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ローデシア帝国編

唯一王 今度はフリーゼに

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 スキァーヴィだ。

「バレてるに決まてるじゃない! フライ。フリーゼ!」

 しまった。バレていたのか──。

「どうして、知っているのですか?」

 フリーゼの言葉に、スキァーヴィは腕を組みながら自信満々に言い放った。

「当たり前じゃない。あなた達の行動は、全て情報に入っているわ。もちろん、スワニーゼもね──」

 スワニーゼは恐怖のあまり目を大きく見開き、じっとスキァーヴィを見つめている。
 体をぶるぶると震わせ、縮こまっていた。そして、そのままひざを折ってへたり込んでしまう。

「スワニーゼ。あなた、私のことをそう思っていたんだ……。覚悟しておきなさい。後でたっぷりとお仕置きしてあげるわ」

 背筋を凍らせるような、威圧感を感じさせる笑み。
 スワニーゼが恐怖に震えている中、フリーゼが威圧感にひるむことなく強気に言葉を返した。

「待ってください。いくら私達の行動を把握していたとしても、止めなければ何の意味もありません」

「言われなくてもわかってるわ。ここで私が、勝つに決まってるじゃなぁい。ねえ~~観客の皆さん!」

 スキァーヴィは観客たちに訴えかけるように叫ぶ。
 その言葉に観客たちは大興奮し、この場が大盛り上がりになる。

「ウォォォォォォォォォォォォォォォォォ。スキァーヴィ様が直々に戦うんだってよ!」

「始めてみるぜぇ。スキァーヴィ様の戦いって。やっぱりつええんだろうな」

 大歓声の中、スキァーヴィは自信満々な表情で俺たちを人差し指で刺した。


「いいわ。あなた達が私に勝てるわけないって。その体に刻み付けてあげる」

「私、たち?」

 一人しかいない意味深なスキァーヴィの言葉。フリーゼが警戒して周囲に視線を向けた。

「そうよ。私『たち』。勝負は二対二の戦い。そして、私のパートナーは、こいつよ! アドナ」

 スキァーヴィがピッと指をはじく。
 そしてアドナは再び控え室から出て来た。

 そしてこの場に着た瞬間に偶然俺と目が合う。

「あそこにいるあなたのお友達。アドナ、あなたは彼と戦うのよ」

 スキァーヴィの言葉。
 アドナの耳に届いているのかはわからない、どこか上の空で、俺を見つめている。

「アドナ。わかる? フライと戦うの。どっちかが死ぬまで。いい?」

 アドナは大きく目を開けて俺をじっと見ている
 ポカンとしたマヌケな口。

「フライ──」

 そうボソッとつぶやいたき、そして──。

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッッッ──」


 大きくそう叫び、一目散にこっちに向かってきた。
 狂気ともいえる、正気を失った表情。

 俺に向かって剣を大きく振りかざしてくる。俺はステップを踏んで後退。



「俺は、奴隷になった。お前のせいで、お前のせいでお前のせいでお前のせいでお前のせいでお前のせいでぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」

「まて、落ち着けアドナ」

 俺の言葉、アドナの耳には届いていない。いや、届いてはいるが、彼の感情がはじき返しているのだろう。


「俺と戦え! ぶっ殺してやる。そのクソみたいな顔が誰かわからくなるくらいにぐちゃぐちゃにしてやる。その体が、原形をとどめないくらいにみじん切りにしてやる! さあ、俺と戦えぇぇぇぇぇ!」


 何と言ってもアドナに届かないというのはよく理解できた。
 戦う以外に、道はなさそうだ。

「フリーゼ」

「はい」

「俺はアドナを見る。フリーゼはスキァーヴィをお願い。出来る?」 

「──できます」

 フリーゼが真剣な表情で言葉を返す。
 そして視線をスキァーヴィへと向けた。

「スキァーヴィ……。あなたは私が相手をします」

「ふ~~ん。あんたがねぇ。確かにあんたなら私には勝てそうだけど……」

 確かにそうだ。いくらスキァーヴィが強いからといってもしょせんは人間。
 フリーゼに勝てるとは思えない。

 しかし今のスキァーヴィにそんな様子はない。まるで、自分が勝てることを確信しているみたいに。

 そしてスキァーヴィがフリーゼを指さす。

「そっちの彼氏さんはどうかしらねぇ。アドナに、やられちゃうんじゃないかしら?」

「それが、狙いなんですか?」

「あら~~脳筋じゃないのね。賢いじゃない」

 ──スキァーヴィの狙いが理解できた。

「私だって、ただの人間が貴方に真正面から戦って勝てるとは思っていないわ。けれど、彼氏さんの介護をしながらじゃ話は別」

 確かに、俺も加護をしながらニクトリスを使っているアドナと一騎打ちをして勝てるかと言ったら怪しい。

 例え加護を切っても勝てるかどうか。保証なんてない。
 そう考えこんでいると──。

「フライさん。信じますよ──」

 フリーゼがすっと右手を俺にかざしてきた。そして右手が淡い白色に光始める。


 俺の体が、温かいオーラの様なものに包まれる。一瞬驚いたがすぐに理解した。これはフリーゼの物だと。

「フライさん。私の力、受け取ってください」
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