上 下
183 / 203
ローデシア帝国編

唯一王 衝撃の事実を知る

しおりを挟む
「……スキだらけです。策がはまったと思って、油断しましたね」

「貴様っ、この野郎!!」

 アズレイルは慌ててフリーゼを追うが、すぐにフリーゼは後方に下がる。
 そして、二人の間に彼が立ちはだかった。

「アズレイル。相手は僕に任せて!」

 そこにいたのはレシアだ。

「大丈夫か、レシア」

「アズレイルとは、因縁があるんだ。だから戦わせて」

「わかった。信じてるよ──」

 レシアの、真剣な目。覚悟を決めているというのがわかる。それなら、任せる以外に選択はない。


「待て、また一匹いるぜ!」

 アズレイルがピッと指をはじくとミノタウロスが襲い掛かってきた。

「いくらレシアでも、こいつら同時は無茶よ」

 レディナの言う通りだ。

「僕が行くフィッシュ!」

 すると、ハリーセルがミノタウロスに立ち向かっていく。

「ハリーセル、大丈夫か?」

 ここにハリーセルが得意な水中はない。陸では動きが制限されるはず。
 しかし、ハリーセルの表情に不安はなかった。

「大丈夫フィッシュ。任せろでフィッシュ」

 強気な表情を向けるハリーセル。その間にもフリーゼはスワニーゼとソルトのところへ向かい、奪い取った鍵を渡す。

 そしてスワニーゼは再び鍵穴に鍵を差し込む。

 ガチャリ──。

 鍵は、開いた。

「フライさん、行きましょう」

「わかった」

 俺は振り返って、二人に言葉をかける。

「二人とも、信じてるよ──」

「ありがとうフィッシュ!」

「任せて──」

 二人とも、

 そう強く願い、俺達はこの場を後にしていった。










 そして俺たちは道をさらに進む。



 再び、さっきのような大きな部屋にたどり着く

 石造りの建物があって、それが破壊されたような、荒廃した雰囲気の部屋。
 倒壊した石壁や石柱が所々に目につき、神秘的な雰囲気を醸し出していた。

 俺達は足元に気を付けながら前に進み、大きな扉の元へ。

「ここは、ソルトの力で開けられるはず。お願い」

 スワニーゼがそういった時、フリーゼが話しかけた。

「敵の気配はありません。ここでいいでしょう」

 フリーゼが、真剣な表情でスワニーゼに話しかける。
 スワニーゼは、言葉を返すが、その中に動揺の感情が混ざっているのが理解できた。

「な、何よ──。早く行きましょう、先へ」

「今度は、どんなミスのふりで私達を分断させるつもりですか? 体力を消耗させるつもりですか?」

 フリーゼは、じっとスワニーゼを見ている。何があったのかわからない俺は二人に目線を交互に配った後、フリーゼに話しかけた。

「どういうこと? フリーゼ、理解できるように教えてくれ」

 しかし、フリーゼは俺に目も合わせずスワニーゼをにらみつけてる。

「ほらフリーゼ、フライさんも戸惑ってるわ。早く次の場所に行きましょ」

「わたしの目は、ごまかせませんよ。先ほど、ミノタウロスがソルトに襲い掛かり、あなたがかばった時──」

「うっ──」

 その瞬間、スワニーゼの表情が引きつり、一歩足を引いた。


「一瞬だけ、力を解放しました。私は見逃しませんでした──自分の正体をばらすリスクを踏んでも、ソルトを救ったのを。そして、その行いで、あなたは正体をさらしたことにもつながります」

 そして、フリーゼはピッとスワニーゼを指さす。

「貴方は、熾天使。そして、全ての黒幕ですね、スキァーヴィも、裏で操っていた。違いますか?」

 フリーゼの、問い詰めるような言葉。スワニーゼは両手をぶんぶんと振って、引き攣った笑みを見せて否定する。

「フリーゼ、さん。冗談はよしてよ。そんな訳ないじゃない! 私は人間で、スキァーヴィの侍……」

「すべて嘘なのでしょう。あなたの生い立ち、全て。さっきも言いました。全員にわかるようにはっきりと言います。とっさにソルトさんを守ろうとしたとき、あなたの体は強く光りました」

「仕方ないじゃない。彼女を守るため──」

「隠していたんですね。熾天使の気配を、しかし、ミノタウロスの攻撃を受けよう押したとき、あなたは障壁を作ろうとして、一瞬だけ熾天使の力を解放しましたね。見逃しませんでしたよ」

 フリーゼの、強気な表情。ハッタリではない、確信しているというのがわかる。

 俺は、その事実に圧倒されてどう言葉を返していいかわからない。

 俺から見たスワニーゼは、暴君であるスキァーヴィに人質を取られ、けなげに政務をこなしている人だった。
 誠実で優しいが、スキァーヴィの暴挙っぷりに精神を病んでいる。
 ……そんな印象だった。

「そうですか……」

 スワニーゼはボソッとつぶやいてソルトの方へ向かった。
 ソルトは、突然の事態に状況が読み込めないのか、オロオロしている。

「させないわ!」

 事態を察したレディナとフリーゼがソルトに向かうが、すでに一歩遅く、スワニーゼはソルトのそばによると、右手で首の根っこを掴んだ。

「一歩、届かなかったわね」

「あんた──どういうつもりよ」

 レディナの質問にスワニーゼはニヤリと笑みを浮かべた。
 それは、今までの清楚で不遇な印象の彼女ではない。

 熾天使としての本性をあらわにし、俺達に敵意を向けている表情だ。

「どうって、決まっているでしょう。あなた達を消すのよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

貴族に転生してユニークスキル【迷宮】を獲得した俺は、次の人生こそ誰よりも幸せになることを目指す

名無し
ファンタジー
両親に愛されなかったことの不満を抱えながら交通事故で亡くなった主人公。気が付いたとき、彼は貴族の長男ルーフ・ベルシュタインとして転生しており、家族から愛されて育っていた。ルーフはこの幸せを手放したくなくて、前世で両親を憎んで自堕落な生き方をしてきたことを悔い改め、この異世界では後悔しないように高みを目指して生きようと誓うのだった。

『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど
ファンタジー
1プレイヤーとして、普通にVRMMOを楽しんでいたラミエル。 魔王討伐を目標に掲げ、日々仲間たちと頑張ってきた訳だが、突然パーティー追放を言い渡される。 当然ラミエルは反発するものの、リーダーの勇者カインによって半ば強制的に追い出されてしまった。 ────お前はもう要らないんだよ!と。 ラミエルは失意のドン底に落ち、現状を嘆くが……『虐殺の紅月』というパーティーに勧誘されて? 最初こそ、PK集団として有名だった『虐殺の紅月』を警戒するものの、あっという間に打ち解けた。 そんなある日、謎のハッカー集団『箱庭』によりゲーム世界に閉じ込められて!? ゲーム世界での死が、現実世界での死に直結するデスゲームを強いられた! 大混乱に陥るものの、ラミエルは仲間達と共にゲーム攻略へ挑む! だが、PK集団ということで周りに罵られたり、元パーティーメンバーと一悶着あったり、勇者カインに『戻ってこい!』と言われたり……で、大忙し! 果たして、ラミエルは無事現実へ戻れるのか!? そして、PK集団は皆の英雄になれるのか!? 最低で最高のPK集団が送る、ゲーム攻略奮闘記!ここに爆誕! ※小説家になろう様にも掲載中

最難関ダンジョンで裏切られ切り捨てられたが、スキル【神眼】によってすべてを視ることが出来るようになった冒険者はざまぁする

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【第15回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作】 僕のスキル【神眼】は隠しアイテムや隠し通路、隠しトラップを見破る力がある。 そんな元奴隷の僕をレオナルドたちは冒険者仲間に迎え入れてくれた。 でもダンジョン内でピンチになった時、彼らは僕を追放した。 死に追いやられた僕は世界樹の精に出会い、【神眼】のスキルを極限まで高めてもらう。 そして三年の修行を経て、僕は世界最強へと至るのだった。

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【完結】異世界転移特典で創造作製のスキルを手に入れた俺は、好き勝手に生きてやる‼~魔王討伐?そんな物は先に来た転移者達に任せれば良いだろ!~

アノマロカリス
ファンタジー
俺が15歳の頃…両親は借金を膨らませるだけ膨らませてから、両親と妹2人逃亡して未だに発見されていない。 金を借りていたのは親なのだから俺には全く関係ない…と思っていたら、保証人の欄に俺の名前が書かれていた。 俺はそれ以降、高校を辞めてバイトの毎日で…休む暇が全く無かった。 そして毎日催促をしに来る取り立て屋。 支払っても支払っても、減っている気が全くしない借金。 そして両親から手紙が来たので内容を確認すると? 「お前に借金の返済を期待していたが、このままでは埒が明かないので俺達はお前を売る事にした。 お前の体の臓器を売れば借金は帳消しになるんだよ。 俺達が逃亡生活を脱する為に犠牲になってくれ‼」 ここまでやるか…あのクソ両親共‼ …という事は次に取り立て屋が家に来たら、俺は問答無用で連れて行かれる‼ 俺の住んでいるアパートには、隣人はいない。 隣人は毎日俺の家に来る取り立て屋の所為で引っ越してしまった為に、このアパートには俺しかいない。 なので取り立て屋の奴等も強引な手段を取って来る筈だ。 この場所にいたら俺は奴等に捕まって…なんて冗談じゃない‼ 俺はアパートから逃げ出した!   だが…すぐに追って見付かって俺は追い回される羽目になる。 捕まったら死ぬ…が、どうせ死ぬのなら捕まらずに死ぬ方法を選ぶ‼ 俺は橋の上に来た。 橋の下には高速道路があって、俺は金網をよじ登ってから向かって来る大型ダンプを捕らえて、タイミングを見てダイブした! 両親の所為で碌な人生を歩んで来なかった俺は、これでようやく解放される! そして借金返済の目処が付かなくなった両親達は再び追われる事になるだろう。 ざまぁみやがれ‼ …そう思ったのだが、気が付けば俺は白い空間の中にいた。 そこで神と名乗る者に出会って、ある選択肢を与えられた。 異世界で新たな人生を送るか、元の場所に戻って生活を続けて行くか…だ。 元の場所って、そんな場所に何て戻りたくもない‼ 俺の選択肢は異世界で生きる事を選んだ。 そして神と名乗る者から、異世界に旅立つ俺にある特典をくれた。 それは頭の中で想像した物を手で触れる事によって作りだせる【創造作製】のスキルだった。 このスキルを与えられた俺は、新たな異世界で魔王討伐の為に…? 12月27日でHOTランキングは、最高3位でした。 皆様、ありがとうございました。

処理中です...