194 / 221
オリエント編
覚悟は、出来ているわ
しおりを挟む
幸一はとあることを思いつく。
(彼女たちは、ちょっと話を聞いた方がいいか)
「ちょっと、夜風にあたってくる」
「うん。わかった」
そういって幸一は部屋を出る。
向かい側のサラ達の部屋にノック。
「誰かいる?」
「今は、私だけ……、です──」
シスカの声。勝手に入ると、着替えだったりしてお色気シーンになってしまう恐れがあるため、入っていいか聞いてみる。
「シスカ、いいかな」
「入って、大丈夫──です……」
安心する幸一。幸一がドアを開ける。
シスカは顔を真っ赤にしてあわてて胸と大事な部分を押さえる。
きゅっと引き締まったお尻、慎ましやかな胸は、彼女がまだ幼く、これからであることを示していた。
「シスカ、その……ごめん」
「見たいなら、その……どうぞ」
何とシスカは両手を後ろに置いてしまう。彼女の美しい全てが、幸一の眼前で丸見えになってしまっている。
「ちょ、ちょっと隠して、見せなくていいから」
幸一は目をそらし、あわあわと手を振る。
「す、す、すいません。幸一さん……、こういうの──好きだと思って。サービスの──つもりで」
「そんなサービス、しなくていいから!」
話によると、近くの川で体を洗った後らしい。今はサラとメーリングが合わっているようだ。
そしてシスカは着替えを終え、着替え。幸一と一緒に外へ出る。
星空がよく見える、きれいな夜空。
その下で、ちょこんと体育すわりしている幸一とシスカ。
「話って、何……ですか?」
いつものかすれたような声でシスカが幸一に質問する。
「これから先、戦いはさらに過酷なものになる」
その言葉にシスカの体がぴくっと反応。
「それこそ、周囲の人物が命の危険にさらされることだってあるかもしれない」
考えていたのは、シスカと最初に出会った時のこと。
彼女は、ひ弱で優しすぎた。それゆえに、狩りの動物すら殺せず、ルーデルから怒りを買ってしまった。
その後、自分から強くなりたいと、ルーデルと共に行動を続けていた。
「たしかに、シスカが強くなろうとしているのはとても理解できる」
しかし、いくら心で強い決意をしていても、本当にピンチになった時にその心を持ち続けられるか、それが心配だった。
ハリボテのような、半端な覚悟では、いざ死線に立たされた時、両足が本性を出し逃げ出すことで頭の中が埋め尽くされることになるだろう。
あるいは、恐怖で全身が染まり、身体が震えあがり、鉛の様に動かなくなってしまうこともあるだろう。
「けれど、半端な覚悟で入っていい場所じゃないんだ。命を失うことだって、覚悟しなければいけない場所、なんだ」
「覚悟──ですか」
「ああ、本当に大丈夫か?」
幸一は真剣な表情でシスカを見つめる。シスカはその意味を理解する。そして拳を強く握り、彼を真剣な目で見つめる。
「大丈夫……です。私、最後までみんなと戦いたい──です」
シスカもそうささやいて幸一をじっと見つめる。幸一はその見つめるとよさから理解した。彼女の言葉が、勢いだけでも、カラ元気でもない本物の覚悟だということを。
「わかったよ。最後の戦い、よろしくね。絶対、勝とう!」
幸一の声掛けに、シスカはそっと首を縦に振る。彼女が向けたその表情、それは弱弱しくも覚悟を十分に向けたものだと、幸一には理解できた。
「ルーデルさんを……、見ていれば──、わかります。今から戦う敵が、とても強いこと。それに勝つには……、命がけで戦わなくてはいけないということも」
「そうだな。けど、絶対帰ってこよう。約束しよう!」
そういって幸一はシスカの両手をぎゅっと握り、視線を彼女に向ける。シスカは幸一を見ながらその手をぎゅっと握り返した。震えが見えつつも、その意気込みを表わす様にぎゅっと強く──。
「じゃあ、よろしくね」
「……はい」
二人が強い覚悟をかわしあったその時、背後から話しかける声がした。
「幸一さん、性懲りもなく女の子を口説いてるの? 浮気はいけないわ」
「メーリング!? ち、違うよ。話を聞いていただけだよ。そっちこそどうしたの?」
「体を洗った後、二人で夜空を眺めていたんです。星が綺麗な夜空だなって」
メーリングとサラ、肩が当たりそうなくらいの至近距離で二人は幸一に話しかけてきた。
幸一にとっては好都合だ。
「メーリング、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「何?」
「この戦いに参加して、後悔──とかしてないか?」
すると彼女は風になびく黒髪をさらっと撫でながら言葉を返す。
「どうして、そんなことを聞こうと思ったの?」
「メーリングは、この戦いにそこまで因縁があるわけでなはい。この戦いは、この世界をかけた戦いでもある。当然戦う強敵だって今までとは比べ物にならないほど強敵で、命を落としてしまうことだってあり得る」
メーリングは幸一やイレーナの様に、魔王軍とずっと戦ってきたわけではない。深い因縁もない。それなのに、こんな激戦に巻き込んでしまった。
「本当に巻き込ん大丈夫なのかなって」
どこか自信がないうつむいた表情を見せる。
するとメーリングはむっと顔を膨れさせる。そして──。
「余計なお世話よ!」
デコピンをする。幸一ははっとした表情になり、メーリングに視線を向けた。
「大丈夫よ。覚悟は、できているわ。だからここにいるのよ! もう、今までの私とは違うのよ。──ちょっと、失礼だったわ!」
メーリングの不満そうに膨れた顔。
(彼女たちは、ちょっと話を聞いた方がいいか)
「ちょっと、夜風にあたってくる」
「うん。わかった」
そういって幸一は部屋を出る。
向かい側のサラ達の部屋にノック。
「誰かいる?」
「今は、私だけ……、です──」
シスカの声。勝手に入ると、着替えだったりしてお色気シーンになってしまう恐れがあるため、入っていいか聞いてみる。
「シスカ、いいかな」
「入って、大丈夫──です……」
安心する幸一。幸一がドアを開ける。
シスカは顔を真っ赤にしてあわてて胸と大事な部分を押さえる。
きゅっと引き締まったお尻、慎ましやかな胸は、彼女がまだ幼く、これからであることを示していた。
「シスカ、その……ごめん」
「見たいなら、その……どうぞ」
何とシスカは両手を後ろに置いてしまう。彼女の美しい全てが、幸一の眼前で丸見えになってしまっている。
「ちょ、ちょっと隠して、見せなくていいから」
幸一は目をそらし、あわあわと手を振る。
「す、す、すいません。幸一さん……、こういうの──好きだと思って。サービスの──つもりで」
「そんなサービス、しなくていいから!」
話によると、近くの川で体を洗った後らしい。今はサラとメーリングが合わっているようだ。
そしてシスカは着替えを終え、着替え。幸一と一緒に外へ出る。
星空がよく見える、きれいな夜空。
その下で、ちょこんと体育すわりしている幸一とシスカ。
「話って、何……ですか?」
いつものかすれたような声でシスカが幸一に質問する。
「これから先、戦いはさらに過酷なものになる」
その言葉にシスカの体がぴくっと反応。
「それこそ、周囲の人物が命の危険にさらされることだってあるかもしれない」
考えていたのは、シスカと最初に出会った時のこと。
彼女は、ひ弱で優しすぎた。それゆえに、狩りの動物すら殺せず、ルーデルから怒りを買ってしまった。
その後、自分から強くなりたいと、ルーデルと共に行動を続けていた。
「たしかに、シスカが強くなろうとしているのはとても理解できる」
しかし、いくら心で強い決意をしていても、本当にピンチになった時にその心を持ち続けられるか、それが心配だった。
ハリボテのような、半端な覚悟では、いざ死線に立たされた時、両足が本性を出し逃げ出すことで頭の中が埋め尽くされることになるだろう。
あるいは、恐怖で全身が染まり、身体が震えあがり、鉛の様に動かなくなってしまうこともあるだろう。
「けれど、半端な覚悟で入っていい場所じゃないんだ。命を失うことだって、覚悟しなければいけない場所、なんだ」
「覚悟──ですか」
「ああ、本当に大丈夫か?」
幸一は真剣な表情でシスカを見つめる。シスカはその意味を理解する。そして拳を強く握り、彼を真剣な目で見つめる。
「大丈夫……です。私、最後までみんなと戦いたい──です」
シスカもそうささやいて幸一をじっと見つめる。幸一はその見つめるとよさから理解した。彼女の言葉が、勢いだけでも、カラ元気でもない本物の覚悟だということを。
「わかったよ。最後の戦い、よろしくね。絶対、勝とう!」
幸一の声掛けに、シスカはそっと首を縦に振る。彼女が向けたその表情、それは弱弱しくも覚悟を十分に向けたものだと、幸一には理解できた。
「ルーデルさんを……、見ていれば──、わかります。今から戦う敵が、とても強いこと。それに勝つには……、命がけで戦わなくてはいけないということも」
「そうだな。けど、絶対帰ってこよう。約束しよう!」
そういって幸一はシスカの両手をぎゅっと握り、視線を彼女に向ける。シスカは幸一を見ながらその手をぎゅっと握り返した。震えが見えつつも、その意気込みを表わす様にぎゅっと強く──。
「じゃあ、よろしくね」
「……はい」
二人が強い覚悟をかわしあったその時、背後から話しかける声がした。
「幸一さん、性懲りもなく女の子を口説いてるの? 浮気はいけないわ」
「メーリング!? ち、違うよ。話を聞いていただけだよ。そっちこそどうしたの?」
「体を洗った後、二人で夜空を眺めていたんです。星が綺麗な夜空だなって」
メーリングとサラ、肩が当たりそうなくらいの至近距離で二人は幸一に話しかけてきた。
幸一にとっては好都合だ。
「メーリング、聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「何?」
「この戦いに参加して、後悔──とかしてないか?」
すると彼女は風になびく黒髪をさらっと撫でながら言葉を返す。
「どうして、そんなことを聞こうと思ったの?」
「メーリングは、この戦いにそこまで因縁があるわけでなはい。この戦いは、この世界をかけた戦いでもある。当然戦う強敵だって今までとは比べ物にならないほど強敵で、命を落としてしまうことだってあり得る」
メーリングは幸一やイレーナの様に、魔王軍とずっと戦ってきたわけではない。深い因縁もない。それなのに、こんな激戦に巻き込んでしまった。
「本当に巻き込ん大丈夫なのかなって」
どこか自信がないうつむいた表情を見せる。
するとメーリングはむっと顔を膨れさせる。そして──。
「余計なお世話よ!」
デコピンをする。幸一ははっとした表情になり、メーリングに視線を向けた。
「大丈夫よ。覚悟は、できているわ。だからここにいるのよ! もう、今までの私とは違うのよ。──ちょっと、失礼だったわ!」
メーリングの不満そうに膨れた顔。
0
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
王女に婚約破棄され実家の公爵家からは追放同然に辺境に追いやられたけれど、農業スキルで幸せに暮らしています。
克全
ファンタジー
ゆるふわの設定。戦術系スキルを得られなかったロディーは、王太女との婚約を破棄されただけでなく公爵家からも追放されてしまった。だが転生者であったロディーはいざという時に備えて着々と準備を整えていた。魔獣が何時現れてもおかしくない、とても危険な辺境に追いやられたロディーであったが、農民スキルをと前世の知識を使って無双していくのであった。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~
クロン
ファンタジー
転生したら貴族の長男だった。
ラッキーと思いきや、未開地の領地で貧乏生活。
下手すれば飢死するレベル……毎日食べることすら危ういほどだ。
幸いにも転生特典で地球の物を手に入れる力を得ているので、何とかするしかない!
「大変です! 魔物が大暴れしています! 兵士では歯が立ちません!」
「兵士の武器の質を向上させる!」
「まだ勝てません!」
「ならば兵士に薬物投与するしか」
「いけません! 他の案を!」
くっ、貴族には制約が多すぎる!
貴族の制約に縛られ悪戦苦闘しつつ、領地を開発していくのだ!
「薬物投与は貴族関係なく、人道的にどうかと思います」
「勝てば正義。死ななきゃ安い」
これは地球の物を駆使して、領内を発展させる物語である。
神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる