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3章
アルルの部屋へ
しおりを挟むそして、私たちはアルルのところに行くことになった。カイセドやメンデスの周囲の人を連れて、宮殿を出て街を歩く。
富裕層の住んでいる物静かなエリアを歩きながら、メンデスの姿を見て、感じた。みんなから見られていて、視線が気になるみたい。
ミシェウもそれに気づいていたようで、小声でメンデスに話しかけた。
「いつもこんな感じなの?」
「よく、周囲から迫られることが多いです。ジェシスやみんなから──何もしていないのに、心を寄せられたり、私に好意をむけてきたり」
「モテモテだねぇ~~」
ミシェウはニヤニヤしているが、メンデスは私達から目をそらして困惑している。
無自覚に引き付けてしまうという事か?
それからしばらく街を歩いて、アルルがいる怪しげな小物売りのお店にたどり着く。窓越しに中を見ていると見たことがない変な模様のネックレスや飾り物。怪しげな紋章をした魔法の杖。
相変わらずの雰囲気の店ね。
店がやっているなら、アルルはいるはず。アルルは──カウンターで大きな本を読んでいた。見たこのない文字が表紙の本。何の本かしら。
「アルル──私だよ~~」
ミシェウはそう言ってコンコンとノックをすると一番に見せに入る。慌てて私が入ると、こっちに気づいたのか視線を向けてきた。
「こんにちは~~」
「がん首そろえてこんにちは」
「やっほ~~お久しぶり」
「大勢引き連れて、いつものあなたらしくないわね。何かしら?」
冷静な表情のアルルに、ミシェウが笑顔で近づいて両手を肩に置く。
「メンデスのことを、調べて欲しいの、いい?」
「は?」
アルルは何のことだか理解できていないのだろう。ぽかんと口を開けじっとミシェウを見ていた。もう……いきなりそんな言い方してもわかるわけないでしょ。
私が間に入ってさっきまで会ったことを説明。
「えーと、彼女。メンデスについてなんだけど……」
無表情だけど、髪の毛をくるくるといじりながら重要な所ではコクリコクリとうなづいてくれる。手を貸してくれるとは思う。
「そういう事ね……」
そう言って、メンデスに近づいて顔をじーっと見る。
「な、何を──」
「あー、確かに何かありそうね」
「そうなんですか?」
「まってくれ。メンデスに何があったんだ?」
カイセドが不安そうな表情でアルルに詰め寄った。しかしアルルは全く動じない。
「心配しないで。悪い力じゃないから」
「そうなのか」
「ちょっと来て、あなたのことを色々と調べさせてもらうわ」
そう言って、アルルはメンデスのお腹のあたりを優しく触る。
そして、奥にある、黒魔術に近い部屋に案内される。
私達もアルルの後をついていく。
狭い暗闇の階段の下には、鋼鉄かと思うくらい重い扉。それがぎしっと音を立てて開く。その先には、薄暗い光が漂い、床一面には奇妙な紋章が刻まれてる黒魔術の部屋。
壁面には、見たことない文字。それから、フードを被った人間、確か黒魔術師の服装だっけ、それから白い羽を付けた天使の女の人の絵。
やっぱり、ミステリアスな雰囲気よねここ。独特すぎる。
現にメンデスやカイセド、他の人たちもキョロキョロを興味津々に周りを見ている。初めてだとそうなるわよね。
そして、アルルがくるりと振り返って、魔法陣の中央に立つ。
「とりあえず、メンデス──だっけ。こっちへ来て」
「はい」
メンデスは一歩引いて少しためらってから、ごくりと息をのんでアルルの元へ。やっぱり、怖がっているのがわかる。
アルルはメンデスと相対し、手が届くくらい近づくと右手をかざした。
「ちょっと見てみるわ」
その言葉に、ごくりと息をのむ。そして、アルルはまずメンデスの首元あたりに触れる。それから、優しくお腹のあたりをさすって、腕に触れた後そっと手を触れた。時間にして数十秒ほど。時折神経を集中させているのか目をつぶっている時間が多いわね。
そして、胸元あたりに手をかざした時──。
「え……」
アルルがぱっと目を開けて、小声でささやいた。何かあったのだろうか。
それから、メンデスの背中に回り、優しく触れて指を這わせた。
「えっ……」
「ごめんね、すぐ終わるから」
それから、指先を背骨、もう一度腕、肩……体をなぞるように触れた後、手を放す。メンデスは、怖がっているのか体を震わせていた。
「他は大丈夫みたいね」
「で、メンデスに何があったの?」
「教えてください。私──変な力があるのですか?」
メンデスが伏し目で言う。
それから、一歩後退して自分の身体をぎゅっと抱きしめた。
怖がっているみたい……フォローとか、考えたほうがいいわね。でも、とっても気になる。
アルルは腕を組んで考え事をしたから、説明を始める。
「あなた──自分の能力について聞かされたことないの?」
「魔法ですか? 基礎的な力やスキルについてはわかります」
「そうじゃないの。まどろっこしいこと言うのは苦手だから手短に言わせてもらうわね。あなたが持っている力は、魅了に近いものと言っていいわね」
「魅了?」
「ええ。それも、無条件に周囲に影響を及ぼしてしまっている感じね」
その言葉に、周囲も言葉を失い視線がメンデスに集中する。
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