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ウェレン王国編
クリムの不満
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三人がいかみ合ってるところに、フッと笑みを見せて接近。その笑みは、まるで女神の様に優しくて、慈悲深く見えた。
「皆様。このようなところで言い争いをするのはやめましょう。魔物たちがこの叫び声を聞いて襲ってくるかもしれません。要人たちが見ています。言い争いはやめましょう。時間が押しています」
国王は舌打ちをしてステファヌアを睨めつける。
「──ったく。仕方ないのう。もういい。行くぞ」
何とか矛を収めてくれた。とりあえずことが解決し、ほっと溜息をつく。
そして俺たちは再び歩を進めだした。
暗い洞窟の中、近くにいたメイルに話しかける。
「さっきはありがとうございます。あの場を沈めていただいて」
「気にしないでください。慣れています」
「やはり、よくあることなんですか──」
ステファヌアが話に入ってきて、平然とした態度で答える。
「ええ。自分たちの行動がうまくいかないとイライラを隠せなくなってしまうタイプの人です。これまでもよくあったことなので、対処法も心得ています」
「そ、そうなのですか」
「はい。まずはその感情を吐き出させます。そして落ち着きを取り戻したころに周囲が見ていますと言って落ち着けさせれば解決です」
フリーゼもステファヌアの行動に納得してしまった。なるほど、こういった場面を何度も体験し、切り抜けたということか。
「当然よ。ステファヌアは人々の上に立つ人として、いろいろな人々を見てきたの。これくらいどうってことないわ」
クリムも自信をもってそう宣言する。
この二人の態度から、ステファヌアさんは信者からかなり信頼されている人なのだと感じた。
俺もそんな人になってみたいものだ。
しかし、クリムは違う態度をとっていた。
「──ったく。ステフは甘すぎるのよ。なんであいつらに何も言わないのよ。ちょっとくらい、痛い目にあった方がいいのよ。あのゴミどもは」
顔を膨らませ、不満げにつぶやく。
その気持ちは、俺もわからなくない。王族というのは権力をかさに威張り散らすような存在であってはならない。
ケイル達は、権力者として失格のクズ野郎といってもいい。
「まあまあ、不満は分かりますが──、そんなことを言っても始まりません警戒を続けましょう」
メイルはクリムの感情を理解したのか、割って入ってなだめようとする。
少し引き攣った、機嫌を取るような笑み。
「──わかったわよ、もう」
クリムは、顔をぷくっと膨らませ不機嫌な態度で了承する。
不満を抱えているのがよくわかる。今はいいかもしれないけれど、いつか爆発しそうだ──。
それからも俺たちは道を進む。途中、鍾乳洞の様な綺麗で真っ白い氷柱があるエリアを通り過ぎる。
「おおっ、綺麗フィッシュ。芸術フィッシュ」
真っ暗で、冒険者が出す灯だけが根源の中、その光に照らされ天井から生えるように存在している白い氷柱。
その美しさにハリーセルだけでなく要人たちも、興味津々に視線を傾ける。
「なんていうか、また来てみたい気がしてくるわ。本当に神秘的ね」
「そうだね、レディナ」
そんな光景が終わってしばらく、やがてダンジョンの奥から一閃の光が見え始めた。
「あれ、出口じゃないですか、フライさん」
「そうだねフリーゼ」
それを見たここにいる人たち。安堵の雰囲気がこの場一帯を包み込む。
「皆さん。油断は禁物です、しっかりと警戒を怠らずにお願いいたします」
メイルの言葉、正論だ。安心したところを魔物が奇襲してくる可能性だってあるし、ダンジョンを抜けたとしても敵が襲ってくる可能性は十分にある。
油断してはいけない。最後まで気を引き締めていこう。
そしてその後も歩き続ける。その光はやはり出口だったようで、ダンジョンを抜け、再び外に抜け出した。
針葉樹が生い茂るうっそうとした森。地面は雪で覆われていて真っ白。
「皆さん。ダンジョンを抜ければ目的地はもうすぐそこです。頑張りましょう」
ステファヌアが俺たちに向かって掛け声をかける。
そして再びゆっくりと足を動かし始めた。時折鹿やクマが現れる以外、時に何もない。
雪道をしばらく歩いていると、その場所にたどり着く。
森の中。ひっそりとした雰囲気の中に、大きな広場と建物。
昨日見た建物とくらべると、こじんまりとしていてどこか地味な雰囲気。
濃い緑色で幾何学的な模様がある、神秘的な建造物。
先頭にある馬車がその建物の前で止まる。
「どうやら、ここが目的地みたいですね」
「そうだね、フリーゼ」
「ここは大天使様と人間が交流した場所なんだ。僕、大昔ここで交流したからわかるんだ」
レシアが口をはさむ。へぇ、あるんだ。
そして全員が馬車を降りると、メイルが安全の確認をした後説明を行う。
「では、巡礼の方を始めます。私が誘導をしますのでその通りに従ってください」
ここでも俺たちが少人数で中に入り、祈りをささげていく。
まずが国王や要人たちから。
国王ケイルや王子ジロンは不満たらたらに入って行く。
「あ~~あ、早く酒飲みてぇ──」
「もう、飽きてきたのう」
「皆様。このようなところで言い争いをするのはやめましょう。魔物たちがこの叫び声を聞いて襲ってくるかもしれません。要人たちが見ています。言い争いはやめましょう。時間が押しています」
国王は舌打ちをしてステファヌアを睨めつける。
「──ったく。仕方ないのう。もういい。行くぞ」
何とか矛を収めてくれた。とりあえずことが解決し、ほっと溜息をつく。
そして俺たちは再び歩を進めだした。
暗い洞窟の中、近くにいたメイルに話しかける。
「さっきはありがとうございます。あの場を沈めていただいて」
「気にしないでください。慣れています」
「やはり、よくあることなんですか──」
ステファヌアが話に入ってきて、平然とした態度で答える。
「ええ。自分たちの行動がうまくいかないとイライラを隠せなくなってしまうタイプの人です。これまでもよくあったことなので、対処法も心得ています」
「そ、そうなのですか」
「はい。まずはその感情を吐き出させます。そして落ち着きを取り戻したころに周囲が見ていますと言って落ち着けさせれば解決です」
フリーゼもステファヌアの行動に納得してしまった。なるほど、こういった場面を何度も体験し、切り抜けたということか。
「当然よ。ステファヌアは人々の上に立つ人として、いろいろな人々を見てきたの。これくらいどうってことないわ」
クリムも自信をもってそう宣言する。
この二人の態度から、ステファヌアさんは信者からかなり信頼されている人なのだと感じた。
俺もそんな人になってみたいものだ。
しかし、クリムは違う態度をとっていた。
「──ったく。ステフは甘すぎるのよ。なんであいつらに何も言わないのよ。ちょっとくらい、痛い目にあった方がいいのよ。あのゴミどもは」
顔を膨らませ、不満げにつぶやく。
その気持ちは、俺もわからなくない。王族というのは権力をかさに威張り散らすような存在であってはならない。
ケイル達は、権力者として失格のクズ野郎といってもいい。
「まあまあ、不満は分かりますが──、そんなことを言っても始まりません警戒を続けましょう」
メイルはクリムの感情を理解したのか、割って入ってなだめようとする。
少し引き攣った、機嫌を取るような笑み。
「──わかったわよ、もう」
クリムは、顔をぷくっと膨らませ不機嫌な態度で了承する。
不満を抱えているのがよくわかる。今はいいかもしれないけれど、いつか爆発しそうだ──。
それからも俺たちは道を進む。途中、鍾乳洞の様な綺麗で真っ白い氷柱があるエリアを通り過ぎる。
「おおっ、綺麗フィッシュ。芸術フィッシュ」
真っ暗で、冒険者が出す灯だけが根源の中、その光に照らされ天井から生えるように存在している白い氷柱。
その美しさにハリーセルだけでなく要人たちも、興味津々に視線を傾ける。
「なんていうか、また来てみたい気がしてくるわ。本当に神秘的ね」
「そうだね、レディナ」
そんな光景が終わってしばらく、やがてダンジョンの奥から一閃の光が見え始めた。
「あれ、出口じゃないですか、フライさん」
「そうだねフリーゼ」
それを見たここにいる人たち。安堵の雰囲気がこの場一帯を包み込む。
「皆さん。油断は禁物です、しっかりと警戒を怠らずにお願いいたします」
メイルの言葉、正論だ。安心したところを魔物が奇襲してくる可能性だってあるし、ダンジョンを抜けたとしても敵が襲ってくる可能性は十分にある。
油断してはいけない。最後まで気を引き締めていこう。
そしてその後も歩き続ける。その光はやはり出口だったようで、ダンジョンを抜け、再び外に抜け出した。
針葉樹が生い茂るうっそうとした森。地面は雪で覆われていて真っ白。
「皆さん。ダンジョンを抜ければ目的地はもうすぐそこです。頑張りましょう」
ステファヌアが俺たちに向かって掛け声をかける。
そして再びゆっくりと足を動かし始めた。時折鹿やクマが現れる以外、時に何もない。
雪道をしばらく歩いていると、その場所にたどり着く。
森の中。ひっそりとした雰囲気の中に、大きな広場と建物。
昨日見た建物とくらべると、こじんまりとしていてどこか地味な雰囲気。
濃い緑色で幾何学的な模様がある、神秘的な建造物。
先頭にある馬車がその建物の前で止まる。
「どうやら、ここが目的地みたいですね」
「そうだね、フリーゼ」
「ここは大天使様と人間が交流した場所なんだ。僕、大昔ここで交流したからわかるんだ」
レシアが口をはさむ。へぇ、あるんだ。
そして全員が馬車を降りると、メイルが安全の確認をした後説明を行う。
「では、巡礼の方を始めます。私が誘導をしますのでその通りに従ってください」
ここでも俺たちが少人数で中に入り、祈りをささげていく。
まずが国王や要人たちから。
国王ケイルや王子ジロンは不満たらたらに入って行く。
「あ~~あ、早く酒飲みてぇ──」
「もう、飽きてきたのう」
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