124 / 203
ウェレン王国編
唯一王 偉大なる存在を見る
しおりを挟む
ここでも俺たちが少人数で中に入り、祈りをささげていく。
まずが国王や要人たちから。
国王ケイルや王子ジロンは不満たらたらに入って行く。
「あ~~あ、早く酒飲みてぇ──」
「もう、飽きてきたのう」
その後に要人たち。その間、俺たちは警戒を強めていたが、結局何も起きなかった。
さらに、警備の冒険者たちも巡礼を行うようで、フリーゼとハリーセルから順に入って行った。
流石に一辺にいなくなると警備上よくないので、要人と一緒だったり、少人数での巡礼ではあったが。
俺は最後の方になってレディナやレシア、メイルと一緒に入る。
石でできたドアから中に入り、薄暗く肌寒い石造りの聖堂の中を歩いていく。
「メイル、ちょっといい?」
「なんでしょうか」
「ここは、どんな場所なの?」
メイルは右手を口元に当てながら思い出す様にして言葉を返す。
「ここは大昔、私達の先住民が天使たちと交流をしていたところです」
「へぇ、そんな昔から交流を?」
「そうよ、人間たちが文明を持ったころから交流自体はしているわ」
レディナの言葉に俺は驚く。
「そんな大昔から?」
「はい。私達の先祖の、もっとも昔の人達とも交流がある記録もありました。国家の制度を教わったり、魔法に関する知識を手に入れたりしていたそうです」
「そうね、ウェレンのあたりは私がこの世界に来る前より交流があったと聞いていたわ」
「そうなんだ、レディナ」
だからこの国の人たちはみんな信仰深く、せいかつのなかに根付いているのか。どこか納得した。
「その通りです。私達は精霊や大天使様に支えられてこの厳しい環境を生き抜いてきました。あなたたちの知恵や力のおかげです。そしてこれからも、私達はそうして生きていくでしょう」
メイルのどこか自信に満ちた表情。心から信仰を深めているのがわかる。
そして歩いていくと、広い空間にたどり着いた。
薄暗くて、良く見えないが何かが描かれている石板に囲まれている。
そして入口から一番奥には、何かが描かれている。
その前、膝くらいの段さがある場所に、ステファヌアさんはいた。
「フライさん、レディナさん、レシアさん。では祈りを始めます。黙とうを──」
「はい」
代表して俺が言葉を返すと、俺達は手を合わせる。
そしてステファヌアが、奥にある石板に手をかざした。すると──。
シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。
その瞬間、奥にある石板。周囲の壁が光始める。
淡い青色をした、優しさを感じさせる光。
「皆さん、見回したくなる気持ちは分かりますが、しばしの間黙とうをお願いします」
「──わかりました」
俺達は間をつぶって、心を無にして黙とうをささげる。その時間、数十秒ほど。
「──もう大丈夫ですよ、目を開けてください」
「ありがとうございます」
俺達は目を開け、周囲を再び見回す。
その神秘的な姿に、俺達は目を奪われる。
「なにこれ、すごいじゃない」
「そうだねレディナ。これ、何かわかる?」
淡くて、青い光に包まれたこの場。さっきと違い明るさがあるので周囲に何があるのかはっきりとわかる。
まずは周囲にある壁画。
見たこともない古代文字で描かれた文章。魚や木、森などの絵に近い文字。
棒が一つや二つというのは数を表わしていると思うのだが、他はよくわからない。
もちろん俺の記憶にはなく、読めるはずもない。
「レディナ、これわかる?」
「いや、わからないわ」
レディナが額に手を当て、困りながら言葉を返す。
「推測だと思うのだけれど、当時の先住民の人たちのことだと思うわ」
「なるほど──」
ウェレン王国の先祖ができる前も、別の人々が住んでいて、そこでも精霊や大天使と交流を行っていた。
しかしこの人々たちはウェレンの先祖とは違う人たちのため、ウェレンの人たちでは文字の意味は分からない。そんなところか。
そして俺は真正面、そこに描かれている絵画に視線を奪われた。
白い神々しい服を着た女性。白い翼をなびかせ、空から降りてきている女性が、ボロボロの服を着ている地上の人々に施しを与えている様子だ。
