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ウェレン編

レイカとイレーナ

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 机に人数分のケーキとコーヒーを準備。
 そのケーキとコーヒーの光景にイレーナは目をキラキラさせる。

「コーヒーとケーキ美味しそう~~」

 そして全員でそのケーキとコーヒーを口にし始める。
 ケーキは王都で食べる時と違って生地にクリームを乗せただけのどこか質素な作りではあったがそれでも久々の甘い食べ物が幸一達にはおいしく感じた。

 特にイレーナにとっては──。

「甘くておいし~~」

 イレーナは満面の笑みでケーキをむしゃむしゃと食べる。
 そして出来上がったばかりのコーヒーに角砂糖を5~6個ほど入れて口にし始める。


 笑顔でご満悦のイレーナ。それを見たライリーはフッと不敵な笑み浮かべる。

「私コーヒーはブラックって決めてるの。イレーナみたいな甘いコーヒーしか飲めないお子ちゃまとは違うの!! まあ、今そうするとイレーナちゃんが子供みたいでかわいそうだから私もそれに合わせて砂糖を入れて飲んであげるね」

 これ見よがしに自慢するレイカ。そして砂糖に手を伸ばした瞬間。

「ふ~~ん、じゃあ飲んでみなさいよ、」

 青葉がジト~~っとした目つきで話しかける。勘づいていた。レイカが強がって言っている事を──。

「わ、わかったわ……。飲めばいいんでしょ」


 そしてレイカは恐る恐るコーヒーを口に付け飲んでいく。



 ゴク……、ゴク……。



 明らかに顔が引きつっている。見かねた青葉が角砂糖の入った容器をレイカの手元に置く。

「強がらなくていいのよ、使ってないスプーンあるから砂糖とミルク入れれば?」

 青葉の忠告を無視してレイカはちょびっとずつコーヒーを飲んでいく。

「だ、だ、だ、大丈夫よ、私大人だも~~ん。ブラックコーヒーくらい簡単にのめるわ。ちょ、ちょ、ちょっとむせただけけよーー」


(いるわよね、あれが飲める~~とかこれが食べれるから大人~~とかそういうくだらないことでマウント取ろうとする人)

 レイカは マウントを取りたかっただけなのであった。
 レイカの苦しそうな表情でブラックコーヒーを飲んでいく様子にあきれ果てる青葉、レイカが一回コーヒーカップを置いた瞬間サラが見かねて微笑しながらミルクと砂糖をレイカのコーヒーに入れる。

「強がってないで砂糖とミルク、入れなよ。せっかくの飲み物がもったいないよ」

 一瞬安堵の表情を浮かべるレイカ、そして──。

「しょ、しょ、しょうがないわね~~。私もあんたたちに合わせてあげるわ、あ~~甘い甘い」


 おいしそうにコーヒーを飲んでいく、そして今度はイレーナに話しかける。

「そういえばイレーナちゃん? 幸一君との関係はどこまで行ったの? キスぐらいはしたのかな?」

 レイカは余裕ぶった表情をしながら残りのコーヒーを優雅に飲み始める。

 すると今度は青葉が自信満々に言葉を返す。

「イレーナちゃんはね、もう幸君とは手をつないで同じ布団で一夜を過ごす仲なのよ」

「ふーん、一緒に乗るって……えええええええっっっ!!!  ゴホッゴホッゴホッ!!」

 あまりのショックにレイカは飲んでいたコーヒーを吐きだし、むせかえりゴホゴホゴホと咳をする。

(このませガキにはちょうどいい刺激ね──)

 彼女の事を知っている青葉はにやりと笑う。

 レイカは何とか落ち着きを取り戻しイレーナに詰め寄る。

「な、何があったの? 恋愛経験なんてないうぶでゴリラのイレーナちゃんが──、なんで???」

「ゴリラはやめて!! 私そんなんじゃない!!」

「二人とも落ち着いて!! これには理由があってね──」

 ムキになってイレーナが反応する、するとサラが慌てて割って入り事情を説明し出す。
 幸一とイレーナが一緒に寝ている理由を──。

「ふーん、な、な、なるほどね──。ま、まあイレーナちゃんがそんなすぐに大人の階段を登るわけないもんね~~」



 するとレイカはぎゅっと幸一の右腕をつかみにこっと笑いながら話しかける。

「ねえ勇者さん、私と付き合わない? 私イレーナちゃんより若いよ~~。それに料理も得意だし、私こう見えて尽くすタイプだし、どう??」

 左からイレーナが睨みつけてくる。ギッとしたその眼から伝わってくる溢れんばかりの殺気。


(イ、イレーナの視線が怖い──)


「ご、ご、ごめん。今は勇者としての職務が忙しくてそういうことはできそうにないんだ」

「まあそういうことにしておくわ。私は大人の階段を覚悟だってあるわ、あなたとね」

 妖艶な笑みを浮かべながらの一言。そしてレイカの表情が真剣なものに変わる。


「しかしこんな時期に魔王軍の襲撃なんて、狙っているとしか思えないわ」

「どういうこと?」

 魔王軍の話題に話は変わり雰囲気が一気に張りつめる。幸一の質問にイレーナが答える。

「もうすぐ冬至の礼拝の日なの。この街の宗教の天使たちをあがめる大きな」

「おまけにあさってには政治家たちが集まるパーティー、一週間後にはその冬至の礼拝の日よ」

 つまりこの時期ノーム共和国はイベントが目白押しと言うわけである。

「冬至の礼拝?」

 イレーナがその事について説明を始める。
「この街の宗教は天使をあがめていて、さまざまな聖地がこの街の近郊にあるの。毎年当時の日に巡礼祭りの日があって教会の地位の高い人が聖地を訪れ平和のためと祈りをささげるの」

「そんな時に襲撃、なんか運命を感じるな──」
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