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アドナと最終戦編

唯一王 ドクロの秘密を理解する

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 そんな事を考えていると、俺達は道を曲がる。
 比較的広い通りを抜け、ひっそりとした横道へと歩を進めた。

 貧しそうな格好をした人と時折すれ違うと、進んだ道の先に目的の建物。

「これ、今まで見たことがないです」


「俺も、こんな雰囲気の建物は初めてだ」

 赤い色の門のようだが、どこか神秘的な雰囲気。
 確かあれは鳥居とかいうやつだ。

 それをくぐると、藁ぶきの屋根に木製の家屋が目の前に。

「申し訳ありません。お尋ねしたいことがあるのですがよろしいでしょうか」

「入れ」

 俺が発した言葉に、誰かがぶっきらぼうに言葉を返してくる。

 その言葉通り俺は横開きのドアをガラガラと開け、中へ。

 石畳の入口で履物を脱ぎ、薄暗い廊下を進む。

 薄暗い廊下でただ一つ、明かりをともしているのは小さな火のみ。

 白くて細い棒きれの上にゆらゆらと小さい火がともっている。ろうそくというやつだ
 なんていうか、この村は周囲の国とは違う独特な文化を持っていると感じる。

 そして木でできたドアを横に動かして開けると、一人の人物が目をつぶり、座禅を組んでいた。

「座れ」

「わ、わかりました」

 ぶっきらぼうな言葉使い。その言葉通り俺とフリーゼが腰を下ろす。

「何だあんだ。わしに何がようか?」

 そこにいるのは一人の小さな白髪の老人。
 独特な言葉使い、一瞬戸惑ってしまうが、臆せずに答える。

「私はフライ。隣にいるのがフリーゼです。本日はブラマーさんにお願いがありましてまいりました。

 この人がこの村で唯一青い水晶ドクロを作ることができる人。名前は、さっきの露店の人から聞いた。

「はい。ブラマーさん、あなたにお願いがあります。私達、どうしても青い水晶ドクロを手に入れたいんです。ブラマーさんが唯一の製造者だとも聞きました。そのためにはどうすればいいんでしょうか。教えてください」

 そして俺とフリーゼはパッと頭を下げた。
 青い水晶ドクロがどうやって手に入るかだ。単刀直入にどうすればいいかを聞いてみた。変に取り繕ってもしょうがないしね。

 するとブラマーさんの表情が気難しそうになる。何か地雷でも踏んだのだろうか。
 しばしの間、ブラマーさんは後ろを向いて座禅を組んで黙り込む。


 気まずい雰囲気がこの場を包む。数十秒ほど沈黙が続いた後、ブラマーさんは後ろを向いたまま離し始める。


「オラたちは、外の世界との関係を望んではなかどった。この村で生まれ、自然と共に暮らし、ひっそりと生きる。周囲に迷惑をかけているわけではない」

 その姿から、どこか悲しんでいる様子がうかがえた。ブラマーさんはさらに話を続ける。

「しかしわしたちの様々なものに神が宿るという考え方は、外の大いなる天使を信じる人々から見れば、自分たちの天使を信じない無礼者に見えてしまったのじゃろう。わしたちに一方的に自分たちの宗教を押し付けてきた」

 なるほど、なんとなくわかってきたぞ。

「特に熾天使とかいうとかいうやつはひどかった。そこの緑の女と同じ力を放っているやつらじゃ。俺たちを邪教徒だど一方的に言い放った挙句軍勢をよこして侵略をしてきた。たくさんの村の者が犠牲になったど。その時に守り抜いた村のシンボル。そして守ってきた力の象徴がこのドクロというわけじゃ」

「そ、そんな大切なものだったんですか?」

 俺は思わず困惑してしまう。そんなものを俺たちはいただこうとしていたのか──。流石に罪悪感を感じてしまった。

「別に作らないと言っとるわけじゃない。今、問題なのはドクロを作るための必要な材質のことじゃ」

「必要な、材質?」

「ああ。このドクロを作るのに、石英(セキエイ)という原料が必要なのじゃ。じゃが石英が取れる場所にユニコーンとかいう動物が居座ってのう。こ奴らが石英を独り占めして手に入れることができなくなっているだ」

「つまり、そのユニコーンを排除するなりして、その場所にある石英を手に入れてくればいいということですね?

「そうじゃ、理解力があって助かるだ」

 ふう。一時はどうなるかとおもったけど、門前払いというわけじゃないようだ。

「四日後、村のみんなで石英のある場所を奪還しに集団で出発するだ。お主もそれに協力して欲しかど。もしユニコーンたちを説得するなり駆除するなりしで石英を持ってくることができたら、お主が望んでいた水晶ドクロ。作ってやるだ」

「分かりました。そのクエストの件。私達も参加させていただきます」

「私も、フライさんと一緒に頑張ります」

 こうして俺たちは村の冒険者たちと一緒に石英を手に入れるためのクエストに出ることになった。
 それから、その手続きの方法などを教えてもらった。
 村の人たちとの遠征。なれない人たちとの共闘、うまくいくようにしたい。

 そして話が終わると、フリーゼはぺこりとブラマーさんに向かって頭を下げる。

「あの、本当にありがとうございます。私、この地に天使たちが侵略をしていたのを知らなくて。それなのに、この私に隔てなく接してくれて」

「いいよ。別にあんたがオラたちを襲ったわけじゃなかど」

 ブラマーさんはそう言ってフリーゼをフォロー。確かに、熾天使という天使たちに侵略を受けていたならば、彼らとつながりのある精霊のフリーゼにも何かしらの憎しみを抱かれていてもおかしくはない。

 けれどブラマーさんはそんな感情を前面に出さずに、フリーゼにも普通に接してくれてチャンスまで与えてくれた。

 本当にありがたい。

「私たち、絶対に皆さんの力になります」

「はい。精霊である私に教えてくれて、ありがとうございました。石英の方、必ず手に入れます」

「頑張ってこい。信じてるで」


 ブラマーさんの勇気づけるような言葉を最後に俺達はこの建物を去っていく。

 また、ブラマーさんに宿の場所を教えてもらった。ぶっきらぼうな口調だけど、根はいい人なんだと感じる。
 宿の場所へと歩きながら、俺は強く決意。

 村の人たちとのクエスト。おまけに相手はそこそこの強さがあり、チーム力に優れるユニコーンとの戦い。

 おまけに今までの様ないつも戦ってきた仲間とは違い、初対面の冒険者たちと一緒に戦うことになる。恐らく一筋縄ではいかない戦いとなるだろう。

 けれど、この戦いにフリーゼたちの運命がかかっている。絶対に負けるわけにはいかない。
 何が起こるかわからないけれど、全力を出して戦っていこう。


 そして、俺たちは宿へと向かっていった。
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