その姿にレディナとレシアは目を見開き、じっとその絵を見つめる。
「二人とも、あの人──わかるの?」
レディナはその絵に視線を固定させながら、ごくりと息をのむと言葉を返してきた。
「知ってるも何も、あれが私達を束ねる人物。大天使ツァルキール様よ」
その言葉に俺は体をピクリと動かす。
「あれが、大天使の姿──」
その言葉に俺は言葉を失ったまま正面の絵画に視線を奪われる。
背が高く、腰くらいまでかかった亜麻色の髪。サラサラのロングヘアーで、あどけない若そうな顔つきで微笑を浮かべている。
人間で言えば、十五歳くらいの女の子。とてもそんな偉大な存在とは思えない。もっと、大人っぽい人だと考えていたが──。
「この時は、まだ先代の補佐役だったわ。大天使になったのは、ごく最近よ」
「最近? 大天使って、代変わりするんだ──」
「当然よ。あんたたちとは数百倍遅いとはいえ、老化するんだもの──」
そうなのか。確かに、フリーゼたちだってずっと遺跡にいたにしては若い姿だ。
初めて知った事実に俺はただ言葉を失っていた。
「それで、問題が起きているんだけどね……」
レシアがため息をついてつぶやくと、正面からステファヌアがパンパンと手をたたき、声をかける。
「皆様。申し訳ありません、皆さまが待っています。行きましょう」
「そ、そうですね。わかりました」
まずが国王や要人たちから。
国王ケイルや王子ジロンは不満たらたらに入って行く。
「あ~~あ、早く酒飲みてぇ──」
「もう、飽きてきたのう」
その後に要人たち。その間、俺たちは警戒を強めていたが、結局何も起きなかった。
さらに、警備の冒険者たちも巡礼を行うようで、フリーゼとハリーセルから順に入って行った。
流石に一辺にいなくなると警備上よくないので、要人と一緒だったり、少人数での巡礼ではあったが。
俺は最後の方になってレディナやレシア、メイルと一緒に入る。
石でできたドアから中に入り、薄暗く肌寒い石造りの聖堂の中を歩いていく。
「メイル、ちょっといい?」
「なんでしょうか」
「ここは、どんな場所なの?」
メイルは右手を口元に当てながら思い出す様にして言葉を返す。
「ここは大昔、私達の先住民が天使たちと交流をしていたところです」
「へぇ、そんな昔から交流を?」
「そうよ、人間たちが文明を持ったころから交流自体はしているわ」
レディナの言葉に俺は驚く。
「そんな大昔から?」
「はい。私達の先祖の、もっとも昔の人達とも交流がある記録もありました。国家の制度を教わったり、魔法に関する知識を手に入れたりしていたそうです」
「そうね、ウェレンのあたりは私がこの世界に来る前より交流があったと聞いていたわ」
「そうなんだ、レディナ」
だからこの国の人たちはみんな信仰深く、せいかつのなかに根付いているのか。どこか納得した。
「その通りです。私達は精霊や大天使様に支えられてこの厳しい環境を生き抜いてきました。あなたたちの知恵や力のおかげです。そしてこれからも、私達はそうして生きていくでしょう」
メイルのどこか自信に満ちた表情。心から信仰を深めているのがわかる。
そして歩いていくと、広い空間にたどり着いた。
薄暗くて、良く見えないが何かが描かれている石板に囲まれている。
そして入口から一番奥には、何かが描かれている。
その前、膝くらいの段さがある場所に、ステファヌアさんはいた。
「フライさん、レディナさん、レシアさん。では祈りを始めます。黙とうを──」
「はい」
代表して俺が言葉を返すと、俺達は手を合わせる。
そしてステファヌアが、奥にある石板に手をかざした。すると──。
シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。
その瞬間、奥にある石板。周囲の壁が光始める。
淡い青色をした、優しさを感じさせる光。
「皆さん、見回したくなる気持ちは分かりますが、しばしの間黙とうをお願いします」
「──わかりました」
俺達は間をつぶって、心を無にして黙とうをささげる。その時間、数十秒ほど。
「──もう大丈夫ですよ、目を開けてください」
