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チュートリアル

12 種族の差、職種の差

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「あ、ごめん。もうすぐパパが帰ってくる時間だから、私そろそろログアウトするね」

 あれからカニを何匹か倒した頃、るなちゃんがそう言った。
 もうこんな時間だったんだ。楽しい時間はあっという間に過ぎちゃうね。


「ああ、もうこんな時間なの? 私も落ちなきゃ!」
「わかった、じゃあ、今日はこの辺で終わりにしよう」
「そうだね、続きはまた明日にしよう!」

 私たち三人が同意する。
 もっとやっていたい気もするけど、夕ご飯とかお風呂もあるからね。ずっとやってたらお母さんに怒られちゃう。

「ねえ、これって、街まで戻った方がいいのかな?」
「街まで戻った方がいいかも。るな、時間大丈夫?」
「戻るだけなら大丈夫!」
「じゃあ、急いで戻ろう! よーい、どん!」

 街に向かっていきなり走り出すみさと。
 ええっ!? ずるい! みんなでみさとの後を追う。
 はるちゃんが凄い勢いで追い抜いていった。えっ、速い?!
 私たちの中で一番足が速いのは、るなちゃん。一番遅いのははるちゃんだ。
 それなのに、みさとに余裕で追いついて追い越していく。
 もしかして、これが種族の差ってやつ?

 突然始まった街までの競争は意外な結果に終わった。
 一着、はるちゃん。二着、私。三着がみさとで、最下位がるなちゃんだった。

「足が速いってこんな気分なのね。いい気分だわ」
「身体が思うように動かないよぉ~」

 学校ではマラソン最下位常連のはるちゃんはトップを走れて上機嫌だ。
 一方、運動神経のいいるなちゃんは悔しそうにしてた。

「これって種族の差だよね? エルフってそんなに足早いの?」

 はるちゃんに尋ねると、ステータスを見せてくれた。

「私はこんな感じだけど、みんなのとそんなにステータス違う?」

 他のみんなもステータスを表示させて見比べる。
 ほえ~、全然違うんだ……。













*******

 私とみさとはヒューマンでわりと数字がバランスよく振り分けられてる。PIEが少し低いかな?
 るなちゃんのドワーフはHPが80もあってSTRとPIEが高い。代わりにMP、AGI、INT、LUKが低い。
 はるちゃんのエルフはHPが50しかなくて、STR、とLUKも低い。DEX、AGI、PIEが高くて、INTがなんと二桁もあった。 INT、15?!

「ああ、それね。私、レベル上がった時にINTにポイント振ってたから」
「えっ、戦いながらステータスの割り振りなんてやってたの?」
「そそ。魔法の威力が上がってだんだん倒すのが早くなってたでしょ?」

 はるちゃん器用だなあ。私はタコ殴りに必死で、そんなことする余裕なかったよ。
 
「ねえ、このAGIってのが足の速さだよね? 私、はるみの半分しかないんだけど?」
「まあ、ドワーフだからねえ。そんなもんじゃないの?」
「これってどうやって振り分けるの? 私、手付かずのままなんだよね」
「ステータス画面で指でこう動かすといいんだよ」
「なるほど。こう……」
「待って、るな! それはやめた方がいいよ!」

 AGIを上げようとしたるなちゃんを慌てて止めるはるちゃん。間一髪、操作を止めることが出来たみたいだ。
 っていうか、AGIって上げちゃだめなの? 私、上げちゃったよ?

「えっ、上げちゃいけないの?」
「だって、るなはドワーフでプリーストでしょ? 欠点のAGIを伸ばしてもプリとしては強くならないよ?」
「そうなの? プリーストだとだめなんだ……」

 しょんぼりとするるなちゃん。なんだかかわいそう。

「まあまあ、元気出して! そのうち強くなるからさ!」
「そうそう、これからだよ、これから!」
 
 落ち込むるなちゃんを励ます私とみさと。
 そうだよね、まだ始めたばっかりだもん。大丈夫だよ!

「……ステータスだけ見るなら、あなたたちファイターよりも、るなの方が強いわよ? 現時点ではね」

 はるちゃんがさらりと言う。
 ええー、そうなの?

「本当? やったー!」
「今はね。でも、プリーストがファイターと張り合うのはやめた方がいいと思う」
「なんで?」
「スキルが違うからよ。役割が違うと言ってもいいわね。ファイターは物理攻撃がメインで、プリーストは回復や補助がメインだから」
「そっかぁ……。でも、これからは私が守ってあげるからねっ!」
「期待してるわよ。るな」

 そう言って笑いあうはるちゃんとるなちゃん。仲良いなあ。
 結局ステータス上げはSNSや動画で調べてからにしようってことになった。
 スタートダッシュした人たちの情報がそろそろ出るかもしれないからって。
 MMOはネットで情報を共有する前提で作られているから、情報収集は必須なんだとか。
 大変だなあ……。

 その後、しばらく四人でおしゃべりしてログアウトすることになった。
 またね! と手を振って別れる私たち。
 VRの電源ボタンを押すと、目の前のファンタジー世界が消えて真っ暗になった。
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