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ローデシア帝国編

唯一王 作戦会議

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 今日は話し合いの日。

 スワニーゼとソルト、キルコとミュアを交えて今後について話し合う日だ。

「では、始めましょう」

 全員が俺たちの部屋に集まると、フリーゼの掛け声のもとに話し合いが始まった。

 スワニー背の表情がどこか暗い。理由は予想がついている。

「立った数日なのに、街がここまで変わるなんてね」

「……はい」

 俺の問いに、スワニーゼが元気なく答える。
 恐らく、スキァーヴィがいなくなった世界のことだろう。

 それは、恐怖の独裁者が消え、平和を取り戻し、街に笑顔が戻った世界──などではなかった。

 スキァーヴィという重しが外れ、街はあれた。
 試しに外に視線を移すと、それが顕著に表れる。


 人通りが少ない裏路地、兵士の人が若い女性に手出しをしようとしているのがわかる。

 粗暴で気に入らないことがあると権力をかさに暴れまわる兵士たち。

「た、助けてください!」

「うるせぇぇ。こっち来い!」

「ほら、助けに行くわよ」

 レディナの言う通り俺たちはすぐにベランダから飛び出し、女の人を助けた。


「あ、ありがとうございます」

 女の人が申し訳なさそうに頭を下げる。

「いいっていいって……」



 一端部屋に戻り、考え込む。

 この選択は、正しかったのかと。
 その中で、スワニーゼが周囲をキョロキョロと伺いながらそっと手を上げる。
「確かに、スキァーヴィがいなくなって、変わったこともありました。それが、必ずしも良い方向ではないということも理解しました」

 表情から、複雑な気持ちになっているのがそぶりから理解できた。

「しかし、これから良くしていくって、私達が約束します。どんな理由があろうと、この状況を作ったのは、私ですから。何とか政府に介入して、押さえます」

 今の言葉から分かる。スワニーゼは、かなり覚悟している。
 そうだ。確かに街は変わってしまった。けれど、人々が恐怖に震えているのがいい状況なんて思わない。
 いざとなったら俺たちも協力して、この街を何とかしていこう。


「そして、スキァーヴィのことなんですか……」

 スワニーゼ。その言葉に、俺の体がピクリと反応する。

 この前、闘技場でフリーゼが彼女を追い詰め、捕まえる一歩手前まで言った。

 しかし、もう少しという所で、セファリールによってどこかに連れ去られてしまったのだ。
 そして、全く手掛かりがない。

 どうすればいいのか、途方に暮れてしまう。

「手がかりなら、あります」

 その言葉に俺達は表情を変える。

「私達の街の大聖堂。そこはいつもは信者たちの礼拝所や、天使たちを信仰する者たちの総本山となっているのですが、そこには教会のトップや政府の中でも一部の人しか知らない秘密があります」

「それは、何ですか?」

 フリーゼの問いに、スワニーゼは小声で答えた。

「奥に、天界につながる扉があるんです」

 その言葉にこの場は騒然となり、少しの間言葉を失ってしまう。

「天界に、行けるでフィッシュか?」

「そうです。もちろん、ただではいけません。ソルト──そこで、あなたの力が必要なのですが──よろしいですか?」

「……はい」

 ソルトが真剣な表情で息を呑んで首を縦に振った。

「私に作戦があります。聞いてください」

 この王宮の地下に、厳重な鍵の守られた扉があり、そこを開けると天使達の力で守られた新たな扉へとつながっているのだという。

「そして、その先にセファリールと、スキァーヴィがいると思われます。セファリールがあそこでさらっていって向かう先で可能性が高いのは、そこでしょう」

「どうして、わかるんですか?」

「安全だからだと思うわ、フリーゼ。そして、力を与えて再びこの世界に君臨させるのか、別の手を打ってくるのか、何をしてくるのかは、わかりませんが──」

 スワニーゼによると、スキァーヴィは以前から熾天使たちと交流をとって力を受け取ったり、一緒に統治するための手引を話し合ったりしていたという。

 そして話は戻るが、天使たちの力で守られた扉を開けるのに、ソルトの力が必要なのだとか。

「……分かりました」

 ソルトが、コクリと返事をした。

「そして入り口のカギですが──あります。盗んできました。秘密のカギ──」

 そう言ってスワニーゼはポケットから一つのカギを取り出した。

 金色をした、神秘的な飾りをしているカギ。
 それを見た俺たちは、そのカギに釘付けになる。

「大丈夫フィッシュか? そんなことをして──」

 ハリーセルが口元を抑え、あわわという。
 しかし、スワニーゼは真剣な表情のままじっと俺たちを見つめ、言葉を返す。

「大丈夫です。すでにスキァーヴィと決別することは決めています。私の命を投げ打ってでも、彼女を消すって……」

 真剣な、スワニーゼの目。覚悟を決めていると

「待って、スキァーヴィを、殺さないで──」

 ソルトが待ったをかける。当然だ。ソルトは、スキァーヴィの子供のころからの親友なのだから。

「ソルトなら、そう返ってくるのは、わかってたわ。できるだけその意思は組みたい。けど──。

 この場がシーンとなる。ソルトに、スキァーヴィを殺すという事実は、確かにつらいだろう。
 大切な親友なのだから。

 しかし、スワニーゼだってだからスキァーヴィを許せと言われると、簡単にはいとは言えない。身の回りのことがかかっているのだから。

 それを理解している俺たちは、簡単に口出しができない。
 気まずい時間が、しばらくこの場を通り過ぎる。

 すると、スワニーゼが周囲の顔色をうかがうかと思うと、すっと手を上げた。
 どこか申し訳なさそうな表情で、ゆっくりと話し出す。

「ソルトさんの意見も、わかります。私だってソルトの立場でしたら同じ言葉を言い出すかもしれません」

「では、殺さないってことフィッシュか?」

「臨機応変に行きましょう。私は 必ずしも殺す必要はないって思っています。作戦が成功して、スキァーヴィの言葉次第では、振り上げたナイフを取り下げることだって考えます。しかし──いくら諭しても考えを変えなかったら、その時は、やります」

 最後の一言。いつもより語尾が強くなっているのを感じた。覚悟を、決めているのだろう。
 そしてそれが、スワニーゼが出した最後の一線なのだろう。

 ソルトも、それを感じたのか「うぅ……」と呟いた後、言葉を返し始める。

「スキァーヴィの態度次第──ってことですね」

「そうです。罪を認め悔いるか、開き直るか──それ次第です」

 スワニーゼにとっても、かなり譲歩した案だと思う。悔い改めれば生かすが、アドナやトランの様に開き直ったらそれしかない。

「わかりました、そうします」

「ありがとう、ソルト──」

 スワニーゼがそう言って深く頭を下げる。そうだ、確かに、互いに譲れないものはある。しかし、そのせいで仲間割れをしてしまったり、計画そのものが破綻したりしてはならない。

 互いに、自分の大切なものを譲るのはつらいかもしれないけれど、二人はそれをやってくれた。


 そして、具体的な日程やフォーメーションなどの打ち合わせをして、話し合いは終わった。スキァーヴィに地下への入り口。そして天界への入り口。

 話は大きくなってしまった。恐らく、思い通りになど行かないだろう。
 何が起こるかわからない。アドナのこともある、何とか勝ったけれど、このまま終わることは確実にない。

 また、死闘を繰り広げることになるけれど、絶対に負けるつもりはない。

 絶対に成功させよう。
 フリーゼとも、一緒にもっといたいから……。
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