81 / 221
サヴィンビ編
協力
しおりを挟む
「わかりました、ではいいアイデアがあります。ちょっといいですか──」
そう囁き幸一は兵士に急接近、そして──。
ドゴォ!!!!
「グハァ!!!!」
思いっきり腹パンを兵士にかます。
その場にうなだれる兵士。そして気絶し倒れこむ。
サラとイレーナは何も言えず。青葉も同情するそぶりを見せつつもやれやれと言った感じでただ一言囁く。
「ちょっとかわいそうだけど、普通に通せば何もされなかったのにね──」
「ちょっと手あらだったけど、仕方ないな……」
倒れこんでいる兵士を横目に幸一達は城の中へ入っていく。
階段を上がり2階へ幸一達は向かう。そして建物の奥、大きな両開きのドアをノックする。
「青葉です、開けますよ」
「入って、どうぞ」
扉の奥から声がすると青葉がドアを開け部屋に入っていく。
続いてイレーナ、サラ、幸一も部屋に入る。
「始めまして、幸一さん」
緑の軍服を着ていて長身で筋肉質のゴブリンの男性がそこにいた。そして挨拶をして握手を求めようと手を幸一に差し伸べる。
「よろしくお願いします。八田幸一と申します」
幸一はそれに笑みを浮かべて握手をする。
彼らはすぐにそばにあるソファーに座りこみ話を行う。
「アルマンドさん、お久しぶりです。こんにちは」
青葉がまずは笑顔で挨拶をする。
幸一はこういった政治のロビー活動は初めてなので少しドキドキしていた。そして頭の中で彼と話す内容を整理する。
(確か青葉が言っていた元帥の息子か──)
幸一からはそんなに悪い人には見えない様子だった。そしてさっそくオホンと咳をして話しの本題に入り出す。
「まずは今度の魔獣の襲撃についての件です。冒険者の私からお願いがあります」
若干表情が険しくなる、その変化を幸一は見逃さなかった。恐らく彼も察したのだろう、これから幸一が話す内容を。
そして幸一は自らの要求について話し始める。魔獣の襲撃に備えて他国から冒険者の応援がやってくるので彼女たちが不当な逮捕されないように援護したり、妨害工作をしないようにすることを軍の内部に伝えて統制する事が主な要求であった。
特にここの軍部は人間達を敵視するゴブリンが多いので妨害が予想されるのでそれを無視してしっかりと冒険者達が魔王軍と戦えるようにしてほしい、それが人間だけでなくゴブリン達のためにもつながるのだと幸一は伝える。
すると若干アルマンドの表情が険しくなる。
「それは難しいな、兵士たちは私より父上に敬意を表している者が多い。私も父上に交渉はしてみるが100%希望が実現するかと言ったら厳しいと言わざるをえない。私だってゴブリン達が傷つく姿は見たくない。やれるだけの事はするが私は何でもできる身分ではない。そこをわかってくれ」
両手を腰に当てながらため息交じりに青葉が囁く。
「やっぱり父上の威光が強すぎるのよね。それで何をやっても父上にみんながついていっちゃうってことよね」
腐敗しきっていた貴族達を追放した栄光。その事実に他のゴブリンの兵士たちはついていってしまっている。その後にどんな混迷がこの国に襲い掛かっていても。
「そうですね……、やはり大きい組織だと一人が正しい行いをしてもまとめきれなくなってしまいますよね」
サラも思わず声を漏らす。
「ま、最善は尽くしてほしいわね。私も満足のいく答えが返ってくるとは考えてなかったから想定の範囲内ではあるわ」
「はい、この国の平和を守るのが私たちの使命です。何とか一人でも多くの兵士にこの事を伝えてみます」
「良かったです、あなたが良心のあるまともな人で──」
「わかった、とりあえず私も父上たちに働きかけるよ、少なくとも襲撃中は俺達は行動を起こさないようにね──」
完全にとはいえなかったが、軍も幸一達を応援してくれることを約束してくれた。また、幸一は彼に一つだけお願いをする。
「えっ? そ、そんなことするんですか? しかし……」
その内容に戸惑い驚きの表情を見せるアルマンド。
「ぜひ参加させてください。それも何の告知もせずにサプライズ的に!!」
「私も参加させて欲しい。困っている人達のためになりたいもん!!」
「大丈夫です、そこまで時間はとらせませんから」
「そうよ!! これは私たちがちゃんと訴えなければいけない問題だわ。だから私も行く!!」
幸一だけでなくイレーナ達も加わる。アルマントはその声に押しきれず彼らの意見を認めるしかなかった。幸一が何かあったら自分たちが脅した、アルマントには何の罪のないと説明する条件付きだが──。
そして他にも内政や魔王軍のことなどを1時間ほど話してこの場を後にする幸一達。別れ際、まずは幸一がアルマントと握手をしながら挨拶をする。
「こんな無謀な提案、乗ってくれてありがとうございます。この街はみんなで協力して絶対に守ります。あなたの協力、絶対に無駄にはさせません」
「こちらこそありがとうございます。こんな崩壊した街を見捨てずに手を差し伸べてくださって感謝の限りです」
「アルマントさん、困ったらいつでも私たちを頼ってね」
「了解だ青葉、また会えるといいな」
アルマントはうつむきながらどこかほっとしたような様子であった。
彼は協力して魔王軍と戦うことに抵抗がなく幸一達に好意的であった。問題は彼の父親なのだが──。
そう囁き幸一は兵士に急接近、そして──。
ドゴォ!!!!
「グハァ!!!!」
思いっきり腹パンを兵士にかます。
その場にうなだれる兵士。そして気絶し倒れこむ。
サラとイレーナは何も言えず。青葉も同情するそぶりを見せつつもやれやれと言った感じでただ一言囁く。
「ちょっとかわいそうだけど、普通に通せば何もされなかったのにね──」
「ちょっと手あらだったけど、仕方ないな……」
倒れこんでいる兵士を横目に幸一達は城の中へ入っていく。
階段を上がり2階へ幸一達は向かう。そして建物の奥、大きな両開きのドアをノックする。
「青葉です、開けますよ」
「入って、どうぞ」
扉の奥から声がすると青葉がドアを開け部屋に入っていく。
続いてイレーナ、サラ、幸一も部屋に入る。
「始めまして、幸一さん」
緑の軍服を着ていて長身で筋肉質のゴブリンの男性がそこにいた。そして挨拶をして握手を求めようと手を幸一に差し伸べる。
「よろしくお願いします。八田幸一と申します」
幸一はそれに笑みを浮かべて握手をする。
彼らはすぐにそばにあるソファーに座りこみ話を行う。
「アルマンドさん、お久しぶりです。こんにちは」
青葉がまずは笑顔で挨拶をする。
幸一はこういった政治のロビー活動は初めてなので少しドキドキしていた。そして頭の中で彼と話す内容を整理する。
(確か青葉が言っていた元帥の息子か──)
幸一からはそんなに悪い人には見えない様子だった。そしてさっそくオホンと咳をして話しの本題に入り出す。
「まずは今度の魔獣の襲撃についての件です。冒険者の私からお願いがあります」
若干表情が険しくなる、その変化を幸一は見逃さなかった。恐らく彼も察したのだろう、これから幸一が話す内容を。
そして幸一は自らの要求について話し始める。魔獣の襲撃に備えて他国から冒険者の応援がやってくるので彼女たちが不当な逮捕されないように援護したり、妨害工作をしないようにすることを軍の内部に伝えて統制する事が主な要求であった。
特にここの軍部は人間達を敵視するゴブリンが多いので妨害が予想されるのでそれを無視してしっかりと冒険者達が魔王軍と戦えるようにしてほしい、それが人間だけでなくゴブリン達のためにもつながるのだと幸一は伝える。
すると若干アルマンドの表情が険しくなる。
「それは難しいな、兵士たちは私より父上に敬意を表している者が多い。私も父上に交渉はしてみるが100%希望が実現するかと言ったら厳しいと言わざるをえない。私だってゴブリン達が傷つく姿は見たくない。やれるだけの事はするが私は何でもできる身分ではない。そこをわかってくれ」
両手を腰に当てながらため息交じりに青葉が囁く。
「やっぱり父上の威光が強すぎるのよね。それで何をやっても父上にみんながついていっちゃうってことよね」
腐敗しきっていた貴族達を追放した栄光。その事実に他のゴブリンの兵士たちはついていってしまっている。その後にどんな混迷がこの国に襲い掛かっていても。
「そうですね……、やはり大きい組織だと一人が正しい行いをしてもまとめきれなくなってしまいますよね」
サラも思わず声を漏らす。
「ま、最善は尽くしてほしいわね。私も満足のいく答えが返ってくるとは考えてなかったから想定の範囲内ではあるわ」
「はい、この国の平和を守るのが私たちの使命です。何とか一人でも多くの兵士にこの事を伝えてみます」
「良かったです、あなたが良心のあるまともな人で──」
「わかった、とりあえず私も父上たちに働きかけるよ、少なくとも襲撃中は俺達は行動を起こさないようにね──」
完全にとはいえなかったが、軍も幸一達を応援してくれることを約束してくれた。また、幸一は彼に一つだけお願いをする。
「えっ? そ、そんなことするんですか? しかし……」
その内容に戸惑い驚きの表情を見せるアルマンド。
「ぜひ参加させてください。それも何の告知もせずにサプライズ的に!!」
「私も参加させて欲しい。困っている人達のためになりたいもん!!」
「大丈夫です、そこまで時間はとらせませんから」
「そうよ!! これは私たちがちゃんと訴えなければいけない問題だわ。だから私も行く!!」
幸一だけでなくイレーナ達も加わる。アルマントはその声に押しきれず彼らの意見を認めるしかなかった。幸一が何かあったら自分たちが脅した、アルマントには何の罪のないと説明する条件付きだが──。
そして他にも内政や魔王軍のことなどを1時間ほど話してこの場を後にする幸一達。別れ際、まずは幸一がアルマントと握手をしながら挨拶をする。
「こんな無謀な提案、乗ってくれてありがとうございます。この街はみんなで協力して絶対に守ります。あなたの協力、絶対に無駄にはさせません」
「こちらこそありがとうございます。こんな崩壊した街を見捨てずに手を差し伸べてくださって感謝の限りです」
「アルマントさん、困ったらいつでも私たちを頼ってね」
「了解だ青葉、また会えるといいな」
アルマントはうつむきながらどこかほっとしたような様子であった。
彼は協力して魔王軍と戦うことに抵抗がなく幸一達に好意的であった。問題は彼の父親なのだが──。
0
お気に入りに追加
107
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
王女に婚約破棄され実家の公爵家からは追放同然に辺境に追いやられたけれど、農業スキルで幸せに暮らしています。
克全
ファンタジー
ゆるふわの設定。戦術系スキルを得られなかったロディーは、王太女との婚約を破棄されただけでなく公爵家からも追放されてしまった。だが転生者であったロディーはいざという時に備えて着々と準備を整えていた。魔獣が何時現れてもおかしくない、とても危険な辺境に追いやられたロディーであったが、農民スキルをと前世の知識を使って無双していくのであった。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
神様に与えられたのは≪ゴミ≫スキル。家の恥だと勘当されたけど、ゴミなら何でも再生出来て自由に使えて……ゴミ扱いされてた古代兵器に懐かれました
向原 行人
ファンタジー
僕、カーティスは由緒正しき賢者の家系に生まれたんだけど、十六歳のスキル授与の儀で授かったスキルは、まさかのゴミスキルだった。
実の父から家の恥だと言われて勘当され、行く当ても無く、着いた先はゴミだらけの古代遺跡。
そこで打ち捨てられていたゴミが話し掛けてきて、自分は古代兵器で、助けて欲しいと言ってきた。
なるほど。僕が得たのはゴミと意思疎通が出来るスキルなんだ……って、嬉しくないっ!
そんな事を思いながらも、話し込んでしまったし、連れて行ってあげる事に。
だけど、僕はただゴミに協力しているだけなのに、どこかの国の騎士に襲われたり、変な魔法使いに絡まれたり、僕を家から追い出した父や弟が現れたり。
どうして皆、ゴミが欲しいの!? ……って、あれ? いつの間にかゴミスキルが成長して、ゴミの修理が出来る様になっていた。
一先ず、いつも一緒に居るゴミを修理してあげたら、見知らぬ銀髪美少女が居て……って、どういう事!? え、こっちが本当の姿なの!? ……とりあえず服を着てっ!
僕を命の恩人だって言うのはさておき、ご奉仕するっていうのはどういう事……え!? ちょっと待って! それくらい自分で出来るからっ!
それから、銀髪美少女の元仲間だという古代兵器と呼ばれる美少女たちに狙われ、返り討ちにして、可哀想だから修理してあげたら……僕についてくるって!?
待って! 僕に奉仕する順番でケンカするとか、訳が分かんないよっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~
クロン
ファンタジー
転生したら貴族の長男だった。
ラッキーと思いきや、未開地の領地で貧乏生活。
下手すれば飢死するレベル……毎日食べることすら危ういほどだ。
幸いにも転生特典で地球の物を手に入れる力を得ているので、何とかするしかない!
「大変です! 魔物が大暴れしています! 兵士では歯が立ちません!」
「兵士の武器の質を向上させる!」
「まだ勝てません!」
「ならば兵士に薬物投与するしか」
「いけません! 他の案を!」
くっ、貴族には制約が多すぎる!
貴族の制約に縛られ悪戦苦闘しつつ、領地を開発していくのだ!
「薬物投与は貴族関係なく、人道的にどうかと思います」
「勝てば正義。死ななきゃ安い」
これは地球の物を駆使して、領内を発展させる物語である。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる