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2章
最高の日とお忍び
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「面々と言われると、恥ずかしいものがあります……」
「ありがと。たまにはさ、挑戦してみようよ。絶対に会うって」
にっこりした笑顔を近づけてきた。これを見せつけられると、逆らえる気がしない。観念して、コクリとうなづいた。そんなこと……真正面から言われると返す言葉に困る。
「わかりました。そこまで言うなら行ってみましょう」
そして、ミシェウがリクエストした甘い香りの香水を購入。試しに、1滴瓶から出して手首に塗ってみる。クンクン──ああ、甘くていい匂い。買ってよかった。
「これ、いいかも」
「いいんじゃない。似合うんじゃない」
ミシェウの言葉を聞くと、自信が持てる。
それから店を出て、色々なお店へ。
かわいいぬいぐるみがいっぱい置いてあるファンシーなお店。
食べてみる──うん、とっても甘くておいしい!!
ミシェウの舌にもあっていたようで、にっこりと笑みを浮かべながらもぐもぐと食べている。
「あ~~、ほっぺにクリームついてる!!」
「ちょっと、ほっぺをなめないでよ」
そう言ってほっぺにクリームが付いた部分をペロッと舐め始めたのだ。流石に、心臓が止まりそうになった。いきなり何するのよ!!
他にも、公園で寝っ転がって──街の人と話したり。けんかしている人をなだめて、色々と話を聞いたり。
色々と買い物ができた。最初は楽しめるかなと思っていたが、気が付けば2人で何がいいか話し合ったり、議論しあったりしてしまった。一緒に来て、本当に良かったと言える日になった。
一通り買い物を終え、カバンを持ちながら帰路に就こうとする。
「いい息抜きになりました。本当にありがとうございます」
「ううん。私の方こそ、一緒にお出かけが出来て本当に楽しかった。また、色々あって疲れちゃったときはこうして買い物とかしようね?」
「はい」
思わず表情が緩くなる。ここまで嬉しい経験は、なかなかない。また、こうして楽しい時間を過ごしていきたいな。
そんな感じで大通りはいる道にたどり着くと──。
目の前にいる人物に、思わず動きが止まる。ミシェウの肩を叩いて、その方向を指さす。
「ちょっと、あれ」
「あれは、メンデスじゃない?」
一瞬目を疑ったけど、改めて確認してわかった。
黄緑色のロングヘア。
フリフリのついた白っぽいドレスを着ている小柄な女性。確かにメンデスだ。第三貴族コンラート家の、三姉妹の末っ子なんだっけ。
腕を組んで首を傾けながら考える。
「なんでメンデスがここにいるんですか?」
カイセドはもちろんいない。警備の兵士らしき人が数人ほど。おしゃれな服装をしていて、プライベートなんだろうけど、なんのかしら。
その言葉に、思わず肩をつかむ。
「待ってください」
「なんで? 面白そうじゃん。いいお店とかおしえてもらえるかもしれないよ」
「人に知られたくないことかもしれないじゃないですか」
「知られたくないことって?」
「それは……わかりませんけど、そうだ」
一つの考えが浮かぶ。ここで声をかけるのもいいかもしれないけど。ちょっと気になることを見つけた。ここに来た理由だ。どこかよそよそしく、知られるのを嫌がっているような感じがする。余計に気になる。
「ちょっと、どこに行くのか見てみませんか? ここに来る理由が知りたいです」
「偵察ごっこってこと? 楽しそう」
まあ、邪魔しないならいいや。とりあえず、裏通りへと道を進んでいくメンデスを追っていく。
裏通りを進んでいくうちに、人気がまばらなエリアへ。雰囲気も、さっきまでとは違うものになってくる。
古びた家屋。仮にも貴族である彼女が行くようなところとは思えない。彼女のお姫様のような服装と、兵士の格好が完全に浮いてしまっている。目立つ。
時間ももう日が暮れ始めて──明らかに女の子が行く場所ではない。絶対何かある。
そわそわしながら、周囲を見ている。まるで、自分がここにいることを知られたくないかのように。やっぱり気になる。
物陰に隠れながら、メンデスの後を追う。メンデスは狭い道を少し進んだ後、1件の建物の前で立ち止まった。
あの建物──なんだろうか。2階建ての、古びた家屋。特に珍しいものではないが、仮にも貴族である彼女がわざわざ来るのは不自然だ。
その通り、メンデスはよそよそと周囲を確認した後古びた家屋の中へと張っていった。さて、どうしようかしら。
考えていると、ミシェウが耳打ちしてくる。
「窓の外から、話を聞いてみましょ」
「そうね」
アトラントローパの時と同じだ。何か、有力な情報を得られるかもしれない。
リスクはあるけど、やる価値は十分にある。
それに、考えたくないけれどもしメンデスが何か取引をしていた場合、カイセドにも影響が出る可能性は十分にある。こんな、治安が良くなさそうな場所──王族としてメンデスのしていることを把握しておかなければ。
建物の間の狭い場所。木箱に隠れて外から身を隠す。
耳を澄まして──話を聞く。ちょっと窓から中をのぞくと、メンデスと数人の若い男の人が大きな机をはさんで何やら会話をしている。
「ありがと。たまにはさ、挑戦してみようよ。絶対に会うって」
にっこりした笑顔を近づけてきた。これを見せつけられると、逆らえる気がしない。観念して、コクリとうなづいた。そんなこと……真正面から言われると返す言葉に困る。
「わかりました。そこまで言うなら行ってみましょう」
そして、ミシェウがリクエストした甘い香りの香水を購入。試しに、1滴瓶から出して手首に塗ってみる。クンクン──ああ、甘くていい匂い。買ってよかった。
「これ、いいかも」
「いいんじゃない。似合うんじゃない」
ミシェウの言葉を聞くと、自信が持てる。
それから店を出て、色々なお店へ。
かわいいぬいぐるみがいっぱい置いてあるファンシーなお店。
食べてみる──うん、とっても甘くておいしい!!
ミシェウの舌にもあっていたようで、にっこりと笑みを浮かべながらもぐもぐと食べている。
「あ~~、ほっぺにクリームついてる!!」
「ちょっと、ほっぺをなめないでよ」
そう言ってほっぺにクリームが付いた部分をペロッと舐め始めたのだ。流石に、心臓が止まりそうになった。いきなり何するのよ!!
他にも、公園で寝っ転がって──街の人と話したり。けんかしている人をなだめて、色々と話を聞いたり。
色々と買い物ができた。最初は楽しめるかなと思っていたが、気が付けば2人で何がいいか話し合ったり、議論しあったりしてしまった。一緒に来て、本当に良かったと言える日になった。
一通り買い物を終え、カバンを持ちながら帰路に就こうとする。
「いい息抜きになりました。本当にありがとうございます」
「ううん。私の方こそ、一緒にお出かけが出来て本当に楽しかった。また、色々あって疲れちゃったときはこうして買い物とかしようね?」
「はい」
思わず表情が緩くなる。ここまで嬉しい経験は、なかなかない。また、こうして楽しい時間を過ごしていきたいな。
そんな感じで大通りはいる道にたどり着くと──。
目の前にいる人物に、思わず動きが止まる。ミシェウの肩を叩いて、その方向を指さす。
「ちょっと、あれ」
「あれは、メンデスじゃない?」
一瞬目を疑ったけど、改めて確認してわかった。
黄緑色のロングヘア。
フリフリのついた白っぽいドレスを着ている小柄な女性。確かにメンデスだ。第三貴族コンラート家の、三姉妹の末っ子なんだっけ。
腕を組んで首を傾けながら考える。
「なんでメンデスがここにいるんですか?」
カイセドはもちろんいない。警備の兵士らしき人が数人ほど。おしゃれな服装をしていて、プライベートなんだろうけど、なんのかしら。
その言葉に、思わず肩をつかむ。
「待ってください」
「なんで? 面白そうじゃん。いいお店とかおしえてもらえるかもしれないよ」
「人に知られたくないことかもしれないじゃないですか」
「知られたくないことって?」
「それは……わかりませんけど、そうだ」
一つの考えが浮かぶ。ここで声をかけるのもいいかもしれないけど。ちょっと気になることを見つけた。ここに来た理由だ。どこかよそよそしく、知られるのを嫌がっているような感じがする。余計に気になる。
「ちょっと、どこに行くのか見てみませんか? ここに来る理由が知りたいです」
「偵察ごっこってこと? 楽しそう」
まあ、邪魔しないならいいや。とりあえず、裏通りへと道を進んでいくメンデスを追っていく。
裏通りを進んでいくうちに、人気がまばらなエリアへ。雰囲気も、さっきまでとは違うものになってくる。
古びた家屋。仮にも貴族である彼女が行くようなところとは思えない。彼女のお姫様のような服装と、兵士の格好が完全に浮いてしまっている。目立つ。
時間ももう日が暮れ始めて──明らかに女の子が行く場所ではない。絶対何かある。
そわそわしながら、周囲を見ている。まるで、自分がここにいることを知られたくないかのように。やっぱり気になる。
物陰に隠れながら、メンデスの後を追う。メンデスは狭い道を少し進んだ後、1件の建物の前で立ち止まった。
あの建物──なんだろうか。2階建ての、古びた家屋。特に珍しいものではないが、仮にも貴族である彼女がわざわざ来るのは不自然だ。
その通り、メンデスはよそよそと周囲を確認した後古びた家屋の中へと張っていった。さて、どうしようかしら。
考えていると、ミシェウが耳打ちしてくる。
「窓の外から、話を聞いてみましょ」
「そうね」
アトラントローパの時と同じだ。何か、有力な情報を得られるかもしれない。
リスクはあるけど、やる価値は十分にある。
それに、考えたくないけれどもしメンデスが何か取引をしていた場合、カイセドにも影響が出る可能性は十分にある。こんな、治安が良くなさそうな場所──王族としてメンデスのしていることを把握しておかなければ。
建物の間の狭い場所。木箱に隠れて外から身を隠す。
耳を澄まして──話を聞く。ちょっと窓から中をのぞくと、メンデスと数人の若い男の人が大きな机をはさんで何やら会話をしている。
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