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チュートリアル
1 VR GAME SHOW
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VR GAME SHOW。
それは年に一度、東京某所で行われるVRゲームの展示会だ。
開催は二日間で、一日目は原則的に、ゲーム業界関係者、報道関係者、流通関係者のみが入場できる。
二日目の今日は一般公開だ。多くの人が会場に詰め掛かている。
私は、中学からの友人で同じ高校に入学した、安倍 晴美(あべの はるみ)に誘われて会場前に来ていた。
「お待たせ! ごめんね、遅くなって」
「ううん、大丈夫だよ。それよりはるちゃん、今日の服すごく似合ってる!」
「ありがとう! この日のために用意したんだ」
はるちゃん(安部 晴美)は、すらりとしたモデル体型で美人だから、何を着ても様になるけど、今日の服装は特に素敵だった。羨ましい。私の慎ましく控えめな体型と交換してほしい。
「じゃあ行こうか?」
「うん!」
私たちはVR GAME SHOWの会場に入る。
展示会は、各社のブースに分かれていて、それぞれ趣向を凝らした展示がされている。
例えば、『異世界転生』を題材にしたVRGAMEなんかもあるし、『乙女ゲーム』をモチーフにしたものもあって面白かった。
私は中学の頃にラノベにはまって、現在、私の部屋の本棚は凄いことになっている。
改めて自己紹介するね。
私の名前は、柳沢 巧美(やなぎさわ たくみ)。高校に入学したての、天下無双の女子高生。
年齢は15歳。好きなものはラノベ。嫌いなものは昆虫。身体を動かすのは好きだけど、運動部はちょっと苦手。
得意科目は国語と社会。あと数学は少しだけ得意かな。
家族構成は父母私の三人。お父さんは警察官で術科特別訓練剣道師範ってのに任命されているんだって! 全日本剣道選手権で優勝したこともあるんだよ! 凄いよね。尊敬してる。
お母さんは専業主婦。料理が得意で、お菓子作りも上手なの。性格はおっとりとしていて私とは正反対。でも間違いなく私のお母さんだよ。大好き!
はい。自己紹介、終了。では、場面を会場に戻していこう!
◆◆◆
「わぁ、すごい人だねぇ」
「ほんとだよね~。でもはるちゃんは大丈夫? 疲れていない?」
「平気平気! それよりも見てよこれ!『女性向けVR恋愛シミュレーションゲーム』だって!たくみが好きなやつじゃない!?」
「確かに……って、えっ!? それってもしかして、あの『乙女ゲーム』の世界が舞台になっているやつ!?」
「そうみたい。ほら、ヒロインのと悪役令嬢のどちらかを選択できるんだって」
「いいなあ。現在開発中で発売は来年予定か……」
二人でそんな会話をしながらも会場を見て回る。
VR格闘ゲームのブースでは本物の格闘家とプロゲーマーが対戦していて、ものすごく盛り上がっていた。
熱気がここまで押し寄せてきそうなくらい。格闘ゲームか。面白そう!
各ブースの周りにできた人込みの脇をすり抜けて、はるちゃん一押しの、新作VRMMOのブースにやってきた。
ここは百人くらい入る映画館みたいな部屋に入場客をまとめて入れて、中にいる全員一度にVR世界を体感させるという仕組みらしい。
今回のイベントの一番人気で、多くの人が並んでいるが、このやりかたのおかげでそれほど待たずに人が流れていく。
そして、私たちの番がやってきた。
入り口のお姉さんからフルフェイスヘルメットのような機械を受け取り、中に入る。
指示に従って座席に座り、ヘルメットをかぶって電源を押した。
すると、一瞬で世界が暗転し、目の前に信じられない光景が広がった!
そこには、中世ヨーロッパ風の町並みと、その奥にそびえ立つ巨大な城があった。
まるで本物みたいだ。思わず見とれてしまうほどリアルだった。
私が感動していると、目の前の景色が変わる。
今度は、どこまでも続く大草原。その上空を飛ぶ巨大なガレオン船。
草花が風に揺れ、鳥たちが空を舞っている。
そして次々と景色を変え、ひとしきり感動していると、ゲームを紹介するアナウンスが聞こえて来た。
「本日はようこそおいでくださいました。これより、本格VRMMO、ローラシア・フロンティアの説明をさせていただきます」
おおっ、いよいよ始まるんだ! 期待に胸が高鳴る。
「このゲームは、VRMMOであると同時に、NFTゲームでもあります」
NFTというのはNon-Fungible Tokenの略で、ブロックチェーン上で構築できる代替不可能なトークンのことだ。簡単にいうと、偽装できない唯一無二のデジタルデータ。
NFTゲームは、その、ブロックチェーン技術を基盤にしてつくられたゲームの総称を指す。昔一度流行ったのだけれど、ゲーム開発が未熟過ぎて、従来のゲームの足元にも及ばず、すぐに廃れてしまったらしい。
これ、叔父のゆう兄(ゆうにい)の受け売りね。
「プレイヤーは事前にNFTのアバターを作ってもらいます。最初に作るメインアバターは無料で制作できますが、二キャラ目以降のアバターは有料となっております」
ふむふむ、なるほど。つまり最初の段階では無料だけど、後々お金を払って他の種族や性別のキャラクターを作ることができるってことかな?
