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ローデシア帝国編
フリーゼの力
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腕力に任せた単純な動作。しかし、ニクトリスの力込みのアドナの力に抗しきれず、俺の体は大きく前に引き崩されてしまう。
そしてアドナはそのスキに剣を引き戻し、俺に向かって振り下ろした。
俺はよろけながらもなんとか剣を引き戻し、アドナの攻撃に対して受け止めようとした。
体勢が悪かったため、肩から腕にかけて傷を負ってしまう。
間一髪で致命傷を逃れた俺。
一度距離を取ると、アドナがニヤリと笑みを浮かべ、剣を俺に向けた。
「フライ。そんなお遊戯で俺様に勝てると思うな──。あ、雑魚のお前のことだからすでに本気を出しているんだろうがな──」
腕を抑えながらじっとアドナをにらむ。確かに、俺は本気で戦っている。どうするか……。
そう考えていると、体の内側が暖かくなる感触に包まれる。
すぐに理解した。これは──魔力。
さっきの倍近くの魔力を感じた。フリーゼが、魔力を供給してくれたのだとすぐに気づく。
慌ててフリーゼの方に視線を向けた。
「フライさん。これで、大丈夫ですか?」
「ごめん、フリーゼ。絶対に勝つから」
コクリと俺はうなづく。
フリーゼだってスキァーヴィという強い敵と戦っているというのに──。
ただでさえ激しい戦いをしているフリーゼに、負担をかけてしまった。
さっきまでの俺、フリーゼから見れば大苦戦して今にもやられそうになっているように見えていたのだろう。
事実そうだった。
そんな俺が大丈夫だといった所で、フリーゼは聞かないだろう。
そして、再びアドナに視線を向けた。
「アドナ、勝負はこれからだ!」
アドナがニタリと笑う。
「来い。お前など、俺がひとひねりで倒してやる!」
フリーゼの想いを、絶対に無駄にするわけにはいかない。
そのためにまずは、勝つことだ。
「そうだ。全力で来い! そうでなければ倒しがいがない。そして全力で来た貴様を、ぶっ倒す!」
「やれるもんなら、やってみろ!」
そして俺たちは咆哮を上げ、同時に踏み込んでいく。
「うおおおおおおおおおおおお!」
「はあああああああああああああ!」
俺は一気にアドナに向かって剣を振り下ろす。アドナはそれを力任せに左にはじくと一気に間合いに入り、俺のみぞおちに蹴りを入れ込む。
まさかの攻撃訃報に驚いた俺。慌ててのけぞった体制になり、ギリギリで攻撃をかわすとアドナが足を戻したタイミングで、アドナの胴体の部分に攻撃をなぎ払う。
アドナは飛び反ってそれを交わすと、着地した瞬間すぐに間合いを詰め、一気に剣を振り上げる。
しかし、同時にアドナは剣を振りかざし、左腕部分に傷を入れる。
傷は、どちらも浅い──。
そのまま何度も斬りあっていくうちに、俺とアドナ双方に切り傷が増え、一太刀ごとにそれが大きくなっていく。
互いに相手の剣筋を見極めつつ、逃げることなく全力で攻撃を続けているためだ。
俺もアドナも、理解しているのだ。この勝負、つまらない小細工は通用しない。
アドナは、その理由はどうあれ俺に対して文字通り死ぬ気で向かってきている。
そんな相手に勝とうと思ったら、力だ。向かってくる相手を、力でねじ伏せる。ただそれだけだ。
最後まで、全力で攻めた方が勝つと。
どれだけ追い詰められていようと、先に気持ちが後ろを向いた方が負けだと──。
「いいぞフライ。その調子だ」
つばぜり合いになり、互いに剣に力を込めていると、アドナは体を寄せ、俺に再び蹴りを見舞ってきた。
「ぐはっ──」
唇のあたりをかすり、すぐにのけぞる。そこにアドナは何度も連続で剣を振りかざしていく。
口の中に広がる血の味。それを吐き捨てた瞬間俺は一気に前へと踏み込んだ。
「バカめ! 俺に勝てないと悟って自殺するつもりか。ぶっ殺してやる!」
そんなアドナの言葉などは気にも留めない。
確かにアドナの間合いへ突っ込んでいくのはいくら何でも危険すぎる。
それでも、俺が選択をしたのは、やらなければいけないと理解しているからだ。
体を回転させて勢いをつけると、そのまま剣に全力を込め、アドナに向かって振り上げる。
体を回転させた分勢いが増し、強引に押し返す。
スキが大きくなるという欠点はあるが、気にはならない。
この勝負、先に逃げた方が負けだと、なんとなく理解できた。
のけぞって、攻撃をギリギリ交わしたところにアドナの連続攻撃が襲い掛かる。
口の中の血を吐き出すと、今度は俺の方から攻撃を仕掛けていく。
俺もアドナも攻撃的になる。
流石だと言いたい。
それでも、それでも──。
「勝つのは俺だ!」
自信に満ちた微笑みを見せて、アドナにそう言い放つ。
アドナは、余裕な表情を見せて言葉を返す。
「フッ──、ついに開き直ったか。雑魚のお前が、この俺様の全力に勝てるわけないだろうが。それを、わからせてやる!」
アドナの今の力の根源。それは、秘薬ニクトリスだ。
アドナのニクトリスの力は、制御しなければならない。
そのまま力任せに使えば、トランの二の舞で、アドナの体は原形をとどめていないだろう。
恐らくスキァーヴィあたりから受け取るときに、アドナの体が崩壊しないように希釈しているのだろうが、アドナが最大限力を発揮できるようにとか、考えたわけではないだろう。
そこまでの信頼関係が、あるとは思えない。
それが、俺とアドナとの一番の差だ。
俺の力は違う。
フリーゼから受け取った力だ。
そしてアドナはそのスキに剣を引き戻し、俺に向かって振り下ろした。
俺はよろけながらもなんとか剣を引き戻し、アドナの攻撃に対して受け止めようとした。
体勢が悪かったため、肩から腕にかけて傷を負ってしまう。
間一髪で致命傷を逃れた俺。
一度距離を取ると、アドナがニヤリと笑みを浮かべ、剣を俺に向けた。
「フライ。そんなお遊戯で俺様に勝てると思うな──。あ、雑魚のお前のことだからすでに本気を出しているんだろうがな──」
腕を抑えながらじっとアドナをにらむ。確かに、俺は本気で戦っている。どうするか……。
そう考えていると、体の内側が暖かくなる感触に包まれる。
すぐに理解した。これは──魔力。
さっきの倍近くの魔力を感じた。フリーゼが、魔力を供給してくれたのだとすぐに気づく。
慌ててフリーゼの方に視線を向けた。
「フライさん。これで、大丈夫ですか?」
「ごめん、フリーゼ。絶対に勝つから」
コクリと俺はうなづく。
フリーゼだってスキァーヴィという強い敵と戦っているというのに──。
ただでさえ激しい戦いをしているフリーゼに、負担をかけてしまった。
さっきまでの俺、フリーゼから見れば大苦戦して今にもやられそうになっているように見えていたのだろう。
事実そうだった。
そんな俺が大丈夫だといった所で、フリーゼは聞かないだろう。
そして、再びアドナに視線を向けた。
「アドナ、勝負はこれからだ!」
アドナがニタリと笑う。
「来い。お前など、俺がひとひねりで倒してやる!」
フリーゼの想いを、絶対に無駄にするわけにはいかない。
そのためにまずは、勝つことだ。
「そうだ。全力で来い! そうでなければ倒しがいがない。そして全力で来た貴様を、ぶっ倒す!」
「やれるもんなら、やってみろ!」
そして俺たちは咆哮を上げ、同時に踏み込んでいく。
「うおおおおおおおおおおおお!」
「はあああああああああああああ!」
俺は一気にアドナに向かって剣を振り下ろす。アドナはそれを力任せに左にはじくと一気に間合いに入り、俺のみぞおちに蹴りを入れ込む。
まさかの攻撃訃報に驚いた俺。慌ててのけぞった体制になり、ギリギリで攻撃をかわすとアドナが足を戻したタイミングで、アドナの胴体の部分に攻撃をなぎ払う。
アドナは飛び反ってそれを交わすと、着地した瞬間すぐに間合いを詰め、一気に剣を振り上げる。
しかし、同時にアドナは剣を振りかざし、左腕部分に傷を入れる。
傷は、どちらも浅い──。
そのまま何度も斬りあっていくうちに、俺とアドナ双方に切り傷が増え、一太刀ごとにそれが大きくなっていく。
互いに相手の剣筋を見極めつつ、逃げることなく全力で攻撃を続けているためだ。
俺もアドナも、理解しているのだ。この勝負、つまらない小細工は通用しない。
アドナは、その理由はどうあれ俺に対して文字通り死ぬ気で向かってきている。
そんな相手に勝とうと思ったら、力だ。向かってくる相手を、力でねじ伏せる。ただそれだけだ。
最後まで、全力で攻めた方が勝つと。
どれだけ追い詰められていようと、先に気持ちが後ろを向いた方が負けだと──。
「いいぞフライ。その調子だ」
つばぜり合いになり、互いに剣に力を込めていると、アドナは体を寄せ、俺に再び蹴りを見舞ってきた。
「ぐはっ──」
唇のあたりをかすり、すぐにのけぞる。そこにアドナは何度も連続で剣を振りかざしていく。
口の中に広がる血の味。それを吐き捨てた瞬間俺は一気に前へと踏み込んだ。
「バカめ! 俺に勝てないと悟って自殺するつもりか。ぶっ殺してやる!」
そんなアドナの言葉などは気にも留めない。
確かにアドナの間合いへ突っ込んでいくのはいくら何でも危険すぎる。
それでも、俺が選択をしたのは、やらなければいけないと理解しているからだ。
体を回転させて勢いをつけると、そのまま剣に全力を込め、アドナに向かって振り上げる。
体を回転させた分勢いが増し、強引に押し返す。
スキが大きくなるという欠点はあるが、気にはならない。
この勝負、先に逃げた方が負けだと、なんとなく理解できた。
のけぞって、攻撃をギリギリ交わしたところにアドナの連続攻撃が襲い掛かる。
口の中の血を吐き出すと、今度は俺の方から攻撃を仕掛けていく。
俺もアドナも攻撃的になる。
流石だと言いたい。
それでも、それでも──。
「勝つのは俺だ!」
自信に満ちた微笑みを見せて、アドナにそう言い放つ。
アドナは、余裕な表情を見せて言葉を返す。
「フッ──、ついに開き直ったか。雑魚のお前が、この俺様の全力に勝てるわけないだろうが。それを、わからせてやる!」
アドナの今の力の根源。それは、秘薬ニクトリスだ。
アドナのニクトリスの力は、制御しなければならない。
そのまま力任せに使えば、トランの二の舞で、アドナの体は原形をとどめていないだろう。
恐らくスキァーヴィあたりから受け取るときに、アドナの体が崩壊しないように希釈しているのだろうが、アドナが最大限力を発揮できるようにとか、考えたわけではないだろう。
そこまでの信頼関係が、あるとは思えない。
それが、俺とアドナとの一番の差だ。
俺の力は違う。
フリーゼから受け取った力だ。
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