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アストラ帝国編

俺の勝手な理由、お前を助けたい

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 メーリングの瞳に光が戻る。

「まあ、そう言う事よ。だから私はあきらめて」

 体が震え、恐怖を感じているのが二人には理解できた。
 しかし──。

「つまり、こいつをぶっ壊したりして断ち切れば、メーリングはバルトロの支配をうけなくってすむということだな」

 そう言って幸一がカルトゥーシュに触れようとすると、そこから強い電撃が走る。まるでカルトゥーシュが彼が近づくのを拒絶するように──。

「無茶よ。バルトロだってそのくらい対策しているわ。強い結界が張ってあるの。いくらあなたでも無理よ!!」

「けどやってみる。あきらめるのはそれからでも遅くは無いはずだ」

 そう言って幸一はそのカルトゥーシュに近づこうとする。それを見たメーリングは顔色を変えて彼の右肩をぎゅっとつかむ。

「簡単に言わないで。強い魔力が結界のように張ってあるの。普通の人間じゃ、とても太刀打ちできないわ」

「それでも俺は立ち向かう」

「何で? 敵同士で出会って、縁なんか全くない。全くの赤の他人──、そんな私のために傷つくことないのよ」

 心配そうな声色のメーリング。しかし幸一はメーリングの制止を振り切る。

「だって、今のメーリングを見ていると、放っておけないから──。俺の勝手な理由、お前を助けたい。ただそれだけだ」

「わかったわ。けどこれじゃあ私に被害が及ぶ」

 メーリングはそう言ってカルトゥーシュの入った箱を机に置く。

 そしてカルトゥーシュと対峙する。見ているだけでカルトゥーシュに強大な魔力がとりついているのが分かる。

 しかし逃げるつもりなどない。幸一はカルトゥーシュに手をかざそうとする。そして──。

 ジュゥゥゥゥゥゥゥ──、バリバリバリバリィィィィィィィ──!!


 すさまじい、轟音。まるで幸一が触れるのを拒絶するかのように断末魔の音を上げる。

 抵抗するように魔力がカルトゥーシュから放出されたのだ。
 今までにないくらいの魔力。とても握ることなどできない。幸一はしばしの間強引に接近しようとしたがどうにもならず一回引いてしまう。流石の幸一もためらいの表情を見せるが、すぐに近づこうとする。

 しかし──。

 ドン!!

 体を吹き飛ばされ壁に激突。それでも何度も突撃しようとするが強い魔力に手も足も出ず、何度も壁に激突したり、吹き飛ばされてしまう。

「もういいわ、あなたが私を想ってくれているのは分かった。だからもうやめて!!」

「やだ、やめない!!」

 メーリングが思わず叫び彼の腕を握って静止させようとする。
 幸一は息も絶え絶え。額には汗が浮かび出している。

「もうやめて、無茶よ」

「確かにそうだな。でもやめない──」

 その言葉にメーリングは目をきょとんとさせ言葉を返す。

「イレーナにも言われた事はあるし、自分でもそうだと感じたことはある。けど、変えようなんて、みじんも思っていない──」

 そう叫ぶと幸一は再びカルトゥーシュに突っ込んでいく。はたから見れば無謀の一言。

「困っているメーリングの表情を見たら、あきらめたくないって心の底から、叫びたくなるんだ!!」

 そう叫び勢いをつけて幸一がカルトゥーシュに突撃していく。


 バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!



 激しい抵抗。カルトゥーシュ自体が彼を強く拒絶するように激しく火花を散らす。

 それでも幸一はそれにあらがうように一歩一歩近づいていく。
 抵抗はますます強くなる。幸一はそれでも屈しない。


 すると……。

「──えっ?!」


 あと数センチまで接近したその時、突然抵抗が今までの何十倍も強くなった。

 あまりに突然の衝撃に幸一の体は後方に吹き飛ぶ、壁を突き破り後方にある古びた建物に激突。サラに吹き飛んだ先にある柱に衝突。柱はバキッと折れ──。

 グシャッ──。ドドドォォォォォン!!

 古びた家屋は倒壊。ルチアとメーリングが唖然となる。

「幸一君!! 助けなきゃ!!」

「ったく、どうしようもないお人よしッス!!」


 ルチアとメーリングは慌てて家屋の瓦礫をとっぱらい幸一を助ける


「幸一さん、大丈夫ッスか?」

 彼の意識が無いまま、必死の救出作業でなんとか無事に助け出すことが出来た。




「うっ、う──」

 幸一がゆっくりと目を開ける。
 ベッドに寝ていたのだと気づく。周囲を見回す。

 豪華なシャンデリア。壁には神秘的なまだら模様が描かれている。

「お目覚めですか?」


 誰かが話しかける。慌てて右を向くと看護師の人がいた。

「何があったんですか? ここまで運んだのは誰ですか?」

「メーリング様です。彼女が意識がなくなったあなたをここまで連れてきて、休ませて欲しいと頼みこんできました」

(メーリング──、運んでくれたのか)

 彼女の優しさに気付く幸一。しかし肝心の彼女がどこにもいない。というよりここがどこ何のかすらよくわからない。

 試しに近くにいた看護師にこの場所を聞いてみると──。


「えっ? ここ宮殿なんですか!!」

 看護師によるとここは宮殿の中の休憩所らしい。

(しかしどうすればいい?)

 幸一が迷いながら何か手掛かりが無いか考える。そしてメーリングが何かメッセージを残していないかポケットをガサゴソと探っていると──。

「あった……」

 ポケットに一枚の紙があることを確認。そのメモを読んでみる。
 するとそこにはメーリングの部屋か載っていて、一言こう書いてあった。

「この部屋に来てください。話があります」
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