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サヴィンビ編

協力

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「わかりました、ではいいアイデアがあります。ちょっといいですか──」

 そう囁き幸一は兵士に急接近、そして──。






 ドゴォ!!!!







「グハァ!!!!」



 思いっきり腹パンを兵士にかます。

 その場にうなだれる兵士。そして気絶し倒れこむ。
 サラとイレーナは何も言えず。青葉も同情するそぶりを見せつつもやれやれと言った感じでただ一言囁く。


「ちょっとかわいそうだけど、普通に通せば何もされなかったのにね──」



「ちょっと手あらだったけど、仕方ないな……」


 倒れこんでいる兵士を横目に幸一達は城の中へ入っていく。

 階段を上がり2階へ幸一達は向かう。そして建物の奥、大きな両開きのドアをノックする。

「青葉です、開けますよ」

「入って、どうぞ」

 扉の奥から声がすると青葉がドアを開け部屋に入っていく。
 続いてイレーナ、サラ、幸一も部屋に入る。

「始めまして、幸一さん」

 緑の軍服を着ていて長身で筋肉質のゴブリンの男性がそこにいた。そして挨拶をして握手を求めようと手を幸一に差し伸べる。

「よろしくお願いします。八田幸一と申します」

 幸一はそれに笑みを浮かべて握手をする。
 彼らはすぐにそばにあるソファーに座りこみ話を行う。

「アルマンドさん、お久しぶりです。こんにちは」

 青葉がまずは笑顔で挨拶をする。
 幸一はこういった政治のロビー活動は初めてなので少しドキドキしていた。そして頭の中で彼と話す内容を整理する。

(確か青葉が言っていた元帥の息子か──)

 幸一からはそんなに悪い人には見えない様子だった。そしてさっそくオホンと咳をして話しの本題に入り出す。

「まずは今度の魔獣の襲撃についての件です。冒険者の私からお願いがあります」

 若干表情が険しくなる、その変化を幸一は見逃さなかった。恐らく彼も察したのだろう、これから幸一が話す内容を。

 そして幸一は自らの要求について話し始める。魔獣の襲撃に備えて他国から冒険者の応援がやってくるので彼女たちが不当な逮捕されないように援護したり、妨害工作をしないようにすることを軍の内部に伝えて統制する事が主な要求であった。
 特にここの軍部は人間達を敵視するゴブリンが多いので妨害が予想されるのでそれを無視してしっかりと冒険者達が魔王軍と戦えるようにしてほしい、それが人間だけでなくゴブリン達のためにもつながるのだと幸一は伝える。



 すると若干アルマンドの表情が険しくなる。

「それは難しいな、兵士たちは私より父上に敬意を表している者が多い。私も父上に交渉はしてみるが100%希望が実現するかと言ったら厳しいと言わざるをえない。私だってゴブリン達が傷つく姿は見たくない。やれるだけの事はするが私は何でもできる身分ではない。そこをわかってくれ」

 両手を腰に当てながらため息交じりに青葉が囁く。

「やっぱり父上の威光が強すぎるのよね。それで何をやっても父上にみんながついていっちゃうってことよね」

 腐敗しきっていた貴族達を追放した栄光。その事実に他のゴブリンの兵士たちはついていってしまっている。その後にどんな混迷がこの国に襲い掛かっていても。

「そうですね……、やはり大きい組織だと一人が正しい行いをしてもまとめきれなくなってしまいますよね」

 サラも思わず声を漏らす。

「ま、最善は尽くしてほしいわね。私も満足のいく答えが返ってくるとは考えてなかったから想定の範囲内ではあるわ」

「はい、この国の平和を守るのが私たちの使命です。何とか一人でも多くの兵士にこの事を伝えてみます」


「良かったです、あなたが良心のあるまともな人で──」



「わかった、とりあえず私も父上たちに働きかけるよ、少なくとも襲撃中は俺達は行動を起こさないようにね──」

 完全にとはいえなかったが、軍も幸一達を応援してくれることを約束してくれた。また、幸一は彼に一つだけお願いをする。

「えっ? そ、そんなことするんですか? しかし……」

 その内容に戸惑い驚きの表情を見せるアルマンド。

「ぜひ参加させてください。それも何の告知もせずにサプライズ的に!!」

「私も参加させて欲しい。困っている人達のためになりたいもん!!」

「大丈夫です、そこまで時間はとらせませんから」

「そうよ!! これは私たちがちゃんと訴えなければいけない問題だわ。だから私も行く!!」

 幸一だけでなくイレーナ達も加わる。アルマントはその声に押しきれず彼らの意見を認めるしかなかった。幸一が何かあったら自分たちが脅した、アルマントには何の罪のないと説明する条件付きだが──。

 そして他にも内政や魔王軍のことなどを1時間ほど話してこの場を後にする幸一達。別れ際、まずは幸一がアルマントと握手をしながら挨拶をする。

「こんな無謀な提案、乗ってくれてありがとうございます。この街はみんなで協力して絶対に守ります。あなたの協力、絶対に無駄にはさせません」

「こちらこそありがとうございます。こんな崩壊した街を見捨てずに手を差し伸べてくださって感謝の限りです」

「アルマントさん、困ったらいつでも私たちを頼ってね」

「了解だ青葉、また会えるといいな」

 アルマントはうつむきながらどこかほっとしたような様子であった。
 彼は協力して魔王軍と戦うことに抵抗がなく幸一達に好意的であった。問題は彼の父親なのだが──。

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