120 / 221
ウェレン編
最後の一撃
しおりを挟む
スッ──。
後方からの物音に幸一達の背筋が凍り始め恐る恐る背後を振り向き始める。
それはあり得ないはずの光景。
「ペドロ、貴様負けたはずでは??」
「恐らくは与えられた力でしょう。強すぎる憎しみと結び付きてしまい暴走してしまったのです」
国王の疑問にアーネルが淡々と答える。初語龍の力は持ち主の心を強く反応してしまっていると。
そして初語龍の力が、ペドロの肉体を乗っ取っているというのだ。
すでに彼女の意識は無い。与えられた力によってすべてを支配され、その力に燃料を供給するだけの部品にすぎない。
そしてその力が尽きればボロ雑巾のように使い捨てられるのだろう。
「ぐあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
強い雄たけびを上げ襲い掛かる。幸一は国王とイレーナの前に立ちはだかり攻撃を受ける。
鋭く空中を切り裂く攻撃を剣で縦に受ける。
カァァァァァァァァァァァン!!
「ぐぁっ、何だこれ──」
直後すさまじい衝撃が幸一の剣を叩きつけた。先ほどまでとは比べ物にならないほどの強い威力。
何とか踏みとどまったものの全身を強くたたきつけられるような感覚に身体が固まり足が止まる。
足をとめた幸一に追撃が襲う。幸一は残りの魔力を振り絞って何とか攻撃を受けきる。信じられない破壊力。
まともにくらったら勝負はすぐに突いてしまうだろう。
そんな恐ろし想像をしながら幸一は何とか必死に迫る斬撃を打ち払う。
しかし──。
「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
「幸君!!」
とうとう攻撃を受けきれずに直撃をしてしまう。吹き飛ぶ幸一の体。イレーナがそれを見て思わず叫ぶ。
何とか受け身を取り着地をしたものの彼の中に迷いが生まれた。
(強化されたこいつに、勝つことができるのか……?)
圧倒的な力、こっちはすでに戦いで疲弊。どう戦っていいか迷いが生まれる。
その時、幸一の前から大きな声が聞こえた。
「もうあんたたちに、惑わされなんかしないわ!!」
レイカであった。彼女はペドロが先ほど倒れた時から意識を取り戻していた。そして本当に今自分がなすべき事に気づきたちあがっていたのだ。
そして目をつぶり始め精神を集中し始める。そして──。
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。
「俺に、力が──?」
「私にも……」
魔力の大半を使い切っていた幸一とイレーナに再び魔力が灯っていくのを感じた。恐らくはレイカの力だろうと幸一が予想する。
「私は出来るのよ、長くは持ちそうにないけど、使って」
「わかった。お前の想い、無駄にはしない」
「私も、絶対勝つからね!!」
レイカは自分の魔力を他人に供給することができるのだった。その力を今使った。そして二人は少し打ち合わせをした後再びペドロに立ち向かっていく。
まずは幸一が先陣を切って相手をする。一気に間合いを詰め接近戦に入る。
互角の戦い、だが先ほどまでとは違う。
「力任せ、まるでイノシシだな──」
「黙れぇぇぇぇ!! 消えろォォォォォォォ!!」
確かに圧倒的な力を得る事が出来た。しかしその力に先ほどまでのような老獪さや経験深さは無くなっている。
まるでイノシシのように力を一直線に感情のままに振りまわすだけ、幸一はレイカによって与えられた力で反撃を行う。
(だったら、こうすればいい──)
一瞬イレーナの方向を向いてアイコンタクトを取る。
互角の接近戦からいったんバックステップで距離を置いた。そして──。
涅槃なる力、今世界を轟かせる光となり降臨せよ!!スピリッド・シェイブ・ハルバード
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
二人の全力の術式が衝突し爆発する。
互いに放った攻撃は消滅、相打ちとなる。
「ハハハ……、その程度か? ならば行かせてもらうぞ!!」
「ああ、だが勝負を決めるのは俺じゃない!!」
スッ──。
ペドロの背後から一人の少女。正気を失ったペドロはその正体に気づかない──。
イレーナはその想いを槍に込める──。
そしてイレーナの勝負を決める一撃。
時空を超える力、今敵をせん滅する力となり、その閃光貫け
ヘリオポーズ・イクシオン・ブラスター
ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!
イレーナが我を失ったペドロに最後の一撃を加える。
ペドロに肉体は10メートルほど吹き飛んだ後地面に叩きつけられ倒れこむ。ぐったりと倒れ込み動かない。
「勝負、今度こそついたね」
身体から魔力が消えていく。幸一が慌ててロープを取り出し拘束。
拘束が終わるとペドロがうっすらと瞳を開け始める。もっとも魔力は残っていないので戦うことは出来ないが。
虚ろな目をこちらに向けながら彼女が話しかける。
「ふざけるんじゃないよ。私は貴様らに復讐するんだ!!」
「ひと泡吹かせなきゃいけないんだ。あたしらに理不尽な目にあわせた王族どもに!!」
怒りの感情が彼女の胸の中を煮えたぎらせる。幸一を見ながら、憔悴しきった目で訴える。
自らの恵まれない過去を思い出しながら──。
「どういうことだ?」
「結局私らはまともに生きる道なんてなかった……」
後方からの物音に幸一達の背筋が凍り始め恐る恐る背後を振り向き始める。
それはあり得ないはずの光景。
「ペドロ、貴様負けたはずでは??」
「恐らくは与えられた力でしょう。強すぎる憎しみと結び付きてしまい暴走してしまったのです」
国王の疑問にアーネルが淡々と答える。初語龍の力は持ち主の心を強く反応してしまっていると。
そして初語龍の力が、ペドロの肉体を乗っ取っているというのだ。
すでに彼女の意識は無い。与えられた力によってすべてを支配され、その力に燃料を供給するだけの部品にすぎない。
そしてその力が尽きればボロ雑巾のように使い捨てられるのだろう。
「ぐあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
強い雄たけびを上げ襲い掛かる。幸一は国王とイレーナの前に立ちはだかり攻撃を受ける。
鋭く空中を切り裂く攻撃を剣で縦に受ける。
カァァァァァァァァァァァン!!
「ぐぁっ、何だこれ──」
直後すさまじい衝撃が幸一の剣を叩きつけた。先ほどまでとは比べ物にならないほどの強い威力。
何とか踏みとどまったものの全身を強くたたきつけられるような感覚に身体が固まり足が止まる。
足をとめた幸一に追撃が襲う。幸一は残りの魔力を振り絞って何とか攻撃を受けきる。信じられない破壊力。
まともにくらったら勝負はすぐに突いてしまうだろう。
そんな恐ろし想像をしながら幸一は何とか必死に迫る斬撃を打ち払う。
しかし──。
「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
「幸君!!」
とうとう攻撃を受けきれずに直撃をしてしまう。吹き飛ぶ幸一の体。イレーナがそれを見て思わず叫ぶ。
何とか受け身を取り着地をしたものの彼の中に迷いが生まれた。
(強化されたこいつに、勝つことができるのか……?)
圧倒的な力、こっちはすでに戦いで疲弊。どう戦っていいか迷いが生まれる。
その時、幸一の前から大きな声が聞こえた。
「もうあんたたちに、惑わされなんかしないわ!!」
レイカであった。彼女はペドロが先ほど倒れた時から意識を取り戻していた。そして本当に今自分がなすべき事に気づきたちあがっていたのだ。
そして目をつぶり始め精神を集中し始める。そして──。
シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ──。
「俺に、力が──?」
「私にも……」
魔力の大半を使い切っていた幸一とイレーナに再び魔力が灯っていくのを感じた。恐らくはレイカの力だろうと幸一が予想する。
「私は出来るのよ、長くは持ちそうにないけど、使って」
「わかった。お前の想い、無駄にはしない」
「私も、絶対勝つからね!!」
レイカは自分の魔力を他人に供給することができるのだった。その力を今使った。そして二人は少し打ち合わせをした後再びペドロに立ち向かっていく。
まずは幸一が先陣を切って相手をする。一気に間合いを詰め接近戦に入る。
互角の戦い、だが先ほどまでとは違う。
「力任せ、まるでイノシシだな──」
「黙れぇぇぇぇ!! 消えろォォォォォォォ!!」
確かに圧倒的な力を得る事が出来た。しかしその力に先ほどまでのような老獪さや経験深さは無くなっている。
まるでイノシシのように力を一直線に感情のままに振りまわすだけ、幸一はレイカによって与えられた力で反撃を行う。
(だったら、こうすればいい──)
一瞬イレーナの方向を向いてアイコンタクトを取る。
互角の接近戦からいったんバックステップで距離を置いた。そして──。
涅槃なる力、今世界を轟かせる光となり降臨せよ!!スピリッド・シェイブ・ハルバード
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
二人の全力の術式が衝突し爆発する。
互いに放った攻撃は消滅、相打ちとなる。
「ハハハ……、その程度か? ならば行かせてもらうぞ!!」
「ああ、だが勝負を決めるのは俺じゃない!!」
スッ──。
ペドロの背後から一人の少女。正気を失ったペドロはその正体に気づかない──。
イレーナはその想いを槍に込める──。
そしてイレーナの勝負を決める一撃。
時空を超える力、今敵をせん滅する力となり、その閃光貫け
ヘリオポーズ・イクシオン・ブラスター
ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!
イレーナが我を失ったペドロに最後の一撃を加える。
ペドロに肉体は10メートルほど吹き飛んだ後地面に叩きつけられ倒れこむ。ぐったりと倒れ込み動かない。
「勝負、今度こそついたね」
身体から魔力が消えていく。幸一が慌ててロープを取り出し拘束。
拘束が終わるとペドロがうっすらと瞳を開け始める。もっとも魔力は残っていないので戦うことは出来ないが。
虚ろな目をこちらに向けながら彼女が話しかける。
「ふざけるんじゃないよ。私は貴様らに復讐するんだ!!」
「ひと泡吹かせなきゃいけないんだ。あたしらに理不尽な目にあわせた王族どもに!!」
怒りの感情が彼女の胸の中を煮えたぎらせる。幸一を見ながら、憔悴しきった目で訴える。
自らの恵まれない過去を思い出しながら──。
「どういうことだ?」
「結局私らはまともに生きる道なんてなかった……」
0
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
王女に婚約破棄され実家の公爵家からは追放同然に辺境に追いやられたけれど、農業スキルで幸せに暮らしています。
克全
ファンタジー
ゆるふわの設定。戦術系スキルを得られなかったロディーは、王太女との婚約を破棄されただけでなく公爵家からも追放されてしまった。だが転生者であったロディーはいざという時に備えて着々と準備を整えていた。魔獣が何時現れてもおかしくない、とても危険な辺境に追いやられたロディーであったが、農民スキルをと前世の知識を使って無双していくのであった。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~
クロン
ファンタジー
転生したら貴族の長男だった。
ラッキーと思いきや、未開地の領地で貧乏生活。
下手すれば飢死するレベル……毎日食べることすら危ういほどだ。
幸いにも転生特典で地球の物を手に入れる力を得ているので、何とかするしかない!
「大変です! 魔物が大暴れしています! 兵士では歯が立ちません!」
「兵士の武器の質を向上させる!」
「まだ勝てません!」
「ならば兵士に薬物投与するしか」
「いけません! 他の案を!」
くっ、貴族には制約が多すぎる!
貴族の制約に縛られ悪戦苦闘しつつ、領地を開発していくのだ!
「薬物投与は貴族関係なく、人道的にどうかと思います」
「勝てば正義。死ななきゃ安い」
これは地球の物を駆使して、領内を発展させる物語である。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる