上 下
59 / 92
2章

アトラントローパ・到着

しおりを挟む
 バシィィン!!

 思いっきりミシェウの背中を叩いた。痛そうに背中を抑えるミシェウ。それを無視してマリーに話かける。

「ごめんね、見苦しいところを見せちゃって」

「構わないですよ、見ていて楽しいですし」

 苦笑いで答えるマリー。そうだ、マリーとも色々話してみようか。せっかくの機会だし。

「マリー、故郷の事とか聞いてみたいな。せっかく一緒になったんだから色々話そうよ」

「へぇ~~そんな速い馬があるんだ」

「ハンバーグって、この辺りで生まれた食べ物なんですね」

「そういうわけではないのですが、遊牧民族と親しかった故彼らからいろいろな文化を学んで、そのうちの一つがハンバーグです。それにジンギスカンなんかも教わりました」

「ああ、作戦じゃなくて食べ物ね」


 イヤな作戦を思い出してしまった。でも、珍しい話を聞けるというのはとても嬉しい。私も、地元の話を話してみる。まあ、王宮のことを話すわけにはいかないからスラム街や一般層でのお話になっちゃうけど。

「へぇ、色々な亜人が集まるんですか? 大変そうです」

「まあ、大変といえば大変ね」

 色々と、面白い話を聞けていい時間になった。私にとってもマリーにとっても有意義な時間だったと思う。色々と、王国にいたら聞けなかったことも色々と聞くことが出来た。この遊牧民や広大な土地に住んでいる人の価値観も。
 それから夜の風景は──それはもう美しいの一言。きれいな空気と、雲一つない空に満天の星空。

「素敵ですね。空気も澄み切っていて」

「神秘的です」

 大都市では見られない、静寂な雰囲気と合わさってとても素敵に思えた。
 忘れられない──とても有意義な時間かな。


 そして、数日ほど移動を繰り返すと、目的地アトラントローパにたどり着く。
 無人地帯と比べると人通りがそこそこ大きな街。

 草原地帯の真ん中にポツンとあるオアシスがもととなっているこの街は、緑の植物や地下水が湧いてくる池が所々に点在している。


 また、様々な交易路の要所として、商人が訪れる場所しても知られており。この地方の商品が行き交っていた。様々な民族衣装を着た商人らしき人が、取引をしようとしている姿をよく見かける。繁華街の露店では、物珍しい品物がいたるところに売っている。

 馬や羊を引き連れた遊牧民みたいな人が多い。

 そんな人が商人たちと交渉して、大きな買い物をしていたり。

 物珍しい風景を見ながら、色々なものを見物。やっぱり、珍しいものがいっぱいで目移りしちゃう。

「ヤギのミルクのチーズ、買ってみない?」

「このソーセージ、絶対美味しいから食べてみなよ」

 小腹が空いていたこともあり、ちょっと変わったソーセージを人数分買って買い食い。
 焦げ茶色で、香ばしいけど獣臭さが強い感じ。

「美味しい美味しい。ちょっとしょっぱいけど」

「わかります」

「まあ、遊牧民族が保存がきく食料として発明した食べ物ですから、どうしても腐らせないために塩分が多めになってしまうんですよ」

「そうなんだ。詳しいねマリー」

「ミシェウさんありがとうございます。この辺りの事情は、私もよく聞いているので」

「でもこれだけじゃ足りないかな。お腹空いたし、ご飯ご飯」


「飯より宿です」

「え~~」

 きっぱりという私に、不満そうにぷくっと顔を膨らませて言葉を返すミシェウ。まあ、私もお腹空いてきたから気持ちはわかるんだけど。
 お腹を抑えながら言うミシェウ。当然だ、こんな初めての場所でホテルが見つからず野宿なんてするわけにはいかない。

 出店の人に、ホテルがある場所はどこか聞き出してからそこまで歩く。幸いにも、数分ほど歩いたエリアにホテルが数件あるらしい。

 治安もそうだし、海や湖の無い内陸というのは温度を保持するものがないので寒暖の差が激しい。夜は水が凍り付く寒さな一方、昼は季節によっては体温よりも暑くなることだってある。正直、命に係わることだからだ。


 街を歩きながら、周囲に視線を移す。
 人があふれる賑やかな繁華街を抜けて、ホテルを探した。

 この辺りは土を利用したレンガでできた家屋が特徴。王都とは違う内陸部特有の光景に新鮮さを感じる。

 街の中心にある、そこそこ高いホテルを見つけた。どれだけ滞在するかわからないけど、とりあえず1週間にしておこう。

 代金を支払ってから、キーを受け取る。階段を登ってから2階へ。


 荷物を置いて、全員いっせいにベッドに身を投げた。馬車に揺れながらの長旅、想像以上につかれていたみたいで。横になった瞬間。今までの疲れがどっと襲ってきて瞼が重くなった。

