上 下
171 / 203
ローデシア帝国編

唯一王 今度はフリーゼに

しおりを挟む
 スキァーヴィだ。

「バレてるに決まてるじゃない! フライ。フリーゼ!」

 しまった。バレていたのか──。

「どうして、知っているのですか?」

 フリーゼの言葉に、スキァーヴィは腕を組みながら自信満々に言い放った。

「当たり前じゃない。あなた達の行動は、全て情報に入っているわ。もちろん、スワニーゼもね──」

 スワニーゼは恐怖のあまり目を大きく見開き、じっとスキァーヴィを見つめている。
 体をぶるぶると震わせ、縮こまっていた。そして、そのままひざを折ってへたり込んでしまう。

「スワニーゼ。あなた、私のことをそう思っていたんだ……。覚悟しておきなさい。後でたっぷりとお仕置きしてあげるわ」

 背筋を凍らせるような、威圧感を感じさせる笑み。
 スワニーゼが恐怖に震えている中、フリーゼが威圧感にひるむことなく強気に言葉を返した。

「待ってください。いくら私達の行動を把握していたとしても、止めなければ何の意味もありません」

「言われなくてもわかってるわ。ここで私が、勝つに決まってるじゃなぁい。ねえ~~観客の皆さん!」

 スキァーヴィは観客たちに訴えかけるように叫ぶ。
 その言葉に観客たちは大興奮し、この場が大盛り上がりになる。

「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォ。スキァーヴィ様が直々に戦うんだってよ!」

「始めてみるぜぇ。スキァーヴィ様の戦いって。やっぱりつええんだろうな」

 大歓声の中、スキァーヴィは自信満々な表情で俺たちを人差し指で刺した。


「いいわ。あなた達が私に勝てるわけないって。その体に刻み付けてあげる」

「私、たち?」

 一人しかいない意味深なスキァーヴィの言葉。フリーゼが警戒して周囲に視線を向けた。

「そうよ。私『たち』。勝負は二対二の戦い。そして、私のパートナーは、こいつよ! アドナ」

 スキァーヴィがピッと指をはじく。
 そしてアドナは再び控え室から出て来た。

 そしてこの場に着た瞬間に偶然俺と目が合う。

「あそこにいるあなたのお友達。アドナ、あなたは彼と戦うのよ」

 スキァーヴィの言葉。
 アドナの耳に届いているのかはわからない、どこか上の空で、俺を見つめている。

「アドナ。わかる? フライと戦うの。どっちかが死ぬまで。いい?」

 アドナは大きく目を開けて俺をじっと見ている
 ポカンとしたマヌケな口。

「フライ──」

 そうボソッとつぶやいたき、そして──。

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッッッ──」


 大きくそう叫び、一目散にこっちに向かってきた。
 狂気ともいえる、正気を失った表情。

 俺に向かって剣を大きく振りかざしてくる。俺はステップを踏んで後退。



「俺は、奴隷になった。お前のせいで、お前のせいでお前のせいでお前のせいでお前のせいでお前のせいでぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

「まて、落ち着けアドナ」

 俺の言葉、アドナの耳には届いていない。いや、届いてはいるが、彼の感情がはじき返しているのだろう。


「俺と戦え! ぶっ殺してやる。そのクソみたいな顔が誰かわからくなるくらいにぐちゃぐちゃにしてやる。その体が、原形をとどめないくらいにみじん切りにしてやる! さあ、俺と戦えぇぇぇぇぇ!」


 何と言ってもアドナに届かないというのはよく理解できた。
 戦う以外に、道はなさそうだ。

「フリーゼ」

「はい」

「俺はアドナを見る。フリーゼはスキァーヴィをお願い。出来る?」 

「──できます」

 フリーゼが真剣な表情で言葉を返す。
 そして視線をスキァーヴィへと向けた。

「スキァーヴィ……。あなたは私が相手をします」

「ふ~~ん。あんたがねぇ。確かにあんたなら私には勝てそうだけど……」

 確かにそうだ。いくらスキァーヴィが強いからといってもしょせんは人間。
 フリーゼに勝てるとは思えない。

 しかし今のスキァーヴィにそんな様子はない。まるで、自分が勝てることを確信しているみたいに。

 そしてスキァーヴィがフリーゼを指さす。

「そっちの彼氏さんはどうかしらねぇ。アドナに、やられちゃうんじゃないかしら?」

「それが、狙いなんですか?」

「あら~~脳筋じゃないのね。賢いじゃない」

 ──スキァーヴィの狙いが理解できた。

「私だって、ただの人間が貴方に真正面から戦って勝てるとは思っていないわ。けれど、彼氏さんの介護をしながらじゃ話は別」

 確かに、俺も加護をしながらニクトリスを使っているアドナと一騎打ちをして勝てるかと言ったら怪しい。

 例え加護を切っても勝てるかどうか。保証なんてない。
 そう考えこんでいると──。

「フライさん。信じますよ──」

 フリーゼがすっと右手を俺にかざしてきた。そして右手が淡い白色に光始める。


 俺の体が、温かいオーラの様なものに包まれる。一瞬驚いたがすぐに理解した。これはフリーゼの物だと。

「フライさん。私の力、受け取ってください」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

ピコーン!と技を閃く無双の旅!〜クラス転移したけど、システム的に俺だけハブられてます〜

あけちともあき
ファンタジー
俺、多摩川奥野はクラスでも浮いた存在でボッチである。 クソなクラスごと異世界へ召喚されて早々に、俺だけステータス制じゃないことが発覚。 どんどん強くなる俺は、ふわっとした正義感の命じるままに世界を旅し、なんか英雄っぽいことをしていくのだ!

『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど
ファンタジー
1プレイヤーとして、普通にVRMMOを楽しんでいたラミエル。 魔王討伐を目標に掲げ、日々仲間たちと頑張ってきた訳だが、突然パーティー追放を言い渡される。 当然ラミエルは反発するものの、リーダーの勇者カインによって半ば強制的に追い出されてしまった。 ────お前はもう要らないんだよ!と。 ラミエルは失意のドン底に落ち、現状を嘆くが……『虐殺の紅月』というパーティーに勧誘されて? 最初こそ、PK集団として有名だった『虐殺の紅月』を警戒するものの、あっという間に打ち解けた。 そんなある日、謎のハッカー集団『箱庭』によりゲーム世界に閉じ込められて!? ゲーム世界での死が、現実世界での死に直結するデスゲームを強いられた! 大混乱に陥るものの、ラミエルは仲間達と共にゲーム攻略へ挑む! だが、PK集団ということで周りに罵られたり、元パーティーメンバーと一悶着あったり、勇者カインに『戻ってこい!』と言われたり……で、大忙し! 果たして、ラミエルは無事現実へ戻れるのか!? そして、PK集団は皆の英雄になれるのか!? 最低で最高のPK集団が送る、ゲーム攻略奮闘記!ここに爆誕! ※小説家になろう様にも掲載中

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【完結】異世界転移特典で創造作製のスキルを手に入れた俺は、好き勝手に生きてやる‼~魔王討伐?そんな物は先に来た転移者達に任せれば良いだろ!~

アノマロカリス
ファンタジー
俺が15歳の頃…両親は借金を膨らませるだけ膨らませてから、両親と妹2人逃亡して未だに発見されていない。 金を借りていたのは親なのだから俺には全く関係ない…と思っていたら、保証人の欄に俺の名前が書かれていた。 俺はそれ以降、高校を辞めてバイトの毎日で…休む暇が全く無かった。 そして毎日催促をしに来る取り立て屋。 支払っても支払っても、減っている気が全くしない借金。 そして両親から手紙が来たので内容を確認すると? 「お前に借金の返済を期待していたが、このままでは埒が明かないので俺達はお前を売る事にした。 お前の体の臓器を売れば借金は帳消しになるんだよ。 俺達が逃亡生活を脱する為に犠牲になってくれ‼」 ここまでやるか…あのクソ両親共‼ …という事は次に取り立て屋が家に来たら、俺は問答無用で連れて行かれる‼ 俺の住んでいるアパートには、隣人はいない。 隣人は毎日俺の家に来る取り立て屋の所為で引っ越してしまった為に、このアパートには俺しかいない。 なので取り立て屋の奴等も強引な手段を取って来る筈だ。 この場所にいたら俺は奴等に捕まって…なんて冗談じゃない‼ 俺はアパートから逃げ出した!   だが…すぐに追って見付かって俺は追い回される羽目になる。 捕まったら死ぬ…が、どうせ死ぬのなら捕まらずに死ぬ方法を選ぶ‼ 俺は橋の上に来た。 橋の下には高速道路があって、俺は金網をよじ登ってから向かって来る大型ダンプを捕らえて、タイミングを見てダイブした! 両親の所為で碌な人生を歩んで来なかった俺は、これでようやく解放される! そして借金返済の目処が付かなくなった両親達は再び追われる事になるだろう。 ざまぁみやがれ‼ …そう思ったのだが、気が付けば俺は白い空間の中にいた。 そこで神と名乗る者に出会って、ある選択肢を与えられた。 異世界で新たな人生を送るか、元の場所に戻って生活を続けて行くか…だ。 元の場所って、そんな場所に何て戻りたくもない‼ 俺の選択肢は異世界で生きる事を選んだ。 そして神と名乗る者から、異世界に旅立つ俺にある特典をくれた。 それは頭の中で想像した物を手で触れる事によって作りだせる【創造作製】のスキルだった。 このスキルを与えられた俺は、新たな異世界で魔王討伐の為に…? 12月27日でHOTランキングは、最高3位でした。 皆様、ありがとうございました。

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

処理中です...