「そのNFTアバターは、我々ワーナービクトリーのシステム内であれば、どのゲームでも共通して使うことが出来ます。例えば、VRスポーツゲームやVRレーシングゲームに、このアバターを使用できます」
おおー!それはすごい。
今後発売されるVRゲームすべてが同じキャラで遊べるってことだよね? これは楽しみになってきたぁ~!
「また、ゲーム内で取得したNFTアイテムも、他のゲームと共有することが出来ます。ローラシア・フロンティアから持ち出すことも、他のゲームから持ち込むことも可能です」
「入手したNFTは、一般の取引所を通じて売買することが可能です。ゲーム内の通貨も一部、仮想通貨となっております。ただし、ゲーム外に出すためには手数料が発生しますのでご注意下さいませ」
つまり、ゲームでお金が稼げるって事!? ただでさえ凄いVR技術で、面白そうなゲームなのに、お金を稼げるなんて最高じゃない!?
「以上でローラシア・フロンティアの概要説明を終わります。皆様、VRギアを外し、係員の誘導にしたがってご退場ください。本日はご来場ありがとうございます」
大歓声と拍手が鳴り響く。私も周りの人たちと一緒に大きな拍手を送った。
そして私たちは会場を出て、それぞれ感想を言い合う。
「凄かったねー!」
「うん!私もう興奮しちゃって……」
「わかる! 特に最後のところ! あれ、本当だったらどうなるんだろう……」
「そうだよね! 本当に、ファンタジー世界にいるみたいだった!」
「うんうん! あ~早くプレイしたいなぁ~!」
そんな会話を交わしながら会場を後にする私たちだった……。
それは年に一度、東京某所で行われるVRゲームの展示会だ。
開催は二日間で、一日目は原則的に、ゲーム業界関係者、報道関係者、流通関係者のみが入場できる。
二日目の今日は一般公開だ。多くの人が会場に詰め掛かている。
私は、中学からの友人で同じ高校に入学した、安倍 晴美(あべの はるみ)に誘われて会場前に来ていた。
「お待たせ! ごめんね、遅くなって」
「ううん、大丈夫だよ。それよりはるちゃん、今日の服すごく似合ってる!」
「ありがとう! この日のために用意したんだ」
はるちゃん(安部 晴美)は、すらりとしたモデル体型で美人だから、何を着ても様になるけど、今日の服装は特に素敵だった。羨ましい。私の慎ましく控えめな体型と交換してほしい。
「じゃあ行こうか?」
「うん!」
私たちはVR GAME SHOWの会場に入る。
展示会は、各社のブースに分かれていて、それぞれ趣向を凝らした展示がされている。
例えば、『異世界転生』を題材にしたVRGAMEなんかもあるし、『乙女ゲーム』をモチーフにしたものもあって面白かった。
私は中学の頃にラノベにはまって、現在、私の部屋の本棚は凄いことになっている。
改めて自己紹介するね。
私の名前は、柳沢 巧美(やなぎさわ たくみ)。高校に入学したての、天下無双の女子高生。
年齢は15歳。好きなものはラノベ。嫌いなものは昆虫。身体を動かすのは好きだけど、運動部はちょっと苦手。
得意科目は国語と社会。あと数学は少しだけ得意かな。
家族構成は父母私の三人。お父さんは警察官で術科特別訓練剣道師範ってのに任命されているんだって! 全日本剣道選手権で優勝したこともあるんだよ! 凄いよね。尊敬してる。
お母さんは専業主婦。料理が得意で、お菓子作りも上手なの。性格はおっとりとしていて私とは正反対。でも間違いなく私のお母さんだよ。大好き!
はい。自己紹介、終了。では、場面を会場に戻していこう!