「ありがとうございます」
俺達は目を開け、周囲を再び見回す。
その神秘的な姿に、俺達は目を奪われる。
「なにこれ、すごいじゃない」
「そうだねレディナ。これ、何かわかる?」
淡くて、青い光に包まれたこの場。さっきと違い明るさがあるので周囲に何があるのかはっきりとわかる。
まずは周囲にある壁画。
見たこともない古代文字で描かれた文章。魚や木、森などの絵に近い文字。
棒が一つや二つというのは数を表わしていると思うのだが、他はよくわからない。
もちろん俺の記憶にはなく、読めるはずもない。
「レディナ、これわかる?」
「いや、わからないわ」
レディナが額に手を当て、困りながら言葉を返す。
「推測だと思うのだけれど、当時の先住民の人たちのことだと思うわ」
「なるほど──」
ウェレン王国の先祖ができる前も、別の人々が住んでいて、そこでも精霊や大天使と交流を行っていた。
しかしこの人々たちはウェレンの先祖とは違う人たちのため、ウェレンの人たちでは文字の意味は分からない。そんなところか。
そして俺は真正面、そこに描かれている絵画に視線を奪われた。
白い神々しい服を着た女性。白い翼をなびかせ、空から降りてきている女性が、ボロボロの服を着ている地上の人々に施しを与えている様子だ。
その姿にレディナとレシアは目を見開き、じっとその絵を見つめる。
「二人とも、あの人──わかるの?」
レディナはその絵に視線を固定させながら、ごくりと息をのむと言葉を返してきた。
「知ってるも何も、あれが私達を束ねる人物。大天使ツァルキール様よ」
その言葉に俺は体をピクリと動かす。
「あれが、大天使の姿──」
その言葉に俺は言葉を失ったまま正面の絵画に視線を奪われる。
背が高く、腰くらいまでかかった亜麻色の髪。サラサラのロングヘアーで、あどけない若そうな顔つきで微笑を浮かべている。
人間で言えば、十五歳くらいの女の子。とてもそんな偉大な存在とは思えない。もっと、大人っぽい人だと考えていたが──。
「この時は、まだ先代の補佐役だったわ。大天使になったのは、ごく最近よ」
「最近? 大天使って、代変わりするんだ──」
「当然よ。あんたたちとは数百倍遅いとはいえ、老化するんだもの──」
そうなのか。確かに、フリーゼたちだってずっと遺跡にいたにしては若い姿だ。
初めて知った事実に俺はただ言葉を失っていた。
「それで、問題が起きているんだけどね……」
レシアがため息をついてつぶやくと、正面からステファヌアがパンパンと手をたたき、声をかける。
「皆様。申し訳ありません、皆さまが待っています。行きましょう」
「そ、そうですね。わかりました」
0
お気に入りに追加
248
あなたにおすすめの小説
【R18】らぶえっち短編集
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)
R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。
※R18に※
※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。
※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。
※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。
※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。
前世で辛い思いをしたので、神様が謝罪に来ました
初昔 茶ノ介
ファンタジー
日本でブラック企業に勤めるOL、咲は苦難の人生だった。
幼少の頃からの親のDV、クラスメイトからのイジメ、会社でも上司からのパワハラにセクハラ、同僚からのイジメなど、とうとう心に限界が迫っていた。
そしていつものように残業終わりの大雨の夜。
アパートへの帰り道、落雷に撃たれ死んでしまった。
自身の人生にいいことなどなかったと思っていると、目の前に神と名乗る男が現れて……。
辛い人生を送ったOLの2度目の人生、幸せへまっしぐら!
