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2章

ロイガー

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 3人で帰った後、泥のように爆睡。激闘で極限まで疲弊していたみたいね。
 本当にぐっすり寝てしまった。

「ふぁ~~あ」

「おはよう、お昼になっちゃったわね」

「そうですね」

 起きたころにはすでにお昼。帰りの馬車の手配をしたが、最近国外への手配が多いらしく私たちの馬車が来るのは五日後のこと。

「まあ、せっかくここまで来たんだし散策してアトラントローパの街を見てみましょ。色々見てみれば、わかることかあるかもしれないし」

「そうね」

 疲れもあるし、ちょっと街を散策することになった。

「やっぱり、色々な人が来てるんだね」

「そうね」

 やはり、毛耳やうさ耳を付けた亜人が多い。

 お腹が空いたので、市場で買った羊の肉やチーズを食べる。モグモグ、やっぱり味の感覚が私達とは違うのかしら。慣れない味の食事が続くと、ローラシアの食事がさすがに恋しくなる。早く帰って牛肉や甘いものが食べたいなぁ。

 そして、大きな広場で串刺しの肉を食べながらマリーと話す。

「この辺り、色々な言葉の人がいるんですよね。それで言葉が違う人が多くて、争いになったり」

「ありますよね、コミュニケーションが取れなかったり、色々な文化があっていて亀裂を生んでいるとか」

 地続きの大陸国家であるが故、どうしても異なる文化の人が共存しなければならなくなってしまう。
 本当はもっと仲良くなって欲しいのだが、現実はそうもいかない。何とかすり合わせていきたい。

「王都の生活、不安とかある?」

「まあ、知り合いとかもいないので不安がないわけでは無いですね」

 マリーの表情が、ちょっとだけ暗くなった。マリーは自頭は悪くなさそうだから何とかなりそうだけど、頼れる人がいないというのは不安よね。

「まあ、何かあったら私たちに相談してねっ。色々と協力するから」

「ありがとうございます」

 そして、露店で買った羊肉の肉串を食べ終わり、ごみ箱に捨て次の場所に行こうとした瞬間、小物売りの店に立っている男を視界にとらえる。

 その姿に、思わず言葉を失った。

 まさか、こいつを見るなんて。

 黒と灰色を基調としたコート、コートの上からもわかる筋肉質な体系。サングラスをかけてるが、気配や放たれるオーラからすぐに分かった。

 ミシェウも、最後の戦いを経験していることからわかると思う。

「あれ、ロイガーじゃない? ミシェウ、見たことある?」

「ああ……そうだね。私も、最後の戦いで戦ったよ。ギリギリで勝ったけど」


 魔王軍の幹部の一人。私の元の世界では、最終決戦が近くなったあたりで目の前に現れた。そして、何度も利益によってこっちの人をたぶらかし、たくさんの造反者を作り上げた存在。

 人心掌握にたけたタイプだ。もちろん魔力や戦闘の強さもトップクラス。

 以前の世界では最終決戦の前に会った。最強クラスの冒険者を何人も犠牲にして、ようやく倒した人物。

「なんか、楽しそうに会話してるね」

「……はい」

 露店で売り物になっているいろいろな小物をいろいろ手に取ったり、店主の人と会話を楽しそうに話していたりしていた。


 それから、数個ほどバッジや何かの小道具を買ってこの場を去っていく。

「ちょっと、後を追ってみましょう」

「そうね、どうしてここにいるかもとても気になるし」

 2人合わせてコクリとうなづく。
 どうしてこんな場所にいるかはわからない。アトラントローパは地理的には様々な街道が行き交う地ではあるが、資源が眠っているわけではないし、政治的に重要な場所というわけでもない。


 査察か何かなのだろうか。
 とにかく、追うしかない。何かわかるかもしれない。

 カバンを肩に掛けながら繁華街の店に視線を送りながら歩いている。別のお店でも食料を買い込んだりしながらゆっくりと進んでいく。その時も気さくそうに会話を楽しんでいたり。

 これ、ただ遊びに来たとかじゃないよね? 思わず首をかしげてしまう。

 十字路を曲がった。あそこを曲がると、この前ヴァシリーと戦ったエリアにたどり着く。
 貧困層の住むエリア──これは、何かあるのだろうか。

 そう思って、私たちは十字路を曲がって裏通りへ。ロイガーはさらに裏通りを進んだ後、左へと道を進んでいく。マズイ、あまり道を曲がられると見失う可能性がる。自然と早足になり、2人で同じように同じ角で左に道を曲がった──その時だった。

「まさか、2人がこんなところになんてねぇ、シャマシュとミシェウ」



 曲がった瞬間に視界に入ったのは、ロイガーが腕を組んでこっちを見ている姿。

 しまった、バレてた。名前まで呼ばれて──予想外の行動に対応できなかった。言い逃れしようがなく、認めるしかない。

「当たり前でしょ、こっちも被害を受けているんだから」


「自国が被害を受けている以上、こっちにだって捜査する権利はあるはずです。
 別に、犯罪を犯しているわけではないですから──」

 ここで黙ったり、守りに入ったら負けだ。ここはそういう世界。弱気な表情を見せずに、ロイガーを見ながら言い返す。

「そ、そうですよ。あなたこそどうしてここにいるんですか?」

「そ、そうよ。問題はないはずよ」

「まあいいや。負け犬の後始末ってところかな? まあ、ちょうどいい機会だから一緒に来なよ」

 そして、ロイガーは手招きをしてから再び道を歩き始めた。
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