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雨、そして想定外
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あれから、2日ほどたった。
時折、ジャングルで奇襲を受ける。付近の冒険者が傷を負ってしまうがそれ以外は無難に道を進んでいく。
そしてさらに次の日になって、天気が変わった。山の方にかかっていた雲がこっちまでやってくる。
ドォォォォォォォォォォン!!
大きな音とともに雷が付近を直撃。
少し時間がたって、なんと雨が降ってきたのだ。パラパラだった雨はあっという間に本降りになっていく。
このままだと、ずぶ濡れになっちゃう。なんか雨をしのげるものはないか──周囲を探すと大きな葉っぱがついている植物を出現。私たちを包み込み、何とかずぶぬれになるのを防ぐ。
「川とか、大丈夫ですかね?」
「ちょっと心配ね」
ミシェウの言うとおりだ。おまけに、敵陣近づくごとに敵襲を受ける。これから先はもっとすごいだろう。
さっきまでとは比べ物にならないほど、敵の兵士たちと遭遇していくのがわかる。
とうとう、本格的に戦いが始まるんだなと思う。強くこぶしを握って、気を引き締めた──そう思た矢先に、また敵襲。
「準備、大丈夫ですか?」
「もちろん、任せてよ!」
私達と、付近にいた冒険者たちが力を合わせて戦う。
そこまで強くない敵との戦い。奇策に出てくるのではと警戒はしたものの、数分で決着はついた。
そして──遠目に前方に視線を向ける。敵が来るのがわかる。何十人もの今までにない数、一人ひとり戦っていたら時間がかかりそう。
「あのあたりに敵がいるのね」
「はい」
「大人数だったら、これが一番だと思う。手荒だけど、勘弁してね!」
ミシェウは自信満々にそう言って、黄色い石を2,3個繰り出す。
どんな術式なのかな? 興味がある。
「これは、何度かやったことがあるから慣れてるわ」
余裕そうにそう言いながら黄色い石たちを宙に向かって放り投げると、その方向に杖を向けて叫んだ。
「天候は──雷。私たちに力を──集いし光が、新たに輝く閃光となる。
サンダー・ヨシュア・メタイオン」
ドォォォォォォォォォォ──ン!!
大きな雷が出現し、目的の場所に落下。大爆発の轟音と「ぎゃああああああああああああああああ!!」という複数の悲鳴のような音が聞こえだす。
「大成功!!」
にっこりとしたスマイルのミシェウ。敵の本体に、大きな雷を当てられた。
さすがに全滅はしてないだろうけど、相当の動揺を与えられたはず。
「チャンスです、一気に突っ込みましょう」
周囲の冒険者たちに強く叫んで、一斉攻撃を行う。物陰からの奇襲に気を付けながら、敵兵たちを少しずつなぎ倒していく。
数分ほどで、敵たちは投降したり逃亡したりしていった。もう敵兵の気配はない。何とか敵の一掃には成功したようだ。
そして、一呼吸してから周囲に視線を向ける。甲冑を付けた牛や馬を連れた補給係の人に遭遇。しかしどうも様子がおかしい。
焦る兵士の人たち。牛や馬の口元に、そこら辺の草を当てるが家畜たちは嫌がっているかのように口をつぐんでそっぽを向いた。ちょっと話しかけようと思い、雨でぬれた額をぬぐってそばに近寄る。
「どうしたんですか?」
「そうしたも何も──ジャングルの草、まったく食わねぇぞ」
冒険者の一人が、ジャングルの草を食べさせようと口元に置くが馬はまるで嫌がっているかのようにそっぽを向いてしまった。
「まいったな……ジャングルに入ってからずっとこうだぞ」
「その通りです。家畜たちが何も食べられず、やせ細ってきてるんですよね」
困り果てた家畜たちを連れている人。確かに、牛や馬はみんなほほが痩せこけていたりして動きが鈍くなっている。明らかに元気がない。
「そういえば指揮官クラスの人が言ってたわね。家畜たちは草原とかで育ったからジャングルの植物は食べないかもしれないって」
「こっちはまだましです。上流だと、家畜たちが流されているようです」
「え──」
その言葉にミシェウも反応する。私も思わず肩が飛び上がった。それは本当に、死活問題死活問題だ。だって──
「食料とかどうするんですか? 確か、現地で殺してそれを食料にするんですよね?」
「この作戦、無理があったような……」
兵士の一人が言葉を漏らす。周囲の人たちもコクリコクリとうなづいた。私も同じように考えてたけど、やっぱりそうよね。
「戦場に飢餓が発生しますよ」
「実際こっちでも、食料に困っている人が出てきて困っているんです」
冒険者の話によると、一部の人が空腹に耐えかね木の実を食べてお腹を壊したりしているらしい。
「少しずつですが、規律が乱れてきているんです。何とかしないとさすがにまずいです」
「でも、他に方法なんかないし」
まずいわね……いっそのこと、早く敵の本拠地をせめてそこから食料を奪うとかしかないのかしらね。
どうしても奇襲になるし、相手だって必死に戦ってくるから死闘になるけど。
無理にでも、撤退──あとで絶対にもめるししたくはないけど、人命がかかっているから考えなきゃいけない。
悩むわ……相当数の犠牲が出るとわかっているのは私だけ。だからここで独断で撤退させるとどれだけ犠牲が出るかを知らないホーネルカーたちはわたしを攻めてくるだろう。
時折、ジャングルで奇襲を受ける。付近の冒険者が傷を負ってしまうがそれ以外は無難に道を進んでいく。
そしてさらに次の日になって、天気が変わった。山の方にかかっていた雲がこっちまでやってくる。
ドォォォォォォォォォォン!!
大きな音とともに雷が付近を直撃。
少し時間がたって、なんと雨が降ってきたのだ。パラパラだった雨はあっという間に本降りになっていく。
このままだと、ずぶ濡れになっちゃう。なんか雨をしのげるものはないか──周囲を探すと大きな葉っぱがついている植物を出現。私たちを包み込み、何とかずぶぬれになるのを防ぐ。
「川とか、大丈夫ですかね?」
「ちょっと心配ね」
ミシェウの言うとおりだ。おまけに、敵陣近づくごとに敵襲を受ける。これから先はもっとすごいだろう。
さっきまでとは比べ物にならないほど、敵の兵士たちと遭遇していくのがわかる。
とうとう、本格的に戦いが始まるんだなと思う。強くこぶしを握って、気を引き締めた──そう思た矢先に、また敵襲。
「準備、大丈夫ですか?」
「もちろん、任せてよ!」
私達と、付近にいた冒険者たちが力を合わせて戦う。
そこまで強くない敵との戦い。奇策に出てくるのではと警戒はしたものの、数分で決着はついた。
そして──遠目に前方に視線を向ける。敵が来るのがわかる。何十人もの今までにない数、一人ひとり戦っていたら時間がかかりそう。
「あのあたりに敵がいるのね」
「はい」
「大人数だったら、これが一番だと思う。手荒だけど、勘弁してね!」
ミシェウは自信満々にそう言って、黄色い石を2,3個繰り出す。
どんな術式なのかな? 興味がある。
「これは、何度かやったことがあるから慣れてるわ」
余裕そうにそう言いながら黄色い石たちを宙に向かって放り投げると、その方向に杖を向けて叫んだ。
「天候は──雷。私たちに力を──集いし光が、新たに輝く閃光となる。
サンダー・ヨシュア・メタイオン」
ドォォォォォォォォォォ──ン!!
大きな雷が出現し、目的の場所に落下。大爆発の轟音と「ぎゃああああああああああああああああ!!」という複数の悲鳴のような音が聞こえだす。
「大成功!!」
にっこりとしたスマイルのミシェウ。敵の本体に、大きな雷を当てられた。
さすがに全滅はしてないだろうけど、相当の動揺を与えられたはず。
「チャンスです、一気に突っ込みましょう」
周囲の冒険者たちに強く叫んで、一斉攻撃を行う。物陰からの奇襲に気を付けながら、敵兵たちを少しずつなぎ倒していく。
数分ほどで、敵たちは投降したり逃亡したりしていった。もう敵兵の気配はない。何とか敵の一掃には成功したようだ。
そして、一呼吸してから周囲に視線を向ける。甲冑を付けた牛や馬を連れた補給係の人に遭遇。しかしどうも様子がおかしい。
焦る兵士の人たち。牛や馬の口元に、そこら辺の草を当てるが家畜たちは嫌がっているかのように口をつぐんでそっぽを向いた。ちょっと話しかけようと思い、雨でぬれた額をぬぐってそばに近寄る。
「どうしたんですか?」
「そうしたも何も──ジャングルの草、まったく食わねぇぞ」
冒険者の一人が、ジャングルの草を食べさせようと口元に置くが馬はまるで嫌がっているかのようにそっぽを向いてしまった。
「まいったな……ジャングルに入ってからずっとこうだぞ」
「その通りです。家畜たちが何も食べられず、やせ細ってきてるんですよね」
困り果てた家畜たちを連れている人。確かに、牛や馬はみんなほほが痩せこけていたりして動きが鈍くなっている。明らかに元気がない。
「そういえば指揮官クラスの人が言ってたわね。家畜たちは草原とかで育ったからジャングルの植物は食べないかもしれないって」
「こっちはまだましです。上流だと、家畜たちが流されているようです」
「え──」
その言葉にミシェウも反応する。私も思わず肩が飛び上がった。それは本当に、死活問題死活問題だ。だって──
「食料とかどうするんですか? 確か、現地で殺してそれを食料にするんですよね?」
「この作戦、無理があったような……」
兵士の一人が言葉を漏らす。周囲の人たちもコクリコクリとうなづいた。私も同じように考えてたけど、やっぱりそうよね。
「戦場に飢餓が発生しますよ」
「実際こっちでも、食料に困っている人が出てきて困っているんです」
冒険者の話によると、一部の人が空腹に耐えかね木の実を食べてお腹を壊したりしているらしい。
「少しずつですが、規律が乱れてきているんです。何とかしないとさすがにまずいです」
「でも、他に方法なんかないし」
まずいわね……いっそのこと、早く敵の本拠地をせめてそこから食料を奪うとかしかないのかしらね。
どうしても奇襲になるし、相手だって必死に戦ってくるから死闘になるけど。
無理にでも、撤退──あとで絶対にもめるししたくはないけど、人命がかかっているから考えなきゃいけない。
悩むわ……相当数の犠牲が出るとわかっているのは私だけ。だからここで独断で撤退させるとどれだけ犠牲が出るかを知らないホーネルカーたちはわたしを攻めてくるだろう。
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