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
のんびり書いていきますので、よかったら楽しんでください。
【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453
の続きです。
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
ポンコツ女子は異世界で甘やかされる(R18ルート)
三ツ矢美咲
ファンタジー
投稿済み同タイトル小説の、ifルート・アナザーエンド・R18エピソード集。
各話タイトルの章を本編で読むと、より楽しめるかも。
第?章は前知識不要。
基本的にエロエロ。
本編がちょいちょい小難しい分、こっちはアホな話も書く予定。
一旦中断!詳細は近況を!
精霊王達は人間達を翻弄する
りん
ファンタジー
この世界は、人間、精霊、エルフなどなどいろんな種族が住んでいる。ところが、人間が契約を破り、精霊たちを使役することによって、精霊王を怒らせた。怒った精霊たちによる、半分遊びながら、人間達を翻弄させていく!それは他種族をも巻き込んで!?
えっ!? 聖女として命がけで国を守ってたのに婚約破棄&追放ですか!!? 悲しみの聖女は精霊王の溺愛を受けてます!!!
星ふくろう
恋愛
ラグーン王国は北の大地に栄える人類国家。
風の精霊王様の加護を受けて、北国なのに温和な気候が与えられ、繁栄していた。
それも全て、精霊王の聖女の結界魔法のおかげ。
聖女の寿命と引き替えに、この国は繁栄してきた。
ある日、聖女になって二年目のリブル公爵令嬢アリアは幸せな日を迎えようとしていた。
王国のショーン王太子殿下との婚約が決まり、翌日は挙式というその前夜。
アリアは見てしまう。
ショーン王太子殿下と彼女の親友、アベンシス公爵令嬢ラーナの浮気現場を。
そして言い渡される婚約破棄と出て行けの一言。
アリアは激怒した。
なら、出て行きます。ついでに、結界魔法も解除しますから。
王太子殿下は好きにしろ、そう言った。
いいんですね!? 好きにしますよ?
凍土の極寒地獄で滅びろこのクズ男!!!
アリアはそう決意して精霊王の元へと向かう。
王国に対して自身が下した決断の悲惨な結末の是正、多くの神や精霊との交流を得てアリアは風の精霊王の妻になり、そして空席だった水の精霊女王になる。
新しい臣下や異世界の神々との確執を乗り越えて、夫婦は愛をはぐくむのだった。
小説家になろうでも別作者名義で出させて頂いております。
表紙イラストは、
ayuzukko様(twitter @zOZo3AZeN1AsqrP)
に描いていただきました。
精霊王の番
為世
ファンタジー
黒髪の青年は、守護霊を操り霊獣を狩る”冒険者”である。
青年は東の国の片田舎で安寧の日々を過ごしていたが、彼の日常は街の要人を狙う襲撃事件が発生し一変する。そして事件に巻き込まれていく中で、その裏側にとある組織の存在が浮かび上がる。
やがて青年は、自身を狙う組織との因縁を晴らすため旅に出る事を決意する。
黒髪の青年が出会うのは、実力の底を見せない養父、死を予見する女、頑なに真意を悟らせない謎の男に、人嫌いの少女。
そして青年は、冒険の裏で渦巻く野望に巻き込まれていく。
暗躍する者達や組織、或いはその陰謀との対立。
”全知”を求める秘密結社、救済を騙る宣教師、平和と競争を天秤に掛ける司法官、神話に語り継がれる二人の王と、そこに連なる民衆達。
個人との対立、組織との対立、国との対立、思想との対立、故人との対立!
そして、”龍”は誕生する。
この物語は、青年が自身の“在り方”を認めるに至るまでの顛末、そして見届ける彼の”運命”、その一部始終をここに記す。
作者より、これを手にした全ての読者に感謝と尊敬の意を表して。
───為世
【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる