」
「そっか……」
寂しいけれど、しょうがないよね。みんな自分のやりたいことがあるんだもんね……。
それに、学校ならいつでも会えるしね!
「さてさて、これからどうする? もちろん一緒にゲームするんだよね?」
「うん! 私、革細工ギルドに入ったんだ。みさとはクラフトギルド入った?」
「あー、私は冒険者ギルドの依頼あんまりやってないからさあ。ギルドポイントが全然足りないんだよね」
「そうなんだ? じゃあ冒険者ギルドで依頼やろうか? 二人でやればあっという間だよ!」
「そう? じゃあ、お願いしちゃおうかな?」
「うん! 犬の散歩と灯台の調査は必見だよ!」
そうだよね。それぞれがやりたい事をやるべきなんだよ。だって、このゲームやってる人みんなが主人公なんだから。一人一人に冒険が待っているんだから!
私たちの冒険はまだ始まったばかりだ! 全力で楽しもう!
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