◆◆◆
「わぁ、すごい人だねぇ」
「ほんとだよね~。でもはるちゃんは大丈夫? 疲れていない?」
「平気平気! それよりも見てよこれ!『女性向けVR恋愛シミュレーションゲーム』だって!たくみが好きなやつじゃない!?」
「確かに……って、えっ!? それってもしかして、あの『乙女ゲーム』の世界が舞台になっているやつ!?」
「そうみたい。ほら、ヒロインのと悪役令嬢のどちらかを選択できるんだって」
「いいなあ。現在開発中で発売は来年予定か……」
二人でそんな会話をしながらも会場を見て回る。
VR格闘ゲームのブースでは本物の格闘家とプロゲーマーが対戦していて、ものすごく盛り上がっていた。
熱気がここまで押し寄せてきそうなくらい。格闘ゲームか。面白そう!
各ブースの周りにできた人込みの脇をすり抜けて、はるちゃん一押しの、新作VRMMOのブースにやってきた。
ここは百人くらい入る映画館みたいな部屋に入場客をまとめて入れて、中にいる全員一度にVR世界を体感させるという仕組みらしい。
今回のイベントの一番人気で、多くの人が並んでいるが、このやりかたのおかげでそれほど待たずに人が流れていく。
そして、私たちの番がやってきた。
入り口のお姉さんからフルフェイスヘルメットのような機械を受け取り、中に入る。
指示に従って座席に座り、ヘルメットをかぶって電源を押した。
すると、一瞬で世界が暗転し、目の前に信じられない光景が広がった!
そこには、中世ヨーロッパ風の町並みと、その奥にそびえ立つ巨大な城があった。
まるで本物みたいだ。思わず見とれてしまうほどリアルだった。
私が感動していると、目の前の景色が変わる。
今度は、どこまでも続く大草原。その上空を飛ぶ巨大なガレオン船。
草花が風に揺れ、鳥たちが空を舞っている。
そして次々と景色を変え、ひとしきり感動していると、ゲームを紹介するアナウンスが聞こえて来た。
「本日はようこそおいでくださいました。これより、本格VRMMO、ローラシア・フロンティアの説明をさせていただきます」
おおっ、いよいよ始まるんだ! 期待に胸が高鳴る。
「このゲームは、VRMMOであると同時に、NFTゲームでもあります」
NFTというのはNon-Fungible Tokenの略で、ブロックチェーン上で構築できる代替不可能なトークンのことだ。簡単にいうと、偽装できない唯一無二のデジタルデータ。
NFTゲームは、その、ブロックチェーン技術を基盤にしてつくられたゲームの総称を指す。昔一度流行ったのだけれど、ゲーム開発が未熟過ぎて、従来のゲームの足元にも及ばず、すぐに廃れてしまったらしい。
これ、叔父のゆう兄(ゆうにい)の受け売りね。
「プレイヤーは事前にNFTのアバターを作ってもらいます。最初に作るメインアバターは無料で制作できますが、二キャラ目以降のアバターは有料となっております」
ふむふむ、なるほど。つまり最初の段階では無料だけど、後々お金を払って他の種族や性別のキャラクターを作ることができるってことかな?
「そのNFTアバターは、我々ワーナービクトリーのシステム内であれば、どのゲームでも共通して使うことが出来ます。例えば、VRスポーツゲームやVRレーシングゲームに、このアバターを使用できます」
おおー!それはすごい。
今後発売されるVRゲームすべてが同じキャラで遊べるってことだよね? これは楽しみになってきたぁ~!
「また、ゲーム内で取得したNFTアイテムも、他のゲームと共有することが出来ます。ローラシア・フロンティアから持ち出すことも、他のゲームから持ち込むことも可能です」
「入手したNFTは、一般の取引所を通じて売買することが可能です。ゲーム内の通貨も一部、仮想通貨となっております。ただし、ゲーム外に出すためには手数料が発生しますのでご注意下さいませ」
つまり、ゲームでお金が稼げるって事!? ただでさえ凄いVR技術で、面白そうなゲームなのに、お金を稼げるなんて最高じゃない!?
「以上でローラシア・フロンティアの概要説明を終わります。皆様、VRギアを外し、係員の誘導にしたがってご退場ください。本日はご来場ありがとうございます」
大歓声と拍手が鳴り響く。私も周りの人たちと一緒に大きな拍手を送った。
そして私たちは会場を出て、それぞれ感想を言い合う。
「凄かったねー!」
「うん!私もう興奮しちゃって……」
「わかる! 特に最後のところ! あれ、本当だったらどうなるんだろう……」
「そうだよね! 本当に、ファンタジー世界にいるみたいだった!」
「うんうん! あ~早くプレイしたいなぁ~!」
そんな会話を交わしながら会場を後にする私たちだった……。
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