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ウェレン編

キャンプが、飛んだ?

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 木枯らしの風が吹き街の樹木は紅葉に色変わりし季節の変わり目を感じさせる。
 肌寒さを感じ始め、人々の衣替えが始まる。

「イレーナ様、幸一様、準備ができました」


 シェルパと呼ばれた北国への案内人の人が話しかける。この地では見かけない防寒具の格好をした5人ほどの集団。今回は彼らと共に目的地までの旅路を進んでいく。
 北の方の空を見上げながらイレーナが思わず囁く。

「お父さん、お母さん、また会えるね」

 何を隠そう次の襲撃の場所はイレーナの生まれ育った故郷であるこの国の中で最北のノーム共和国、そこの王都「ウェレン」であった。

「イレーナちゃん、やっぱりうれしいですか? 両親と会えるのは──」

 サラがイレーナのどこかわくわくした表情を察し声をかける。
 久しぶりの両親との再会にドキドキと胸が高鳴り始める。

「うん、嬉しいと言えば嬉しい……、かな」

 微笑を浮かべつつもどこか複雑な表情をするイレーナ。その様子を見てサラが疑問に思い首をかしげる。何か両親に複雑な想いでもあるのだろうか──、そんなことを考えていると。

「準備ができました。こちらです」

 シェルパの人たちの準備が終わったとの報告が伝えられ、その場所に移動し始める。
 そこは街の広場であった。

「なにあれ? 知ってる?」

「いや、俺は見たことないぞあんな物」

 珍しいものらしく見物客も多々訪れていた。そして見物客たちは見なれない物体にざわめきだす。
 そしてシェルパの人たちがこの乗り物でノーム共和国へ向かっていくと説明する。


 幸一達が人混みをかき分けた先にあった物、そこにあったのは3基ほどのキャンプであった。


 そしてシェルパの年配のリーダーと思しき人物が説明を始める。



「このキャンプで空を飛んでいくんだよ」



 その言葉に幸一達は驚き言葉を失う。




「まさか、冗談はやめてよ。キャンプが飛ぶわけ無いじゃない~~」

「そ、そうですよね。あり得ませんよね……」

 青葉とサラが笑いながら突っ込みを入れる。そんな様子を見ながらシェルパたちはキャンプに 彼らの説明によるとこのキャンプは先祖代々


 そしてキャンプに魔力がともり始める。少しずつではあるがキャンプが宙に浮き始める。
 見ていた者はみな驚愕し始める。








 シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ。










「飛んだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」




 そしてキャンプが50センチほど持ちあがるとシェルパたちがキャンプに乗るように指示をする。

 幸一達は慌ててキャンプに持ってきた荷物をキャンプの中に入れる。そして荷物を入れ終わると4人とも同じキャンプの中に入る。
 そしてキャンプが一気に空高く高度を上げ上昇。100メートルほどまで上がるとそのまま北の方角へ針路を進めていった。

 幸一達は空高くからのこの世界の景色をとても新鮮に感じ最初はキャンプの窓からまじまじと眺める。


「何か飛行機の眺めみたいで新鮮だね、幸君?」

「青葉──、うん、そうだね」

 途中旅人がこのキャンプを見ると指を差して驚いた顔をする。シェルパの人が説明する。普段はもっと北の地方で活動を行っていて王都に来るのはかなり久しぶりなのだと。だから珍しい光景にみんなが空を飛ぶキャンプに視線をくぎ付けにしていた。

 途中4人は景色を楽しんだりシェルパの人達がもてなす物珍しい料理を楽しみながらキャンプの中で日々を過ごす。












 そして王都を出発して二日ほど立ち始める。

「吐く息が白いわ」

 青葉の言葉通り吐く息が白く始める。ノーム共和国は国内屈指の雪国でここから先この時期はかなり冷え込むとサラが説明する。

 そして寒さのためみんな一斉に防寒具に着替え始めた。
 暖かく軽い毛皮の服。冷え切った手をじっと見て青葉がニヤリと笑いあることを思いつく。



「幸く~~ん」

「ん?」

 ぴと~~~~ん。

 青葉が冷たくなった手を幸一のほっぺにくっつける。幸一はその冷たさに思わず叫ぶ。

「うおおおおおおおおお」

「へへ~~ん、いたずらいたずら」

 二人がじゃれ合っているのを見てイレーナが顔を膨れさせて抗議する。

「あ~~~~青葉ちゃんずるい。私もやる!!」

 そう叫ぶとイレーナも青葉と同じように幸一のほっぺを触る。幸一はその行為に思わず顔を真っ赤になってしまう。

「えへ~~ん、幸君のほっぺあったか~~い」

 負けじと青葉も幸一のほっぺを触りもみくちゃにされる幸一。それをうらやましそうな目で見るサラ。楽しみ合いふざけ合い仲の良い4人。
 こうして楽しみながら空の旅路を進んでいった。








 次の日。

 進路を北に取り続けて流石に感じ始める。

「さ、寒いです」

「ちょっと冷えてきたわね」

 青葉とサラの言葉通り、空気の冷たさに思わず身震いする。防寒具を着てもやはり寒い。今は雪こそ振ってはいなかったが下の景色が少しずつ雪景色に変わっていく。

 広大に広がる針葉樹の森。今の位置よりはるかに高い山脈の数々。見たこともない珍しい動物達。
 絶景ともいえる光景に幸一達は見とれていた。こんな旅もいいものだと誰もが思い始める。




 二日ほどすると進行方向に今までに見た街より一回り大きな都市が視界に入ってくる。最北の共和国、ノーム共和国、そこの王都「ウェレン」であった。
 街の入り口の門の上空まで到着する。

「目的地に到着しました、これより地上に降ります」

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