 ミシェウもマリーも目をこすったりあくびを空いたり眠くなってしまったみたい。
 取引は2日後だし、疲れをとるためにも今日は寝よ。

 2人もすぐに寝てしまった。私もすぐに夢の中へ。

 思いっきり眠ってしまい、目をこすりながら外へ視線を向ける。気が付けば夜になっていた。
 市場で買った干し肉と砂糖が付いているパン、それからミルクを頂く。ちょっと変わった味だけど美味しいかな。でも、においや癖が強いわね。

「このミルク、すごい独特。匂いに癖があるけど、美味しい」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

モヒート・モスキート・モヒート

片喰 一歌
恋愛
「今度はどんな男の子供なんですか?」 「……どこにでもいる、冴えない男?」 (※本編より抜粋) 主人公・翠には気になるヒトがいた。行きつけのバーでたまに見かけるふくよかで妖艶な美女だ。 毎回別の男性と同伴している彼女だったが、その日はなぜか女性である翠に話しかけてきて……。 紅と名乗った彼女と親しくなり始めた頃、翠は『マダム・ルージュ』なる人物の噂を耳にする。 名前だけでなく、他にも共通点のある二人の関連とは? 途中まで恋と同時に謎が展開しますが、メインはあくまで恋愛です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

軍艦少女は死に至る夢を見る~戦時下の大日本帝国から始まる艦船擬人化物語~

takahiro
キャラ文芸
 『船魄』(せんぱく)とは、軍艦を自らの意のままに操る少女達である。船魄によって操られる艦艇、艦載機の能力は人間のそれを圧倒し、彼女達の前に人間は殲滅されるだけの存在なのだ。1944年10月に覚醒した最初の船魄、翔鶴型空母二番艦『瑞鶴』は、日本本土進攻を企てるアメリカ海軍と激闘を繰り広げ、ついに勝利を掴んだ。  しかし戦後、瑞鶴は帝国海軍を脱走し行方をくらませた。1955年、アメリカのキューバ侵攻に端を発する日米の軍事衝突の最中、瑞鶴は再び姿を現わし、帝国海軍と交戦状態に入った。瑞鶴の目的はともかくとして、船魄達を解放する戦いが始まったのである。瑞鶴が解放した重巡『妙高』『高雄』、いつの間にかいる空母『グラーフ・ツェッペリン』は『月虹』を名乗って、国家に属さない軍事力として活動を始める。だが、瑞鶴は大義やら何やらには興味がないので、利用できるものは何でも利用する。カリブ海の覇権を狙う日本・ドイツ・ソ連・アメリカの間をのらりくらりと行き交いながら、月虹は生存の道を探っていく。  登場する艦艇はなんと57隻!(2024/12/18時点)(人間のキャラは他に多数)(まだまだ増える)。人類に反旗を翻した軍艦達による、異色の艦船擬人化物語が、ここに始まる。  ――――――――――  ●本作のメインテーマは、あくまで(途中まで)史実の地球を舞台とし、そこに船魄(せんぱく)という異物を投入したらどうなるのか、です。いわゆる艦船擬人化ものですが、特に軍艦や歴史の知識がなくとも楽しめるようにしてあります。もちろん知識があった方が楽しめることは違いないですが。  ●なお軍人がたくさん出て来ますが、船魄同士の関係に踏み込むことはありません。つまり船魄達の人間関係としては百合しかありませんので、ご安心もしくはご承知おきを。かなりGLなので、もちろんがっつり性描写はないですが、苦手な方はダメかもしれません。  ●全ての船魄に挿絵ありですが、AI加筆なので雰囲気程度にお楽しみください。  ●少女たちの愛憎と謀略が絡まり合う、新感覚、リアル志向の艦船擬人化小説を是非お楽しみください。またお気に入りや感想などよろしくお願いします。  毎日一話投稿します。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

【完結】誰でも持っているはずの7つのスキルの内の1つ、運び屋スキルしか持っていなかったけど、最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
誰でも持っているはずの7つのスキルの内1つ【運び屋】スキルしか持っていなかったトリスが転移魔法スキルを覚え『運び屋トリス』となり、その後『青の錬金術師』として目覚め、最強の冒険者として語り継がれるようになる物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...