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初めての戦友
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「やっぱり迷っているようだな、それもお前らしいよ──」
「当り前だよ、下手をすれば逆族扱いされかねないことをやれと言われて簡単にやりますなんて言えないよ」
再び苦笑いを浮かべるルト。すると幸一が訴えかけるような眼差しでさらに話しかける。
「そんなルトに一言聞きたい、お前は何のために戦っている? お前は名誉や地位のために戦っているのか?」
「そうじゃないだろう、お前はそんな安っぽい名誉おかざりなんかのためじゃなく命までかけて戦っていたはずだ、不当に差別を受けている者、虐げられている者のために!!」
幸一はじっとルトを見つめて心に強く訴える、彼の正義感に、志に──。ルトは言葉を失いただ幸一を見ていた。
「そんなお前が高々地位を失うくらいで、何だ!! 失う事が怖い? 奴隷として売られていった彼女達は失いことすらできないんだぞ!! お前が立ち上がらなかったら奴隷になってしまった彼女達は誰が救う?」
そして口調を穏やかにし、ルトの目をじっと見つめたまま叫ぶ。
「断言する、ここで立ち上がらなかったらお前一生後悔すると思う」
ここでこの事件を解決しなければさらに悲劇は続いてしまうだろう。多少の痛みを追ってでも彼女たちを救わなければいけない。ここでやらなかったら一体だれがやるというのか。
幸一の強い訴えがルトの心を突き動かし始めていた。
「それにお前だけは俺が何があっても守り通す、これが最後の頼みだ、この作戦に乗ってほしい」
ルトの顔つきが真剣なものに変わる。
そして再び思い出す。
かつて地方にいた時も似たようなことがあった。腐敗が進んだ地方領主。
一歩外に出るとスラム街で貧困にあえいでいる人達がいる一方。彼らの宮殿では毎日のように女と宴会で盛りあっていたとある地方。
懸命に自らの正義を訴えるルト。
しかし自分がどれだけ声を上げても共に戦ってくれる者はいなかった。
「我々軍人は王に反乱などしない、誠実に国家と王に忠実な盾となるのだ」
軍人は政治に関与しないという伝統に縛られ、家名の存続を第一とする軍人達は誰一人立ち上がることは無かった。
そんな思いをかみしめながら今この場で感じた。
幸一は初めてであった志を共有できる友であると。
確かにリスクな存在する。二度と政治舞台に立てなくなるかもしれないというリスクが。
しかしリスクのない勝負など無い、それに昔とは一つだけ違う事があった。
あの時は自分がどれだけ声を上げても立ち上がる者はいなかった、力になる者もいなかった、しかし今回は違う。弱者たちのために立ち上がってくれる人々がいた。協力して力を貸してくれる人がいた。
ルトは感じ始める、ここで立ち上がらなかったら自分はただ口先だけで正義を騙るだけで何もできない人間になってしまうと。
そんな決意を心の中で強く行い、首を縦に振る。
「──わかったよ、僕も力になる。協力するよ」
そして彼は幸一に一つの注文をつける。
「僕に先陣を切らせてほしい、当然だよ、一番僕が責任を負わなくちゃいけないんだから」
一番痛みを背負うのは自分でなくてはならない。だって自分がまかりなりにも指導をする立場なのだから、責任を負うのも苦しい想いをするのもまず自分からでなくてはならない。
いいところだけ自分が占領して悪いところは部下達に押しつける。そんなトカゲのしっぽ切りのような考えをルトは嫌っていたからであった。
しかし幸一の答えは意外なものだった。
「いや、最初からお前が表舞台にでるのはまずい」
幸一は腕を組み真剣な表情で理由を騙り始める。
「さっき俺は市民達の世論に訴えると言ったが必ずしも成功するとは限らない。ひょっとしたら俺達を逆族扱いするかもしれない。そうなった時にお前が主導者だと皆が知ったらお前は支持を失って間違いなく後継者争いから脱落する。だからその時は俺が独断でやったことにする」
「それは、そうかもしれない……」
納得するルト、確かに失敗すれば自分の政治生命は終わったに等しくなる。
さらに幸一は説明を続ける。
「だから世論が国家側と俺達どちらに傾くか見極めさせてほしい。もし世論が俺達を指示してくれたらすぐにルトを首謀者にする。彼が虐げられしもののため立ち上がったってね……」
「理屈としては幸君は正しいことを言っているのはわかる。でも──、なんか、納得いかない……」
ルトは良い顔をしない、恐らく何かあっても自分が傷つくことは無く彼らが罰を受けることになり良い方向に行けば自分がおいしいところ取りをしているみたいで嫌だったのだろう。
幸一からすればやはりという反応だった。少しの付き合いではあったが彼がこういう売名行為が嫌いというのはすでに理解していた予想通りの反応だった。
まあ、そういうところが「俺好み」なわけであり力になろうと思っている理由でもあるのだが……。
そう考えながら星空を見上げながら優しい微笑を浮かべそれを諭す幸一
「ルト、お前はこの国を継がなければいけない存在だ。そんなお前が泥をかぶってはいけない。自分を犠牲にするという意味を決して履き違えるな」
「少し納得は出来ないけれど、分かった。その指示には従うよ」
ルトがしぶしぶ了承する。
「そうだ。お前にはお前の、冒険者には冒険者の、俺には俺の役割がある。ルト、お前は自分ができることを行え」
そして幸一がこれからの構想を語り始める。
「まずさぁ、これからなんだけどさあ……」
「なに?」
「俺がお前の参謀になる。お前を次期国王に押すために行動する。 当然ルトも今までのようにどっちつかずになるんじゃなくて国王になるために行動してもらう」
「俺はそのために裏方で命を張って戦う。特に汚れ仕事や犠牲を覚悟でやるような厳しい仕事は俺が担当する。お前は自分の信念に従って行動しろ、俺が支えてやるから──」
頼もしい一言に心の中ではっとするルト。幸一のその言葉を信じてルトは固く決意する。
「じゃあ頼むよ、僕は僕を必要としてくれる人たちのために、戦う!!」
決意の一言。彼は初めて自分に足りないものを補ってくれる人物を手に入れた。弱者達を救うため彼と手を組んで戦う。そう心に決め幸一の方をじっと見る。
「よろしくね──」
「……わかった」
初めてともいえる共に目的を共有し合える戦友に出会えた。そんなことにどこかほっとした気分になるルト。
そこに背後から突然声が聞こえ出す。
「聞いてたわ、よからぬことをたくらんでいるお二人さん」
予想もしなかった声に思わず幸一は驚く。
その人物とは──?
「当り前だよ、下手をすれば逆族扱いされかねないことをやれと言われて簡単にやりますなんて言えないよ」
再び苦笑いを浮かべるルト。すると幸一が訴えかけるような眼差しでさらに話しかける。
「そんなルトに一言聞きたい、お前は何のために戦っている? お前は名誉や地位のために戦っているのか?」
「そうじゃないだろう、お前はそんな安っぽい名誉おかざりなんかのためじゃなく命までかけて戦っていたはずだ、不当に差別を受けている者、虐げられている者のために!!」
幸一はじっとルトを見つめて心に強く訴える、彼の正義感に、志に──。ルトは言葉を失いただ幸一を見ていた。
「そんなお前が高々地位を失うくらいで、何だ!! 失う事が怖い? 奴隷として売られていった彼女達は失いことすらできないんだぞ!! お前が立ち上がらなかったら奴隷になってしまった彼女達は誰が救う?」
そして口調を穏やかにし、ルトの目をじっと見つめたまま叫ぶ。
「断言する、ここで立ち上がらなかったらお前一生後悔すると思う」
ここでこの事件を解決しなければさらに悲劇は続いてしまうだろう。多少の痛みを追ってでも彼女たちを救わなければいけない。ここでやらなかったら一体だれがやるというのか。
幸一の強い訴えがルトの心を突き動かし始めていた。
「それにお前だけは俺が何があっても守り通す、これが最後の頼みだ、この作戦に乗ってほしい」
ルトの顔つきが真剣なものに変わる。
そして再び思い出す。
かつて地方にいた時も似たようなことがあった。腐敗が進んだ地方領主。
一歩外に出るとスラム街で貧困にあえいでいる人達がいる一方。彼らの宮殿では毎日のように女と宴会で盛りあっていたとある地方。
懸命に自らの正義を訴えるルト。
しかし自分がどれだけ声を上げても共に戦ってくれる者はいなかった。
「我々軍人は王に反乱などしない、誠実に国家と王に忠実な盾となるのだ」
軍人は政治に関与しないという伝統に縛られ、家名の存続を第一とする軍人達は誰一人立ち上がることは無かった。
そんな思いをかみしめながら今この場で感じた。
幸一は初めてであった志を共有できる友であると。
確かにリスクな存在する。二度と政治舞台に立てなくなるかもしれないというリスクが。
しかしリスクのない勝負など無い、それに昔とは一つだけ違う事があった。
あの時は自分がどれだけ声を上げても立ち上がる者はいなかった、力になる者もいなかった、しかし今回は違う。弱者たちのために立ち上がってくれる人々がいた。協力して力を貸してくれる人がいた。
ルトは感じ始める、ここで立ち上がらなかったら自分はただ口先だけで正義を騙るだけで何もできない人間になってしまうと。
そんな決意を心の中で強く行い、首を縦に振る。
「──わかったよ、僕も力になる。協力するよ」
そして彼は幸一に一つの注文をつける。
「僕に先陣を切らせてほしい、当然だよ、一番僕が責任を負わなくちゃいけないんだから」
一番痛みを背負うのは自分でなくてはならない。だって自分がまかりなりにも指導をする立場なのだから、責任を負うのも苦しい想いをするのもまず自分からでなくてはならない。
いいところだけ自分が占領して悪いところは部下達に押しつける。そんなトカゲのしっぽ切りのような考えをルトは嫌っていたからであった。
しかし幸一の答えは意外なものだった。
「いや、最初からお前が表舞台にでるのはまずい」
幸一は腕を組み真剣な表情で理由を騙り始める。
「さっき俺は市民達の世論に訴えると言ったが必ずしも成功するとは限らない。ひょっとしたら俺達を逆族扱いするかもしれない。そうなった時にお前が主導者だと皆が知ったらお前は支持を失って間違いなく後継者争いから脱落する。だからその時は俺が独断でやったことにする」
「それは、そうかもしれない……」
納得するルト、確かに失敗すれば自分の政治生命は終わったに等しくなる。
さらに幸一は説明を続ける。
「だから世論が国家側と俺達どちらに傾くか見極めさせてほしい。もし世論が俺達を指示してくれたらすぐにルトを首謀者にする。彼が虐げられしもののため立ち上がったってね……」
「理屈としては幸君は正しいことを言っているのはわかる。でも──、なんか、納得いかない……」
ルトは良い顔をしない、恐らく何かあっても自分が傷つくことは無く彼らが罰を受けることになり良い方向に行けば自分がおいしいところ取りをしているみたいで嫌だったのだろう。
幸一からすればやはりという反応だった。少しの付き合いではあったが彼がこういう売名行為が嫌いというのはすでに理解していた予想通りの反応だった。
まあ、そういうところが「俺好み」なわけであり力になろうと思っている理由でもあるのだが……。
そう考えながら星空を見上げながら優しい微笑を浮かべそれを諭す幸一
「ルト、お前はこの国を継がなければいけない存在だ。そんなお前が泥をかぶってはいけない。自分を犠牲にするという意味を決して履き違えるな」
「少し納得は出来ないけれど、分かった。その指示には従うよ」
ルトがしぶしぶ了承する。
「そうだ。お前にはお前の、冒険者には冒険者の、俺には俺の役割がある。ルト、お前は自分ができることを行え」
そして幸一がこれからの構想を語り始める。
「まずさぁ、これからなんだけどさあ……」
「なに?」
「俺がお前の参謀になる。お前を次期国王に押すために行動する。 当然ルトも今までのようにどっちつかずになるんじゃなくて国王になるために行動してもらう」
「俺はそのために裏方で命を張って戦う。特に汚れ仕事や犠牲を覚悟でやるような厳しい仕事は俺が担当する。お前は自分の信念に従って行動しろ、俺が支えてやるから──」
頼もしい一言に心の中ではっとするルト。幸一のその言葉を信じてルトは固く決意する。
「じゃあ頼むよ、僕は僕を必要としてくれる人たちのために、戦う!!」
決意の一言。彼は初めて自分に足りないものを補ってくれる人物を手に入れた。弱者達を救うため彼と手を組んで戦う。そう心に決め幸一の方をじっと見る。
「よろしくね──」
「……わかった」
初めてともいえる共に目的を共有し合える戦友に出会えた。そんなことにどこかほっとした気分になるルト。
そこに背後から突然声が聞こえ出す。
「聞いてたわ、よからぬことをたくらんでいるお二人さん」
予想もしなかった声に思わず幸一は驚く。
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