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オリエント編

覚悟は、出来ているわ

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 幸一はとあることを思いつく。

(彼女たちは、ちょっと話を聞いた方がいいか)

「ちょっと、夜風にあたってくる」

「うん。わかった」

 そういって幸一は部屋を出る。
 向かい側のサラ達の部屋にノック。

「誰かいる?」

「今は、私だけ……、です──」

 シスカの声。勝手に入ると、着替えだったりしてお色気シーンになってしまう恐れがあるため、入っていいか聞いてみる。

「シスカ、いいかな」

「入って、大丈夫──です……」

 安心する幸一。幸一がドアを開ける。

 シスカは顔を真っ赤にしてあわてて胸と大事な部分を押さえる。
 きゅっと引き締まったお尻、慎ましやかな胸は、彼女がまだ幼く、これからであることを示していた。

「シスカ、その……ごめん」
「見たいなら、その……どうぞ」

 何とシスカは両手を後ろに置いてしまう。彼女の美しい全てが、幸一の眼前で丸見えになってしまっている。

「ちょ、ちょっと隠して、見せなくていいから」

 幸一は目をそらし、あわあわと手を振る。

「す、す、すいません。幸一さん……、こういうの──好きだと思って。サービスの──つもりで」

「そんなサービス、しなくていいから!」

 話によると、近くの川で体を洗った後らしい。今はサラとメーリングが合わっているようだ。
 そしてシスカは着替えを終え、着替え。幸一と一緒に外へ出る。

 星空がよく見える、きれいな夜空。
 その下で、ちょこんと体育すわりしている幸一とシスカ。

「話って、何……ですか?」

 いつものかすれたような声でシスカが幸一に質問する。

「これから先、戦いはさらに過酷なものになる」

 その言葉にシスカの体がぴくっと反応。

「それこそ、周囲の人物が命の危険にさらされることだってあるかもしれない」


 考えていたのは、シスカと最初に出会った時のこと。

 彼女は、ひ弱で優しすぎた。それゆえに、狩りの動物すら殺せず、ルーデルから怒りを買ってしまった。
 その後、自分から強くなりたいと、ルーデルと共に行動を続けていた。

「たしかに、シスカが強くなろうとしているのはとても理解できる」

 しかし、いくら心で強い決意をしていても、本当にピンチになった時にその心を持ち続けられるか、それが心配だった。

 ハリボテのような、半端な覚悟では、いざ死線に立たされた時、両足が本性を出し逃げ出すことで頭の中が埋め尽くされることになるだろう。

 あるいは、恐怖で全身が染まり、身体が震えあがり、鉛の様に動かなくなってしまうこともあるだろう。

「けれど、半端な覚悟で入っていい場所じゃないんだ。命を失うことだって、覚悟しなければいけない場所、なんだ」

「覚悟──ですか」

「ああ、本当に大丈夫か?」

 幸一は真剣な表情でシスカを見つめる。シスカはその意味を理解する。そして拳を強く握り、彼を真剣な目で見つめる。

「大丈夫……です。私、最後までみんなと戦いたい──です」

 シスカもそうささやいて幸一をじっと見つめる。幸一はその見つめるとよさから理解した。彼女の言葉が、勢いだけでも、カラ元気でもない本物の覚悟だということを。

「わかったよ。最後の戦い、よろしくね。絶対、勝とう!」

 幸一の声掛けに、シスカはそっと首を縦に振る。彼女が向けたその表情、それは弱弱しくも覚悟を十分に向けたものだと、幸一には理解できた。

「ルーデルさんを……、見ていれば──、わかります。今から戦う敵が、とても強いこと。それに勝つには……、命がけで戦わなくてはいけないということも」

「そうだな。けど、絶対帰ってこよう。約束しよう!」

 そういって幸一はシスカの両手をぎゅっと握り、視線を彼女に向ける。シスカは幸一を見ながらその手をぎゅっと握り返した。震えが見えつつも、その意気込みを表わす様にぎゅっと強く──。

「じゃあ、よろしくね」

「……はい」

 二人が強い覚悟をかわしあったその時、背後から話しかける声がした。

「幸一さん、性懲りもなく女の子を口説いてるの? 浮気はいけないわ」

「メーリング!? ち、違うよ。話を聞いていただけだよ。そっちこそどうしたの?」

「体を洗った後、二人で夜空を眺めていたんです。星が綺麗な夜空だなって」

 メーリングとサラ、肩が当たりそうなくらいの至近距離で二人は幸一に話しかけてきた。
 幸一にとっては好都合だ。

「メーリング、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「何?」


「この戦いに参加して、後悔──とかしてないか?」

 すると彼女は風になびく黒髪をさらっと撫でながら言葉を返す。

「どうして、そんなことを聞こうと思ったの?」

「メーリングは、この戦いにそこまで因縁があるわけでなはい。この戦いは、この世界をかけた戦いでもある。当然戦う強敵だって今までとは比べ物にならないほど強敵で、命を落としてしまうことだってあり得る」

 メーリングは幸一やイレーナの様に、魔王軍とずっと戦ってきたわけではない。深い因縁もない。それなのに、こんな激戦に巻き込んでしまった。

「本当に巻き込ん大丈夫なのかなって」

 どこか自信がないうつむいた表情を見せる。
 するとメーリングはむっと顔を膨れさせる。そして──。

「余計なお世話よ!」

 デコピンをする。幸一ははっとした表情になり、メーリングに視線を向けた。

「大丈夫よ。覚悟は、できているわ。だからここにいるのよ! もう、今までの私とは違うのよ。──ちょっと、失礼だったわ!」

 メーリングの不満そうに膨れた顔。
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